16.天井裏から来るアイツ
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(職員室には居なかったし、ひょっとして煙硝蔵かな……?)
半助を探し駆け回るきり丸の顔は、期待と喜びに満ちている。
一刻も早く半助に会って、報告したくてたまらない――そんな表情だ。
軽やかに地を蹴りながら、きり丸は考えていた。
空のことを。
空が忍術学園で生活するようになってから、きり丸は自分自身、気づいたことがある。
思っていたよりも、自分は家族の愛に飢えていたということに。
寂しさを紛らわすため、人一倍強がっていたということに。
戦で家族と帰る場所と失ったきり丸は、たった一人で日銭を稼ぎ、生き延びてきた。
そんな彼の生涯は、忍たまたちの中で、最も荒波に揉まれていると言っても過言ではない。
時代柄、親の無い子は珍しくないとはいえ、成長目まぐるしい時期に心の拠り所である親がいないのは子どもとってつらいこと。
一年は組の同級生たちには、皆親がいる。
みなしごなのは自分だけ。
親友である乱太郎やしんべえの家に遊びにいったとき、彼らが両親と接しているのを見ると、時として微笑ましい以上に虚しさの感情が湧き起こってしまうことがある。
自分がとっくに失ったものを手にしている彼らが、どうしようもなく羨ましくて。
だが、今更妬んでも仕方がない。
こうなったら、意地でも一人で生き抜いて見せる。
もう手に入らないものを考えたってしょうがないと諦めさえしていた。
だが、空の出現はそのすべてを変えた。
出会いが出会いなだけに、最初は空のことを変な人間だと思ったものの、それはほんの束の間のこと。
空の人となりがわかれば、彼女は警戒するどころか庇護してあげなければいけない女性だと、きり丸は知る。
忍術学園で働き始めた初日、空はきり丸との会話で何気ない一言をこぼした。
未来から来た自分は身寄りもないし、帰る家もないと。
この女 は天涯孤独の自分と同じ――そうわかったとき、きり丸は嬉しさを覚えずにはいられなかった。
こんな近くに仲間がいるなんて、と。
自分との共通項を持ったことで空に親しみを覚えたきり丸は、果敢に話しかけていく。
そうして、知るのだ。
空が自分を甘えさせてくれる、それこそ親のような愛情を注いでくれる存在なのだと。
「きり丸君」
清流のように澄んだ声で名を呼ばれるだけで、空の胸に飛び込みたくなる。
温もりが伝わるような、あのやさしげな瞳で見つめられるだけで、泣きたくなるような衝動に駆られる。
母性愛を感じさせる空といると、これまで強くあるように、弱いところを見せぬように、と心を覆っていた鉄の壁が脆くも崩れていくのだ。
空といると心が安らぐ。
空にはすべてをさらけ出せる安心感がある。
きり丸にとって、空はもうなくてはならない存在になっていた。
決して空本人の前では口には出せないが、きり丸はこんなことを思うようになった。
空がこの世界にやって来たことは、今まで十年間必死に生き抜いてきた自分に神様がくれた、ご褒美なのかもしれない、と。
空さんとおれは本当の家族になれるんじゃないか――
きり丸の淡い願いは日を追うごとに強くなっていく。
だから、今回の冬休みは大チャンスだった。
空とずっと一緒にいるためには、同居人の半助の協力が絶対に必要なのだ。
(土井先生には頑張ってもらわないと!おれの大好きな二人が恋人同士になったら、休みの日はいつも三人で居られるんだ……!)
きり丸の足取りは一層早くなった。
半助を探し駆け回るきり丸の顔は、期待と喜びに満ちている。
一刻も早く半助に会って、報告したくてたまらない――そんな表情だ。
軽やかに地を蹴りながら、きり丸は考えていた。
空のことを。
空が忍術学園で生活するようになってから、きり丸は自分自身、気づいたことがある。
思っていたよりも、自分は家族の愛に飢えていたということに。
寂しさを紛らわすため、人一倍強がっていたということに。
戦で家族と帰る場所と失ったきり丸は、たった一人で日銭を稼ぎ、生き延びてきた。
そんな彼の生涯は、忍たまたちの中で、最も荒波に揉まれていると言っても過言ではない。
時代柄、親の無い子は珍しくないとはいえ、成長目まぐるしい時期に心の拠り所である親がいないのは子どもとってつらいこと。
一年は組の同級生たちには、皆親がいる。
みなしごなのは自分だけ。
親友である乱太郎やしんべえの家に遊びにいったとき、彼らが両親と接しているのを見ると、時として微笑ましい以上に虚しさの感情が湧き起こってしまうことがある。
自分がとっくに失ったものを手にしている彼らが、どうしようもなく羨ましくて。
だが、今更妬んでも仕方がない。
こうなったら、意地でも一人で生き抜いて見せる。
もう手に入らないものを考えたってしょうがないと諦めさえしていた。
だが、空の出現はそのすべてを変えた。
出会いが出会いなだけに、最初は空のことを変な人間だと思ったものの、それはほんの束の間のこと。
空の人となりがわかれば、彼女は警戒するどころか庇護してあげなければいけない女性だと、きり丸は知る。
忍術学園で働き始めた初日、空はきり丸との会話で何気ない一言をこぼした。
未来から来た自分は身寄りもないし、帰る家もないと。
この
こんな近くに仲間がいるなんて、と。
自分との共通項を持ったことで空に親しみを覚えたきり丸は、果敢に話しかけていく。
そうして、知るのだ。
空が自分を甘えさせてくれる、それこそ親のような愛情を注いでくれる存在なのだと。
「きり丸君」
清流のように澄んだ声で名を呼ばれるだけで、空の胸に飛び込みたくなる。
温もりが伝わるような、あのやさしげな瞳で見つめられるだけで、泣きたくなるような衝動に駆られる。
母性愛を感じさせる空といると、これまで強くあるように、弱いところを見せぬように、と心を覆っていた鉄の壁が脆くも崩れていくのだ。
空といると心が安らぐ。
空にはすべてをさらけ出せる安心感がある。
きり丸にとって、空はもうなくてはならない存在になっていた。
決して空本人の前では口には出せないが、きり丸はこんなことを思うようになった。
空がこの世界にやって来たことは、今まで十年間必死に生き抜いてきた自分に神様がくれた、ご褒美なのかもしれない、と。
空さんとおれは本当の家族になれるんじゃないか――
きり丸の淡い願いは日を追うごとに強くなっていく。
だから、今回の冬休みは大チャンスだった。
空とずっと一緒にいるためには、同居人の半助の協力が絶対に必要なのだ。
(土井先生には頑張ってもらわないと!おれの大好きな二人が恋人同士になったら、休みの日はいつも三人で居られるんだ……!)
きり丸の足取りは一層早くなった。