34.新たなる一歩
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忍術学園の入門付近の塀の上に乱太郎・きり丸・しんべえが佇んでいた。
未だ帰ってこない半助と空を待ち構えているのである。
「おっせえなぁ~。土井先生と空さん、一体いつ戻ってくるんだろう……」
「私の母ちゃんの話を聞いてから、昨日二人で町にお出かけしちゃったんだよね」
「今日の朝には戻って来ると思ったのに!土井先生が不在だったから、今日の教科の授業安藤先生だったよね。授業中ずーっと自慢と嫌味ばっかり言ってくるし。ボク明日もこれだったらもう耐えられないよ!!」
しんべえの愚痴に、何度も首を振って乱太郎ときり丸が同意を示す。
半助が不在なのをいいことに、安藤は自分のクラスであるい組の生徒たちの自慢話をしてきた。
それだけならまだマシだが、一年生の中で最も落ちこぼれな一年は組の悪態も同時に突く。
乱太郎・きり丸・しんべえが不快な気分になるのは当然のことだった。
「おい、あれ見ろよ!」
きり丸が前方を指さし、乱太郎としんべえが振り向いた。
そこには女性を背負いながら、近づいてくる一人の男性の姿があった。
「土井先生!空さん!」
きり丸が大手を振り、乱太郎としんべえも続く。
遠巻きの男女が呼応するように手を振ったのを確認した三人は、くしゃくしゃに笑ってハイタッチを交わした。
「乱太郎、きり丸、しんべえ。ただいま。遅くなってすまない」
半助がそう言いながら、ゆっくりと空をその場に下ろした。
「土井先生、空さん、おかえりなさい!町で流れていた変な噂の方は解決したんですか?」
「ああ。空の名を語ってあの花房牧之介が妻に扮していたよ」
「え!?ま~た牧之介が悪さしてたんっすか?ほんっとうにはた迷惑な自称・剣豪だな……」
呆れてブツブツ言うきり丸だったが、乱太郎としんべえは何かに気づいたようで瞬時に顔を見合わせた。
「あの……土井先生。ちょっといいですか?」
「どうした?乱太郎」
「え~っと、その……どうして今空さんを呼び捨てにしたんですか?」
「ほんと、ほんと!いつもなら土井先生、空さんのこと空君って呼ぶのに……!」
半助も空も唖然としていた。
(も~う!!どうしてこの子たちはこういうときだけ目ざといんだ!?)
いざというときに忍者としての洞察力を発揮できないのに。
必要のない時だけ微小な変化を鋭敏に察知できる乱太郎としんべえなのだった。
「……」
きり丸は口をポカンと開き、呆けている。
半助が空を呼び捨てにした。
しかも町にいるとき以外で。
それが意味していることに気づいたきり丸は、改めて二人に確認する。
「ってことはもしかして、ひょっとすると、お二人さん!?」
「まぁ……こういうことだ」
半助はそう言って隣にいる空の肩をそっと抱いた。
(半助さん……)
空は頬を赤く染める。
そんな二人の仲睦まじい様子を見て、きり丸は破顔する。
大興奮で叫んだ。
「よかったじゃないっすか、土井先生!やっと好きって言えたんですね!ニヒヒヒヒッ。ず~っと前から空さんのこと大好きでしたもんね!いやぁ、めでたい、めでたい!」
「よしてくれ、きり丸。あんまり言うな。恥ずかしいだろ……!」
半助が顔を押さえる。
どれだけ好きだったか暴露されて、これ以上ないくらい赤面した半助なのだった。
はしゃぐきり丸は急に空にしがみついた。
甘くやさしい匂いがきり丸の鼻腔をくすぐる。
「えっへへ!」
「きりちゃん……?」
「おれ、すげえ嬉しい!だって、これからは……休みの日はさ、ずっと一緒なんだよね?おれたち」
きり丸にとって、夢が叶った瞬間だった。
もういちいち休みの度に空にお伺いを立てる必要はない。
空と半助と三人で家族同然に過ごせると期待に胸を膨らませている。
(きりちゃん……)
こんなにひたむきに愛を乞われて、必要とされて、何て自分は幸せ者なのだろう。
空はたまらずきり丸を抱き締めた。
「うん。これからはお休みの日もずっと一緒だよ。私がいて迷惑かけるかもしれないけど……改めてよろしくね」
「何言ってんですか?ちっとも迷惑なんかじゃないっすよ!ねぇ、土井先生?」
「ああ、きり丸の言うとおりだ。君は私ときり丸にとって、大切な女性なんだから」
きっぱりと言い切った半助だったが、きり丸がニヤニヤしながら余計な一言を放った。
「土井先生、顔真っ赤っか。これじゃあ、せっかくの立派な台詞も台無しっすよ。あ~あ」
「きり丸!さっきからお前はいちいち喋りすぎなんだ!」
「うわわっ!じょ、冗談すよ、冗談っ!」
冷やかすきり丸を半助が血眼で追いかけ回す。
「きりちゃん、嬉しいからって一言多すぎ」
残された乱太郎たち三人は呆れている。
しんべえが空の袖を引っ張り、言った。
「ねぇねぇ、空さん。土井先生と恋人になったなら……これからおシゲちゃんみたいに土井先生の鼻をかんであげるんですよね!」
「え、え~っと、それは……」
「違うよ、しんべえ。土井先生と空さんは、私の父ちゃんと母ちゃんみたいに大好きって言い合ったり、一緒の布団で寝たり、四六時中一緒にいるんだよ」
乱太郎が横から訂正する。
あながち間違っていない乱太郎の言いぐさに、空は顔を真っ赤にした。
未だ帰ってこない半助と空を待ち構えているのである。
「おっせえなぁ~。土井先生と空さん、一体いつ戻ってくるんだろう……」
「私の母ちゃんの話を聞いてから、昨日二人で町にお出かけしちゃったんだよね」
「今日の朝には戻って来ると思ったのに!土井先生が不在だったから、今日の教科の授業安藤先生だったよね。授業中ずーっと自慢と嫌味ばっかり言ってくるし。ボク明日もこれだったらもう耐えられないよ!!」
しんべえの愚痴に、何度も首を振って乱太郎ときり丸が同意を示す。
半助が不在なのをいいことに、安藤は自分のクラスであるい組の生徒たちの自慢話をしてきた。
それだけならまだマシだが、一年生の中で最も落ちこぼれな一年は組の悪態も同時に突く。
乱太郎・きり丸・しんべえが不快な気分になるのは当然のことだった。
「おい、あれ見ろよ!」
きり丸が前方を指さし、乱太郎としんべえが振り向いた。
そこには女性を背負いながら、近づいてくる一人の男性の姿があった。
「土井先生!空さん!」
きり丸が大手を振り、乱太郎としんべえも続く。
遠巻きの男女が呼応するように手を振ったのを確認した三人は、くしゃくしゃに笑ってハイタッチを交わした。
「乱太郎、きり丸、しんべえ。ただいま。遅くなってすまない」
半助がそう言いながら、ゆっくりと空をその場に下ろした。
「土井先生、空さん、おかえりなさい!町で流れていた変な噂の方は解決したんですか?」
「ああ。空の名を語ってあの花房牧之介が妻に扮していたよ」
「え!?ま~た牧之介が悪さしてたんっすか?ほんっとうにはた迷惑な自称・剣豪だな……」
呆れてブツブツ言うきり丸だったが、乱太郎としんべえは何かに気づいたようで瞬時に顔を見合わせた。
「あの……土井先生。ちょっといいですか?」
「どうした?乱太郎」
「え~っと、その……どうして今空さんを呼び捨てにしたんですか?」
「ほんと、ほんと!いつもなら土井先生、空さんのこと空君って呼ぶのに……!」
半助も空も唖然としていた。
(も~う!!どうしてこの子たちはこういうときだけ目ざといんだ!?)
いざというときに忍者としての洞察力を発揮できないのに。
必要のない時だけ微小な変化を鋭敏に察知できる乱太郎としんべえなのだった。
「……」
きり丸は口をポカンと開き、呆けている。
半助が空を呼び捨てにした。
しかも町にいるとき以外で。
それが意味していることに気づいたきり丸は、改めて二人に確認する。
「ってことはもしかして、ひょっとすると、お二人さん!?」
「まぁ……こういうことだ」
半助はそう言って隣にいる空の肩をそっと抱いた。
(半助さん……)
空は頬を赤く染める。
そんな二人の仲睦まじい様子を見て、きり丸は破顔する。
大興奮で叫んだ。
「よかったじゃないっすか、土井先生!やっと好きって言えたんですね!ニヒヒヒヒッ。ず~っと前から空さんのこと大好きでしたもんね!いやぁ、めでたい、めでたい!」
「よしてくれ、きり丸。あんまり言うな。恥ずかしいだろ……!」
半助が顔を押さえる。
どれだけ好きだったか暴露されて、これ以上ないくらい赤面した半助なのだった。
はしゃぐきり丸は急に空にしがみついた。
甘くやさしい匂いがきり丸の鼻腔をくすぐる。
「えっへへ!」
「きりちゃん……?」
「おれ、すげえ嬉しい!だって、これからは……休みの日はさ、ずっと一緒なんだよね?おれたち」
きり丸にとって、夢が叶った瞬間だった。
もういちいち休みの度に空にお伺いを立てる必要はない。
空と半助と三人で家族同然に過ごせると期待に胸を膨らませている。
(きりちゃん……)
こんなにひたむきに愛を乞われて、必要とされて、何て自分は幸せ者なのだろう。
空はたまらずきり丸を抱き締めた。
「うん。これからはお休みの日もずっと一緒だよ。私がいて迷惑かけるかもしれないけど……改めてよろしくね」
「何言ってんですか?ちっとも迷惑なんかじゃないっすよ!ねぇ、土井先生?」
「ああ、きり丸の言うとおりだ。君は私ときり丸にとって、大切な女性なんだから」
きっぱりと言い切った半助だったが、きり丸がニヤニヤしながら余計な一言を放った。
「土井先生、顔真っ赤っか。これじゃあ、せっかくの立派な台詞も台無しっすよ。あ~あ」
「きり丸!さっきからお前はいちいち喋りすぎなんだ!」
「うわわっ!じょ、冗談すよ、冗談っ!」
冷やかすきり丸を半助が血眼で追いかけ回す。
「きりちゃん、嬉しいからって一言多すぎ」
残された乱太郎たち三人は呆れている。
しんべえが空の袖を引っ張り、言った。
「ねぇねぇ、空さん。土井先生と恋人になったなら……これからおシゲちゃんみたいに土井先生の鼻をかんであげるんですよね!」
「え、え~っと、それは……」
「違うよ、しんべえ。土井先生と空さんは、私の父ちゃんと母ちゃんみたいに大好きって言い合ったり、一緒の布団で寝たり、四六時中一緒にいるんだよ」
乱太郎が横から訂正する。
あながち間違っていない乱太郎の言いぐさに、空は顔を真っ赤にした。