34.新たなる一歩
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午後の授業が終わるが、半助たちはまだ帰ってこない。
食堂の調理場にて、くノ一教室の担当教師である山本シナは食堂のおばちゃんのお手伝いをしていた。
「シナ先生、ごめんなさいねぇ。お皿拭いてもらって」
「いいんですよ。今日は午後の授業が終わったら職員室で仕事するだけだったし。おばちゃん、空さんが居なくて大変でしたね」
「ほんっと、久しぶりに一人で仕切って疲れちゃったわ。それにしても、半助ったら」
「こんな時間になっても戻ってこないなんて……うまくいってますかね、あの二人」
「うまくいってない方が不自然でしょ」
そんなことを話していたら、食堂に複数の人物がやってきた。
一年い組の担任である安藤夏之丞とは組の実技担当である伝蔵だ。
珍しい組み合わせである。
二人は食堂のおばちゃんにお茶を頼むと、食堂のテーブルについた。
「いやぁ、今日は一年は組の授業を急遽代理で務めましたけど……本っ当に大変でした」
「私も実技の授業であの子たちの質問攻めにあって散々困りましたよ。安藤先生、我が同僚がご迷惑おかけして本当に申し訳ない……!」
「いえいえ、山田先生が謝ることじゃありませんよ。しかし、あの 土井先生が無断欠勤だなんて珍しいこともあるもんですねぇ」
「いやはや、全く」
二人とも実に仰々しく言う。
口では困る、大変だと言いながらも、表情は嬉々としている。
話題の中心人物をこれからどうからかってやろうかと楽しくてしょうがないのだ。
男二人でどっと盛り上がる中、学園長とヘムヘムも食堂に顔を出した。
「お~い!食堂のおばちゃん、お茶くれんかのう!……て安藤先生に山田先生!」
「ヘムゥ」
「学園長先生!ヘムヘムも!」
学園長は食堂内をキョロキョロ見回し、言った。
「なんじゃあ?土井先生はまだ帰って来とらんのか?」
「はい。町に流れている変な噂を確かめに行ったっきりです」
そう返した伝蔵の声色はいつになく弾んでいる。
「土井先生とあろうものが何に手間取ってるんでしょうねぇ?まぁ、町で立った変な噂よりも他のことに執着しているのかもしれませんが、」
含みを持たせた安藤の言い回しに、向かいに座る伝蔵の口の端が無意識につり上がった。
「ふぅむ。まぁ、愛しの空ちゃんと二人で外出なら、あの奥手の半助もこのチャンスを逃さんじゃろう!」
「ヘムゥ!」
もったいぶる安藤と伝蔵とは対照的に、学園長がはっきりと言った。
そこへ、お茶を乗せたお盆を持つシナと、その後ろからおばちゃんが姿を現した。
「そうですね。私も土井先生と空さん、二人はぐっと仲を深めて帰ってくると思います」
「というか、この機会をものにしないと男がすたるってもんよ」
凛とした声で、シナは学園長に賛同する。
おばちゃんも当たり前のように言った。
シナからお茶を受け取ると、伝蔵は何を閃いたのかパッと顔を輝かせた。
「そうだ、いいこと思いついたぞ!どうじゃ?ここにいるみんなで一つ賭けをせんか?あの二人が深~い仲になって戻って来るかどうか!」
伝蔵の提案に、間髪入れずシナが答えた。
「もちろん!二人がイイ感じになる方に、今持っている手持ちのお金全て賭けます。安藤先生は?」
「う~ん、非常に際どいところですが、私もシナ先生と同じ意見ですな。金額は……今月のお給料全部賭けましょう」
「ほ……う」
安藤の出した結論に伝蔵は顎を撫で、ほくそ笑んだ。
「学園長はどうですかな?」
「わしもふたりと同じじゃ!有り金すべてとヘムヘムの老後の積み立て金とへそくり全部賭けてもいい!」
「ヘムゥ!?」
一方的に賭け事に巻き込まれて、ヘムヘムは素っ頓狂な声を出して驚いた。
「残るは食堂のおばちゃんか。あれ、いない……?」
目を丸くする伝蔵に、シナが申し訳なさそうに言った。
「おばちゃんなら調理場に戻りました。今小豆を洗っています。その……今夜は赤飯だって張り切ってて……。昨晩の破瓜の痛みを労うためだって……」
露骨なメニューとぶっ飛んだ発言に、一同絶句する。
シナだけでなく、男性陣、そしてヘムヘムまでもがほんのりと顔を赤らめてしまった。
「やれやれ……」
答えが出そろったところで、伝蔵が一度ふぅとため息をつく。
次第に込み上げてくる笑いを抑えきれず、ついには吹き出してしまった。
「阿保くさぁ。みんな同じなら、賭けにもなりゃせんのう」
食堂の調理場にて、くノ一教室の担当教師である山本シナは食堂のおばちゃんのお手伝いをしていた。
「シナ先生、ごめんなさいねぇ。お皿拭いてもらって」
「いいんですよ。今日は午後の授業が終わったら職員室で仕事するだけだったし。おばちゃん、空さんが居なくて大変でしたね」
「ほんっと、久しぶりに一人で仕切って疲れちゃったわ。それにしても、半助ったら」
「こんな時間になっても戻ってこないなんて……うまくいってますかね、あの二人」
「うまくいってない方が不自然でしょ」
そんなことを話していたら、食堂に複数の人物がやってきた。
一年い組の担任である安藤夏之丞とは組の実技担当である伝蔵だ。
珍しい組み合わせである。
二人は食堂のおばちゃんにお茶を頼むと、食堂のテーブルについた。
「いやぁ、今日は一年は組の授業を急遽代理で務めましたけど……本っ当に大変でした」
「私も実技の授業であの子たちの質問攻めにあって散々困りましたよ。安藤先生、我が同僚がご迷惑おかけして本当に申し訳ない……!」
「いえいえ、山田先生が謝ることじゃありませんよ。しかし、
「いやはや、全く」
二人とも実に仰々しく言う。
口では困る、大変だと言いながらも、表情は嬉々としている。
話題の中心人物をこれからどうからかってやろうかと楽しくてしょうがないのだ。
男二人でどっと盛り上がる中、学園長とヘムヘムも食堂に顔を出した。
「お~い!食堂のおばちゃん、お茶くれんかのう!……て安藤先生に山田先生!」
「ヘムゥ」
「学園長先生!ヘムヘムも!」
学園長は食堂内をキョロキョロ見回し、言った。
「なんじゃあ?土井先生はまだ帰って来とらんのか?」
「はい。町に流れている変な噂を確かめに行ったっきりです」
そう返した伝蔵の声色はいつになく弾んでいる。
「土井先生とあろうものが何に手間取ってるんでしょうねぇ?まぁ、町で立った変な噂よりも他のことに執着しているのかもしれませんが、」
含みを持たせた安藤の言い回しに、向かいに座る伝蔵の口の端が無意識につり上がった。
「ふぅむ。まぁ、愛しの空ちゃんと二人で外出なら、あの奥手の半助もこのチャンスを逃さんじゃろう!」
「ヘムゥ!」
もったいぶる安藤と伝蔵とは対照的に、学園長がはっきりと言った。
そこへ、お茶を乗せたお盆を持つシナと、その後ろからおばちゃんが姿を現した。
「そうですね。私も土井先生と空さん、二人はぐっと仲を深めて帰ってくると思います」
「というか、この機会をものにしないと男がすたるってもんよ」
凛とした声で、シナは学園長に賛同する。
おばちゃんも当たり前のように言った。
シナからお茶を受け取ると、伝蔵は何を閃いたのかパッと顔を輝かせた。
「そうだ、いいこと思いついたぞ!どうじゃ?ここにいるみんなで一つ賭けをせんか?あの二人が深~い仲になって戻って来るかどうか!」
伝蔵の提案に、間髪入れずシナが答えた。
「もちろん!二人がイイ感じになる方に、今持っている手持ちのお金全て賭けます。安藤先生は?」
「う~ん、非常に際どいところですが、私もシナ先生と同じ意見ですな。金額は……今月のお給料全部賭けましょう」
「ほ……う」
安藤の出した結論に伝蔵は顎を撫で、ほくそ笑んだ。
「学園長はどうですかな?」
「わしもふたりと同じじゃ!有り金すべてとヘムヘムの老後の積み立て金とへそくり全部賭けてもいい!」
「ヘムゥ!?」
一方的に賭け事に巻き込まれて、ヘムヘムは素っ頓狂な声を出して驚いた。
「残るは食堂のおばちゃんか。あれ、いない……?」
目を丸くする伝蔵に、シナが申し訳なさそうに言った。
「おばちゃんなら調理場に戻りました。今小豆を洗っています。その……今夜は赤飯だって張り切ってて……。昨晩の破瓜の痛みを労うためだって……」
露骨なメニューとぶっ飛んだ発言に、一同絶句する。
シナだけでなく、男性陣、そしてヘムヘムまでもがほんのりと顔を赤らめてしまった。
「やれやれ……」
答えが出そろったところで、伝蔵が一度ふぅとため息をつく。
次第に込み上げてくる笑いを抑えきれず、ついには吹き出してしまった。
「阿保くさぁ。みんな同じなら、賭けにもなりゃせんのう」