31.二人だけのワルツ
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結局、学園長の罰を受けることになった一年は組の面々は校庭へと戻っていった。
「全く、あいつらときたら……!」
呆れる半助におばちゃんが冷ややかに言う。
「そういう半助は仕事に戻らなくていいの?随分長いこと油を売ってるけど」
「へ?ああ、今の時間は特になにも……」
「それなら、これお願いできる?」
おばちゃんがそう言って差し出したのは包帯だった。
「これは……?」
「空ちゃんの足の包帯を取り替えてほしいの。私は食堂におやつ取りに戻るから」
「わ、私がやるんですか?」
まさか自分が…と面食らった半助に、おばちゃんがギロリと睨む。
「できないの?いつも伊作君が率先してやってくれるんだけど」
それを聞いて、半助の中にむくむくと嫉妬心が湧く。
伊作が空の脚に何度も触れた。
それが医療行為からくるものだとしても、半助には許せなかった。
「や、やります」
「よろしい。じゃあ、空ちゃん、包帯の取り替えはこの通り半助に頼んだからね」
おばちゃんが笑顔で目配せする。
気を遣われたのだと、空はわずかに頬を染めた。
「さぁて、ワシらもそろそろお暇しようかのう!お散歩の時間じゃ、ヘムヘム」
「ヘムゥ!ヘムヘムヘム!」
若い人同士でよろしくやってくれ。
そんな雰囲気を匂わせながら、おばちゃんも学園長たちも去って行った。
「……」
少しの間、室内は静まり返る。
このままでは気まずいと半助は自分のやるべきことを理解した。
「じゃ、じゃあ……包帯取るよ」
「は、はい。お願いします」
空の声が裏返っていたことに気づかないほど、半助は緊張していた。
半助は空の着物を少しはだけさせる。
怪我した方の脚を丁重に持ち上げ包帯を取ると、ほとんど日焼けのない白い肌が顔を覗かせた。
何とか平常心を保ちながら、新しい包帯を巻いていく。
「怪我の具合はどう?」
「凄い速さで良くなっています。万能草って効くんですね」
「ああ。知らない者はいないくらい、有名な薬だからな」
「この調子なら、あと三日以内には包帯取れて歩けるだろうって新野先生も仰ってくださいました」
「そうか」
ほどなくして半助は包帯を巻き終わる。
めくった着物の裾をさりげなく戻した。
「土井先生……ありがとうございます」
「どういたしまして。それより……」
半助は空をじっと睨む。
「もう隠し事はないだろうな?」
「は、はい……」
騒動後、無事学園に戻れた空は自分が経験してきたことを皆に共有していた。
不思議な夢のこと、悩んでいた体質のこと、どうして崖から落ちても助かったのか諸々。
おとぎ話みたいだと興奮を隠せない者や、信じられないと驚愕の表情で聞く者、反応はそれぞれだったが、否定するものは誰一人としていなかった。
「しかし、君があのドクタケの八方斎と接触するとはな……」
「顔は怖かったけど、感じのいいおじさんでした。それなのに、突然豹変して……」
「変なことは聞かれてないか?君の素性のこととか、忍術学園のこととか……」
これに空は首を振る。
「いえ、寧ろ私は聞き手に回ってました。とっても愚痴の多い方だったので。上司の木野小次郎竹高さんのワンマンぶりが酷いとか、部下のドクタケ忍者がおっちょこちょいだとか……あ!」
「!?どうした?何か気がかりなことでもあるのか?」
「私……八方斎さんの袴を掴んで崖から落ちたとき……褌姿を見てしまいました」
そう言って、空がポッと顔を赤らめた。
おっさんとはいえ、男性のあられもない姿に免疫のない空だった。
半助がガクッとずっこける。
「そんなどうでもいいもの、早く忘れてしまいなさい!」
「ははは……。それより、食堂のおばちゃん遅くないですか?おやつ持ってくるって言ってたけど」
「確かにそうだな……。あ!」
もしや、と半助が戸を開ける。
予想通り部屋の外にはお茶菓子一式を乗せた盆が置いてあった。
手紙も添えてある。
「手紙……私宛だ。どれどれ……」
半助へ
あなたの分もおやつを用意したから、空ちゃんと一緒に食べてから仕事に戻るように。
追伸
わかってるだろうけど、空ちゃんは怪我してる身。
『合体』したいのはやまやまだろうけど、怪我が治るまで我慢すること。
食堂のおばちゃんより
読み終えて、半助の顔から蒸気機関車のようにシュッシュ―と湯気が立つ。
その後ものすごい勢いで手紙をビリビリと引き裂いた。
(ええ~い、何なんだ!食堂のおばちゃんは!)
とはいえ、半助の狼狽ぶりはひどすぎる。
まるで、そんな気持ちがどこかにあると証明するような……?
とにかく、あらゆる手段で半助に逆セクハラするおばちゃんなのだった。
「土井先生、何て書いてあったんですか?」
「いや、何でもない、何でもない……。ちょっとした事務連絡だよ。それより、おばちゃんおやつ持ってきてたみたい。私の分もあるからここで一緒に食べていくよ」
「はい」
そんな二人を、学園長の庭の茂みから複数の人物が見ていた。
食堂のおばちゃん、学園長、ヘムヘムである。
「半助のやつ、あれしきのことで狼狽えるとは……。まだまだ修行が足りんのう」
「ヘムヘムゥ」
「その割には何かにかこつけて、ちょくちょく空ちゃんのところへ通うのよね。あの事件以来離れるのが心配みたいで」
「部屋に居ながら、半助の気配を頻繁に感じるのはそういうことじゃったか。う~ん、青春しとるのう!」
「早く空ちゃんに告白しちゃえばいいのに……見てる方がやきもきするわ」
おばちゃんが焦れた口調で言った。
一方、学園長は同じ男として半助の肩を持つようだ。
「ふぉっふぉ。男心というのはのう……思ったより繊細で複雑なんじゃ。まぁ、あの様子なら、そのうちくっつくじゃろう。それより食堂のおばちゃん、ワシらもおやつタイムと行こうかのう」
「ヘムゥ!」
「はいはい。食堂に用意してありますから。さぁ、行きましょ」
三人は振り返ることもなく、その場を後にした。
「全く、あいつらときたら……!」
呆れる半助におばちゃんが冷ややかに言う。
「そういう半助は仕事に戻らなくていいの?随分長いこと油を売ってるけど」
「へ?ああ、今の時間は特になにも……」
「それなら、これお願いできる?」
おばちゃんがそう言って差し出したのは包帯だった。
「これは……?」
「空ちゃんの足の包帯を取り替えてほしいの。私は食堂におやつ取りに戻るから」
「わ、私がやるんですか?」
まさか自分が…と面食らった半助に、おばちゃんがギロリと睨む。
「できないの?いつも伊作君が率先してやってくれるんだけど」
それを聞いて、半助の中にむくむくと嫉妬心が湧く。
伊作が空の脚に何度も触れた。
それが医療行為からくるものだとしても、半助には許せなかった。
「や、やります」
「よろしい。じゃあ、空ちゃん、包帯の取り替えはこの通り半助に頼んだからね」
おばちゃんが笑顔で目配せする。
気を遣われたのだと、空はわずかに頬を染めた。
「さぁて、ワシらもそろそろお暇しようかのう!お散歩の時間じゃ、ヘムヘム」
「ヘムゥ!ヘムヘムヘム!」
若い人同士でよろしくやってくれ。
そんな雰囲気を匂わせながら、おばちゃんも学園長たちも去って行った。
「……」
少しの間、室内は静まり返る。
このままでは気まずいと半助は自分のやるべきことを理解した。
「じゃ、じゃあ……包帯取るよ」
「は、はい。お願いします」
空の声が裏返っていたことに気づかないほど、半助は緊張していた。
半助は空の着物を少しはだけさせる。
怪我した方の脚を丁重に持ち上げ包帯を取ると、ほとんど日焼けのない白い肌が顔を覗かせた。
何とか平常心を保ちながら、新しい包帯を巻いていく。
「怪我の具合はどう?」
「凄い速さで良くなっています。万能草って効くんですね」
「ああ。知らない者はいないくらい、有名な薬だからな」
「この調子なら、あと三日以内には包帯取れて歩けるだろうって新野先生も仰ってくださいました」
「そうか」
ほどなくして半助は包帯を巻き終わる。
めくった着物の裾をさりげなく戻した。
「土井先生……ありがとうございます」
「どういたしまして。それより……」
半助は空をじっと睨む。
「もう隠し事はないだろうな?」
「は、はい……」
騒動後、無事学園に戻れた空は自分が経験してきたことを皆に共有していた。
不思議な夢のこと、悩んでいた体質のこと、どうして崖から落ちても助かったのか諸々。
おとぎ話みたいだと興奮を隠せない者や、信じられないと驚愕の表情で聞く者、反応はそれぞれだったが、否定するものは誰一人としていなかった。
「しかし、君があのドクタケの八方斎と接触するとはな……」
「顔は怖かったけど、感じのいいおじさんでした。それなのに、突然豹変して……」
「変なことは聞かれてないか?君の素性のこととか、忍術学園のこととか……」
これに空は首を振る。
「いえ、寧ろ私は聞き手に回ってました。とっても愚痴の多い方だったので。上司の木野小次郎竹高さんのワンマンぶりが酷いとか、部下のドクタケ忍者がおっちょこちょいだとか……あ!」
「!?どうした?何か気がかりなことでもあるのか?」
「私……八方斎さんの袴を掴んで崖から落ちたとき……褌姿を見てしまいました」
そう言って、空がポッと顔を赤らめた。
おっさんとはいえ、男性のあられもない姿に免疫のない空だった。
半助がガクッとずっこける。
「そんなどうでもいいもの、早く忘れてしまいなさい!」
「ははは……。それより、食堂のおばちゃん遅くないですか?おやつ持ってくるって言ってたけど」
「確かにそうだな……。あ!」
もしや、と半助が戸を開ける。
予想通り部屋の外にはお茶菓子一式を乗せた盆が置いてあった。
手紙も添えてある。
「手紙……私宛だ。どれどれ……」
半助へ
あなたの分もおやつを用意したから、空ちゃんと一緒に食べてから仕事に戻るように。
追伸
わかってるだろうけど、空ちゃんは怪我してる身。
『合体』したいのはやまやまだろうけど、怪我が治るまで我慢すること。
食堂のおばちゃんより
読み終えて、半助の顔から蒸気機関車のようにシュッシュ―と湯気が立つ。
その後ものすごい勢いで手紙をビリビリと引き裂いた。
(ええ~い、何なんだ!食堂のおばちゃんは!)
とはいえ、半助の狼狽ぶりはひどすぎる。
まるで、そんな気持ちがどこかにあると証明するような……?
とにかく、あらゆる手段で半助に逆セクハラするおばちゃんなのだった。
「土井先生、何て書いてあったんですか?」
「いや、何でもない、何でもない……。ちょっとした事務連絡だよ。それより、おばちゃんおやつ持ってきてたみたい。私の分もあるからここで一緒に食べていくよ」
「はい」
そんな二人を、学園長の庭の茂みから複数の人物が見ていた。
食堂のおばちゃん、学園長、ヘムヘムである。
「半助のやつ、あれしきのことで狼狽えるとは……。まだまだ修行が足りんのう」
「ヘムヘムゥ」
「その割には何かにかこつけて、ちょくちょく空ちゃんのところへ通うのよね。あの事件以来離れるのが心配みたいで」
「部屋に居ながら、半助の気配を頻繁に感じるのはそういうことじゃったか。う~ん、青春しとるのう!」
「早く空ちゃんに告白しちゃえばいいのに……見てる方がやきもきするわ」
おばちゃんが焦れた口調で言った。
一方、学園長は同じ男として半助の肩を持つようだ。
「ふぉっふぉ。男心というのはのう……思ったより繊細で複雑なんじゃ。まぁ、あの様子なら、そのうちくっつくじゃろう。それより食堂のおばちゃん、ワシらもおやつタイムと行こうかのう」
「ヘムゥ!」
「はいはい。食堂に用意してありますから。さぁ、行きましょ」
三人は振り返ることもなく、その場を後にした。
