31.二人だけのワルツ
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その日の晩。
ホー……ホー…と梟の鳴き声がかすかに聞こえる。
漆黒の空間に一つの影が浮かんでは消えて……を繰り返す。
半助だった。
(今日も問題なさそうだな……)
半助は学園長室の外で周辺の様子を窺っている。
夜の見回り当番で学園を巡回していた。
空がドクタケと接触を持ってしまった。
半助はこのことを非常に憂慮していた。
聞けば空は八方斎にスカウトされていたという。
もし彼女の命が助かったなんて知ったら、血相を変えて空を奪いに来るかもしれない。
それ故、半助並びに忍術学園の教職員たちの間で危機感は高まっている。
学園に侵入してくる不審な人物を一層警戒するようになった。
半助は学園長室をじっと見つめる。
かの人の眠っている部屋を――
(足の怪我もあと少しで治るかな……)
もっと自分がしっかりしていれば、空を危険な目にあわせることなどなかった。
忸怩 たる思いが半助を支配する。
だが、仙人山に行くこと自体は空が保健委員のみんなと行くと自ら決断したこと。
さらに言えば、崖から落ちたことは八方斎さえも予期してなかった偶然の事故。
半助にすべての過失があるわけではない。
にもかかわらず、半助は自分を責め続ける。
何があろうと空を守ると誓った以上、半助の中でその誓いを破ることは絶対に許されないのだ。
愛する人のためならば、愚直なまでの忠誠を貫く。
それが、半助という男だった。
半助はあたりをもう一度警戒する。
特に怪しい気配がないとわかると、ふぅと一息ついた。
(それにしても、きり丸のヤツ……余計なことをペラペラと)
昼間――きり丸が言いかけようとしたことは、自分の口から伝えたい言葉だった。
だから、慌てて二人に割って入り邪魔したのだ。
(あのとき……)
仙人山の森の洞窟で言いかけた言葉が脳裏によみがえる。
『空、私は……』
利吉に遮られて、肝心な部分を言いそびれてしまった。
だから、昨日部屋にふたりっきりになったとき、その言葉の続きを言おうと何度も喉元まで出かけた。
だが、空の無垢な瞳に見つめられると、緊張が先立ち結局できずじまいだった。
(情けない……追い込まれないと口に出せないなんて。きり丸が歯がゆく思うのも当然か……)
自分の不甲斐なさに、たまらず自己嫌悪になる。
だが、半助を悩ませるのはこれだけではなかった。
空を愛しているという純粋な感情以外に、もう一つの本能的な欲求が膨らんできている。
彼女を抱きたい、と。
昨日包帯をほどいて滑らかな脚を目にいれたとき、どれだけ心臓が激しく鼓動していたことか。
自分自身を卑しく思いながらも、着物の下の身体をつい想像してしまっていた。
罪悪感に駆られた半助はハァ…と大きい溜息をついた。
(いかんいかん。忍者の三禁を教えている身でこの体たらくはまずい……少し頭を冷やそう……)
自戒の念をこめて、怪我が治るまで半助は静かに見守ることにした。
ホー……ホー…と梟の鳴き声がかすかに聞こえる。
漆黒の空間に一つの影が浮かんでは消えて……を繰り返す。
半助だった。
(今日も問題なさそうだな……)
半助は学園長室の外で周辺の様子を窺っている。
夜の見回り当番で学園を巡回していた。
空がドクタケと接触を持ってしまった。
半助はこのことを非常に憂慮していた。
聞けば空は八方斎にスカウトされていたという。
もし彼女の命が助かったなんて知ったら、血相を変えて空を奪いに来るかもしれない。
それ故、半助並びに忍術学園の教職員たちの間で危機感は高まっている。
学園に侵入してくる不審な人物を一層警戒するようになった。
半助は学園長室をじっと見つめる。
かの人の眠っている部屋を――
(足の怪我もあと少しで治るかな……)
もっと自分がしっかりしていれば、空を危険な目にあわせることなどなかった。
だが、仙人山に行くこと自体は空が保健委員のみんなと行くと自ら決断したこと。
さらに言えば、崖から落ちたことは八方斎さえも予期してなかった偶然の事故。
半助にすべての過失があるわけではない。
にもかかわらず、半助は自分を責め続ける。
何があろうと空を守ると誓った以上、半助の中でその誓いを破ることは絶対に許されないのだ。
愛する人のためならば、愚直なまでの忠誠を貫く。
それが、半助という男だった。
半助はあたりをもう一度警戒する。
特に怪しい気配がないとわかると、ふぅと一息ついた。
(それにしても、きり丸のヤツ……余計なことをペラペラと)
昼間――きり丸が言いかけようとしたことは、自分の口から伝えたい言葉だった。
だから、慌てて二人に割って入り邪魔したのだ。
(あのとき……)
仙人山の森の洞窟で言いかけた言葉が脳裏によみがえる。
『空、私は……』
利吉に遮られて、肝心な部分を言いそびれてしまった。
だから、昨日部屋にふたりっきりになったとき、その言葉の続きを言おうと何度も喉元まで出かけた。
だが、空の無垢な瞳に見つめられると、緊張が先立ち結局できずじまいだった。
(情けない……追い込まれないと口に出せないなんて。きり丸が歯がゆく思うのも当然か……)
自分の不甲斐なさに、たまらず自己嫌悪になる。
だが、半助を悩ませるのはこれだけではなかった。
空を愛しているという純粋な感情以外に、もう一つの本能的な欲求が膨らんできている。
彼女を抱きたい、と。
昨日包帯をほどいて滑らかな脚を目にいれたとき、どれだけ心臓が激しく鼓動していたことか。
自分自身を卑しく思いながらも、着物の下の身体をつい想像してしまっていた。
罪悪感に駆られた半助はハァ…と大きい溜息をついた。
(いかんいかん。忍者の三禁を教えている身でこの体たらくはまずい……少し頭を冷やそう……)
自戒の念をこめて、怪我が治るまで半助は静かに見守ることにした。
