31.二人だけのワルツ
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半助は牧之介を捕らえて、家にいる間どんな悪さを働いていたのか具に白状させた。
聞けば、ニワトリの卵を勝手に取った以外にも夕飯時に人の家に押しかけてタダ飯を食わせてもらったり、洗濯物を強引に押し付けたり、他にも余罪があった。
「ま~き~の~す~け~!」
「そ、そんなに怒らなくていいじゃんかよぉ。俺とお前の仲なんだし」
「お前と懇意にした覚えはない!」
牧之介は半助にこってりお仕置きされた。
あのあと、空と半助は迷惑をかけたご近所さんに謝罪行脚する羽目になった。
そうこうするうちに、すっかり日が暮れてしまっていた。
ふたりは今、牧之介に荒らされた家を掃除している。
「はぁ……」
床を拭きながら、空が悲しげに溜息をついた。
「どうした、空?疲れた?」
「いえ……私と牧之介さんってそんなに似てますか?」
「いっ!?」
「隣のおばちゃんも、大家さんも信じ切っていたのがショックで……」
よくよく聞けば全員一度は疑ったが、牧之介が「女は太ったら元の顔を保てなくなる」と押し通したのが真相である。
だが、今の空には何の慰めにもならなかった。
いかなる理由であれ、年頃の女の子がへちゃむくれの牧之介と間違われたら、傷つかないわけがない。
(そうだよな。牧之介と間違われたら、悲しいよなぁ……)
半助は空の顔と牧之介の顔を交互に思い浮かべる。
片や、最愛の人。片や、どうでもいい人。
見れば見るほどちっとも似ていない。
「……」
ちらっと空を見れば、しょんぼりと肩を落としている。
大切な人にこんなに悲しい顔をさせるなんて。
空への同情はいつしか牧之介への怒りへと変わった。
その感情の赴くまま、拳を振り上げ半助は叫んだ。
「空、よく聞いてくれ!君と牧之介はちっとも似てない!比較対象がそもそもおかしい!月とスッポン以前の問題だ!君の方が断っ然、可愛い!その辺の女なんか目じゃないくらい可愛い!容姿だけじゃない……性格だって最っ高に可愛い!」
言い終えて、半助はハッとする。
自分がとんでもなく凄い発言をしてしまったことに。
案の定というべきか。
目の前の空はこれ以上ないくらい顔を赤くして俯いていた。
「あ、ありがとうございます。でも……、そこまで、励ましてもらわなくても大丈夫ですけど……」
「……」
シーン……
あたりに広がる静寂が何とも気まずい。
お互いどう反応していいかわからず真っ赤になって言葉を探している。
そんな中、半助はある視線に気づく。
家の入口に、ニヤニヤ顔の隣のおばちゃんと大家が立っていたのだ。
「あらぁ、半助!続けていいのよ!」
「そうじゃぞ、半助。我々に遠慮せず、二人で甘い言葉を交わし合っても全然構わんぞ」
「だぁぁぁぁぁぁぁっ!隣のおばちゃん!大家さん!」
見物人と化した二人に、半助がたまらず叫んだ。
「居るなら居るって声かけてください!とにかく、ウチに何か御用ですか?」
「御用もなにも……せっかく二人帰ってきたんだし、私の家で夕飯一緒に食べない?ニセ嫁さんの件で疲れたでしょう」
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
キュルキュルキュル
ここで、半助と空の腹の虫が同時になった。
二人は顔を見合わせ、はは…と照れくさそうに笑った。
「じゃあ、せっかくですから……すみません、お言葉に甘えさせていただきます」
そう答えた半助に、おばちゃんは笑顔で返した。
隣のおばちゃんの家にお邪魔した空と半助は夕飯をご馳走になっていた。
切欠が何であれ、隣のおばちゃんと大家は半助たちが帰って来て大いに喜んでいた。
「半助、空ちゃん、今日は泊まっていくんでしょ?」
「へっ?」
二人はどうしようかと顔を見合わせる。
用が済んだので、もう町にとどまる必要はないからだ。
「だって、もう暗いじゃない?空ちゃんに夜道を歩かすのは心配だし、それにせっかく帰ってきたのに……」
「そうじゃ、そうじゃ。みんながいない町はやっぱり侘しくてのう……」
隣のおばちゃんも大家も二人が帰るのを名残惜しそうにしている。
半助たちが長期休みで帰ってくるたびにおばちゃんたちが何かと構うのは嬉しさの表れだ。
再会できた喜びにもう少し浸りたい。
そんな思いを感じ取ったのか、半助は二人の気持ちに応えることにした。
「わかりました。今晩は一泊して、明日の朝職場に戻ります」
「良かった!」
隣のおばちゃんが顔をほころばせる。
「さぁ、どんどん食べて!これ私が作った芋の煮っころがしよ」
「おいしい!やっぱり、おばちゃんって料理上手ですよね。ねぇ、半助さん」
「ああ。食堂のおばちゃんにも引けを取らないよ」
「そういえば、半助……きり丸は元気にしているのか?」
「ええ。もうすぐ春休みですから、すぐに会えますよ」
四人はその後もしばし話に花を咲かせていた。
聞けば、ニワトリの卵を勝手に取った以外にも夕飯時に人の家に押しかけてタダ飯を食わせてもらったり、洗濯物を強引に押し付けたり、他にも余罪があった。
「ま~き~の~す~け~!」
「そ、そんなに怒らなくていいじゃんかよぉ。俺とお前の仲なんだし」
「お前と懇意にした覚えはない!」
牧之介は半助にこってりお仕置きされた。
あのあと、空と半助は迷惑をかけたご近所さんに謝罪行脚する羽目になった。
そうこうするうちに、すっかり日が暮れてしまっていた。
ふたりは今、牧之介に荒らされた家を掃除している。
「はぁ……」
床を拭きながら、空が悲しげに溜息をついた。
「どうした、空?疲れた?」
「いえ……私と牧之介さんってそんなに似てますか?」
「いっ!?」
「隣のおばちゃんも、大家さんも信じ切っていたのがショックで……」
よくよく聞けば全員一度は疑ったが、牧之介が「女は太ったら元の顔を保てなくなる」と押し通したのが真相である。
だが、今の空には何の慰めにもならなかった。
いかなる理由であれ、年頃の女の子がへちゃむくれの牧之介と間違われたら、傷つかないわけがない。
(そうだよな。牧之介と間違われたら、悲しいよなぁ……)
半助は空の顔と牧之介の顔を交互に思い浮かべる。
片や、最愛の人。片や、どうでもいい人。
見れば見るほどちっとも似ていない。
「……」
ちらっと空を見れば、しょんぼりと肩を落としている。
大切な人にこんなに悲しい顔をさせるなんて。
空への同情はいつしか牧之介への怒りへと変わった。
その感情の赴くまま、拳を振り上げ半助は叫んだ。
「空、よく聞いてくれ!君と牧之介はちっとも似てない!比較対象がそもそもおかしい!月とスッポン以前の問題だ!君の方が断っ然、可愛い!その辺の女なんか目じゃないくらい可愛い!容姿だけじゃない……性格だって最っ高に可愛い!」
言い終えて、半助はハッとする。
自分がとんでもなく凄い発言をしてしまったことに。
案の定というべきか。
目の前の空はこれ以上ないくらい顔を赤くして俯いていた。
「あ、ありがとうございます。でも……、そこまで、励ましてもらわなくても大丈夫ですけど……」
「……」
シーン……
あたりに広がる静寂が何とも気まずい。
お互いどう反応していいかわからず真っ赤になって言葉を探している。
そんな中、半助はある視線に気づく。
家の入口に、ニヤニヤ顔の隣のおばちゃんと大家が立っていたのだ。
「あらぁ、半助!続けていいのよ!」
「そうじゃぞ、半助。我々に遠慮せず、二人で甘い言葉を交わし合っても全然構わんぞ」
「だぁぁぁぁぁぁぁっ!隣のおばちゃん!大家さん!」
見物人と化した二人に、半助がたまらず叫んだ。
「居るなら居るって声かけてください!とにかく、ウチに何か御用ですか?」
「御用もなにも……せっかく二人帰ってきたんだし、私の家で夕飯一緒に食べない?ニセ嫁さんの件で疲れたでしょう」
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ
キュルキュルキュル
ここで、半助と空の腹の虫が同時になった。
二人は顔を見合わせ、はは…と照れくさそうに笑った。
「じゃあ、せっかくですから……すみません、お言葉に甘えさせていただきます」
そう答えた半助に、おばちゃんは笑顔で返した。
隣のおばちゃんの家にお邪魔した空と半助は夕飯をご馳走になっていた。
切欠が何であれ、隣のおばちゃんと大家は半助たちが帰って来て大いに喜んでいた。
「半助、空ちゃん、今日は泊まっていくんでしょ?」
「へっ?」
二人はどうしようかと顔を見合わせる。
用が済んだので、もう町にとどまる必要はないからだ。
「だって、もう暗いじゃない?空ちゃんに夜道を歩かすのは心配だし、それにせっかく帰ってきたのに……」
「そうじゃ、そうじゃ。みんながいない町はやっぱり侘しくてのう……」
隣のおばちゃんも大家も二人が帰るのを名残惜しそうにしている。
半助たちが長期休みで帰ってくるたびにおばちゃんたちが何かと構うのは嬉しさの表れだ。
再会できた喜びにもう少し浸りたい。
そんな思いを感じ取ったのか、半助は二人の気持ちに応えることにした。
「わかりました。今晩は一泊して、明日の朝職場に戻ります」
「良かった!」
隣のおばちゃんが顔をほころばせる。
「さぁ、どんどん食べて!これ私が作った芋の煮っころがしよ」
「おいしい!やっぱり、おばちゃんって料理上手ですよね。ねぇ、半助さん」
「ああ。食堂のおばちゃんにも引けを取らないよ」
「そういえば、半助……きり丸は元気にしているのか?」
「ええ。もうすぐ春休みですから、すぐに会えますよ」
四人はその後もしばし話に花を咲かせていた。
