31.二人だけのワルツ
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それからさらに三日が過ぎ、空は完全復帰を果たした。
「空ちゃん、おはよう。ようやく二人で仕事できるわね」
「はい!ご迷惑おかけしました」
食堂では、食堂のおばちゃんが温かく迎え入れる。
さらに、
「舞野さん!色々あって大変でしたね。無事、我がチームに戻ってきたことを嬉しく思います!」
「空さん、やっと一緒にお仕事できますね!僕とっても寂しくて心細くて……!」
「ぐ、ぐるじいぃぃっ……また布団の上に逆戻りかも……」
吉野と小松田にこれでもかっていうくらい手厚くもてなされたという。
(無事仕事に戻れてよかった。でも……)
空には困ったことがあった。
いざ仕事に戻って見れば、春休み前ということで教職員たちは繁忙期の真っただ中。
中でも半助は多忙を極めている。
あの三人組の補習も兼ねているのだから。
それ故、空は半助に想いを打ち明ける機会を完全に逸していた。
(どうしよう……土井先生いつも夜遅くまで仕事しているし……全然話しかける隙がない……)
そんな懸念を抱いた日の翌日のこと。
珍しい来客があった。
乱太郎の母だ。
「小松田さん、こんにちは」
「あ、乱太郎君のお母さん!」
小松田が取次ぎ、乱太郎の母は一年は組の職員室、即ち伝蔵と半助の部屋に通された。
伝蔵はうーんと首を傾げて、乱太郎の母の話を聞いている。
聞けば聞くほど、辻褄の合わない内容に困惑している。
そこに授業が終わった半助がやってきた。
「乱太郎のお母さん!」
「土井先生!」
「これ、大変なことになっとるぞ」
伝蔵の言葉のあと、乱太郎の母は三つ指立てて半助に頭を下げた。
「土井先生、おめでとうございます」
「は?何もめでたいことはないですが」
「何言ってるんです!空ちゃんをお嫁さんにもらっておいて」
「はい!?」
半助は一瞬目がテンになった後、忽ち真っ赤になる。
確かに実現すれば、その嬉しさは天にも昇るだろう。
だが、身に覚えのない話にやがて怪訝さの方が上回った。
「乱太郎のお母さん、一体どういうことですか!?」
半助が詰め寄ると、乱太郎の母は詳細を語り出した。
その話によれば、乱太郎の母が親戚の家の帰りに町に寄り、ついでに半助の家を訪ねようとした。
そしたら、何とその家に空と名乗る半助の妻がいるということを通りがかりのご近所さんから聞いた。
空は忙しそうに掃除をしていたため、乱太郎の母は声はかけることを諦めたそうな。
伝蔵が申し訳なさそうに口を挟んだ。
「あのう、乱太郎のお母さん。空君はずっとこの学園にいるんですよ……」
「そうですよ!それに怪我をして、つい最近まで学園長室に籠りっきりでした!」
半助も伝蔵に続いた。
「ええっ!そうなんですか!?でも、確かに空ちゃんだったし……」
「ほんっっっとうにその女の人、空君だったんですか?」
「そういえば……格子から後姿だけを見たけど、私のうちに遊びに来たときよりも随分ふくよかになっていたわねぇ。あと性格もなんだか野性的になってるみたいで……」
「ふくよか?野性的?」
「隣のおばちゃんに聞いたんだけど、隣の家のニワトリの卵を勝手に取るんですって」
「あの空君がそんなことするとは思えん!うーむ、ますます怪しい……」
ここで噂の当事者が入ってきた。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
「空君(ちゃん)!」
三人の声が重なる。
空は真っ先に半助を目に入れてドキッとしたが、普段いない人物に喜びをあらわにした。
「乱太郎君のお母さん!お久しぶりです!」
「空ちゃんが二人いる……どういうこと?」
「えっ?」
空は目をパチクリとさせる。
そんな空を乱太郎の母はしげしげと見つめていた。
「でも、やっぱりこっちが本物の空ちゃんだわ!若い頃の私にそっくりだもの!容姿といい、性格といい……!」
「……」
思わず空、半助、伝蔵の三人はシーンとなる。
なぜか中年女性に親近感を持たれる空だった。
「ここにいるのが本物の空ちゃんなら……じゃあ、私が見たのは一体誰……?」
「あの、一体全体どういうことですか?」
空一人だけチンプンカンプンだ。
対照的に、半助の怒りのボルテージがどんどん上がっていく。
それもそのはず。
全く知らない誰かが、空に成りすまし、ご近所に迷惑をかけているのだから。
(許せん!)
その怒りはとうとう頂点に達した。
「ええーい、一体どこのどいつだ!私の家で勝手なことをする奴は。ニセ嫁め、この手でとっちめてやる!」
ありったけの怒声を出して、空の手を取った。
「行くぞ、空君!君にとって、もう無関係な話ではない!」
「えっ!?ああ、ちょっと……!」
こうして、半助と空は急遽町へ行くことになるのである。
「空ちゃん、おはよう。ようやく二人で仕事できるわね」
「はい!ご迷惑おかけしました」
食堂では、食堂のおばちゃんが温かく迎え入れる。
さらに、
「舞野さん!色々あって大変でしたね。無事、我がチームに戻ってきたことを嬉しく思います!」
「空さん、やっと一緒にお仕事できますね!僕とっても寂しくて心細くて……!」
「ぐ、ぐるじいぃぃっ……また布団の上に逆戻りかも……」
吉野と小松田にこれでもかっていうくらい手厚くもてなされたという。
(無事仕事に戻れてよかった。でも……)
空には困ったことがあった。
いざ仕事に戻って見れば、春休み前ということで教職員たちは繁忙期の真っただ中。
中でも半助は多忙を極めている。
あの三人組の補習も兼ねているのだから。
それ故、空は半助に想いを打ち明ける機会を完全に逸していた。
(どうしよう……土井先生いつも夜遅くまで仕事しているし……全然話しかける隙がない……)
そんな懸念を抱いた日の翌日のこと。
珍しい来客があった。
乱太郎の母だ。
「小松田さん、こんにちは」
「あ、乱太郎君のお母さん!」
小松田が取次ぎ、乱太郎の母は一年は組の職員室、即ち伝蔵と半助の部屋に通された。
伝蔵はうーんと首を傾げて、乱太郎の母の話を聞いている。
聞けば聞くほど、辻褄の合わない内容に困惑している。
そこに授業が終わった半助がやってきた。
「乱太郎のお母さん!」
「土井先生!」
「これ、大変なことになっとるぞ」
伝蔵の言葉のあと、乱太郎の母は三つ指立てて半助に頭を下げた。
「土井先生、おめでとうございます」
「は?何もめでたいことはないですが」
「何言ってるんです!空ちゃんをお嫁さんにもらっておいて」
「はい!?」
半助は一瞬目がテンになった後、忽ち真っ赤になる。
確かに実現すれば、その嬉しさは天にも昇るだろう。
だが、身に覚えのない話にやがて怪訝さの方が上回った。
「乱太郎のお母さん、一体どういうことですか!?」
半助が詰め寄ると、乱太郎の母は詳細を語り出した。
その話によれば、乱太郎の母が親戚の家の帰りに町に寄り、ついでに半助の家を訪ねようとした。
そしたら、何とその家に空と名乗る半助の妻がいるということを通りがかりのご近所さんから聞いた。
空は忙しそうに掃除をしていたため、乱太郎の母は声はかけることを諦めたそうな。
伝蔵が申し訳なさそうに口を挟んだ。
「あのう、乱太郎のお母さん。空君はずっとこの学園にいるんですよ……」
「そうですよ!それに怪我をして、つい最近まで学園長室に籠りっきりでした!」
半助も伝蔵に続いた。
「ええっ!そうなんですか!?でも、確かに空ちゃんだったし……」
「ほんっっっとうにその女の人、空君だったんですか?」
「そういえば……格子から後姿だけを見たけど、私のうちに遊びに来たときよりも随分ふくよかになっていたわねぇ。あと性格もなんだか野性的になってるみたいで……」
「ふくよか?野性的?」
「隣のおばちゃんに聞いたんだけど、隣の家のニワトリの卵を勝手に取るんですって」
「あの空君がそんなことするとは思えん!うーむ、ますます怪しい……」
ここで噂の当事者が入ってきた。
「失礼します。お茶をお持ちしました」
「空君(ちゃん)!」
三人の声が重なる。
空は真っ先に半助を目に入れてドキッとしたが、普段いない人物に喜びをあらわにした。
「乱太郎君のお母さん!お久しぶりです!」
「空ちゃんが二人いる……どういうこと?」
「えっ?」
空は目をパチクリとさせる。
そんな空を乱太郎の母はしげしげと見つめていた。
「でも、やっぱりこっちが本物の空ちゃんだわ!若い頃の私にそっくりだもの!容姿といい、性格といい……!」
「……」
思わず空、半助、伝蔵の三人はシーンとなる。
なぜか中年女性に親近感を持たれる空だった。
「ここにいるのが本物の空ちゃんなら……じゃあ、私が見たのは一体誰……?」
「あの、一体全体どういうことですか?」
空一人だけチンプンカンプンだ。
対照的に、半助の怒りのボルテージがどんどん上がっていく。
それもそのはず。
全く知らない誰かが、空に成りすまし、ご近所に迷惑をかけているのだから。
(許せん!)
その怒りはとうとう頂点に達した。
「ええーい、一体どこのどいつだ!私の家で勝手なことをする奴は。ニセ嫁め、この手でとっちめてやる!」
ありったけの怒声を出して、空の手を取った。
「行くぞ、空君!君にとって、もう無関係な話ではない!」
「えっ!?ああ、ちょっと……!」
こうして、半助と空は急遽町へ行くことになるのである。
