27.Crazy Rendezvous (Part 2)

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半助が助けた子どもの家庭は米問屋を営んでおり、とても裕福だった。
一人息子を助けてくれたお礼にと、一行は家に案内され、ご馳走を振舞われていた。

机に並んだ豪華な食事にがっつく牧之介に、世間話をして子の両親の相手をせざるを得ない半助。

は北石と縁側に座って雑談していた。
ふたりはすっかり打ち解けていたのだ。

「今日はほんとにごめんね、さん。私、邪魔しちゃって」
「ううん、私の方こそ迷惑かけてごめんなさい」
「でも……フフフ」

思い出し笑いする北石をは不思議そうに見た。

「どうしたんですか?」
「んー、さんがいなくなったって知った時の土井先生の顔、見ものだったなぁ……!」
「……」
「不良たちがいるって噂をうどん屋の女将から聞いてたの。だから、そいつらに捕まってたらどうしよう、て相当焦ってたよ!」

言い終わった北石がの様子がおかしいと気づく。
頬を染め、嬉しさを必死で噛み殺しているような表情をしていた。

(てっきり土井先生の方が入れ込んでいるかと思ったけど……。さんも土井先生にゾッコンじゃない!)
(ふたりがくっつくのは時間の問題ね!)

「今度、忍術学園に遊びに行くのが楽しみだな!フフフッ」

北石が意味ありげに微笑んだ。

***

澄んだ空気が少しずつ赤みを帯び、太陽が位置を下げ始めてきた頃――

ガラガラガラガラ……

忍術学園までの帰路、荷車の音があたりに響く。
町で北石と牧之介と別れ、半助とは二人で荷車を引いていた。

余程子どもを救ってくれたことに感謝しているのか、両親たちはお礼として荷車いっぱいに米俵を積んでくれたのだった。
もちろん、最初は受取りを断った半助だったが、どうしてもと頭を下げられ、無下にするわけにもいかなかった。

「土井先生……。なんか、すごいことになっちゃいましたね」
「う~ん、なんでこんなことに……。まあ、きり丸が見たら泣いて喜ぶだろうけど。だけど、顔も知れ渡っちゃたし、しばらくあの町には行けないなぁ」
「人の噂も七十五日ですよ」

やれやれ…と疲れた表情をする半助を励ますは、昼間の事件のことを思い出して微笑んでいた。

悪人たちに怯まず、子どもを助けるためにたった一人で立ち向かった半助を見て、彼の良さを再認識していたのだ。

強く、凛々しく、聡明で、優しい――

半助のことをもっと知りたい。
半助とずっと一緒にいたい。

の中で、半助への気持ちが最高潮に達したときだった。

「土井先生!」
「ん?何?」

ガラガラガラガラ……

思わず叫んでしまっただったが、よくよく考えれば今の状況にムードのかけらもない。

(流石に荷車引きながらはちょっと、ね……)
(日を改めて、土井先生に自分の気持ちを伝えよう……)

ははは…と苦笑するだが、呼びかけられた半助は放置されたままだ。

君、どうしたの?」
「あ、えっと……そういや、土井先生って結構無茶するんですね!いきなり不良たちの親玉をやっつけようとするなんて……」
「ああ。あれはね、ちゃんと狙いがあってそうしたんだよ」
「え?」

キョトンとするに、半助は続きを語っていく。

擒賊擒王きんぞくきんおう
「きんぞくきんおう?何ですか、それ?」
「明(中国)の兵法で、兵法三十六計の一つだよ」
「兵法三十六計……」

人ヲントセバ ズ馬ヲ射ヨ 
賊ヲトラエントセバ 先ズ王ヲトラエヨ

半助が兵法をそらんじるのを聞いても、にはさっぱり意味がわからなかった。

「土井先生、どういう意味があるんですか?」
「擒賊擒王…それは敵の主力を先に叩くことで、相手を弱体化させる、そういう意味があるんだ」
「へえ……」
「親玉を倒した後の、残りの不良たちがどうなったか見てただろ?主力を失うと、残りの敵は戦意を削がれ、組織的に動けなくなるんだ」
「……」
「全員と戦うより効率いいし、その方がこちらも最小限の労力で済むからな」
「……」

あの行動にはそういう意図があったのかと、は感服する。
そして、胸がキュンキュンするのが止まらなかった。

半助の知的な部分に魅了され、ますます惚れ直していたのだ。

(兵法駆使してあっさり敵をやっつけて、土井先生って……頭が切れて……もう、サイコー!)

言葉を発さなくなったを、半助は心配そうに覗き込む。

「すまない。兵法の話となるとつい口数が多くなって……」
「凄いです!」
「えっ!?」
「土井先生、凄いです!私感動しちゃって。あの、私も兵法についてもっと知りたい!」

から強い憧れの眼差しを向けられて、半助も満更ではないようだ。

「ほんと?こんな話で良ければ、今度時間が空いた時に教えてあげるよ」
「いいんですか!?」
「もちろん!」

そんな盛り上がる二人に向かって、後ろの荷台からある人物が怒鳴り散らした。

「おい、うるせえじゃねえか!ったく人がせっかく昼寝してるのによ!」

別れたフリをして、二人にバレないようにこっそり米俵の中に身を隠してついてきた牧之介だった。

「なんでお前がここにいるんだ!?それに、うるさいのはお前だ!早く荷台から降りろ!」

会話に水を差され、頭にきた半助は懐からチョークを出して牧之介に向かてバンバン投げる。

「いて!いててて!俺とお前の仲じゃないか!もうちょっと、優しくしてよ~~!」
「はぁ。お前に構っていると、頭が痛い!」

牧之介に付き合えば無駄な体力を消耗するだけだと、半助は金輪際無視を決め込んだ。

(ったく、土井半助のやつ、少しは手加減してくれよ。それにしても……)

積み上げられた米俵のてっぺんに乗っかった牧之介はをじーっと見た。
今半助と話してるときの、あまりにデレデレしている表情が気になったのだ。

(俺と会ったときは捨て猫のような暗い雰囲気出してたのによ……)

の露骨すぎる態度に、色恋沙汰に興味無い牧之介でもピンときた。

(あー!の言ってた好きなやつって、もしかして土井半助か!?)
(悩みが解決した途端、締まりのない顔しやがって……)

牧之介はどかっと米俵の上に寝そべった。

「かぁー!女ってめんどくせぇー!」

もちろん、大声で叫んだ牧之介に半助のチョークが無言で飛んでくるのはお約束。
このあと忍術学園に戻ったと半助は、牧之介を連れてきたことで戸部から大いに迷惑がられた。



そんな牧之介とがふたたび出会うことになるのは、もう少し先のお話。
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