27.Crazy Rendezvous (Part 2)
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空はとぼとぼと町の大通りを歩いていた。
厠を出た後、お店の人に無理言って勝手口から抜け出したのだ。
一人になりたかった。
「……」
(何話しているかわかんなかったな……エノキ城のお殿様に嫡男が世襲したとか、ドクササコ城が戦の準備をしてる気配があるとか……)
(旅芸人の子たちの事情だって、全然知らなかった……)
(私……この世界のこと、本当に何にも知らない……)
ふたりの会話を聞いて強烈に感じた疎外感。
自分がこの世界の人間ではないとまざまざと見せつけられた。
空は不思議に思っていた。
今でも元の世界に郷愁を誘われる。
それなのに、話題についていけなかったことで劣等感に似た悔しさを感じていたことに。
通り歩く中、ふと周りに目を向ける。
家族連れや仲睦まじいカップルの姿が多い。
いつしか空は憧憬の目で人々を見つめていた。
――うらやましい
彼らは生まれてからずっとここで人生を送って、幸せを築き上げている。
自分には18年間の空白がこの世界にあるというのに――
そう感じるようになってきたのは、忍術学園での生活が自分の一部となりつつあることが影響している。
知らないうちに、きり丸を始め乱太郎やしんべえ、は組のみんなや食堂のおばちゃん、好きな人たちとこれからも一緒に居たいと願うようになっていたのだ。
好きな人――中でも半助と。
裏裏山での一件から、空は半助への想いをはっきりと自覚している。
好きと分かった瞬間から想いは募り、心の中は半助の存在が大きく占めているのだ。
そんな憧れの半助と今日一緒に町へ出かけて、手を繋いで、贈り物までもらった。
土井先生は自分のことを恋愛対象として見てくれている――とつい期待の目で見てしまう。
もう恋焦がれるだけの気持ちでは満足できなくなってきている。
半助との間にある曖昧な関係をはっきりなものへと変えてみたい。
そこまで考えた時、シナの言葉が頭に思い浮かんだ。
『この勢いで土井先生に告白っていうのもアリじゃない?』
この言葉を聞いてから、空の中にはある不安が生じていたのだ。
もし半助と想いが通じて、二人で生きていく。
そうなったときに未来から来た自分という存在は、やがて半助にとって重荷になるかもしれない――と。
(こっちに来てから、あの変な体質のせいで料理もできないし……)
(楽器の話も……無駄に気を遣わせちゃったかもしれない……)
生きてきた世界が違う。
それは必ず不和やすれ違いを生じさせ、二人の障害になってしまう。
その後ろ向きな考えは、空にある結論を抱かせるに至る。
半助に迷惑をかけてしまうなら、このほのかな恋は実らせずにそっとしておいたほうがいいのではないか、と。
しかし、人間の胸中はなかなか複雑にできているもので。
半助との関係を発展させるのに躊躇う一方で、今日会った北石に感じたのは紛れもない、強烈な嫉妬だった。
(土井先生が他の女の人と話すだけで、こんなに苦しい思いをするなんて……)
半助と北石の話しぶりは遠慮のない自然体なもので、それが無性に羨ましかった。
そして、北石と楽しそうに話す半助に腹立たしさを感じずにはいられなかった。
「はぁ……」
空の口からため息がこぼれる。
(そろそろ戻らないと……)
半助と北石に顔を合わせづらいが、このままだと二人は心配するだろう。
うどん屋の方へ戻ろう。
そう考えたときだった。
「!」
空は驚愕する。
何と、町の往来でひとりの男性が倒れていたのだ。
急いで、助けないと――
堪らず駆け寄り、男性をゆすり起こした。
「大丈夫ですか!?」
「腹……へった……飯……」
「へっ!?」
空は素っ頓狂な声を出して驚いた。
厠を出た後、お店の人に無理言って勝手口から抜け出したのだ。
一人になりたかった。
「……」
(何話しているかわかんなかったな……エノキ城のお殿様に嫡男が世襲したとか、ドクササコ城が戦の準備をしてる気配があるとか……)
(旅芸人の子たちの事情だって、全然知らなかった……)
(私……この世界のこと、本当に何にも知らない……)
ふたりの会話を聞いて強烈に感じた疎外感。
自分がこの世界の人間ではないとまざまざと見せつけられた。
空は不思議に思っていた。
今でも元の世界に郷愁を誘われる。
それなのに、話題についていけなかったことで劣等感に似た悔しさを感じていたことに。
通り歩く中、ふと周りに目を向ける。
家族連れや仲睦まじいカップルの姿が多い。
いつしか空は憧憬の目で人々を見つめていた。
――うらやましい
彼らは生まれてからずっとここで人生を送って、幸せを築き上げている。
自分には18年間の空白がこの世界にあるというのに――
そう感じるようになってきたのは、忍術学園での生活が自分の一部となりつつあることが影響している。
知らないうちに、きり丸を始め乱太郎やしんべえ、は組のみんなや食堂のおばちゃん、好きな人たちとこれからも一緒に居たいと願うようになっていたのだ。
好きな人――中でも半助と。
裏裏山での一件から、空は半助への想いをはっきりと自覚している。
好きと分かった瞬間から想いは募り、心の中は半助の存在が大きく占めているのだ。
そんな憧れの半助と今日一緒に町へ出かけて、手を繋いで、贈り物までもらった。
土井先生は自分のことを恋愛対象として見てくれている――とつい期待の目で見てしまう。
もう恋焦がれるだけの気持ちでは満足できなくなってきている。
半助との間にある曖昧な関係をはっきりなものへと変えてみたい。
そこまで考えた時、シナの言葉が頭に思い浮かんだ。
『この勢いで土井先生に告白っていうのもアリじゃない?』
この言葉を聞いてから、空の中にはある不安が生じていたのだ。
もし半助と想いが通じて、二人で生きていく。
そうなったときに未来から来た自分という存在は、やがて半助にとって重荷になるかもしれない――と。
(こっちに来てから、あの変な体質のせいで料理もできないし……)
(楽器の話も……無駄に気を遣わせちゃったかもしれない……)
生きてきた世界が違う。
それは必ず不和やすれ違いを生じさせ、二人の障害になってしまう。
その後ろ向きな考えは、空にある結論を抱かせるに至る。
半助に迷惑をかけてしまうなら、このほのかな恋は実らせずにそっとしておいたほうがいいのではないか、と。
しかし、人間の胸中はなかなか複雑にできているもので。
半助との関係を発展させるのに躊躇う一方で、今日会った北石に感じたのは紛れもない、強烈な嫉妬だった。
(土井先生が他の女の人と話すだけで、こんなに苦しい思いをするなんて……)
半助と北石の話しぶりは遠慮のない自然体なもので、それが無性に羨ましかった。
そして、北石と楽しそうに話す半助に腹立たしさを感じずにはいられなかった。
「はぁ……」
空の口からため息がこぼれる。
(そろそろ戻らないと……)
半助と北石に顔を合わせづらいが、このままだと二人は心配するだろう。
うどん屋の方へ戻ろう。
そう考えたときだった。
「!」
空は驚愕する。
何と、町の往来でひとりの男性が倒れていたのだ。
急いで、助けないと――
堪らず駆け寄り、男性をゆすり起こした。
「大丈夫ですか!?」
「腹……へった……飯……」
「へっ!?」
空は素っ頓狂な声を出して驚いた。