22.約束

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「私も話があるんだ。尊奈門君との決闘のことを謝りたくて……」
「決闘……?」
「尊奈門君と決闘してるとき、私のことを心配して慌てて駆けつけてくれたって聞いて。なのに、長時間くどくどと説教してしまって」
「そんなこと、全然気にしてません!悪いのは私だし」
「嬉しかった」
「えっ?」

意外な言葉が飛び出てきて、は驚く。
半助は少し寂しそうに微笑んで、話を続けた。

「周りの皆からすれば、私が勝つのはもう当たり前になってしまっていて段々心配しなくなるんだ。忍びの仕事もそう……任務に行っても成功させるのが当然だってね。私くらいにそこそこのベテランになると」
「……」
「だから、山田先生から君の様子を聞いた時は……すごく嬉しかった」

半助に感謝されるだが、どこか違和感を感じていた。
自分の行動に、そもそもお礼なんて言われる筋合いはないのだ、と。

「そんなの当たり前ですよ。目の前で土井先生に手裏剣バンバン投げつけられてるの見たら、ヒヤッとします。いくら土井先生が強くても、その光景にはとても慣れそうにないです」

さらに、は不愉快な感情を丸出しにして付け加えた。

「できることなら、尊奈門さんの顔、もう見たくないです」
「全くだ。ほんとにしつこいんだよ、彼」

シリアスな雰囲気の中、尊奈門を通じて二人の気持ちがピタリと揃った。
それが可笑しく、目を見合わせてハハッと笑う。
半助は再び話を戻した。

「それから、その決闘の件で恐怖を煽ってしまったこと……すまなかった。あの日から君、ずっと暗くて。今日話を聞いたらやっぱりそうだったし」
「あ……」

わずかには動揺する。

(そうだった、私さっきまでこの世界で生きるってことがどうしようもなく怖くてしょうがなかったんだ……)

不思議だった。
半助と腹を割って話すうちに、は自分の中にあった漠然とした不安や恐怖を前ほど感じなくなっていた。

半助は深刻な表情でさらに続ける。

「この時代は残念ながら、戦や争いは普通にある。野盗や賊の輩も多い……動乱の世だ。そればかりは私の力ではどうにもならない」
「そんな……土井先生が負い目を感じないでください!」
「……」
「さっきまではひたすら怖かったです……でも、土井先生と話したら、何だか心が軽くなって」
君……」

は半助に応えたくて必死に言葉を紡いでいく。

「正直、不安がないと言えばうそになります。でも、それはこの先もうまく向き合っていかないといけないんですよね」
「……」
「もし、また不安や心配で押しつぶされそうになったら、今度はちゃんと先生や他のみんなに話します。この先も、忍術学園のみんなと一緒に居れるなら、きっと大丈夫。今はそう思ってます」

自分で言っておきながら、は急に自信なさげな顔で半助の顔を覗き見る。

「あの……私、忍術学園にこれからもずっと居れますよね?」

半助は一瞬目がテンになる。
が、すぐに呆れた表情でにデコピンをお見舞した。

「うっ!」
「当然だ!全く……また、つまらないこと言って」
「……」
「これからも忍術学園で働いてくれないと困る!こっちの文字や知識を吸収してもらっているのは、君の能力を存分に忍術学園に還元してもらうためだ。それに、食堂のおばちゃん、口癖のように言ってるよ。君が働いてくれて助かってるって」
「そうだったんですか……」

自分が必要とされていると知り、の心に嬉しさが広がっていく。

「それに、そうしてくれないと、これから言うことを私が約束できない」
「約束?何を……?」

半助は静かにを見据えていた。
その瞳には炎がともっている。
命に代えても、大切な人を守りたいという真摯な想いの炎だ。

少しの間の後、半助が口を開いた。

「君を守る」
「……」
「この先、何があろうと……あらゆるものから、全力で君を守る。せっかく未来から来てくれた君を、絶対に死なせはしない!」

は呆然としていた。
あまりの衝撃に、一瞬、は半助が何を話しているのかわからなかったのだ。
だが、その引き締まった表情から、自分が聞いたことは確かなのだと理解した。

『君を守る』

半助の言葉が何度も何度も脳裏で響く。
違う世界からきて孤独で心細かったは、心の奥底でずっとその言葉を待っていた。
自分を安心させてくれる、どこまでも力強い言葉を。
半助は、今、まさにその言葉を自分にくれた――

これまで経験したことのない、身震いするほどの感動がを襲う。
思考が追いつかない。
それは途切れ途切れに半助に返す言葉にも表れていた。

「こういう時……なんて……返したらいいんですか?」
「無理に返事しなくていい。約束は、私が勝手に決めたことだ」

急に照れを感じ、半助はつっけんどんな返事をする。
だが、はしっかり感じ取っていた。
半助の優しさがその言葉の端々からもにじみ出ているのを。

もう止められなかった。
喜び、安堵感、充足感…それらの感情が激流のごとくの中をかけ巡る。
それはとうとう爆発して、熱い涙となって目から零れ落ちた。

「土井先生………うぅ……あぁ……!」

嗚咽を上げながら、は自然と半助にもたれかかっていく。
これまで溜めすぎていたものを全て吐き出すように、泣きじゃくった。

「もう君を一人で苦しませない。私はいつだって君のそばにいるから」

そう言って、抱き止めたの頭を慈しむようにやさしく撫でる。
静かな山の頂上で、感情の思うがまま号泣するの涙声が大きく響き渡った。
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