Lesson 1
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「あ~あ……校舎は違えど、空・トモミ・シゲとはまた同じクラスだし……これじゃあ、あまり新鮮味がないわよね」
頬杖をつきながら、ユキが気だるそうにそう言った。
「何よ何よ、その言い草は。聞き捨てならないわね」
「せっかく仲良し四人、めでたく同じ高校に合格して同じクラスになったんだから、もっと喜んでほしいですわ!」
「だあってぇ~~、せっかく第一志望の高校に合格したのに、ぜんっぜん、これっぽっちも良い出会いがないんだもん!」
「入学してまだ一週間も経ってないでしょ!」
「アハハ……そうでした、そうでした」
ユキがテヘと舌を出す。
それを見て、全く……とトモミとシゲは嘆息をついた。
「ユキちゃん。良い出会いはないけどさ、朝のグラウンド見た?イケメンがいたわよ」
「えぇ!」
ガバッと立ち上がったユキが、虫のように窓ガラスにへばりつく。
わかりやすい反応に、顔を合わせたトモミとシゲが肩を竦めた。
「ほら、あそこ。サッカー部が練習してるでしょ。今ちょうど向こうのゴールポストにいる二人、かっこいいと思わない?」
「わぁ、ほんと……かなりイケてるじゃん!トモミちゃん、名前知ってるの?」
「もちろん、知ってるわよ」
「ずるい!ねぇ、教えて、教えて!」
ユキのきらきらしい眼がトモミを捉えた。
「いいわよ。ただし、今日のランチでジュース驕ってくれたらね」
「ええ!?んもう、ちゃっかりしてるわね、トモミは……わかった、わかった、驕るからあのイケメン二人の名前を教えてよ」
「オッケー!」
トモミの口から語られる言葉に、ユキは熱心に耳を傾けた。
黒髪のきりっとした凛々しい目つきをした男は、ユキたちよりも二学年上の三年生である食満留三郎。
もう一人、ウェーブのかかった茶髪で柔和な微笑みを浮かべているのは同学年の善法寺伊作。
二人とも大川学園が共学となってから、初の男子学生であった。
「食満先輩も善法寺先輩も格好いい上に性格が良いから、同学年だけでなく下級生の女子にも超人気なんだって」
「でも、あれだけ格好いいと……もう彼女いるんじゃない?まわりが女子ばっかじゃ選びたい放題でしょ」
「ウフフ。喜んで、ユキちゃん。ふたりともフリーよ」
ウインク交じりにトモミがそう言えば、ユキは「おっし」と男のような声を絞り出してガッツポーズをとる。
それが親友二人の笑いを誘った。
「でも、トモミちゃん。まだ入学して日が浅いのに、学園のことにお詳しくて凄いです。私は全然知りませんでしたわ」
「実は、たまたまなのよ。ほら、私……いとこが大川学園 の卒業生だから、それで聞いてたの」
「そうだったんですね~」
「一人だけ先に知っててずるい!ねぇ、トモミ。その様子なら他にも沢山良い男知ってそうじゃない。ランチのときにもっと色々教えてよ」
「なら、ジュースだけじゃなくあんぱんも追加ね」
「はいはい……ほーんとトモミは抜け目ないわよね!さっすが、新入生代表で挨拶しただけのことはあるわ、学年トップさん。太っても知らないわよ~」
「お生憎様。あんぱん一つで太るほど、だらしない身体じゃないわよ。空手の稽古も毎日あって大変なんだし。それにしても……」
トモミが何の荷物も置かれていない机を見て言った。
「空、なかなか来ないわねぇ。もうすぐ朝のホームルームが始まっちゃうけど」
「そういえば、そうね……。いつもならこの時間には教室に着いてるのに」
「寝坊したんでしょうか?」
「家のことやるために早起きしてるって言ってるから、それはないわね」
「だとすれば、体調でも崩されたのかもしれませんね。心配です……」
シゲの眉が八の字を描いた、そのときだ。
「みんな、おはよう」
窓際にいるユキたちに、教室の戸口に立った少女がにっこりと微笑みかける。
後光を背負い、優美な笑みを浮かべてしずしずと入室してくるその様はまるでお釈迦様。
「空……!?」
あまりの空の変貌ぶりに、しばらくの間唖然としていたユキたちだったが、そのうちにハッと我に返れば、直ちに空の元へ寄った。
「ちょ、ちょっと……アンタってば、一体どうしたっていうのよ、その淑女ぶりは!雰囲気が全然違うじゃない!表情だって、なんか悟りを開いたように穏やかだし……」
「空、何か悪いものでも食べた?」
「ここに来る途中、電柱に頭をぶつけたりとかしてないでしょうか?」
「フフ……ユキちゃんもトモミちゃんも。それに、おシゲちゃんまで。心配してくれるのは嬉しいんだけど全然違うから安心して。ただ……あたしは昨日、人生を変える運命の出会いを経験してしまったの」
「「「人生を変える運命の出会い!?」」」
異口同音の三人が空をじっと見る。
その彼女の口から飛び出す言葉に更なる衝撃を与えられるとも知らずに。
三人の視線におかまいなしに、空は鞄から取り出した教科書一式を机の中にしまいこんだ。
カラになった鞄を机の横に吊り掛け、姿勢よく椅子に掛けると、畏まった口調で言った。
「ユキちゃん、トモミちゃん、おシゲちゃん。ご報告があります。実は……この度彼氏ができました」
空の頬がぽっと紅くなる。
わずかな時間、沈黙に包まれたユキ・トモミ・シゲだったが、やがて――
「「「はぁぁぁぁぁ?」」」
と大絶叫を上げる。
「どうしたの?」
「なに、なに?」
と教室中の人間が振り返ってきて騒然とするも、
「こらぁ、お前たち!何で朝からギンギンに五月蠅いんだ!?黙って席に着け!」
と後から被せられた大声で一斉に静まり返る。
ちなみにこの声の主は――強面且つ老け顔でベテラン教師かと思いきや、教師生活二年目に入ったばかりの若手教師。
一年A組の担任、潮江文次郎といった。
頬杖をつきながら、ユキが気だるそうにそう言った。
「何よ何よ、その言い草は。聞き捨てならないわね」
「せっかく仲良し四人、めでたく同じ高校に合格して同じクラスになったんだから、もっと喜んでほしいですわ!」
「だあってぇ~~、せっかく第一志望の高校に合格したのに、ぜんっぜん、これっぽっちも良い出会いがないんだもん!」
「入学してまだ一週間も経ってないでしょ!」
「アハハ……そうでした、そうでした」
ユキがテヘと舌を出す。
それを見て、全く……とトモミとシゲは嘆息をついた。
「ユキちゃん。良い出会いはないけどさ、朝のグラウンド見た?イケメンがいたわよ」
「えぇ!」
ガバッと立ち上がったユキが、虫のように窓ガラスにへばりつく。
わかりやすい反応に、顔を合わせたトモミとシゲが肩を竦めた。
「ほら、あそこ。サッカー部が練習してるでしょ。今ちょうど向こうのゴールポストにいる二人、かっこいいと思わない?」
「わぁ、ほんと……かなりイケてるじゃん!トモミちゃん、名前知ってるの?」
「もちろん、知ってるわよ」
「ずるい!ねぇ、教えて、教えて!」
ユキのきらきらしい眼がトモミを捉えた。
「いいわよ。ただし、今日のランチでジュース驕ってくれたらね」
「ええ!?んもう、ちゃっかりしてるわね、トモミは……わかった、わかった、驕るからあのイケメン二人の名前を教えてよ」
「オッケー!」
トモミの口から語られる言葉に、ユキは熱心に耳を傾けた。
黒髪のきりっとした凛々しい目つきをした男は、ユキたちよりも二学年上の三年生である食満留三郎。
もう一人、ウェーブのかかった茶髪で柔和な微笑みを浮かべているのは同学年の善法寺伊作。
二人とも大川学園が共学となってから、初の男子学生であった。
「食満先輩も善法寺先輩も格好いい上に性格が良いから、同学年だけでなく下級生の女子にも超人気なんだって」
「でも、あれだけ格好いいと……もう彼女いるんじゃない?まわりが女子ばっかじゃ選びたい放題でしょ」
「ウフフ。喜んで、ユキちゃん。ふたりともフリーよ」
ウインク交じりにトモミがそう言えば、ユキは「おっし」と男のような声を絞り出してガッツポーズをとる。
それが親友二人の笑いを誘った。
「でも、トモミちゃん。まだ入学して日が浅いのに、学園のことにお詳しくて凄いです。私は全然知りませんでしたわ」
「実は、たまたまなのよ。ほら、私……いとこが
「そうだったんですね~」
「一人だけ先に知っててずるい!ねぇ、トモミ。その様子なら他にも沢山良い男知ってそうじゃない。ランチのときにもっと色々教えてよ」
「なら、ジュースだけじゃなくあんぱんも追加ね」
「はいはい……ほーんとトモミは抜け目ないわよね!さっすが、新入生代表で挨拶しただけのことはあるわ、学年トップさん。太っても知らないわよ~」
「お生憎様。あんぱん一つで太るほど、だらしない身体じゃないわよ。空手の稽古も毎日あって大変なんだし。それにしても……」
トモミが何の荷物も置かれていない机を見て言った。
「空、なかなか来ないわねぇ。もうすぐ朝のホームルームが始まっちゃうけど」
「そういえば、そうね……。いつもならこの時間には教室に着いてるのに」
「寝坊したんでしょうか?」
「家のことやるために早起きしてるって言ってるから、それはないわね」
「だとすれば、体調でも崩されたのかもしれませんね。心配です……」
シゲの眉が八の字を描いた、そのときだ。
「みんな、おはよう」
窓際にいるユキたちに、教室の戸口に立った少女がにっこりと微笑みかける。
後光を背負い、優美な笑みを浮かべてしずしずと入室してくるその様はまるでお釈迦様。
「空……!?」
あまりの空の変貌ぶりに、しばらくの間唖然としていたユキたちだったが、そのうちにハッと我に返れば、直ちに空の元へ寄った。
「ちょ、ちょっと……アンタってば、一体どうしたっていうのよ、その淑女ぶりは!雰囲気が全然違うじゃない!表情だって、なんか悟りを開いたように穏やかだし……」
「空、何か悪いものでも食べた?」
「ここに来る途中、電柱に頭をぶつけたりとかしてないでしょうか?」
「フフ……ユキちゃんもトモミちゃんも。それに、おシゲちゃんまで。心配してくれるのは嬉しいんだけど全然違うから安心して。ただ……あたしは昨日、人生を変える運命の出会いを経験してしまったの」
「「「人生を変える運命の出会い!?」」」
異口同音の三人が空をじっと見る。
その彼女の口から飛び出す言葉に更なる衝撃を与えられるとも知らずに。
三人の視線におかまいなしに、空は鞄から取り出した教科書一式を机の中にしまいこんだ。
カラになった鞄を机の横に吊り掛け、姿勢よく椅子に掛けると、畏まった口調で言った。
「ユキちゃん、トモミちゃん、おシゲちゃん。ご報告があります。実は……この度彼氏ができました」
空の頬がぽっと紅くなる。
わずかな時間、沈黙に包まれたユキ・トモミ・シゲだったが、やがて――
「「「はぁぁぁぁぁ?」」」
と大絶叫を上げる。
「どうしたの?」
「なに、なに?」
と教室中の人間が振り返ってきて騒然とするも、
「こらぁ、お前たち!何で朝からギンギンに五月蠅いんだ!?黙って席に着け!」
と後から被せられた大声で一斉に静まり返る。
ちなみにこの声の主は――強面且つ老け顔でベテラン教師かと思いきや、教師生活二年目に入ったばかりの若手教師。
一年A組の担任、潮江文次郎といった。
