1.豹変
name change
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その男は標準以上に美しい。
端正な顔立ちに、見ている者をほっとさせるようなやさしげな瞳。
手入れを怠った跳ねっぱなしの髪の毛ですら、彼の魅力に一役買っている。
ただ、今その表情に浮かぶのは――怒り、怒り、とにかく怒りの感情だ。
「全く、アイツらどうにかならんのか!!」
乱太郎 1.3点
きり丸 1.8点
しんべえ 0.9点
これじゃあ、まるで視力検査ではないか……!
忍術学園きっての問題児、忍術学園1年は組の乱太郎、きり丸、しんべえ――そんな彼らのテストの採点者である担任の土井半助は自身の胃を押さえながら、この散々たる結果に頭を悩ませていた。
普段の彼は穏やかで優しく、生徒からの信頼も厚い。
しかし、この苦痛に歪んだ顔ときたら。
折角の美形が台無しである。
「うわっ、これはちょっとさすがに……」
半助の横から三人のテスト結果を覗き見た事務員が顔を引き攣らせる。
舞野空。
彼女は忍術学園で食堂のお手伝いと学園全体の事務補佐を担当している。
たまたま今日、半助と机を並べて採点の補助業務を行っていた。
この室町の世において、空は異色の出自を持つ。
それは彼女が遙か未来から来た女性ということ。
前の世界――約八百年後の日本では普通の大学生として暮らしていた。
アクの強すぎる忍術学園の先生・生徒たちと比べると、空の常識人かつ穏やかな個性は埋もれがちだが、そんなことはなかった。
やさしい笑顔は母性を感じさせ、特に下級生に大人気である。
艶のある黒髪に映える白い肌。
大きな瞳、小づくりの唇、しなやかな手足……と見目を引く美貌は忍術学園でも存在感があった。
そんな空と半助が二人机を並べて作業する様は、まさに美男美女の絵になる光景――
さらに、この二人。
どちらも互いのことを意識しているにも関わらず、中々恋人同士にならないもどかしい関係を維持していた。
半助が諦めたように言った。
「はぁ、追試確定だな。学園長に報告してくる。空くんは他の子たちの採点を続けといてくれ」
「は、はい。行ってらっしゃい……」
暗く陰鬱な雰囲気を纏って、半助は職員室を後にした。
「大丈夫かな……」
あまりの半助の落ち込み様に、空は心配になる。
あの三人ももうちょっと勉強して、土井先生を安心させてあげればいいのに……。
そんなことを胸中で思うが、いざ面とすると根は素直な良い子たちなのであまり強く出れず、なあなあで済ませてしまっていた。
半助ばかりじゃなく、自分からも厳しめに注意しておけばよかった。
空は大いに反省していた。
「やれやれ、あの三人も困ったもんだな……」
同じ職員室で執務していた一年は組の実技担当教師、山田伝蔵はふぅっと重い溜息をついて、頭を掻いた。
端正な顔立ちに、見ている者をほっとさせるようなやさしげな瞳。
手入れを怠った跳ねっぱなしの髪の毛ですら、彼の魅力に一役買っている。
ただ、今その表情に浮かぶのは――怒り、怒り、とにかく怒りの感情だ。
「全く、アイツらどうにかならんのか!!」
乱太郎 1.3点
きり丸 1.8点
しんべえ 0.9点
これじゃあ、まるで視力検査ではないか……!
忍術学園きっての問題児、忍術学園1年は組の乱太郎、きり丸、しんべえ――そんな彼らのテストの採点者である担任の土井半助は自身の胃を押さえながら、この散々たる結果に頭を悩ませていた。
普段の彼は穏やかで優しく、生徒からの信頼も厚い。
しかし、この苦痛に歪んだ顔ときたら。
折角の美形が台無しである。
「うわっ、これはちょっとさすがに……」
半助の横から三人のテスト結果を覗き見た事務員が顔を引き攣らせる。
舞野空。
彼女は忍術学園で食堂のお手伝いと学園全体の事務補佐を担当している。
たまたま今日、半助と机を並べて採点の補助業務を行っていた。
この室町の世において、空は異色の出自を持つ。
それは彼女が遙か未来から来た女性ということ。
前の世界――約八百年後の日本では普通の大学生として暮らしていた。
アクの強すぎる忍術学園の先生・生徒たちと比べると、空の常識人かつ穏やかな個性は埋もれがちだが、そんなことはなかった。
やさしい笑顔は母性を感じさせ、特に下級生に大人気である。
艶のある黒髪に映える白い肌。
大きな瞳、小づくりの唇、しなやかな手足……と見目を引く美貌は忍術学園でも存在感があった。
そんな空と半助が二人机を並べて作業する様は、まさに美男美女の絵になる光景――
さらに、この二人。
どちらも互いのことを意識しているにも関わらず、中々恋人同士にならないもどかしい関係を維持していた。
半助が諦めたように言った。
「はぁ、追試確定だな。学園長に報告してくる。空くんは他の子たちの採点を続けといてくれ」
「は、はい。行ってらっしゃい……」
暗く陰鬱な雰囲気を纏って、半助は職員室を後にした。
「大丈夫かな……」
あまりの半助の落ち込み様に、空は心配になる。
あの三人ももうちょっと勉強して、土井先生を安心させてあげればいいのに……。
そんなことを胸中で思うが、いざ面とすると根は素直な良い子たちなのであまり強く出れず、なあなあで済ませてしまっていた。
半助ばかりじゃなく、自分からも厳しめに注意しておけばよかった。
空は大いに反省していた。
「やれやれ、あの三人も困ったもんだな……」
同じ職員室で執務していた一年は組の実技担当教師、山田伝蔵はふぅっと重い溜息をついて、頭を掻いた。