きり丸の誓い
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
冬休み、正月真っ只中の土井家の午後。
きり丸のアルバイトは午前中のみでもう家に帰ってきていた。
ちなみに家の様子はというと――
「きりちゃん、宿題やった?新学期までにきちんとやらないと!」
「ええ!?内職のバイトが終わったらやりますってば!」
そう広くはない半助の家の中、空はきり丸を右往左往と追いかけ回していた。
(はぁ。なんか幸せだな……)
家を駆け回る二人を眺めながら、半助はのほほんと茶を啜っている。
しかし、土井家を包む和やかな幸せは、ある来訪者たちによって終わりを告げるのだ。
「ごめんくださーい!」
その瞬間、空ときり丸の追いかけっこがピタッと止まった。
「この声は!」
「利吉さんだ!」
空ときり丸が顔を見合わせて交互に言った後、玄関まで一直線に向かう。
入口の戸を開けると、そこには利吉がいた。
「やあ、空さん、きり丸。明けましておめでとうございます」
「あけましておめでとうございます、利吉さん」
空ときり丸、二人の声がピッタリと揃う。
利吉は新年の挨拶もそこそこに、さりげなく空の手を取ると、爽やかに微笑んだ。
「お久しぶりです。変わらず綺麗で……今日の装いも髪型も素敵ですね」
「そ、そんな……」
利吉による大胆な行動とストレートな賛辞。
こういうことに免疫のない空は、頬を染めて俯くばかりだ。
利吉からすれば、その可憐な仕草がたまらないようだ。
握りとった手はそのままに、恥じらう空を愛おしげに見つめている。
甘い雰囲気に包まれている二人だったが、そうは問屋が卸さないと言わんばかりに駆け付けた半助が二人の間に割り入った。
「明けましておめでとう、利吉君。今日はいきなりどうしたんだい?」
あくまで丁寧に、だが眉をビクつかせながら半助が問う。
利吉はというと、こういう半助の反応は織り込み済みなので、さして動揺もしていない。
今日利吉が半助の家に足を運んだのは、半助と空、二人の様子を探りにきた以外に別の目的があった。
「今日は年も明けたし、皆でお酒でもどうかと思って」
利吉は手荷物の中から酒瓶を取り出す。
半助はそれを手渡されると、目を見張って言った。
「あれ?この酒蔵の酒、今町で人気だから、品薄で手に入らないはずだよ」
「そうなんですよ。やっぱり土井先生もご存じだったんですね!この前、仕事で立ち寄った別の町で、偶々購入できて……」
入手困難な酒を前にして、利吉も半助も興奮を隠せない。
互いが恋敵だということを忘れて、話に熱中している。
「半助さんも利吉さんもお酒好きみたいだね」
「そうみたいっすね」
「忍者の三禁は大丈夫なのかしらね」
「さぁ?」
二人の熱狂ぶりを空ときり丸は不思議そうに見ていた。
そんな中、また新たな声がこの家に飛び込んでくる。
またも聞き覚えがある声だったが、妙にねっとりと鼻につく声だった。
声の主は相当ご立腹のようだ。
「ちょっとぉ、利吉!どうして私を置いてくのよぉ!!」
「!」
利吉以外の三人の間に思わず戦慄が走った。
「もぉう!今日は打掛を羽織って動きづらいんだから、ちゃんとエスコートしてくれないと!」
その言葉とほぼ同時に、一人の女性(?)が入り口から顔を覗かせる。
「伝子さん!」
その姿、華麗にして妖艶(本人談)
忍術学園のベテラン教師であり、利吉の父である伝蔵が女装した姿――伝子だった。
「うふふ。明けましておめでとう、みんな!……それより、利吉!」
伝子は利吉の方を向き、キッと睨む。
利吉は至極迷惑そうにしている。
「何ですか、伝子さん」
「どうして、私を置いていったの!?」
「……」
利吉は無言を貫いている。
もちろん、半助たちにはその理由が手に取るようにわかっていた。
伝子と並んで歩きたくない、のだと。
置いてけぼりにされ、邪険に扱われた怒り心頭の伝子がガミガミと利吉を責める。
利吉はてんで相手にしていないが。
伝子の説教を右から左へと受け流している。
「……」
正月早々、伝子と利吉の修羅場を見せつけられて、三人は呆気に取られていた。
きり丸のアルバイトは午前中のみでもう家に帰ってきていた。
ちなみに家の様子はというと――
「きりちゃん、宿題やった?新学期までにきちんとやらないと!」
「ええ!?内職のバイトが終わったらやりますってば!」
そう広くはない半助の家の中、空はきり丸を右往左往と追いかけ回していた。
(はぁ。なんか幸せだな……)
家を駆け回る二人を眺めながら、半助はのほほんと茶を啜っている。
しかし、土井家を包む和やかな幸せは、ある来訪者たちによって終わりを告げるのだ。
「ごめんくださーい!」
その瞬間、空ときり丸の追いかけっこがピタッと止まった。
「この声は!」
「利吉さんだ!」
空ときり丸が顔を見合わせて交互に言った後、玄関まで一直線に向かう。
入口の戸を開けると、そこには利吉がいた。
「やあ、空さん、きり丸。明けましておめでとうございます」
「あけましておめでとうございます、利吉さん」
空ときり丸、二人の声がピッタリと揃う。
利吉は新年の挨拶もそこそこに、さりげなく空の手を取ると、爽やかに微笑んだ。
「お久しぶりです。変わらず綺麗で……今日の装いも髪型も素敵ですね」
「そ、そんな……」
利吉による大胆な行動とストレートな賛辞。
こういうことに免疫のない空は、頬を染めて俯くばかりだ。
利吉からすれば、その可憐な仕草がたまらないようだ。
握りとった手はそのままに、恥じらう空を愛おしげに見つめている。
甘い雰囲気に包まれている二人だったが、そうは問屋が卸さないと言わんばかりに駆け付けた半助が二人の間に割り入った。
「明けましておめでとう、利吉君。今日はいきなりどうしたんだい?」
あくまで丁寧に、だが眉をビクつかせながら半助が問う。
利吉はというと、こういう半助の反応は織り込み済みなので、さして動揺もしていない。
今日利吉が半助の家に足を運んだのは、半助と空、二人の様子を探りにきた以外に別の目的があった。
「今日は年も明けたし、皆でお酒でもどうかと思って」
利吉は手荷物の中から酒瓶を取り出す。
半助はそれを手渡されると、目を見張って言った。
「あれ?この酒蔵の酒、今町で人気だから、品薄で手に入らないはずだよ」
「そうなんですよ。やっぱり土井先生もご存じだったんですね!この前、仕事で立ち寄った別の町で、偶々購入できて……」
入手困難な酒を前にして、利吉も半助も興奮を隠せない。
互いが恋敵だということを忘れて、話に熱中している。
「半助さんも利吉さんもお酒好きみたいだね」
「そうみたいっすね」
「忍者の三禁は大丈夫なのかしらね」
「さぁ?」
二人の熱狂ぶりを空ときり丸は不思議そうに見ていた。
そんな中、また新たな声がこの家に飛び込んでくる。
またも聞き覚えがある声だったが、妙にねっとりと鼻につく声だった。
声の主は相当ご立腹のようだ。
「ちょっとぉ、利吉!どうして私を置いてくのよぉ!!」
「!」
利吉以外の三人の間に思わず戦慄が走った。
「もぉう!今日は打掛を羽織って動きづらいんだから、ちゃんとエスコートしてくれないと!」
その言葉とほぼ同時に、一人の女性(?)が入り口から顔を覗かせる。
「伝子さん!」
その姿、華麗にして妖艶(本人談)
忍術学園のベテラン教師であり、利吉の父である伝蔵が女装した姿――伝子だった。
「うふふ。明けましておめでとう、みんな!……それより、利吉!」
伝子は利吉の方を向き、キッと睨む。
利吉は至極迷惑そうにしている。
「何ですか、伝子さん」
「どうして、私を置いていったの!?」
「……」
利吉は無言を貫いている。
もちろん、半助たちにはその理由が手に取るようにわかっていた。
伝子と並んで歩きたくない、のだと。
置いてけぼりにされ、邪険に扱われた怒り心頭の伝子がガミガミと利吉を責める。
利吉はてんで相手にしていないが。
伝子の説教を右から左へと受け流している。
「……」
正月早々、伝子と利吉の修羅場を見せつけられて、三人は呆気に取られていた。