比翼の絆
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「う~ん、久しぶりの我が家だなあぁ」
見慣れた門の前で、諸泉尊奈門が大きく背伸びをする。
本日、タソガレドキ忍の仕事は非番である。
ここ一か月は偵察の仕事で他の国とタソガレドキを往復する激動の毎日だった。
実に三十日ぶりの休暇となる。
ブラック企業と言われれば身も蓋もないが、昼夜問わない仕事なのでしょうがない。
(父上と母上に挨拶を済ませたら、何をしよう。まずは番犬たちと散歩して、そのあとは……この前手に入れた書物「宿敵を倒す十の秘訣」を読んで……)
久しぶりの休日に胸を躍らせながら、門をくぐったときだった。
「尊奈門、帰ってきたんだ!」
珍しく自分を出迎えてくれる者がいる。
そして、それが最愛の姉の空とわかれば、尊奈門の顔がみるみる破顔した。
「姉上!今日はお休みだったんですか!?」
「うん。タソガレドキ忍術塾は昨日から休みなんだ」
そう言って、小さく笑った。
最近の姉は輪をかけて綺麗になった。
弟の贔屓目なしにそう断言できる。
自分と違って母親似の姉は、釣り上がった大きな瞳に、小づくりの鼻と口を持っている。
肌は絹のように滑らかで白く、艶やかな黒髪は櫛でとかずともサラサラで、誰もが認める美人である。
少し前までは、愛想も隙も無いクールビューティーだったけど、凛と引き締まった美貌を緩めた姉は、最早人間を超えて女神へと昇華してしまっていた。
(ああ、今日はなんて良い日なんだ……!)
最愛の姉と休暇が被るなんて、今日はツイている。
姉弟水入らずで過ごせるかと思えば、顔のニヤケが止まらない。
実は、ここ最近ある不満を抱えていた。
それは、同じタソガレドキ城内にいるにもかかわらず、空とゆっくり話ができなかったのだ。
空に近寄ろうとすれば、上司でありタソガレドキ忍軍の組頭である雑渡昆奈門に悉く妨害された。
偶々なんて言って出くわしているが、絶対嘘だ。
目ざとく姉を監視している。
(全く、組頭ときたら……)
姉と恋仲になってから図々しくなった雑渡は、尊奈門のとる行動についてとやかく言うようになった。
この前なんて、「お願いだから、空の半径一メートル以内に入らないでね」と真顔で言われた。
仮にも双子なんだから、手を握ったり腕を組んだりハグしたり……スキンシップの一つくらい自由にさせてほしい。
「ちょうどよかった、尊奈門。実はお願いがあるんだけど……」
やや下を向き、もじもじする可愛いらしい姉の姿を見れば、お願いを断る男なんて皆無だろう。
「いいですよ。今日は丸一日フリーですし。何でも任せてください!」
「ほんと?じゃあさ、今から料理を教えて欲しいんだ。母上に習おうかと思ったんだけど、午後から外出するみたいだから、できれば尊奈門にお願いしたくて」
「なんだ。そんなことですか。全然オッケーですよ」
存在そのものだけでなく、お願いの内容も可愛すぎて、堪らず身悶えた。
尊奈門は知っている。
文武両道な空だが、なぜか料理だけはからっきし。
昔ふたりで大火傷を負った雑渡の世話をしている際、洗濯掃除は分担していても、料理だけはいつも自分が担当していた。
厨で調理をする自分に、
「いつもごめん。尊奈門にまかせっきりで……」
と瞼を伏せて謝ってきた姉の顔はいまでも忘れられない。
あの頃は、姉に頼られた嬉しさで必要以上に料理の腕を磨いた。
そのおかげなのか、今やタソガレドキ城の料理番にも一目置かれるまでになっている。
「それで、何を作りたいんですか?」
「できれば、お菓子がいい……三色団子とか餡団子とか」
「甘いものですか。珍しいですね。姉上は昔からお煎餅やスルメなど塩辛いお菓子を好んで食べてましたけど」
「……あの方が好きだと思うから」
そう言われた瞬間、身体が石のように硬直した。
そんな弟に構うことなく、空は遠い目で続ける。
「昆奈門様、最近やつれているご様子だから、甘いものでもお召になったら少しは元気が出るかな……って思って。そうだ。出来上がったら、一緒に届けにいく?」
振り向いた空の頬は、庭に咲くツツジのように桃色に染まっていた。
一緒に届けに行く……。
よりにもよって職場に……。
どうやら完全にふたりきりとはいかないらしい。
世の中上手くいかないものである。
見慣れた門の前で、諸泉尊奈門が大きく背伸びをする。
本日、タソガレドキ忍の仕事は非番である。
ここ一か月は偵察の仕事で他の国とタソガレドキを往復する激動の毎日だった。
実に三十日ぶりの休暇となる。
ブラック企業と言われれば身も蓋もないが、昼夜問わない仕事なのでしょうがない。
(父上と母上に挨拶を済ませたら、何をしよう。まずは番犬たちと散歩して、そのあとは……この前手に入れた書物「宿敵を倒す十の秘訣」を読んで……)
久しぶりの休日に胸を躍らせながら、門をくぐったときだった。
「尊奈門、帰ってきたんだ!」
珍しく自分を出迎えてくれる者がいる。
そして、それが最愛の姉の空とわかれば、尊奈門の顔がみるみる破顔した。
「姉上!今日はお休みだったんですか!?」
「うん。タソガレドキ忍術塾は昨日から休みなんだ」
そう言って、小さく笑った。
最近の姉は輪をかけて綺麗になった。
弟の贔屓目なしにそう断言できる。
自分と違って母親似の姉は、釣り上がった大きな瞳に、小づくりの鼻と口を持っている。
肌は絹のように滑らかで白く、艶やかな黒髪は櫛でとかずともサラサラで、誰もが認める美人である。
少し前までは、愛想も隙も無いクールビューティーだったけど、凛と引き締まった美貌を緩めた姉は、最早人間を超えて女神へと昇華してしまっていた。
(ああ、今日はなんて良い日なんだ……!)
最愛の姉と休暇が被るなんて、今日はツイている。
姉弟水入らずで過ごせるかと思えば、顔のニヤケが止まらない。
実は、ここ最近ある不満を抱えていた。
それは、同じタソガレドキ城内にいるにもかかわらず、空とゆっくり話ができなかったのだ。
空に近寄ろうとすれば、上司でありタソガレドキ忍軍の組頭である雑渡昆奈門に悉く妨害された。
偶々なんて言って出くわしているが、絶対嘘だ。
目ざとく姉を監視している。
(全く、組頭ときたら……)
姉と恋仲になってから図々しくなった雑渡は、尊奈門のとる行動についてとやかく言うようになった。
この前なんて、「お願いだから、空の半径一メートル以内に入らないでね」と真顔で言われた。
仮にも双子なんだから、手を握ったり腕を組んだりハグしたり……スキンシップの一つくらい自由にさせてほしい。
「ちょうどよかった、尊奈門。実はお願いがあるんだけど……」
やや下を向き、もじもじする可愛いらしい姉の姿を見れば、お願いを断る男なんて皆無だろう。
「いいですよ。今日は丸一日フリーですし。何でも任せてください!」
「ほんと?じゃあさ、今から料理を教えて欲しいんだ。母上に習おうかと思ったんだけど、午後から外出するみたいだから、できれば尊奈門にお願いしたくて」
「なんだ。そんなことですか。全然オッケーですよ」
存在そのものだけでなく、お願いの内容も可愛すぎて、堪らず身悶えた。
尊奈門は知っている。
文武両道な空だが、なぜか料理だけはからっきし。
昔ふたりで大火傷を負った雑渡の世話をしている際、洗濯掃除は分担していても、料理だけはいつも自分が担当していた。
厨で調理をする自分に、
「いつもごめん。尊奈門にまかせっきりで……」
と瞼を伏せて謝ってきた姉の顔はいまでも忘れられない。
あの頃は、姉に頼られた嬉しさで必要以上に料理の腕を磨いた。
そのおかげなのか、今やタソガレドキ城の料理番にも一目置かれるまでになっている。
「それで、何を作りたいんですか?」
「できれば、お菓子がいい……三色団子とか餡団子とか」
「甘いものですか。珍しいですね。姉上は昔からお煎餅やスルメなど塩辛いお菓子を好んで食べてましたけど」
「……あの方が好きだと思うから」
そう言われた瞬間、身体が石のように硬直した。
そんな弟に構うことなく、空は遠い目で続ける。
「昆奈門様、最近やつれているご様子だから、甘いものでもお召になったら少しは元気が出るかな……って思って。そうだ。出来上がったら、一緒に届けにいく?」
振り向いた空の頬は、庭に咲くツツジのように桃色に染まっていた。
一緒に届けに行く……。
よりにもよって職場に……。
どうやら完全にふたりきりとはいかないらしい。
世の中上手くいかないものである。
