大木先生のト・ク・ベ・ツ
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ここは杭瀬村の大木雅之助の畑。
食堂のおばちゃんが料理教室で村長宅に行っている間、大木の仕事を手伝っている空だったが、何やら様子がおかしい。
(ああ、目が回る……ふらふらする……)
足元から力が抜けて、空がガクンとその場に膝をついた。
それを見た大木が、あらんかぎりの声で一喝した。
「こら、何をへばっておる!いつものごとく、どこんじょーで畑作業を行わんかい!」
だが、空はうんともすんとも言わず、へたり込んだままだった。
大木が思わず溜息をつく。
「ほんっとうにお前は体力がないな。しょうがない、少し休め。水でも飲んで来いっ」
「ありがとうございます。でも、今日は少し事情が違うんです……」
「ん?事情が違うとは……?」
「じ、実は……その……お腹が空いちゃって、、」
ぎゅるるるうるるるうるる……
可愛らしい容姿に似つかわしくない、豪快な腹の音だった。
「……」
目をテンにする大木に空が事情を説明する。
聞けば、今日に限って寝坊して、朝食を食いそびれたという。
「全く、情けないのう!食堂の仕事で早起きしているお前が寝坊とは、」
「昨日は事務の仕事の残業で、たまたま夜寝るのが遅かったんです!」
「フン、そんなものただの言い訳にすぎん。社会人たるもの、自己管理をきっちり行うのが当たり前だ」
それを聞いて一瞬ムッとする空だったが、すぐにしおらしい態度で言った。
「確かにこれって言い訳ですよね……大木先生の言う通り、完全に自己管理をおろそかにした私が悪いです。空腹で動けないなんて、ほんと馬鹿ですよね……」
シュンと悄気 る空を見て、大木の心臓が甘やかな音をたてだした。
瞼を伏せた切ない表情が否でも胸を疼かせる。
「ったくもう、しょうがないな……じゃあ、取り急ぎ何か作ってやる」
「え、いいんですか!?」
「ああ。その様子だと食堂のおばちゃんが料理を持ってくるまでもたないだろうし。それに、せっかくの労働力がこれではどうにもならんからな。ついて来い!」
そう言って、大木が踵を返す。
(大木先生、なんてやさしいの!)
空腹MAXの空にとって、今の大木は蓮華座に立つ仏のように神々しかった。
トントントントン……
小気味よい音が炊事場に響く。
少し待っていると、食卓に大皿が置かれた。
そこには、人参、大根、きゅうりを棒状に切っただけのシンプルな野菜スティックが盛られている。
ただ単に切った、だけではない。
それを証拠に、大皿の傍には三種類のソースが添えられている。
生姜を合わせた味噌ソース、玉ねぎのすりおろしとニンニクが入った醤油ソース、刻んだシソを入れた梅肉ソースで、いずれも食欲をそそった。
「信じられない……この短時間でこれだけ用意したんですか!?」
「まぁな。それより、さっさと食え」
「では、お言葉に甘えて……いただきま~す!」
口の中に入れた瞬間、空が目を瞠った。
「うわぁ……これ、美味しい!え、こっちのソースは……あ、これも好き!残りの梅は……うん、酸味がいい!」
夢中で食べる空を見て、大木が目を細めた。
「どうだ、なかなかイケるだろう?」
「はい、最高ですっ」
野菜スティックの嵩がどんどん減っていく。
半分まで食べ切ると、空腹に眼を回していた空もようやく落ち着きを取り戻していた。
「ああ、美味しいな。それにしても……」
空がしげしげと大木と料理を見比べた。
「な、なんだぁ?」
「あんな短時間で三種類もソースを用意するなんて……しかも薬味まで使ってこだわってたし。大木先生って、料理すっごく上手なんですね」
空が感心したように言う。
恋する男の眼はそれをこう捉えた。
「大木先生、超素敵です♡」
大木の目尻がだらしなく下がった。
(ぬわっはっはっは。そうだろ、そうだろ、うんうん!)
だが、無情にも大木の有頂天はここで終了となった。
極めてドライな口調で空が言った。
「これだけちゃちゃっと作れれば、そりゃあ、モテますよね……」
「ん!?ど、どういうことだぁ?」
「だって……大木先生って杭瀬村の女の子たちに人気あるじゃないですか。だから、その娘 たちにしょっちゅうお料理を作ってあげてるんですよね?」
ふたりの間を沈黙が流れる。
が、すぐに大木の怒号で霧散した。
「このバカたれぃ!何でワシがそんな面倒くさいことをしなければならんのだ!」
「へっ?ち、違うんですか……?」
「ああ。そもそもワシは独り暮らしで自炊しているんだから、料理の手際が良いのは当たり前だ!夜酒を飲むときのつまみだって用意してるし……それ以上でもそれ以下でもなーい!」
「そ、そんなに必死に否定しなくても……」
「とにかく、ワシが他の女に気安く手料理を振舞うなんてことないからな。だ・か・ら、それを食べられるお前は、超ウルトラスーパーに特別だと思え!」
言い終えて、大木の心臓が早鐘を打った。
直前の言葉なんて、もう「好き」と言っているようなものだ。
空がそう受け止めていたとしたら……
大木の鼓動が高鳴っていく中、空がしみじみと言った。
「そっか。こんなに美味しい大木先生の料理を食べられるのが特別なんだ……」
(つ、ついにワシの気持ちに気づきおったか……!)
大木の心拍数はいやがうえにも上昇を続ける。
しかし、
「ああ、私……食堂のおばちゃんのアシスタントしててよかった!」
と満面の笑みでそう言われた。
どうやら、大木の手料理を食べれるのは、自分が忍術学園の仕事の一環で来ているから、と解釈してしまったらしい。
ガクッ!
大木は地面に轟沈した。
「ま、全く……お前はどうしてそう受け取るんだ、このニブチンが!」
「ニブチン?ニブチンとくれば……怪我には?」
「ヨーチン」
「毛ガニは?」
「北海道……って、おい!落乱お約束のギャグをやるなぁぁっ!空、お前あの三人組のボケボケが移ったんじゃないのか!?」
「だって、乱太郎君たちがよく口にしているから、つい……アハハハハ」
「フン、まぁいい。しかし、今日は生憎野菜しかなかったな。次来たときはもっと精の付くものを食べさせてやる」
「え、嬉しい!今度来たときは、お料理何作ってくれるんですか?」
「うーん、そうだな。精のつくものと言えば……」
そう言って、大木は空をまじまじと見た。
「肉と魚で迷ってるけど、やっぱり肉にするか」
「ど、どういう意味ですか……?」
「いや、どっちが胸でどっちが背中なのかわからないお前の身体を見ていると、肉の方がいいかと思って」
一瞬ポカンとする空だったが、その言葉の意味を理解して、これ以上ないくらい顔を赤くした。
慌てて両腕で胸を隠している。
「大木先生!それって私が寸胴だって言いたいんですか!?」
「おや、違うのか?」
「~~~!もう、知りませんっ!」
空がフンとそっぽを向く。
大木に怒っているはずなのに、食欲には逆らえないのか野菜スティックはしれっと齧り続けている。
大木は思わず吹き出した。
「ガッハッハッ。冗談だよ、冗談!まぁ、そう怒るなって。次来たときは、うんと美味しいどこんじょー料理を食べさせてやるから!」
そう言って、ポンポンとぞんざいに空の頭を叩く。
「……美味しくなかったら、承知しませんからね」
空がぼそっと言う。
フグのように膨れた空の拗ね顔が、たまらなく可愛い。
大木がもう一度空の頭に手を置いた。
今度は大切なものを扱うように優しく。
「お前さんのハートを射止めるチャンスだというのに、不味いモンをつくるわけがなかろう」
手触りのいい髪の感触を掌に感じながら、誰にも聞こえないくらいの小さな声で、大木がそう呟いた。
食堂のおばちゃんが料理教室で村長宅に行っている間、大木の仕事を手伝っている空だったが、何やら様子がおかしい。
(ああ、目が回る……ふらふらする……)
足元から力が抜けて、空がガクンとその場に膝をついた。
それを見た大木が、あらんかぎりの声で一喝した。
「こら、何をへばっておる!いつものごとく、どこんじょーで畑作業を行わんかい!」
だが、空はうんともすんとも言わず、へたり込んだままだった。
大木が思わず溜息をつく。
「ほんっとうにお前は体力がないな。しょうがない、少し休め。水でも飲んで来いっ」
「ありがとうございます。でも、今日は少し事情が違うんです……」
「ん?事情が違うとは……?」
「じ、実は……その……お腹が空いちゃって、、」
ぎゅるるるうるるるうるる……
可愛らしい容姿に似つかわしくない、豪快な腹の音だった。
「……」
目をテンにする大木に空が事情を説明する。
聞けば、今日に限って寝坊して、朝食を食いそびれたという。
「全く、情けないのう!食堂の仕事で早起きしているお前が寝坊とは、」
「昨日は事務の仕事の残業で、たまたま夜寝るのが遅かったんです!」
「フン、そんなものただの言い訳にすぎん。社会人たるもの、自己管理をきっちり行うのが当たり前だ」
それを聞いて一瞬ムッとする空だったが、すぐにしおらしい態度で言った。
「確かにこれって言い訳ですよね……大木先生の言う通り、完全に自己管理をおろそかにした私が悪いです。空腹で動けないなんて、ほんと馬鹿ですよね……」
シュンと
瞼を伏せた切ない表情が否でも胸を疼かせる。
「ったくもう、しょうがないな……じゃあ、取り急ぎ何か作ってやる」
「え、いいんですか!?」
「ああ。その様子だと食堂のおばちゃんが料理を持ってくるまでもたないだろうし。それに、せっかくの労働力がこれではどうにもならんからな。ついて来い!」
そう言って、大木が踵を返す。
(大木先生、なんてやさしいの!)
空腹MAXの空にとって、今の大木は蓮華座に立つ仏のように神々しかった。
トントントントン……
小気味よい音が炊事場に響く。
少し待っていると、食卓に大皿が置かれた。
そこには、人参、大根、きゅうりを棒状に切っただけのシンプルな野菜スティックが盛られている。
ただ単に切った、だけではない。
それを証拠に、大皿の傍には三種類のソースが添えられている。
生姜を合わせた味噌ソース、玉ねぎのすりおろしとニンニクが入った醤油ソース、刻んだシソを入れた梅肉ソースで、いずれも食欲をそそった。
「信じられない……この短時間でこれだけ用意したんですか!?」
「まぁな。それより、さっさと食え」
「では、お言葉に甘えて……いただきま~す!」
口の中に入れた瞬間、空が目を瞠った。
「うわぁ……これ、美味しい!え、こっちのソースは……あ、これも好き!残りの梅は……うん、酸味がいい!」
夢中で食べる空を見て、大木が目を細めた。
「どうだ、なかなかイケるだろう?」
「はい、最高ですっ」
野菜スティックの嵩がどんどん減っていく。
半分まで食べ切ると、空腹に眼を回していた空もようやく落ち着きを取り戻していた。
「ああ、美味しいな。それにしても……」
空がしげしげと大木と料理を見比べた。
「な、なんだぁ?」
「あんな短時間で三種類もソースを用意するなんて……しかも薬味まで使ってこだわってたし。大木先生って、料理すっごく上手なんですね」
空が感心したように言う。
恋する男の眼はそれをこう捉えた。
「大木先生、超素敵です♡」
大木の目尻がだらしなく下がった。
(ぬわっはっはっは。そうだろ、そうだろ、うんうん!)
だが、無情にも大木の有頂天はここで終了となった。
極めてドライな口調で空が言った。
「これだけちゃちゃっと作れれば、そりゃあ、モテますよね……」
「ん!?ど、どういうことだぁ?」
「だって……大木先生って杭瀬村の女の子たちに人気あるじゃないですか。だから、その
ふたりの間を沈黙が流れる。
が、すぐに大木の怒号で霧散した。
「このバカたれぃ!何でワシがそんな面倒くさいことをしなければならんのだ!」
「へっ?ち、違うんですか……?」
「ああ。そもそもワシは独り暮らしで自炊しているんだから、料理の手際が良いのは当たり前だ!夜酒を飲むときのつまみだって用意してるし……それ以上でもそれ以下でもなーい!」
「そ、そんなに必死に否定しなくても……」
「とにかく、ワシが他の女に気安く手料理を振舞うなんてことないからな。だ・か・ら、それを食べられるお前は、超ウルトラスーパーに特別だと思え!」
言い終えて、大木の心臓が早鐘を打った。
直前の言葉なんて、もう「好き」と言っているようなものだ。
空がそう受け止めていたとしたら……
大木の鼓動が高鳴っていく中、空がしみじみと言った。
「そっか。こんなに美味しい大木先生の料理を食べられるのが特別なんだ……」
(つ、ついにワシの気持ちに気づきおったか……!)
大木の心拍数はいやがうえにも上昇を続ける。
しかし、
「ああ、私……食堂のおばちゃんのアシスタントしててよかった!」
と満面の笑みでそう言われた。
どうやら、大木の手料理を食べれるのは、自分が忍術学園の仕事の一環で来ているから、と解釈してしまったらしい。
ガクッ!
大木は地面に轟沈した。
「ま、全く……お前はどうしてそう受け取るんだ、このニブチンが!」
「ニブチン?ニブチンとくれば……怪我には?」
「ヨーチン」
「毛ガニは?」
「北海道……って、おい!落乱お約束のギャグをやるなぁぁっ!空、お前あの三人組のボケボケが移ったんじゃないのか!?」
「だって、乱太郎君たちがよく口にしているから、つい……アハハハハ」
「フン、まぁいい。しかし、今日は生憎野菜しかなかったな。次来たときはもっと精の付くものを食べさせてやる」
「え、嬉しい!今度来たときは、お料理何作ってくれるんですか?」
「うーん、そうだな。精のつくものと言えば……」
そう言って、大木は空をまじまじと見た。
「肉と魚で迷ってるけど、やっぱり肉にするか」
「ど、どういう意味ですか……?」
「いや、どっちが胸でどっちが背中なのかわからないお前の身体を見ていると、肉の方がいいかと思って」
一瞬ポカンとする空だったが、その言葉の意味を理解して、これ以上ないくらい顔を赤くした。
慌てて両腕で胸を隠している。
「大木先生!それって私が寸胴だって言いたいんですか!?」
「おや、違うのか?」
「~~~!もう、知りませんっ!」
空がフンとそっぽを向く。
大木に怒っているはずなのに、食欲には逆らえないのか野菜スティックはしれっと齧り続けている。
大木は思わず吹き出した。
「ガッハッハッ。冗談だよ、冗談!まぁ、そう怒るなって。次来たときは、うんと美味しいどこんじょー料理を食べさせてやるから!」
そう言って、ポンポンとぞんざいに空の頭を叩く。
「……美味しくなかったら、承知しませんからね」
空がぼそっと言う。
フグのように膨れた空の拗ね顔が、たまらなく可愛い。
大木がもう一度空の頭に手を置いた。
今度は大切なものを扱うように優しく。
「お前さんのハートを射止めるチャンスだというのに、不味いモンをつくるわけがなかろう」
手触りのいい髪の感触を掌に感じながら、誰にも聞こえないくらいの小さな声で、大木がそう呟いた。
