Happy Halloween 2024
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「「空さぁぁぁん!!!」」
自分の名を大合唱で呼ばれて、空が思わず振り返った。
「ええっ!」
空がぎょっとする。
目の前には、一枚の白い布を頭から全身まですっぽり被った怪しき子どもが三人いた。
各々の白い布には二つの穴が空いていて、その穴を通してこちらを見つめてくる。
一体誰だろう――
と考えるまでもなく、馴染みのある声で空には見当がついた。
「えーと、乱太郎君・しんべヱ君、それからきりちゃんでしょ」
「あたりでぇす!」
乱太郎がそう言って、白い布を剥がす。
しんべヱときり丸があとに続いた。
「みんな、この格好……一体どうしたの?」
「空さん、今日は『はろうぃん』ですよ。今町で大流行してるんです!」
「あれ?乱太郎君たち、ハロウィン知ってるんだ!」
「もちろん!ってつい最近ですけど~。一週間前に購入した「室町かわら版」に載ってたんです~。それを読んで、ボクたちお化けに変装してみました~!」
しんべヱが得意げに言う。
ちなみに室町かわら版というのは、万屋で売っている印刷物で、町で起こった事件や今後予定されているイベントなどのお知らせを載せている。
乱太郎たちがもう一度白い布を被り、お化けに扮した。
「というわけで、空さん、」
「「トリック・オア・トリート!」」
トリック・オア・トリート――お菓子をくれないとイタズラをしちゃうぞ、というお決まりの掛け声を受けて、空は慌ててお菓子を探した。
衣嚢 を確認したが、飴やクッキーなどのお菓子の類は全く見つからない。
空っぽだった。
「ど、どうしよう……お菓子持ってなくて。食堂に戻ればあるんだけどな」
「だめです!今すぐ出せないんでしたら、イタズラの方を選択したとみなします」
「ええっ!……イタズラかぁ。あまり変なのじゃなければ、そっちでもいいけど」
「大丈夫でぇす。その辺はボクたちが保障しますから!」
「じゃ、お菓子持ってない空さんはあそこの木の下に座ってください」
きり丸が少し離れたところにある、一本杉を指す。
三人組に誘導されると、空はしぶしぶ指定の位置で腰を下ろした。
「……これでいいの?」
「あと目を瞑ってください」
「は~い」
瞼の奥で、乱太郎たちがひそひそと話し合っている。
「じゃあ、さっきジャンケンで決めた通り、おれが真ん中で乱太郎としんべヱが左右な」
「「オーケー!」」
(一体どんなイタズラなんだろう……)
ドキドキしながら三人の出方を待つ。
そうこうするうちに、自分の周りにギュッと圧がかかるのがわかった。
三人が間を詰めてきたのだろう。
「「せ~の!」」
三人が同時に叫ぶ。
(来る……!)
思わず身構えた、そのときだった。
チュッ
小さいリップ音が聞こえた――そう思った瞬間には空の両頬、それから額に柔らかい感触がはしっていた。
「ん?」
空が眼を開けると、そこには三者三様の三人組がいた。
乱太郎は頬をほんのり赤らめているし、しんべヱは大成功と言わんばかりに満面の笑みを浮かべている。
きり丸はおちゃらけた態度であっかんべーをしていた。
「三人とも、もしかして……」
もしかしなくても、キスをしてくれたことだけはわかった。
頭の後ろで手を組みながら、ややそっぽを向いてきり丸が言った。
「空さん。今回の件、言い出しっぺは乱太郎としんべヱですからね。いつもきり丸ばかり甘えてずるいから、ハロウィンにかこつけて空さんに甘えたい、だってさ」
そう言われて、乱太郎としんべヱを見た。
二人は微笑んでいる。
「エヘヘ……たまには私たちもいいかな、って」
「ボクたちからのイタズラ喜んでくれましたか~?」
しばらく呆けていた空だったが、十歳の子どもたちが健気に愛を乞うている――そうわかると、全身から愛しさがこみ上げてきた。
たまらず三人を腕の中に包んだ。
「うん、とっても!乱太郎君、しんべヱ君、ありがとう。あと、きりちゃんも」
「「エヘヘ……」」
乱太郎としんべヱはやさしい温もりに陶然としている。
しかし、きり丸だけはふくれっ面だった。
「ちょっと空さん……おれだけついで見たいな言い方になってる」
「あ、ごめんごめん。拗ねない拗ねない、よしよし」
そう言って頭を撫でれば、わかりやすいほどきり丸の顔から険がとれた。
「三人とも、大好きだよ。素敵なハロウィンをありがとう」
「「どういたしまして!」」
空はいつまでも子どもたちの温もりを確かめていた。
***
「……」
この一連のやりとりを黙って見つめる二人の男がいた。
一人は建物の影から、もう一人は木の上からじっと見つめている。
いずれも神妙な面持ちで、同じものを手に握りしめていた。
それは、しんべヱたちが持っていたあの「室町かわら版」である。
((「はろうぃん」にかこつける……その手があったか!))
違う場所で全く同じことを考えたのは――言うまでもなく、半助と利吉――空を愛してやまない男二人だった。
その日の晩。
「り、利吉君がなぜここに!?」
「ど、土井先生こそ!!」
とそれぞれ吸血鬼と魔法使い(ウィザード)に仮装した半助と利吉は、空の部屋で思いがけず遭遇する。
この後何が起こったか、想像に難くない。
真夜中にもかかわらず、恋に燃える男二人が場外乱闘の大バトルを繰り広げた――翌日の忍術学園の話はそれで持ち切りだったという。
おしまい
自分の名を大合唱で呼ばれて、空が思わず振り返った。
「ええっ!」
空がぎょっとする。
目の前には、一枚の白い布を頭から全身まですっぽり被った怪しき子どもが三人いた。
各々の白い布には二つの穴が空いていて、その穴を通してこちらを見つめてくる。
一体誰だろう――
と考えるまでもなく、馴染みのある声で空には見当がついた。
「えーと、乱太郎君・しんべヱ君、それからきりちゃんでしょ」
「あたりでぇす!」
乱太郎がそう言って、白い布を剥がす。
しんべヱときり丸があとに続いた。
「みんな、この格好……一体どうしたの?」
「空さん、今日は『はろうぃん』ですよ。今町で大流行してるんです!」
「あれ?乱太郎君たち、ハロウィン知ってるんだ!」
「もちろん!ってつい最近ですけど~。一週間前に購入した「室町かわら版」に載ってたんです~。それを読んで、ボクたちお化けに変装してみました~!」
しんべヱが得意げに言う。
ちなみに室町かわら版というのは、万屋で売っている印刷物で、町で起こった事件や今後予定されているイベントなどのお知らせを載せている。
乱太郎たちがもう一度白い布を被り、お化けに扮した。
「というわけで、空さん、」
「「トリック・オア・トリート!」」
トリック・オア・トリート――お菓子をくれないとイタズラをしちゃうぞ、というお決まりの掛け声を受けて、空は慌ててお菓子を探した。
空っぽだった。
「ど、どうしよう……お菓子持ってなくて。食堂に戻ればあるんだけどな」
「だめです!今すぐ出せないんでしたら、イタズラの方を選択したとみなします」
「ええっ!……イタズラかぁ。あまり変なのじゃなければ、そっちでもいいけど」
「大丈夫でぇす。その辺はボクたちが保障しますから!」
「じゃ、お菓子持ってない空さんはあそこの木の下に座ってください」
きり丸が少し離れたところにある、一本杉を指す。
三人組に誘導されると、空はしぶしぶ指定の位置で腰を下ろした。
「……これでいいの?」
「あと目を瞑ってください」
「は~い」
瞼の奥で、乱太郎たちがひそひそと話し合っている。
「じゃあ、さっきジャンケンで決めた通り、おれが真ん中で乱太郎としんべヱが左右な」
「「オーケー!」」
(一体どんなイタズラなんだろう……)
ドキドキしながら三人の出方を待つ。
そうこうするうちに、自分の周りにギュッと圧がかかるのがわかった。
三人が間を詰めてきたのだろう。
「「せ~の!」」
三人が同時に叫ぶ。
(来る……!)
思わず身構えた、そのときだった。
チュッ
小さいリップ音が聞こえた――そう思った瞬間には空の両頬、それから額に柔らかい感触がはしっていた。
「ん?」
空が眼を開けると、そこには三者三様の三人組がいた。
乱太郎は頬をほんのり赤らめているし、しんべヱは大成功と言わんばかりに満面の笑みを浮かべている。
きり丸はおちゃらけた態度であっかんべーをしていた。
「三人とも、もしかして……」
もしかしなくても、キスをしてくれたことだけはわかった。
頭の後ろで手を組みながら、ややそっぽを向いてきり丸が言った。
「空さん。今回の件、言い出しっぺは乱太郎としんべヱですからね。いつもきり丸ばかり甘えてずるいから、ハロウィンにかこつけて空さんに甘えたい、だってさ」
そう言われて、乱太郎としんべヱを見た。
二人は微笑んでいる。
「エヘヘ……たまには私たちもいいかな、って」
「ボクたちからのイタズラ喜んでくれましたか~?」
しばらく呆けていた空だったが、十歳の子どもたちが健気に愛を乞うている――そうわかると、全身から愛しさがこみ上げてきた。
たまらず三人を腕の中に包んだ。
「うん、とっても!乱太郎君、しんべヱ君、ありがとう。あと、きりちゃんも」
「「エヘヘ……」」
乱太郎としんべヱはやさしい温もりに陶然としている。
しかし、きり丸だけはふくれっ面だった。
「ちょっと空さん……おれだけついで見たいな言い方になってる」
「あ、ごめんごめん。拗ねない拗ねない、よしよし」
そう言って頭を撫でれば、わかりやすいほどきり丸の顔から険がとれた。
「三人とも、大好きだよ。素敵なハロウィンをありがとう」
「「どういたしまして!」」
空はいつまでも子どもたちの温もりを確かめていた。
***
「……」
この一連のやりとりを黙って見つめる二人の男がいた。
一人は建物の影から、もう一人は木の上からじっと見つめている。
いずれも神妙な面持ちで、同じものを手に握りしめていた。
それは、しんべヱたちが持っていたあの「室町かわら版」である。
((「はろうぃん」にかこつける……その手があったか!))
違う場所で全く同じことを考えたのは――言うまでもなく、半助と利吉――空を愛してやまない男二人だった。
その日の晩。
「り、利吉君がなぜここに!?」
「ど、土井先生こそ!!」
とそれぞれ吸血鬼と魔法使い(ウィザード)に仮装した半助と利吉は、空の部屋で思いがけず遭遇する。
この後何が起こったか、想像に難くない。
真夜中にもかかわらず、恋に燃える男二人が場外乱闘の大バトルを繰り広げた――翌日の忍術学園の話はそれで持ち切りだったという。
おしまい
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