禍福は糾える縄の如し
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構ってほしくないときに限って、声をかけられるのがこの世の常なのだろうか。
「ああ!利吉さん、いたいた!」
振り返ると、そこには無駄に笑顔が明るい事務員――小松田秀作がいた。
ハッキリ言って、自分と小松田の相性はよろしくない。
「も~う!随分と探しましたよ。早く食堂に行きましょう!利吉さんのために美味しいお菓子が用意してあるんです!」
いきなり出くわしたかと思えば、一体何なんだ、この男は……。
しばらく無反応を貫いた利吉だったが、小松田がいきなり腕をとって歩き出すので、さすがに一言言わざるを得なくなった。
「小松田さん、申し訳ないのですが……今腹は空いてません。忍術学園 に着いてすぐ食堂のおばちゃんに挨拶した時に、うどんをご馳走してもらったし……」
「ええっ!そうなんですか~?」
小松田が顔を曇らせる。
嘘は言っていない。本当だった。
というか、今はとても虫の居所が悪く、何かをつまむ気になんてなれなかった。
原因は父との諍い――
ほんの少し前まで利吉は一年は組の職員室で父である山田伝蔵と雑談していた。
最初は話が弾んでいたのに、話題が母の話に移ると、伝蔵に対してつい小言が多くなる。
それをきっかけに二人の仲は険悪になってしまった。
「大体、父上は仕事に集中しすぎなんです。そんなんだと、いつか母上に三行半突き付けられますよ!」
「何だと!?ワシは家族のためにいつだって真剣なんだ。お前こそ長期休みをとって親孝行の一つくらいしてあげたらどうなんだ!」
「私は今が働き盛りなんです。お年のことを考えて、もう少しゆっくりされるべきなのは父上の方です!」
「なぁに!ワシはまだまだ現役だぞ!」
「どーだか。この前火縄銃の的、外してたじゃないですか」
「あれは……弘法も筆の誤りというやつだ!いつものワシなら百発百中で、ひよっこ忍者のお前など足元にも及ばんわい」
「ひよっこ忍者ではありません!こんなこと言いたくなかったけど……私はもうとっくに父上を超えています!」
「なんだと~!このスットコドッコイが!」
「スットコドッコイはそっちですよ!」
「むむむ……親に対するその態度は何だ!こうなったら、お前とは絶縁だ!もう何の血のつながりもないわい!」
「それはこっちの望むところ!ああ、父上と縁が切れてせいせいします!」
強烈な睨み合いのあと、最後はフン!と互いにそっぽを向いて別れたのだ。
「利吉さん、ほんとにほんとに来ないんですか?」
「ああ。すまないが、私抜きで楽しんでくれ。みんなにはあとで謝っておくから」
口を尖らせる小松田を振り切って、一人になれる場所へ行こうと思ったそのときだった。
「残念だなぁ……『利吉さんが来るから、もてなさなきゃ!』って張り切った空さんが美味しいお饅頭をつくって待ってるのに」
そんな大事なこと、早く言えと思った。
「行く」
「え?」
「だから、食堂に行くよ。みんなが待ってるんだろう?」
「え……あ、はい!」
小松田の顔がパァッと輝く。
「やっぱり利吉さんもお饅頭が好きなんですね。美味しいですよね~」
好きなのはお饅頭じゃなくて、空さん。
このニブチンが、と胸底で毒づきながら、ふたりで食堂へと向かった。
「ああ!利吉さん、いたいた!」
振り返ると、そこには無駄に笑顔が明るい事務員――小松田秀作がいた。
ハッキリ言って、自分と小松田の相性はよろしくない。
「も~う!随分と探しましたよ。早く食堂に行きましょう!利吉さんのために美味しいお菓子が用意してあるんです!」
いきなり出くわしたかと思えば、一体何なんだ、この男は……。
しばらく無反応を貫いた利吉だったが、小松田がいきなり腕をとって歩き出すので、さすがに一言言わざるを得なくなった。
「小松田さん、申し訳ないのですが……今腹は空いてません。
「ええっ!そうなんですか~?」
小松田が顔を曇らせる。
嘘は言っていない。本当だった。
というか、今はとても虫の居所が悪く、何かをつまむ気になんてなれなかった。
原因は父との諍い――
ほんの少し前まで利吉は一年は組の職員室で父である山田伝蔵と雑談していた。
最初は話が弾んでいたのに、話題が母の話に移ると、伝蔵に対してつい小言が多くなる。
それをきっかけに二人の仲は険悪になってしまった。
「大体、父上は仕事に集中しすぎなんです。そんなんだと、いつか母上に三行半突き付けられますよ!」
「何だと!?ワシは家族のためにいつだって真剣なんだ。お前こそ長期休みをとって親孝行の一つくらいしてあげたらどうなんだ!」
「私は今が働き盛りなんです。お年のことを考えて、もう少しゆっくりされるべきなのは父上の方です!」
「なぁに!ワシはまだまだ現役だぞ!」
「どーだか。この前火縄銃の的、外してたじゃないですか」
「あれは……弘法も筆の誤りというやつだ!いつものワシなら百発百中で、ひよっこ忍者のお前など足元にも及ばんわい」
「ひよっこ忍者ではありません!こんなこと言いたくなかったけど……私はもうとっくに父上を超えています!」
「なんだと~!このスットコドッコイが!」
「スットコドッコイはそっちですよ!」
「むむむ……親に対するその態度は何だ!こうなったら、お前とは絶縁だ!もう何の血のつながりもないわい!」
「それはこっちの望むところ!ああ、父上と縁が切れてせいせいします!」
強烈な睨み合いのあと、最後はフン!と互いにそっぽを向いて別れたのだ。
「利吉さん、ほんとにほんとに来ないんですか?」
「ああ。すまないが、私抜きで楽しんでくれ。みんなにはあとで謝っておくから」
口を尖らせる小松田を振り切って、一人になれる場所へ行こうと思ったそのときだった。
「残念だなぁ……『利吉さんが来るから、もてなさなきゃ!』って張り切った空さんが美味しいお饅頭をつくって待ってるのに」
そんな大事なこと、早く言えと思った。
「行く」
「え?」
「だから、食堂に行くよ。みんなが待ってるんだろう?」
「え……あ、はい!」
小松田の顔がパァッと輝く。
「やっぱり利吉さんもお饅頭が好きなんですね。美味しいですよね~」
好きなのはお饅頭じゃなくて、空さん。
このニブチンが、と胸底で毒づきながら、ふたりで食堂へと向かった。