杭瀬村へ行こう! その3
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雑巾と箒をとっかえひっかえして、大木雅之助が家じゅうを掃除しまくっている。
「居間よーし、炊事場よーし……フッ、これで完璧だな」
家の中を見渡せば、塵ひとつない。
大木が得意げな顔で言った。
「今日は食堂のおばちゃんと空が来る日だからな。女子 たちがくつろげるようにしておかないと」
以前食堂のおばちゃんと空が来た際、「大木先生ズボラだから期待してなかったけど、結構きれいにしているじゃない」と褒められてから、掃除をするのが日課となっていた。
しかしながら、決して大木自身が綺麗好きや潔癖症というわけではない。
入念に掃除をするのは、あくまで空たちが来る直前だけだ。
「できる男は掃除もこなす……どこんじょーがモットーのわしなら、なんのその!」
ガッハッハと反り返りながら、大口開けて笑う。
そのときだった。
ドンドンと木戸を叩く音が響く。
「大木先生、いますか?」
声の主は食堂のおばちゃんだった。
(おお、来た来た!)
大木が待ってました!とばかりに顔を輝かせる。
今日はどう空をからかってやろうか……。
「食堂のおばちゃん、今開けまーす!」
といいながらも、脳裏に浮かぶのは空の顔ばかり。
早く会いたい。
ワクワクしながら、戸を横に引いた。
「おっ、よく来たな。食堂のおばちゃん!って、あれえっ???」
開いた瞬間、大木はずっこけそうになった。
食堂のおばちゃんはいるが、空の姿が見当たらない。
代わりにいたのは、
「「こんにちは~!!!」」
元気いっぱいのお騒がせ少年たちこと、乱太郎、きり丸、しんベヱだった。
(ど、どういうことだ!?)
肝心の空がいない。
パニックを抑えながら、大木は何とか冷静に返した。
「おお、乱太郎たち、よく来たな!ところで、食堂のおばちゃん。空は来てないようだけど、」
「ああ、それが……」
おばちゃんは眉を八の字にして続けた。
「空ちゃん、今朝から調子が悪いみたいで、医務室で寝込んでるわ。というわけで、空ちゃんは今日はお休みよ」
「は、はぁ……」
「代わりに、この子達を連れて来たから!」
「大木先生、私たちに任せてください!お手伝い、ぐわぁんばぁりまぁす!」
「おれも!」
「ボクも!」
やる気満々の三人組の手前、大木は「よろしくな!」と威勢よく応えざるを得ない。
だが、内心は空が来ていないことに相当ショックを受けていた。
***
簡単な挨拶を済ませると、食堂のおばちゃんはいつも通り村長の家に直行した。
今大木は乱きりしんと野菜の収穫をしている。
「今日はラッキーだったね」
「うん。授業に出るよりも、こうやって身体を動かした方が気持ちいいしな」
「食堂のおばちゃんが作った、杭瀬村特製の野菜料理も食べれるんでしょ~!おかげで黒古毛先生が作ったゴハンを食べなくて済むし~、もぉう最っ高ぉ~!」
ご機嫌で畑作業に勤しむ三人に対し、大木の表情はかなり暗い。
まるで死人のように顔から血の色が失せている。
さらに、「どこんじょー」と口走っていても、動きにキレがなかった。
空の不在が明らかに影を落としていた。
(しかし、空が体調不良とは……)
華奢な印象の通り、畑仕事を手伝わせれば非力だが、病弱という印象はない。
ふっくらとした血色の良い頬やみずみずしい黒髪は健康の象徴。
そんな空が身体の不調を訴えるとは、意外にも意外だった。
(ここに来ればいつも軽く山盛りごはんを平らげるし、元気いっぱいのあいつがのう……)
大木の脳裏にはからかわれて拗ねている、空の可愛らしい顔が浮かんでいる。
だが、ここで大木はハッと顔を強張らせた。
(ひょっとして、あいつ……ここに来るのが面倒くさいから代理を立てた、ってことはないよな?)
(でも、イヤイヤ言いつつ、ちゃんと仕事はやるし、ラビちゃんやケロちゃんも可愛がってて。おばちゃんの美味しい野菜料理もしっかり食べて……結構楽しそうにしておるが、)
ここで、大木は最悪のケースを想像してしまう。
(ま、まさか……わしに会いたくないもんだから、仮病を使ったとか!?)
不安が徐々に大きくなり、大木の被害妄想は止まらない。
このとき、以下のようなことが脳内で展開されていた。
空が食堂のおばちゃんに泣きついている。
「食堂のおばちゃん!私、もう杭瀬村に行きたくありません……だって、だって、大木先生にいっつもいじめられるんだもん!」
「そうね。確かに大木先生の態度は目に余るわね。よし、わかった!今日は仮病を使って、休んじゃいなさい。他のみんなと口裏あわせておくから」
「やったぁ!」
かくして、空の杭瀬村行きは中止となった――
ガガーン!!
(そんなこと、あるわけ、あるわけ……あるわけがない!)
「イヤだぁ!誰か嘘だと言ってくれぇぇぇ!!!」
頭を振りながら、無意識のうちにそう叫んでいた。
近くにいた乱太郎たち三人が思わず目を丸くする。
「お、おい……大木先生どうしだんだ、一体?」
「さぁ……?」
いきなりの大木の錯乱ぶりに、乱太郎たちは呆然と見つめることしかできなかった。
「居間よーし、炊事場よーし……フッ、これで完璧だな」
家の中を見渡せば、塵ひとつない。
大木が得意げな顔で言った。
「今日は食堂のおばちゃんと空が来る日だからな。
以前食堂のおばちゃんと空が来た際、「大木先生ズボラだから期待してなかったけど、結構きれいにしているじゃない」と褒められてから、掃除をするのが日課となっていた。
しかしながら、決して大木自身が綺麗好きや潔癖症というわけではない。
入念に掃除をするのは、あくまで空たちが来る直前だけだ。
「できる男は掃除もこなす……どこんじょーがモットーのわしなら、なんのその!」
ガッハッハと反り返りながら、大口開けて笑う。
そのときだった。
ドンドンと木戸を叩く音が響く。
「大木先生、いますか?」
声の主は食堂のおばちゃんだった。
(おお、来た来た!)
大木が待ってました!とばかりに顔を輝かせる。
今日はどう空をからかってやろうか……。
「食堂のおばちゃん、今開けまーす!」
といいながらも、脳裏に浮かぶのは空の顔ばかり。
早く会いたい。
ワクワクしながら、戸を横に引いた。
「おっ、よく来たな。食堂のおばちゃん!って、あれえっ???」
開いた瞬間、大木はずっこけそうになった。
食堂のおばちゃんはいるが、空の姿が見当たらない。
代わりにいたのは、
「「こんにちは~!!!」」
元気いっぱいのお騒がせ少年たちこと、乱太郎、きり丸、しんベヱだった。
(ど、どういうことだ!?)
肝心の空がいない。
パニックを抑えながら、大木は何とか冷静に返した。
「おお、乱太郎たち、よく来たな!ところで、食堂のおばちゃん。空は来てないようだけど、」
「ああ、それが……」
おばちゃんは眉を八の字にして続けた。
「空ちゃん、今朝から調子が悪いみたいで、医務室で寝込んでるわ。というわけで、空ちゃんは今日はお休みよ」
「は、はぁ……」
「代わりに、この子達を連れて来たから!」
「大木先生、私たちに任せてください!お手伝い、ぐわぁんばぁりまぁす!」
「おれも!」
「ボクも!」
やる気満々の三人組の手前、大木は「よろしくな!」と威勢よく応えざるを得ない。
だが、内心は空が来ていないことに相当ショックを受けていた。
***
簡単な挨拶を済ませると、食堂のおばちゃんはいつも通り村長の家に直行した。
今大木は乱きりしんと野菜の収穫をしている。
「今日はラッキーだったね」
「うん。授業に出るよりも、こうやって身体を動かした方が気持ちいいしな」
「食堂のおばちゃんが作った、杭瀬村特製の野菜料理も食べれるんでしょ~!おかげで黒古毛先生が作ったゴハンを食べなくて済むし~、もぉう最っ高ぉ~!」
ご機嫌で畑作業に勤しむ三人に対し、大木の表情はかなり暗い。
まるで死人のように顔から血の色が失せている。
さらに、「どこんじょー」と口走っていても、動きにキレがなかった。
空の不在が明らかに影を落としていた。
(しかし、空が体調不良とは……)
華奢な印象の通り、畑仕事を手伝わせれば非力だが、病弱という印象はない。
ふっくらとした血色の良い頬やみずみずしい黒髪は健康の象徴。
そんな空が身体の不調を訴えるとは、意外にも意外だった。
(ここに来ればいつも軽く山盛りごはんを平らげるし、元気いっぱいのあいつがのう……)
大木の脳裏にはからかわれて拗ねている、空の可愛らしい顔が浮かんでいる。
だが、ここで大木はハッと顔を強張らせた。
(ひょっとして、あいつ……ここに来るのが面倒くさいから代理を立てた、ってことはないよな?)
(でも、イヤイヤ言いつつ、ちゃんと仕事はやるし、ラビちゃんやケロちゃんも可愛がってて。おばちゃんの美味しい野菜料理もしっかり食べて……結構楽しそうにしておるが、)
ここで、大木は最悪のケースを想像してしまう。
(ま、まさか……わしに会いたくないもんだから、仮病を使ったとか!?)
不安が徐々に大きくなり、大木の被害妄想は止まらない。
このとき、以下のようなことが脳内で展開されていた。
空が食堂のおばちゃんに泣きついている。
「食堂のおばちゃん!私、もう杭瀬村に行きたくありません……だって、だって、大木先生にいっつもいじめられるんだもん!」
「そうね。確かに大木先生の態度は目に余るわね。よし、わかった!今日は仮病を使って、休んじゃいなさい。他のみんなと口裏あわせておくから」
「やったぁ!」
かくして、空の杭瀬村行きは中止となった――
ガガーン!!
(そんなこと、あるわけ、あるわけ……あるわけがない!)
「イヤだぁ!誰か嘘だと言ってくれぇぇぇ!!!」
頭を振りながら、無意識のうちにそう叫んでいた。
近くにいた乱太郎たち三人が思わず目を丸くする。
「お、おい……大木先生どうしだんだ、一体?」
「さぁ……?」
いきなりの大木の錯乱ぶりに、乱太郎たちは呆然と見つめることしかできなかった。