いつだって、マイダーリン
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私の恋人、土井半助さん。
やさしくて、凛々しくて、面倒見が良くて生徒に慕われている立派な忍者の先生。
だけど、実はかなり心配性でヤキモチ焼きみたい。
先日、こんなことがあった。
忍術学園の入門周りを掃除していると、遠くから誰か人がやってくる。
利吉さんだった。
「利吉さん、こんにちは!何だか久しぶりですね」
「ええ。ずっと仕事が続いていたので……。やっと今日休みが取れました」
「利吉さん、少しやつれていませんか?ちょっと心配です……」
プロ忍の中でも注目性、将来性ナンバーワンの利吉さんはお仕事の依頼が現在進行形で殺到中である。
周りから引っ張りだこ。
彼の顔つきから、ロクに休みを取っていないのが丸わかりだった。
こういう日は家で横になっていた方がいいのでは……と心配していたら、利吉さんは意外な答えを返してきた。
「だから、ここに来たんですよ」
「へっ!?」
「あなたの顔を見たら、癒されますからね」
聞いていて歯が浮くようなセリフも、美形の利吉さんが言えば、しっかりと乙女心に響く言葉に変換される。
恋人がいる身でありながら、不覚にも私はときめいてしまうのだった。
「利吉さん……」
私のリアクションで、利吉さんはいけると踏んだらしく、優しく私の手をとる。
そのときだった。
シュッ
突如現れた黒い影が私を抱え上げて、どこかへ連れ去っていく。
利吉さんがもうあんなに遠い。
「危ないところだった!ふぅ、全く……利吉君は油断も隙もない!」
「……」
その大きい影の正体は、もちろん私がお付き合いしている人――半助さん。
私を抱きかかえて、軽やかに屋根から屋根を伝っていく。
人気の無い建物と建物の隙間に入った半助さんは、私を下ろすとフゥと深いため息をついた。
「あまり心配かけさせないでくれ」
半助さんは私の顎を持ち上げて強引に唇を奪う。
まるで自分の所有物だと動物がマーキングするように、唇を激しく貪られた。
***
それから、こんなこともあった。
学園長の生首フィギュアを片手に、六年生の立花仙蔵君と話していたときのこと――
「仙蔵君って……本当に火薬の扱いに詳しいんだね!」
「まぁ、それに関しては学園一だと自負していますよ」
「火薬……火薬……それなら、火器を扱う四年生の田村三木衛門君とはどっちが凄いの?」
「もちろん、私に決まっています」
仙蔵君は自信満々に断言した。
うーん、と思わず唸ってしまう。
仙蔵君はドヤ顔すら気品があり、様になっている。
これは、女の子にモテる。
こんなに威風堂々と構えられてしまっては、私も彼を持て囃さざるを得ない。
「やっぱり仙蔵君って優秀なんだね!この前も難しい忍びの課題を、たまたま現場に居合わせたしんべヱ君と喜三太君の三人でやり遂げたって聞いたけど」
「……」
しんべヱ君と喜三太君の名前を出した時、あの秀麗な顔が崩れ、どこか怒ったような表情で拳を振るわせる仙蔵君。
そっとしておいてほしい――そう言いたげな様子だった。
仙蔵君は二人のことを振り切るように別の話題について語っていく。
そのうち機嫌が直ったようで、あの冷静で落ち着きのある仙蔵君が饒舌に語る。
珍しい。
彼がいかに素晴らしい忍たまかをうんうんと頷きながら聞いている、そんな時だった。
シュッ
またもやあの大きい影が私の前に現れる。
完全に連れ去られてしまう前に見た、仙蔵君の呆けた顔が何とも印象的だった。
「全く、六年生にもなると、下手に色気を出すから油断できんな!」
「……」
私をかっさらう張本人は……もちろん半助さん。
周囲の重力を無視するかのごとく軽快に跳んでいく。
今回は忍術学園の塀を超えた先にある森の中で下ろされた。
半助さん、この為だけに小松田さんに外出許可を届け出ているとか。
普段あんなに忙しいのに、どこにそんな暇があるのやら。
「空……年下だからって、絶対に絶対に気を許しちゃだめだぞ」
口説かれていたわけでもないのに。
半助さんの顔つきは真剣そのものだった。
きつく私を抱き締める。
その後は、執拗に私の唇に吸い付いてきた。
***
というわけで、利吉さんや上級生の忍たまたちと話すとき、他にも雑度さんが来た日は、私はこんな感じで半助さんに攫われてしまう。
私の想いの中心は、いつも半助さんなのに。
どうも今一つ信用されていないみたい。
安心させる言葉をかけたくても、半助さんはキスするだけして忽然と姿を消すから、かけれずじまいなのだ。
そういうことが何度も積み重なったある日のこと。
私はしんべヱ君と一緒に、五年い組の久々知兵助君とお豆腐作りのお手伝いをしている。
豆腐をこよなく愛する久々知君が凄いのは、その知識だけではない。
作るのだって職人級だ。
その実力はおばちゃんからも折り紙付きで、忍術学園の食卓にも時々登場している。
豆腐小僧の異名は伊達ではないのだ。
さて、豆腐作り。
今、私たちは大豆から豆乳に加工して、そこににがりを入れて固めている。
完全に成型するまで、あともう少しという状況だった。
「ボク、はやく食べた~い!」
「もうちょっとだからな、しんべえ」
よだれを垂らして待つしんべヱ君に、久々知君はやさしく微笑む。
見ていてほのぼのとする光景だったが、急にしんべヱ君が久々知君に抱き着いた。
「わぁ!久々知先輩から豆乳の良い匂いがします!」
「こ、こら、しんべえ!」
しんべヱ君は久々知君の体をクンクンと嗅ぎまくっている。
おかげで、久々知君の制服は鼻水べったりとなってしまった……合掌。
そう言えば、久々知君の身体は豆乳の香りがする、と誰かが言ってたのを思い出した。
好奇心旺盛な私はその噂を検証すべく、しんべヱ君の反対側からそっと久々知君に近づいた。
「久々知君、ちょっとごめんね」
「あ、あの……空さん!?」
私も久々知君に近づいて、彼の匂いを大きく吸い込む。
確かに、ほのかに豆乳の甘い香りがするような……。
ふと久々知君を見れば、何だか様子がおかしい。
焦ったような、困ったような顔で私を見ている。
顔が真っ赤だった。
だけど、そんなことはお構いなしで、私は久々知君の肩に手を置いた。
「ごめん、もうちょっとだけ近づくね」
久々知君の首元へさらに顔を近づける最中に、それは起こった。
シュッ
???
ほんの一瞬、ふわりと身体が宙に浮く。
だけど、身体は地に着くことなく、しっかりと逞しい腕に支えられていた。
いきなり私にこういうことする人物は、あの人しかいない。
「半助さん!」
「……」
半助さんは何かを言いたそうな表情だったけど、それを必死に抑え込んで我慢している。
頭には怒りの四つ角マークが見えた。
所謂、おかんむり状態だった。
今日は誰もいない用具倉庫で半助さんの足が止まった。
私はまだ抱きかかえられたまま。
半助さんは開口一番、私に向かって怒号を飛ばしてきた。
「コラコラ、空!自分から近づいてどうするんだ!?あんなことするなんて、言語道断だぞ!」
「だって……久々知君、豆乳の匂いがするらしいし。つい、検証したくなっちゃって……エへ」
「エへ。じゃない!駄目なものはだめ!男に無防備すぎる!」
「ていうか……半助さん。大体、どうやってわたしのこと、観察してるんですか?」
これに尽きる。
私の身体にセ〇ムの最新式センサーでもつけているのかっていうくらい、四六時中監視されている。
呆れるくらいに心配性なんだから。
でも、そんな半助さんが嫌ではない。
ううん、嫌ではない、は間違い。
半助さんに攫われた瞬間、その身体から伝わる温もりに愛されているって実感を得られて……素直に嬉しい。
私のことをこれだけ心配してくれる半助さんを、私は……どうしようもなく愛している。
「細かいことは気にするな。とにかく、ほんっとうに君は私に心配をかけるんだから!」
そう言い終えて、半助さんが毎度お馴染みのため息をつく。
私はもう何回このため息をつく姿を見たことだろうか。
労うように、半助さんの頭を撫でた。
「よしよし」
その言葉とともに撫で続けると、半助さんの顔から急速に怒りが失われる。
反応に困る、と言いたげなその表情。
私よりもずっと年上なのに……可愛らしい。
「よしよし」
「……私は犬か?」
「犬みたいに可愛いですよ」
「……」
あらら。黙り込んでしまった。
そのままじっと見つめたら、半助さんは完全に照れてしまった。
首から上の肌の色は紅い。
「半助さん、顔真っ赤」
「……」
「半助さん」
「……何だ?」
「いつも、半助さんにさらわれた後、チュウされてすぐ消えちゃうから、言えなかったんですけど……」
「うん……」
「私、半助さん一筋ですよ」
私は顔を近づけて、唇を唇にあてがった。
その後のキスは……あっという間に主導権を奪われてしまった―――
***
食堂に残されたしんべえと兵助は、型から取り出した豆腐を切っている。
(あれが、噂で聞いていた土井先生の話ね。おっかねえ……!)
(どうしよう。明日の火薬委員会、顔合わせづらいな……)
よだれを垂らしているしんべえの横で、気まずそうな顔の兵助はそんなことを思っていた。
やさしくて、凛々しくて、面倒見が良くて生徒に慕われている立派な忍者の先生。
だけど、実はかなり心配性でヤキモチ焼きみたい。
先日、こんなことがあった。
忍術学園の入門周りを掃除していると、遠くから誰か人がやってくる。
利吉さんだった。
「利吉さん、こんにちは!何だか久しぶりですね」
「ええ。ずっと仕事が続いていたので……。やっと今日休みが取れました」
「利吉さん、少しやつれていませんか?ちょっと心配です……」
プロ忍の中でも注目性、将来性ナンバーワンの利吉さんはお仕事の依頼が現在進行形で殺到中である。
周りから引っ張りだこ。
彼の顔つきから、ロクに休みを取っていないのが丸わかりだった。
こういう日は家で横になっていた方がいいのでは……と心配していたら、利吉さんは意外な答えを返してきた。
「だから、ここに来たんですよ」
「へっ!?」
「あなたの顔を見たら、癒されますからね」
聞いていて歯が浮くようなセリフも、美形の利吉さんが言えば、しっかりと乙女心に響く言葉に変換される。
恋人がいる身でありながら、不覚にも私はときめいてしまうのだった。
「利吉さん……」
私のリアクションで、利吉さんはいけると踏んだらしく、優しく私の手をとる。
そのときだった。
シュッ
突如現れた黒い影が私を抱え上げて、どこかへ連れ去っていく。
利吉さんがもうあんなに遠い。
「危ないところだった!ふぅ、全く……利吉君は油断も隙もない!」
「……」
その大きい影の正体は、もちろん私がお付き合いしている人――半助さん。
私を抱きかかえて、軽やかに屋根から屋根を伝っていく。
人気の無い建物と建物の隙間に入った半助さんは、私を下ろすとフゥと深いため息をついた。
「あまり心配かけさせないでくれ」
半助さんは私の顎を持ち上げて強引に唇を奪う。
まるで自分の所有物だと動物がマーキングするように、唇を激しく貪られた。
***
それから、こんなこともあった。
学園長の生首フィギュアを片手に、六年生の立花仙蔵君と話していたときのこと――
「仙蔵君って……本当に火薬の扱いに詳しいんだね!」
「まぁ、それに関しては学園一だと自負していますよ」
「火薬……火薬……それなら、火器を扱う四年生の田村三木衛門君とはどっちが凄いの?」
「もちろん、私に決まっています」
仙蔵君は自信満々に断言した。
うーん、と思わず唸ってしまう。
仙蔵君はドヤ顔すら気品があり、様になっている。
これは、女の子にモテる。
こんなに威風堂々と構えられてしまっては、私も彼を持て囃さざるを得ない。
「やっぱり仙蔵君って優秀なんだね!この前も難しい忍びの課題を、たまたま現場に居合わせたしんべヱ君と喜三太君の三人でやり遂げたって聞いたけど」
「……」
しんべヱ君と喜三太君の名前を出した時、あの秀麗な顔が崩れ、どこか怒ったような表情で拳を振るわせる仙蔵君。
そっとしておいてほしい――そう言いたげな様子だった。
仙蔵君は二人のことを振り切るように別の話題について語っていく。
そのうち機嫌が直ったようで、あの冷静で落ち着きのある仙蔵君が饒舌に語る。
珍しい。
彼がいかに素晴らしい忍たまかをうんうんと頷きながら聞いている、そんな時だった。
シュッ
またもやあの大きい影が私の前に現れる。
完全に連れ去られてしまう前に見た、仙蔵君の呆けた顔が何とも印象的だった。
「全く、六年生にもなると、下手に色気を出すから油断できんな!」
「……」
私をかっさらう張本人は……もちろん半助さん。
周囲の重力を無視するかのごとく軽快に跳んでいく。
今回は忍術学園の塀を超えた先にある森の中で下ろされた。
半助さん、この為だけに小松田さんに外出許可を届け出ているとか。
普段あんなに忙しいのに、どこにそんな暇があるのやら。
「空……年下だからって、絶対に絶対に気を許しちゃだめだぞ」
口説かれていたわけでもないのに。
半助さんの顔つきは真剣そのものだった。
きつく私を抱き締める。
その後は、執拗に私の唇に吸い付いてきた。
***
というわけで、利吉さんや上級生の忍たまたちと話すとき、他にも雑度さんが来た日は、私はこんな感じで半助さんに攫われてしまう。
私の想いの中心は、いつも半助さんなのに。
どうも今一つ信用されていないみたい。
安心させる言葉をかけたくても、半助さんはキスするだけして忽然と姿を消すから、かけれずじまいなのだ。
そういうことが何度も積み重なったある日のこと。
私はしんべヱ君と一緒に、五年い組の久々知兵助君とお豆腐作りのお手伝いをしている。
豆腐をこよなく愛する久々知君が凄いのは、その知識だけではない。
作るのだって職人級だ。
その実力はおばちゃんからも折り紙付きで、忍術学園の食卓にも時々登場している。
豆腐小僧の異名は伊達ではないのだ。
さて、豆腐作り。
今、私たちは大豆から豆乳に加工して、そこににがりを入れて固めている。
完全に成型するまで、あともう少しという状況だった。
「ボク、はやく食べた~い!」
「もうちょっとだからな、しんべえ」
よだれを垂らして待つしんべヱ君に、久々知君はやさしく微笑む。
見ていてほのぼのとする光景だったが、急にしんべヱ君が久々知君に抱き着いた。
「わぁ!久々知先輩から豆乳の良い匂いがします!」
「こ、こら、しんべえ!」
しんべヱ君は久々知君の体をクンクンと嗅ぎまくっている。
おかげで、久々知君の制服は鼻水べったりとなってしまった……合掌。
そう言えば、久々知君の身体は豆乳の香りがする、と誰かが言ってたのを思い出した。
好奇心旺盛な私はその噂を検証すべく、しんべヱ君の反対側からそっと久々知君に近づいた。
「久々知君、ちょっとごめんね」
「あ、あの……空さん!?」
私も久々知君に近づいて、彼の匂いを大きく吸い込む。
確かに、ほのかに豆乳の甘い香りがするような……。
ふと久々知君を見れば、何だか様子がおかしい。
焦ったような、困ったような顔で私を見ている。
顔が真っ赤だった。
だけど、そんなことはお構いなしで、私は久々知君の肩に手を置いた。
「ごめん、もうちょっとだけ近づくね」
久々知君の首元へさらに顔を近づける最中に、それは起こった。
シュッ
???
ほんの一瞬、ふわりと身体が宙に浮く。
だけど、身体は地に着くことなく、しっかりと逞しい腕に支えられていた。
いきなり私にこういうことする人物は、あの人しかいない。
「半助さん!」
「……」
半助さんは何かを言いたそうな表情だったけど、それを必死に抑え込んで我慢している。
頭には怒りの四つ角マークが見えた。
所謂、おかんむり状態だった。
今日は誰もいない用具倉庫で半助さんの足が止まった。
私はまだ抱きかかえられたまま。
半助さんは開口一番、私に向かって怒号を飛ばしてきた。
「コラコラ、空!自分から近づいてどうするんだ!?あんなことするなんて、言語道断だぞ!」
「だって……久々知君、豆乳の匂いがするらしいし。つい、検証したくなっちゃって……エへ」
「エへ。じゃない!駄目なものはだめ!男に無防備すぎる!」
「ていうか……半助さん。大体、どうやってわたしのこと、観察してるんですか?」
これに尽きる。
私の身体にセ〇ムの最新式センサーでもつけているのかっていうくらい、四六時中監視されている。
呆れるくらいに心配性なんだから。
でも、そんな半助さんが嫌ではない。
ううん、嫌ではない、は間違い。
半助さんに攫われた瞬間、その身体から伝わる温もりに愛されているって実感を得られて……素直に嬉しい。
私のことをこれだけ心配してくれる半助さんを、私は……どうしようもなく愛している。
「細かいことは気にするな。とにかく、ほんっとうに君は私に心配をかけるんだから!」
そう言い終えて、半助さんが毎度お馴染みのため息をつく。
私はもう何回このため息をつく姿を見たことだろうか。
労うように、半助さんの頭を撫でた。
「よしよし」
その言葉とともに撫で続けると、半助さんの顔から急速に怒りが失われる。
反応に困る、と言いたげなその表情。
私よりもずっと年上なのに……可愛らしい。
「よしよし」
「……私は犬か?」
「犬みたいに可愛いですよ」
「……」
あらら。黙り込んでしまった。
そのままじっと見つめたら、半助さんは完全に照れてしまった。
首から上の肌の色は紅い。
「半助さん、顔真っ赤」
「……」
「半助さん」
「……何だ?」
「いつも、半助さんにさらわれた後、チュウされてすぐ消えちゃうから、言えなかったんですけど……」
「うん……」
「私、半助さん一筋ですよ」
私は顔を近づけて、唇を唇にあてがった。
その後のキスは……あっという間に主導権を奪われてしまった―――
***
食堂に残されたしんべえと兵助は、型から取り出した豆腐を切っている。
(あれが、噂で聞いていた土井先生の話ね。おっかねえ……!)
(どうしよう。明日の火薬委員会、顔合わせづらいな……)
よだれを垂らしているしんべえの横で、気まずそうな顔の兵助はそんなことを思っていた。