恋心
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育ちすぎてしまった私の恋心、君はどうしてくれる?――
私の前方に空君がいる。
君の姿を見ると、特に用もないのに話しかけてしまう。
「やあ、空く…」
「あ、空さんだ!この前くノ一教室に来たときに話してくれた、未来の着物のことなんですけど…」
「洋服のことね?どうしたの?」
横から割って出たのは、くノ一教室のユキ。
私の呼びかけもむなしく、ユキの声にかき消され、空君はくの一教室へと消えた。
…まぁ、こんな日もあるか。
また別の日。
偶然、学園の庭で空君に遭遇した。
今度こそ、君と話せる。
だが、私と空君の間に、ユキではない別のくノ一が現れた。
「空く…」
「空さん!ちょっとお願いがあって。今度の休日にユキちゃんとおシゲちゃんと出かけるんです。それで…髪飾り、借りてもいいですか?」
「もちろん!じゃあ、今から一緒に部屋に行って選ぼっか!トモミちゃんに似合うのはどれかなぁ…」
今度はトモミに邪魔され、空君はトモミとともに自室へ向かってしまった。
これは…しょうがないよな、うん。
さらに別の日。
学園長室に続く廊下でバッタリ空君に出くわした。
周りを見渡すが、誰もいない。
流石に今日は邪魔が入らないだろう。
「空くん…ちょっと時間ある?」
「はい……あれ?おシゲちゃん!?」
学園長室から一目散に私たちのところへ走ってきたのは、くノ一教室のシゲだった。
その手には、重箱らしきものが入った風呂敷包みを持っている。
「空さん!近くにいてちょうどよかったでしゅ!ほら、これ。今、おじいちゃまからお饅頭を沢山頂いたんでしゅ。今からくノ一教室で一緒に食べませんか~?」
「本当!?キャー!お饅頭大好き!食べる食べるー!」
というわけで、私はまたしても邪魔者、シゲに割って入られる。
まんまと食べ物につられた空君は、私に声をかけられたことなんぞ頭からすっぽり抜け落ちてる。
歓喜の声を上げ、二つ返事でくノ一教室へ向かった。
なんだなんだ!?一体、何なんだ!?
私に何か恨みがあるかってくらい絶妙のタイミングで邪魔が入る。
くノ一教室の女の子たちと仲良くなってから、しょっちゅう向こうへ出かけたり、つるんだりすることが多くなった。
私が話かけようとするときだけ、妙に仲が良くて。
これが女の連帯感ってやつか。
うーん、何て厄介なんだ…。
不貞腐れた私は、仕方なく職員室へ戻った。
山田先生は…席を外している。
荒んだ気持ちだから、独りになれて丁度良かった。
「はぁ…」
自分でもいかに落ち込んでるかってのがわかるくらい、一際大きい溜息を零した。
せめて一言でもいいから君と話して…心を満たしてから仕事したかったのに。
これでも忍術学園の教師なんだから、私は忙しいんだぞ。
それなのに…全く。
人の気も知らないで…、って知らないよな。
どれだけ、君の近くに居たいか。
どれだけ、君を想っているか。
「はぁ……」
ずっと引きずっていてもしょうがない。
気持ちを切り替えて、目の前の仕事を一つずつ片付けていくことにした。
山積みの仕事も段々捌けてきたころ、私を呼ぶ声が入り口の外から飛び込んできた。
「土井先生、いますかー?」
私の心をざわつかせる、この甘い声の主は世界中どこをさがしても、ただ一人だけだ。
「いるよ」
返事をすると、空君はゆっくりと戸を開ける。
お饅頭を乗せたお皿を持って、満面の笑みで私の許へ近づいてきた。
「おシゲちゃんにもらったんです。先生と一緒に食べようと思って。仕事忙しいですか?」
「ああ、見ての通りだ」
本当は、今すぐ一緒に食べて話をしたいけど、敢えて違う返事をする。
仕事に勤しむ忙しいフリ。目線も合わせない。
極めてそっけない対応を心掛けた。
すると君はしょんぼりとして下を向いてしまう。
「そうですか…」
私は心の中でほくそ笑んだ。
その残念がっている顔が見たかった。
私があれだけ君といる時間を望んだのに、君は気づく素振りすらないのが悔しくて。
同じような思いを味わってほしくて、腹いせに意地悪してみた。
大人気ない行為だとわかっているが、やらずにはいれなかった。
「……やっぱり、忙しいですよね……」
横目でチラチラと様子を窺えば、空君は心から悲しそうな顔で途方に暮れている。
その顔がまた…ため息が出るほど可愛くて。
ずっと、このつれない対応だと君が離れてしまうのはわかっている。
だから、適当に見計らって方向転換することも大事なわけで。
ここぞとばかりに、喜車の術を仕掛けていく。
「しょうがないな…仕事終わらせてから食べようかと思ったけど、折角だから、今食べようかな」
「ほんとですか!?」
一転して、目を輝かせ、はちきれんばかりの笑顔を見せてくれた。
面白いくらいわかりやすい彼女の反応に私も堪えきれず、笑みが零れてしまった。
「先生と一緒に食べたかったから、我慢した甲斐がありました。一個だけ味見しちゃったけど…」
…結局、先に食べたんかい!
食べ物に目がない…食いしん坊な君らしい。
お預けをくらっていた残りのお饅頭が食べれると分かった途端、顔がしんべえのような締まりのない顔になってる。
全く…折角、可愛い顔が台無し…になってないんだよな。
こういう顔ですら、愛おしく思えるのはきっともう、末期だな。
それにしても、私と一緒に食べたい、だなんて。
どうして、そう無意識に私の心をつかみにくるんだ。
君よりずっと大人なのに、柄にもなく舞い上がってしまう。
術を仕掛けたのは私なのに、結局手玉にとられているのは私なんだよな。
う~ん、非情に悔しい。
なんとか一矢報いたいもんだ。
「…やっぱり、この仕事終わってからにしてもいいか?」
「ダメです!さっき食べるって言ったじゃないですか!」
食べる気満々の君は、それ以外の選択肢を完全に許さないモードに突入した。
私の服を掴みながら、ちょっとねだる様な感じで押し切ろうとする。
真っすぐに私を見つめる、凛としたつぶらな瞳。
所謂、上目遣いという姿勢を彼女はとっている。
う~ん、いいな、コレ…。
こういう感じで駆け引きすれば、君の可愛い顔が近くで見れるんだな。
不満気にして、口を尖らせている顔ですら可愛い。
口許は…あんまり見ると、いかんいかん…。
その艶めかしい桃色の唇がどんな感触か知りたくなる。
触れたら柔らかそうで、いくらでも口吸いできそうだ。
無理矢理奪って、そのままなだれ込むように押し倒して…なんて邪な妄想、しょっちゅうしてる。
…目の前にいる君には口が裂けても言えないけど。
忍者の三禁を教える身でありながら、所詮、男なんてこんなものだ。
「土井先生…?」
何も発さなくなった私を不思議に思ったのか、首を傾げて顔を覗き込んできた。
一段と近くなった君の顔。その仕草。
これ以上はまずい。理性の限界を感じる。
さっきの妄想を現実にしたくてたまらないもう一人の自分がいる。
でも、そんな衝動的な行動をとって嫌われたら、今まで積み上げてきた信頼関係が全部パアだ。
何とかこの猛りを抑えなければ。
私は急いで、一旦彼女の方から離れてくれるように仕向ける。
「な、何でもない…それより、お茶を淹れてくれると嬉しいんだけど…」
「あ、そうでした!じゃあ、食堂で準備してきます」
そう言って、空君はお茶を用意しに食堂へと飛び出していった。
ふぅ…。
間一髪、危なかった。
君といれるのは嬉しいけど、同時に心臓に悪い。
ふと、空君が去ってから、身体の火照りに気づく。
全身から吹き出た汗で制服が肌にへばりついているし、心臓の音はうるさく鼓動したままだ。
「はぁ…」
ひとりになって一気に緊張が解けると、姿勢を崩して再び大きい溜息をついた。
こうやって私は、君の前だといとも簡単に余裕がなくなってしまう。
それでも、懲りない私はまた自ら君に近寄っていく。
このとどまるところを知らない厄介な恋心…どうやら君を手に入れるまで、じわりじわりと苦しめられそうだ。
私の前方に空君がいる。
君の姿を見ると、特に用もないのに話しかけてしまう。
「やあ、空く…」
「あ、空さんだ!この前くノ一教室に来たときに話してくれた、未来の着物のことなんですけど…」
「洋服のことね?どうしたの?」
横から割って出たのは、くノ一教室のユキ。
私の呼びかけもむなしく、ユキの声にかき消され、空君はくの一教室へと消えた。
…まぁ、こんな日もあるか。
また別の日。
偶然、学園の庭で空君に遭遇した。
今度こそ、君と話せる。
だが、私と空君の間に、ユキではない別のくノ一が現れた。
「空く…」
「空さん!ちょっとお願いがあって。今度の休日にユキちゃんとおシゲちゃんと出かけるんです。それで…髪飾り、借りてもいいですか?」
「もちろん!じゃあ、今から一緒に部屋に行って選ぼっか!トモミちゃんに似合うのはどれかなぁ…」
今度はトモミに邪魔され、空君はトモミとともに自室へ向かってしまった。
これは…しょうがないよな、うん。
さらに別の日。
学園長室に続く廊下でバッタリ空君に出くわした。
周りを見渡すが、誰もいない。
流石に今日は邪魔が入らないだろう。
「空くん…ちょっと時間ある?」
「はい……あれ?おシゲちゃん!?」
学園長室から一目散に私たちのところへ走ってきたのは、くノ一教室のシゲだった。
その手には、重箱らしきものが入った風呂敷包みを持っている。
「空さん!近くにいてちょうどよかったでしゅ!ほら、これ。今、おじいちゃまからお饅頭を沢山頂いたんでしゅ。今からくノ一教室で一緒に食べませんか~?」
「本当!?キャー!お饅頭大好き!食べる食べるー!」
というわけで、私はまたしても邪魔者、シゲに割って入られる。
まんまと食べ物につられた空君は、私に声をかけられたことなんぞ頭からすっぽり抜け落ちてる。
歓喜の声を上げ、二つ返事でくノ一教室へ向かった。
なんだなんだ!?一体、何なんだ!?
私に何か恨みがあるかってくらい絶妙のタイミングで邪魔が入る。
くノ一教室の女の子たちと仲良くなってから、しょっちゅう向こうへ出かけたり、つるんだりすることが多くなった。
私が話かけようとするときだけ、妙に仲が良くて。
これが女の連帯感ってやつか。
うーん、何て厄介なんだ…。
不貞腐れた私は、仕方なく職員室へ戻った。
山田先生は…席を外している。
荒んだ気持ちだから、独りになれて丁度良かった。
「はぁ…」
自分でもいかに落ち込んでるかってのがわかるくらい、一際大きい溜息を零した。
せめて一言でもいいから君と話して…心を満たしてから仕事したかったのに。
これでも忍術学園の教師なんだから、私は忙しいんだぞ。
それなのに…全く。
人の気も知らないで…、って知らないよな。
どれだけ、君の近くに居たいか。
どれだけ、君を想っているか。
「はぁ……」
ずっと引きずっていてもしょうがない。
気持ちを切り替えて、目の前の仕事を一つずつ片付けていくことにした。
山積みの仕事も段々捌けてきたころ、私を呼ぶ声が入り口の外から飛び込んできた。
「土井先生、いますかー?」
私の心をざわつかせる、この甘い声の主は世界中どこをさがしても、ただ一人だけだ。
「いるよ」
返事をすると、空君はゆっくりと戸を開ける。
お饅頭を乗せたお皿を持って、満面の笑みで私の許へ近づいてきた。
「おシゲちゃんにもらったんです。先生と一緒に食べようと思って。仕事忙しいですか?」
「ああ、見ての通りだ」
本当は、今すぐ一緒に食べて話をしたいけど、敢えて違う返事をする。
仕事に勤しむ忙しいフリ。目線も合わせない。
極めてそっけない対応を心掛けた。
すると君はしょんぼりとして下を向いてしまう。
「そうですか…」
私は心の中でほくそ笑んだ。
その残念がっている顔が見たかった。
私があれだけ君といる時間を望んだのに、君は気づく素振りすらないのが悔しくて。
同じような思いを味わってほしくて、腹いせに意地悪してみた。
大人気ない行為だとわかっているが、やらずにはいれなかった。
「……やっぱり、忙しいですよね……」
横目でチラチラと様子を窺えば、空君は心から悲しそうな顔で途方に暮れている。
その顔がまた…ため息が出るほど可愛くて。
ずっと、このつれない対応だと君が離れてしまうのはわかっている。
だから、適当に見計らって方向転換することも大事なわけで。
ここぞとばかりに、喜車の術を仕掛けていく。
「しょうがないな…仕事終わらせてから食べようかと思ったけど、折角だから、今食べようかな」
「ほんとですか!?」
一転して、目を輝かせ、はちきれんばかりの笑顔を見せてくれた。
面白いくらいわかりやすい彼女の反応に私も堪えきれず、笑みが零れてしまった。
「先生と一緒に食べたかったから、我慢した甲斐がありました。一個だけ味見しちゃったけど…」
…結局、先に食べたんかい!
食べ物に目がない…食いしん坊な君らしい。
お預けをくらっていた残りのお饅頭が食べれると分かった途端、顔がしんべえのような締まりのない顔になってる。
全く…折角、可愛い顔が台無し…になってないんだよな。
こういう顔ですら、愛おしく思えるのはきっともう、末期だな。
それにしても、私と一緒に食べたい、だなんて。
どうして、そう無意識に私の心をつかみにくるんだ。
君よりずっと大人なのに、柄にもなく舞い上がってしまう。
術を仕掛けたのは私なのに、結局手玉にとられているのは私なんだよな。
う~ん、非情に悔しい。
なんとか一矢報いたいもんだ。
「…やっぱり、この仕事終わってからにしてもいいか?」
「ダメです!さっき食べるって言ったじゃないですか!」
食べる気満々の君は、それ以外の選択肢を完全に許さないモードに突入した。
私の服を掴みながら、ちょっとねだる様な感じで押し切ろうとする。
真っすぐに私を見つめる、凛としたつぶらな瞳。
所謂、上目遣いという姿勢を彼女はとっている。
う~ん、いいな、コレ…。
こういう感じで駆け引きすれば、君の可愛い顔が近くで見れるんだな。
不満気にして、口を尖らせている顔ですら可愛い。
口許は…あんまり見ると、いかんいかん…。
その艶めかしい桃色の唇がどんな感触か知りたくなる。
触れたら柔らかそうで、いくらでも口吸いできそうだ。
無理矢理奪って、そのままなだれ込むように押し倒して…なんて邪な妄想、しょっちゅうしてる。
…目の前にいる君には口が裂けても言えないけど。
忍者の三禁を教える身でありながら、所詮、男なんてこんなものだ。
「土井先生…?」
何も発さなくなった私を不思議に思ったのか、首を傾げて顔を覗き込んできた。
一段と近くなった君の顔。その仕草。
これ以上はまずい。理性の限界を感じる。
さっきの妄想を現実にしたくてたまらないもう一人の自分がいる。
でも、そんな衝動的な行動をとって嫌われたら、今まで積み上げてきた信頼関係が全部パアだ。
何とかこの猛りを抑えなければ。
私は急いで、一旦彼女の方から離れてくれるように仕向ける。
「な、何でもない…それより、お茶を淹れてくれると嬉しいんだけど…」
「あ、そうでした!じゃあ、食堂で準備してきます」
そう言って、空君はお茶を用意しに食堂へと飛び出していった。
ふぅ…。
間一髪、危なかった。
君といれるのは嬉しいけど、同時に心臓に悪い。
ふと、空君が去ってから、身体の火照りに気づく。
全身から吹き出た汗で制服が肌にへばりついているし、心臓の音はうるさく鼓動したままだ。
「はぁ…」
ひとりになって一気に緊張が解けると、姿勢を崩して再び大きい溜息をついた。
こうやって私は、君の前だといとも簡単に余裕がなくなってしまう。
それでも、懲りない私はまた自ら君に近寄っていく。
このとどまるところを知らない厄介な恋心…どうやら君を手に入れるまで、じわりじわりと苦しめられそうだ。