7.初めての町
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それは突然のことだった。
「空君、学園長が呼んでおる。今から学園長室へ行くように」
「へっ?」
「行けばわかる。じゃ、わしはちゃんと伝えたからな」
伝蔵はそう告げて、瞬く間に食堂から去っていった。
ちなみに今の時間は、午後の授業が終わった放課後――
炊事場の片付けを行っていた空は突然の呼び出しに頭が混乱していた。
(が、学園長の呼び出しか……何だろう……)
空は内心ヒヤヒヤしていた。
ここで働きだして一か月になる。
自分の勤務態度に何か問題があったのではないか。
漠然とだが、そういう不安に駆られたのだ。
(とにかく山田先生に言われた通り、学園長のところへ行くしかないか……!)
食堂のおばちゃんに呼び出された旨を告げて、空はその場をあとにした。
***
空は長い廊下をひたすら歩く。
忍たま長屋と教職員の長屋を通り過ぎ、さらに奥にある部屋――学園長の庵を目指していた。
「学園長。舞野です」
「おお、よく来たのう!入れ入れ」
「ヘムゥ」
空がおそるおそる中へと入る。
学園長とヘムヘムのご機嫌な様子に、空はどこか肩透かしをくらったような気分だった。
(怒っているわけじゃなさそう……)
学園長の前に正座した空は、緊張した面持ちで口を開いた。
「学園長……あの、ご用件はなんでしょうか?」
すると、よくぞ聞いてくれたとばかりに学園長が何度も頷く。
スッと懐から布袋を取り出し、それを空に差し出した。
「これを渡そうと思っての。ほれ」
落ちないように両手で受け取ってみれば、ずっしりと重みがある。
その感触から細々としたものが沢山詰まっている。
強く握りしめると、じゃら…と音がした。
「今日で一か月経つ。空ちゃんのお給料じゃ」
「ヘムヘムゥ」
「へっ?」
空はポカーンとする。
考えてみれば、成り行きで働き始めたとはいえ、給料などの諸条件までは確認していなかった。
なんとなく、ここに滞在することの引き換えに労働を要求されている。
そう思っていた。
従って、労働の対価として金銭まで発生していた――空にとって、それは予想外のことだった。
「で、でも……私こちらに無料で住まわせてもらってますよ。ご飯も三食付きだし……」
空は遠慮がちに言う。
これに、学園長が激怒した。
「バッカもん!忍術学園の教職員は皆住み込みが前提じゃ。それに、ワシは雇った人間をタダ働きさせるような甲斐性なしじゃないわい!」
「……」
「空ちゃんはよう働いてくれておる。そのお金は当然の報酬じゃ」
学園長の真剣な剣幕と物言いに、空も考えが変わったようだ。
「……ほんとにほんとに頂いてもいいんですか?」
「もちろんじゃ!なぁ、ヘムヘム!」
「ヘムゥ!」
学園長とヘムヘムは茶目っ気たっぷりにウインクをした。
「ありがとうございます……!」
バイト経験が一切なかった空。
初めて自分の力で稼いだお金を感無量の様子で大事そうに抱えていた。
「空君、学園長が呼んでおる。今から学園長室へ行くように」
「へっ?」
「行けばわかる。じゃ、わしはちゃんと伝えたからな」
伝蔵はそう告げて、瞬く間に食堂から去っていった。
ちなみに今の時間は、午後の授業が終わった放課後――
炊事場の片付けを行っていた空は突然の呼び出しに頭が混乱していた。
(が、学園長の呼び出しか……何だろう……)
空は内心ヒヤヒヤしていた。
ここで働きだして一か月になる。
自分の勤務態度に何か問題があったのではないか。
漠然とだが、そういう不安に駆られたのだ。
(とにかく山田先生に言われた通り、学園長のところへ行くしかないか……!)
食堂のおばちゃんに呼び出された旨を告げて、空はその場をあとにした。
***
空は長い廊下をひたすら歩く。
忍たま長屋と教職員の長屋を通り過ぎ、さらに奥にある部屋――学園長の庵を目指していた。
「学園長。舞野です」
「おお、よく来たのう!入れ入れ」
「ヘムゥ」
空がおそるおそる中へと入る。
学園長とヘムヘムのご機嫌な様子に、空はどこか肩透かしをくらったような気分だった。
(怒っているわけじゃなさそう……)
学園長の前に正座した空は、緊張した面持ちで口を開いた。
「学園長……あの、ご用件はなんでしょうか?」
すると、よくぞ聞いてくれたとばかりに学園長が何度も頷く。
スッと懐から布袋を取り出し、それを空に差し出した。
「これを渡そうと思っての。ほれ」
落ちないように両手で受け取ってみれば、ずっしりと重みがある。
その感触から細々としたものが沢山詰まっている。
強く握りしめると、じゃら…と音がした。
「今日で一か月経つ。空ちゃんのお給料じゃ」
「ヘムヘムゥ」
「へっ?」
空はポカーンとする。
考えてみれば、成り行きで働き始めたとはいえ、給料などの諸条件までは確認していなかった。
なんとなく、ここに滞在することの引き換えに労働を要求されている。
そう思っていた。
従って、労働の対価として金銭まで発生していた――空にとって、それは予想外のことだった。
「で、でも……私こちらに無料で住まわせてもらってますよ。ご飯も三食付きだし……」
空は遠慮がちに言う。
これに、学園長が激怒した。
「バッカもん!忍術学園の教職員は皆住み込みが前提じゃ。それに、ワシは雇った人間をタダ働きさせるような甲斐性なしじゃないわい!」
「……」
「空ちゃんはよう働いてくれておる。そのお金は当然の報酬じゃ」
学園長の真剣な剣幕と物言いに、空も考えが変わったようだ。
「……ほんとにほんとに頂いてもいいんですか?」
「もちろんじゃ!なぁ、ヘムヘム!」
「ヘムゥ!」
学園長とヘムヘムは茶目っ気たっぷりにウインクをした。
「ありがとうございます……!」
バイト経験が一切なかった空。
初めて自分の力で稼いだお金を感無量の様子で大事そうに抱えていた。