6.気づいてしまった現実
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空が食堂で働き始めて、二週間が経った。
どんな仕事でも二週間経てば、大体の流れはつかめてくるものである。
シュル……シュル……
ここは忍術学園の食堂の厨房。
空はは大根のかつらむきの真っ最中だ。
切るという作業に比べると、その包丁さばきはぎこちない。
それでも、初日に比べれば包丁の扱いには慣れてきている。
食堂のおばちゃんもそれに気づいたようだ。
「少し、慣れてきたんじゃない?」
「そうですか?まだまだ全然ですけど……」
空は苦笑する。
おばちゃんを見れば、同じように大根の皮を剥いている。
大根を回しつつ包丁をあてがうと、均一な厚さの皮が巻紙のように長く広げられていく。
剥き終えた大根は綺麗な円柱状になっていた。
空の口から感嘆の溜息が漏れた。
「すごい……」
「ウフフ。私はもう何十年もやってるからね。ほら、手が止まってるわよ。頑張って!」
「はい!」
空は気を取り直して、再び手を動かしていく。
大根と悪戦苦闘する空を見て、思わずおばちゃんは目を細める。
そのまま静かに空を見守っていた。
包丁さばきは未熟だが、食堂のおばちゃんは空のことをいたく気に入っていた。
思い返してみると、初日は非常に大変だった。
空は本当に炊事場のことを何も知らなかったからだ。
羽釜や臼、それに水甕などの生活用具を指さしては「これは何ですか?」と空が無垢な瞳を向けて質問してきたとき、食堂のおばちゃんはひとつのことを実感していた。
ああ、やはりこの娘は遥か遠い未来から来た人間なのだ、と。
空が質問した数々の用具は、この時代では知らない人はいない、というほど人々の生活に根付いたものだった。
一方で、空の仕事に対する姿勢には感心していた。
素直で真面目な性格の空。
勉強だけでなく仕事という点においても、その長所は遺憾無く発揮された。
不明な点があれば、すぐにおばちゃんに質問した。
おばちゃんが答えたことをその場で記憶し、或いは内容が複雑であればメモにとる。
同じ質問をすることは決してない。
何を教えても理解が早かった。
調理器具の置き場所は数日で完璧に把握した。
特に記憶力は抜群で、軽く一週間分の献立を頭に叩き込んでいる。
二週間経った今では、指示されたことだけをやるのではなく、どう動けばいいのか自ら仕事を見つけに行くようになった。
彼女に足りないのは、今や料理のノウハウと技術のみ。
内面も穏やかで話しやすいし、食への興味も深い。
一緒に働くパートナーとして、空はこれ以上ないくらい適性な人物だった。
成り行きとは言え、空を食堂のお手伝いさんとして確保できたおばちゃんは鼻高々だった。
この話を忍術学園の事務を統括する吉野作造にたまたま話したら、なぜか彼は大量の涙を流したという。
一見、空の新生活は順風満帆かのように思われる。
ただ、食堂のおばちゃんは一つだけ気になることがあった。
どんな仕事でも二週間経てば、大体の流れはつかめてくるものである。
シュル……シュル……
ここは忍術学園の食堂の厨房。
空はは大根のかつらむきの真っ最中だ。
切るという作業に比べると、その包丁さばきはぎこちない。
それでも、初日に比べれば包丁の扱いには慣れてきている。
食堂のおばちゃんもそれに気づいたようだ。
「少し、慣れてきたんじゃない?」
「そうですか?まだまだ全然ですけど……」
空は苦笑する。
おばちゃんを見れば、同じように大根の皮を剥いている。
大根を回しつつ包丁をあてがうと、均一な厚さの皮が巻紙のように長く広げられていく。
剥き終えた大根は綺麗な円柱状になっていた。
空の口から感嘆の溜息が漏れた。
「すごい……」
「ウフフ。私はもう何十年もやってるからね。ほら、手が止まってるわよ。頑張って!」
「はい!」
空は気を取り直して、再び手を動かしていく。
大根と悪戦苦闘する空を見て、思わずおばちゃんは目を細める。
そのまま静かに空を見守っていた。
包丁さばきは未熟だが、食堂のおばちゃんは空のことをいたく気に入っていた。
思い返してみると、初日は非常に大変だった。
空は本当に炊事場のことを何も知らなかったからだ。
羽釜や臼、それに水甕などの生活用具を指さしては「これは何ですか?」と空が無垢な瞳を向けて質問してきたとき、食堂のおばちゃんはひとつのことを実感していた。
ああ、やはりこの娘は遥か遠い未来から来た人間なのだ、と。
空が質問した数々の用具は、この時代では知らない人はいない、というほど人々の生活に根付いたものだった。
一方で、空の仕事に対する姿勢には感心していた。
素直で真面目な性格の空。
勉強だけでなく仕事という点においても、その長所は遺憾無く発揮された。
不明な点があれば、すぐにおばちゃんに質問した。
おばちゃんが答えたことをその場で記憶し、或いは内容が複雑であればメモにとる。
同じ質問をすることは決してない。
何を教えても理解が早かった。
調理器具の置き場所は数日で完璧に把握した。
特に記憶力は抜群で、軽く一週間分の献立を頭に叩き込んでいる。
二週間経った今では、指示されたことだけをやるのではなく、どう動けばいいのか自ら仕事を見つけに行くようになった。
彼女に足りないのは、今や料理のノウハウと技術のみ。
内面も穏やかで話しやすいし、食への興味も深い。
一緒に働くパートナーとして、空はこれ以上ないくらい適性な人物だった。
成り行きとは言え、空を食堂のお手伝いさんとして確保できたおばちゃんは鼻高々だった。
この話を忍術学園の事務を統括する吉野作造にたまたま話したら、なぜか彼は大量の涙を流したという。
一見、空の新生活は順風満帆かのように思われる。
ただ、食堂のおばちゃんは一つだけ気になることがあった。