34.新たなる一歩
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(もう朝……?)
顔にあたる陽の光が空の意識を呼び覚ます。
うっすら瞼を開ければ、あたりがハッキリと認識できるほど室内は明くなっている。
毎朝食堂の仕事で薄暗い時間に起床する空にとって、それは強烈な違和感であった。
ここでようやく、自分が寝坊したことに気づく。
完全に目が覚めて、パッと両眼を開けた。
「やばっ……寝坊しちゃった!食堂のおばちゃん、ごめんなさい!……あれ?」
そうなのだ。
よくよく周りを見れば、ここは……自分の部屋ではない。
半助の家だった。
(そっか……私、昨日町に行って……)
ぼんやり思い返し寝返りをうつと、頭にゴツンと温かいものがあたった。
目の前には逞しい胸板がある。
それは半助のものだ。
ちなみに何一つ身に纏っていない。
(ひぇぇぇぇぇぇぇぇっ!)
刺激的な光景を視界に収め、心の中で大絶叫する。
胸の鼓動が鳴りやまない中、空は今の状況を必死に整理していく。
(落ち着いて落ち着いて……えーっと……昨日の夜……私と土井先生は…………)
昨晩、ふたりは互いに想いを寄せ合っていたことを知る。
そしてそれを確認したのも束の間、肌と肌を重ね、心だけでなく身体も結ばれた。
信じられない。夢みたい。
しばし惚けていた空だったが、それが夢ではないのだとまもなく確信する。
ズキッ…………
(いたっ!)
起き上がった瞬間、下腹部に鈍い痛みを感じたのだ。
それは間違いなく半助と身体を繋げ合った証であった。
あの昨晩の出来事は間違いなく現実に起こった。
空はお腹にそっと手を当てる。
(不思議……身体は痛いのに、心は凄く軽い。まるで、生まれ変わったみたい……)
今までに感じたことのない充足感が身体中を支配している。
自分は今、半助からの愛で満たされている。
それがいかに安らぎと歓びを与えるものかをこのとき初めて知るのだった。
ふと空は半助を見た。
彼はまだ眠っている。
(冬休みに遊びに来たときも、半助さんの寝顔こうやって見たっけ……あのときは恥ずかしくてゆっくり見れなかったけど……)
日々、一年は組の良い子たちに振り回される苦労人気質の半助は怒ったり悩んだりと眉間に皺を作っていることが多い。
だが、その皺は一切ない。
今の顔は実年齢よりずっと幼く見える。
スヤスヤと寝入っている半助は、見ていて胸がキュンと締め付けられるほど愛くるしかった。
「半助さんの寝顔………かわいいっ!」
興奮が頂点に達し、とうとう声に出てしまった空だった。
(これからはこうやっていつでも半助さんの寝顔を堪能できるんだ。これこそ、乙女の趣味よねぇ……!)
抑えきれないほどの嬉しさが身体の奥から込み上げてくる。
空はニンマリと笑った。
調子に乗った空はそのまましばらく半助の顔を見続ける。
長く下を向いたまつ毛、整った鼻筋と形の良い薄い唇。
その一つ一つが愛おしい。
ゆるゆると崩れ切った表情で、幸せの絶頂に浸っている。
そのときだった。
「あんまり見られると、恥ずかしいんだけど……」
「へっ!?」
空は間抜けな声を出して驚いた。
さっきまで寝ていたと思われる半助の両目は……今や完全に開いている。
空は動揺丸出しで聞き返した。
「は、半助さん!お、お、お、起きていたんですか?」
「まぁな。空が起きる少し前に……おはよう」
寝顔を盗み見していたことがバレた。
さらに、そのときの興奮していた自分の様子も相手に筒抜けだった。
「……」
とんでもない醜態を晒したと、空は恥ずかしさのあまり俯いてしまう。
何も発さなくなった空を見て、少し悪ふざけが過ぎたと半助は反省するのだった。
「ごめんごめん。寝ている私に空がどんなイタズラするか興味があって」
「……」
空は依然としてだんまりしている。
半助はゆっくりと上体を起こすと、恥じらう空に向かって言った。
「空」
「は、はい」
「寝顔、可愛かったよ。あんまり可愛いから……起きるまでずっと見ていた」
「えっ……?」
ここでようやく、空は顔を上げてしっかりと半助を見た。
朝の光を浴びた半助は甘い微笑みをたたえている。
「半助さん……」
さっきまでの羞恥もどこへやら、空は完全に心ここにあらずの状態になってしまった。
熱っぽい視線を向けられて、半助もやや照れくさそうにするが、満更でもない様子であった。
しばらく見つめ合っていた二人だが、空はふと半助の様子がおかしいことに気づく。
微笑んでいたはずの半助がどこか落ち着かない様子で空を見ているのだ。
「……?」
空はキョトンとする。
やがて、その原因が自分にあるとわかった。
半助の目線が自分の顔よりも随分と下に下がっていたからだ。
半助は空の身体を見ていた。
生まれたままの姿を。
「や、やだ!」
その視線に耐えきれなくなった空は、咄嗟に脱ぎ捨てた身拭で前を隠す。
赤い顔で半助をじっと睨んだ。
「ごめん……。綺麗だから……つい」
本心だった。
昨晩も空の裸を見たとはいえ、夜の暗闇でのこと。
改めて明るい朝日の下でみる空の肌は雪のように白かった。
身体は細いのに、胸やお尻にはほどよく丸みがあって、触れたくなるような柔らかさを感じさせる。
バツが悪そうにしている半助を見て満足したのか、空も本当のことを白状した。
「でも、おあいこですね。私も半助さんの身体……ついつい見ちゃいました」
空の言う通り、見ていたのは半助の寝顔だけでない。
身体の方もバッチリと目で追っていた。
鍛錬を積み重ねた一流の忍者に相応しく、引き締まった筋肉を全身に纏っている。
甘いマスクをした半助からは想像がつかないほど腹筋が割れていて、そのギャップに胸がときめきっぱなしだった。
どちらからともなく照れ笑いする。
でも、このまま服を着ていない状態でいるのは恥ずかしく、落ち着かない。
空はゆっくりと半助に背を向けた。
「朝の支度しましょうか?……あっちで着替えてきます」
見返りながら、はにかんだ表情で言う。
その艶やかな仕草に、半助の心がざわめいた。
もう服を着てしまうのか。
口惜しく思った半助は咄嗟に空に抱きついた。
「半助さん……」
大胆に露出した背中から半助の温もりが直に伝わってくる。
今度は空の胸が早鐘を打ちだした。
「まだ、服着ないで」
半助は甘えるようにそう言って、首筋にそっと唇をあてた。
「ん……」
か細い声が空の口から漏れる。
肌に触れた唇が柔らかい。
昨日、その唇が何度も身体に触れたのだとあのときの心地よさが甦ってくる。
たった一回の微かな口付けで、空の身体全体は白桃のようにうっすらと色づいてしまった。
「……」
複雑な心境だった。
このまま半助の温もりを感じていたいと空は思う。
だが、そういうわけにもいかない。
予定外の外泊によって、忍術学園の皆に迷惑をかけているのだから。
「でも、忍術学園に早く戻らないと……」
「それはわかってる。わかってるけど……なんだかもったいなくて。折角二人でいるんだし、もう少し君とこうしていたい」
半助は空を布団に押し倒した。
「半助さん……」
空は真上の半助を見る。
まとまりの悪い髪にさらに寝ぐせがつき、麻のように乱れている。
その髪をおろしている半助はラフで荒々しい印象がある。
匂うほどの男の色気を醸し出していた。
「空、確かめたい。昨日のことが夢じゃなかったって……」
欲しい――半助は言葉だけでなく瞳でもそう訴えかけてくる。
昨夜あれだけ激痛が走った女の部分に切ない疼きを覚える自分がいた。
どこまでも真っ直ぐなその瞳で懇願されると、もう断れなかった。
「確かめて……半助さんの気が済むまで……」
空が両手を伸ばす。
首に手を回された半助は、柔らかな肢体の上に身体を重ね、静かに唇をつける。
「空……好きだ」
「私も……」
言葉で愛を確認しあえば、半助はタカが外れたように空を求めだした。
荒々しく唇を吸われ、武骨な舌で口内を掻き回されて、空の身体から急速に力が失われていく。
(もう……何もかもが、どうでもよくなっていく……)
一度肌を重ねる心地良さを覚えてしまったら、もう何も知らなかった頃には戻れない。
お互いの身体の感触を確かめながら、空も半助も、おのおのの理性がとろとろに溶けてゆくのを感じていた。
「ああっ……」
空が白い喉を反らす。
胸の上で動く鳶色の髪をやさしく撫でた。
顔にあたる陽の光が空の意識を呼び覚ます。
うっすら瞼を開ければ、あたりがハッキリと認識できるほど室内は明くなっている。
毎朝食堂の仕事で薄暗い時間に起床する空にとって、それは強烈な違和感であった。
ここでようやく、自分が寝坊したことに気づく。
完全に目が覚めて、パッと両眼を開けた。
「やばっ……寝坊しちゃった!食堂のおばちゃん、ごめんなさい!……あれ?」
そうなのだ。
よくよく周りを見れば、ここは……自分の部屋ではない。
半助の家だった。
(そっか……私、昨日町に行って……)
ぼんやり思い返し寝返りをうつと、頭にゴツンと温かいものがあたった。
目の前には逞しい胸板がある。
それは半助のものだ。
ちなみに何一つ身に纏っていない。
(ひぇぇぇぇぇぇぇぇっ!)
刺激的な光景を視界に収め、心の中で大絶叫する。
胸の鼓動が鳴りやまない中、空は今の状況を必死に整理していく。
(落ち着いて落ち着いて……えーっと……昨日の夜……私と土井先生は…………)
昨晩、ふたりは互いに想いを寄せ合っていたことを知る。
そしてそれを確認したのも束の間、肌と肌を重ね、心だけでなく身体も結ばれた。
信じられない。夢みたい。
しばし惚けていた空だったが、それが夢ではないのだとまもなく確信する。
ズキッ…………
(いたっ!)
起き上がった瞬間、下腹部に鈍い痛みを感じたのだ。
それは間違いなく半助と身体を繋げ合った証であった。
あの昨晩の出来事は間違いなく現実に起こった。
空はお腹にそっと手を当てる。
(不思議……身体は痛いのに、心は凄く軽い。まるで、生まれ変わったみたい……)
今までに感じたことのない充足感が身体中を支配している。
自分は今、半助からの愛で満たされている。
それがいかに安らぎと歓びを与えるものかをこのとき初めて知るのだった。
ふと空は半助を見た。
彼はまだ眠っている。
(冬休みに遊びに来たときも、半助さんの寝顔こうやって見たっけ……あのときは恥ずかしくてゆっくり見れなかったけど……)
日々、一年は組の良い子たちに振り回される苦労人気質の半助は怒ったり悩んだりと眉間に皺を作っていることが多い。
だが、その皺は一切ない。
今の顔は実年齢よりずっと幼く見える。
スヤスヤと寝入っている半助は、見ていて胸がキュンと締め付けられるほど愛くるしかった。
「半助さんの寝顔………かわいいっ!」
興奮が頂点に達し、とうとう声に出てしまった空だった。
(これからはこうやっていつでも半助さんの寝顔を堪能できるんだ。これこそ、乙女の趣味よねぇ……!)
抑えきれないほどの嬉しさが身体の奥から込み上げてくる。
空はニンマリと笑った。
調子に乗った空はそのまましばらく半助の顔を見続ける。
長く下を向いたまつ毛、整った鼻筋と形の良い薄い唇。
その一つ一つが愛おしい。
ゆるゆると崩れ切った表情で、幸せの絶頂に浸っている。
そのときだった。
「あんまり見られると、恥ずかしいんだけど……」
「へっ!?」
空は間抜けな声を出して驚いた。
さっきまで寝ていたと思われる半助の両目は……今や完全に開いている。
空は動揺丸出しで聞き返した。
「は、半助さん!お、お、お、起きていたんですか?」
「まぁな。空が起きる少し前に……おはよう」
寝顔を盗み見していたことがバレた。
さらに、そのときの興奮していた自分の様子も相手に筒抜けだった。
「……」
とんでもない醜態を晒したと、空は恥ずかしさのあまり俯いてしまう。
何も発さなくなった空を見て、少し悪ふざけが過ぎたと半助は反省するのだった。
「ごめんごめん。寝ている私に空がどんなイタズラするか興味があって」
「……」
空は依然としてだんまりしている。
半助はゆっくりと上体を起こすと、恥じらう空に向かって言った。
「空」
「は、はい」
「寝顔、可愛かったよ。あんまり可愛いから……起きるまでずっと見ていた」
「えっ……?」
ここでようやく、空は顔を上げてしっかりと半助を見た。
朝の光を浴びた半助は甘い微笑みをたたえている。
「半助さん……」
さっきまでの羞恥もどこへやら、空は完全に心ここにあらずの状態になってしまった。
熱っぽい視線を向けられて、半助もやや照れくさそうにするが、満更でもない様子であった。
しばらく見つめ合っていた二人だが、空はふと半助の様子がおかしいことに気づく。
微笑んでいたはずの半助がどこか落ち着かない様子で空を見ているのだ。
「……?」
空はキョトンとする。
やがて、その原因が自分にあるとわかった。
半助の目線が自分の顔よりも随分と下に下がっていたからだ。
半助は空の身体を見ていた。
生まれたままの姿を。
「や、やだ!」
その視線に耐えきれなくなった空は、咄嗟に脱ぎ捨てた身拭で前を隠す。
赤い顔で半助をじっと睨んだ。
「ごめん……。綺麗だから……つい」
本心だった。
昨晩も空の裸を見たとはいえ、夜の暗闇でのこと。
改めて明るい朝日の下でみる空の肌は雪のように白かった。
身体は細いのに、胸やお尻にはほどよく丸みがあって、触れたくなるような柔らかさを感じさせる。
バツが悪そうにしている半助を見て満足したのか、空も本当のことを白状した。
「でも、おあいこですね。私も半助さんの身体……ついつい見ちゃいました」
空の言う通り、見ていたのは半助の寝顔だけでない。
身体の方もバッチリと目で追っていた。
鍛錬を積み重ねた一流の忍者に相応しく、引き締まった筋肉を全身に纏っている。
甘いマスクをした半助からは想像がつかないほど腹筋が割れていて、そのギャップに胸がときめきっぱなしだった。
どちらからともなく照れ笑いする。
でも、このまま服を着ていない状態でいるのは恥ずかしく、落ち着かない。
空はゆっくりと半助に背を向けた。
「朝の支度しましょうか?……あっちで着替えてきます」
見返りながら、はにかんだ表情で言う。
その艶やかな仕草に、半助の心がざわめいた。
もう服を着てしまうのか。
口惜しく思った半助は咄嗟に空に抱きついた。
「半助さん……」
大胆に露出した背中から半助の温もりが直に伝わってくる。
今度は空の胸が早鐘を打ちだした。
「まだ、服着ないで」
半助は甘えるようにそう言って、首筋にそっと唇をあてた。
「ん……」
か細い声が空の口から漏れる。
肌に触れた唇が柔らかい。
昨日、その唇が何度も身体に触れたのだとあのときの心地よさが甦ってくる。
たった一回の微かな口付けで、空の身体全体は白桃のようにうっすらと色づいてしまった。
「……」
複雑な心境だった。
このまま半助の温もりを感じていたいと空は思う。
だが、そういうわけにもいかない。
予定外の外泊によって、忍術学園の皆に迷惑をかけているのだから。
「でも、忍術学園に早く戻らないと……」
「それはわかってる。わかってるけど……なんだかもったいなくて。折角二人でいるんだし、もう少し君とこうしていたい」
半助は空を布団に押し倒した。
「半助さん……」
空は真上の半助を見る。
まとまりの悪い髪にさらに寝ぐせがつき、麻のように乱れている。
その髪をおろしている半助はラフで荒々しい印象がある。
匂うほどの男の色気を醸し出していた。
「空、確かめたい。昨日のことが夢じゃなかったって……」
欲しい――半助は言葉だけでなく瞳でもそう訴えかけてくる。
昨夜あれだけ激痛が走った女の部分に切ない疼きを覚える自分がいた。
どこまでも真っ直ぐなその瞳で懇願されると、もう断れなかった。
「確かめて……半助さんの気が済むまで……」
空が両手を伸ばす。
首に手を回された半助は、柔らかな肢体の上に身体を重ね、静かに唇をつける。
「空……好きだ」
「私も……」
言葉で愛を確認しあえば、半助はタカが外れたように空を求めだした。
荒々しく唇を吸われ、武骨な舌で口内を掻き回されて、空の身体から急速に力が失われていく。
(もう……何もかもが、どうでもよくなっていく……)
一度肌を重ねる心地良さを覚えてしまったら、もう何も知らなかった頃には戻れない。
お互いの身体の感触を確かめながら、空も半助も、おのおのの理性がとろとろに溶けてゆくのを感じていた。
「ああっ……」
空が白い喉を反らす。
胸の上で動く鳶色の髪をやさしく撫でた。