31.二人だけのワルツ
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「ヘーム、ヘムヘムヘム!」
授業の終わりを告げるヘムヘムの鐘が鳴った。
校庭で実習をしていた一年は組の授業を伝蔵が締めくくる。
「それでは、本日の授業はこれまでとする」
「ありがとうございました!」
挨拶のあと、一年は組のみんなが一言一句乱れずに叫んだ。
「やっと授業が終わったー!」
そう叫ぶや否や、猛ダッシュで全員走り出した。
「やれやれ……あんなに大人数で押しかけたら治るものも治らないだろうに……なぁ、半助」
同意を求めようと振り返った先に半助はいなかった。
「全く……生徒が生徒なら、教師も教師だな」
呆れる伝蔵だったが、その顔はどこかうれしそうだった。
は組のみんなは学園長室を目指していた。
誰が一番に学園長室に着くか、競い合いながら走っている。
そのレースの先頭では、乱太郎と三治郎のデッドヒートが繰り広げられていた。
「乱太郎!今日こそは負けないからね!」
「私だって三治郎に負けるもんか!一番は渡さない!」
舌戦も熱い二人だが、ふと三治郎が大空を指さした。
「ああ!乱太郎の父ちゃんと母ちゃんが空を飛んでいる!」
「え、どこどこ!?父ちゃーん、母ちゃーん!」
乱太郎がキョロキョロあたりを探しているうちに、三治郎が走り抜けた。
「へへーんだ、騙される方が悪い!」
このまま学園長室まで三治郎がぶっちぎりかと思いきや、突如三治郎の足元に銃弾が飛んできた。
「!」
間一髪銃弾を避けたが、その拍子に廊下の柱に顔をぶつけて転んでしまった。
三治郎には今お星様が見えている。
銃弾を放ったのは虎若と団蔵である。
それぞれの手に持つのは火縄銃だ。
「一番はとらせない!学園長室に一番乗りは俺たちだ!」
「みんなを火縄銃で蹴散らした後に、ゆっくりとゴールするよ」
しかし、思惑通りにはいかなかった。
虎若と団蔵の火縄銃を筌幕の法を使って防ぐ人物がいた。
庄左エ門と伊助だ。
「虎若たち昨日も同じ手を使っただろ?馬鹿の一つ覚えだね」
「僕たちに二番煎じは通用しない!お返しにこれをくらえ!」
そう言って、伊助たちは焙烙火矢を虎若たちに向けて放り投げた。
「うわぁぁぁぁっ!」
「まずい、虎若!早く逃げろ!」
ボン!と激しい轟音が響く。
虎若と団蔵がここで脱落した。
「上手くいったね、庄左ヱ門!」
「うん。このまま一気に学園長室を目指そう!」
ふたりが先頭に躍り出る。
順調に走っていたが、突如足元をすくわれ、暗闇へと直行していった。
「うそっ!」
「マジかよ!」
兵太夫の設置した落とし穴にかかったのだ。
「やりぃ!やっぱり最後はカラクリを制したものが勝つ!」
二人の後方から指をパチンと鳴らし、兵太夫が現れた。
「今日は僕が一番だ!」
ゴールを目指し走る兵太夫だが、そうはいかなかった。
自分の仕掛けた罠を飛び越えようとした瞬間、後頭部に激痛がはしり、前につんのめってしまう。
「わぁぁぁぁぁぁ!」
兵太夫もまた穴に落ちていき、脱落となった。
ちなみに、兵太夫の頭にあたったのは小銭である。
「俺が作った武器の小銭ヨーヨーだい!」
声の主はきり丸だ。
小銭ヨーヨーといっても、無数の小銭にそれぞれ糸を括りつけただけ。
ドケチのきり丸は小銭を手から離すことができないため、武器として使うにはこうするしかなかったのだ。
「金吾、お前もだ!この小銭ヨーヨーの餌食になっちまえ!」
後ろにいる金吾にもきり丸の攻撃が炸裂する。
だが、金吾は瞬時にその武器の弱点を見破っていた。
きり丸の小銭をキャッチすると、持っていた刀で糸をぷっつりと切った。
「ああ!!」
きり丸は小銭が自分の手から完全に離れ、大きく動揺している。
石のように固まると、たちまち風化し塵となっていった。
金吾は呆れていた。
「……糸を切られるってことに気付かなかったなんて間抜けだな。とにかく、今日は僕が一番だ!」
勝利は目前…と走る金吾だが、学園長室の前で蠢いているものを見て愕然とする。
喜三太のナメクジたちがお散歩中だったのだ。
「うわぁ……ボク、ナメクジ苦手なんだよね……」
「はにゃ?知らない間に一番……やったぁ!」
ナメクジにおののく金吾の横を喜三太がさっと通り抜ける。
果たして今回のレースの勝者は喜三太なのか?
喜三太が学園長室の戸を開けた。
「空さん!」
「喜三太君!来てくれたの!?」
学園長室にいたのは空だった。
しかし、空にはもう既にしんべえがべったりとくっついていた。
頭にたんこぶを作ったしんべえが。
「はにゃ~。今日こそは僕が一番だと思ったのに……!」
喜三太がガクッとその場に崩れ落ちた。
授業の終わりを告げるヘムヘムの鐘が鳴った。
校庭で実習をしていた一年は組の授業を伝蔵が締めくくる。
「それでは、本日の授業はこれまでとする」
「ありがとうございました!」
挨拶のあと、一年は組のみんなが一言一句乱れずに叫んだ。
「やっと授業が終わったー!」
そう叫ぶや否や、猛ダッシュで全員走り出した。
「やれやれ……あんなに大人数で押しかけたら治るものも治らないだろうに……なぁ、半助」
同意を求めようと振り返った先に半助はいなかった。
「全く……生徒が生徒なら、教師も教師だな」
呆れる伝蔵だったが、その顔はどこかうれしそうだった。
は組のみんなは学園長室を目指していた。
誰が一番に学園長室に着くか、競い合いながら走っている。
そのレースの先頭では、乱太郎と三治郎のデッドヒートが繰り広げられていた。
「乱太郎!今日こそは負けないからね!」
「私だって三治郎に負けるもんか!一番は渡さない!」
舌戦も熱い二人だが、ふと三治郎が大空を指さした。
「ああ!乱太郎の父ちゃんと母ちゃんが空を飛んでいる!」
「え、どこどこ!?父ちゃーん、母ちゃーん!」
乱太郎がキョロキョロあたりを探しているうちに、三治郎が走り抜けた。
「へへーんだ、騙される方が悪い!」
このまま学園長室まで三治郎がぶっちぎりかと思いきや、突如三治郎の足元に銃弾が飛んできた。
「!」
間一髪銃弾を避けたが、その拍子に廊下の柱に顔をぶつけて転んでしまった。
三治郎には今お星様が見えている。
銃弾を放ったのは虎若と団蔵である。
それぞれの手に持つのは火縄銃だ。
「一番はとらせない!学園長室に一番乗りは俺たちだ!」
「みんなを火縄銃で蹴散らした後に、ゆっくりとゴールするよ」
しかし、思惑通りにはいかなかった。
虎若と団蔵の火縄銃を筌幕の法を使って防ぐ人物がいた。
庄左エ門と伊助だ。
「虎若たち昨日も同じ手を使っただろ?馬鹿の一つ覚えだね」
「僕たちに二番煎じは通用しない!お返しにこれをくらえ!」
そう言って、伊助たちは焙烙火矢を虎若たちに向けて放り投げた。
「うわぁぁぁぁっ!」
「まずい、虎若!早く逃げろ!」
ボン!と激しい轟音が響く。
虎若と団蔵がここで脱落した。
「上手くいったね、庄左ヱ門!」
「うん。このまま一気に学園長室を目指そう!」
ふたりが先頭に躍り出る。
順調に走っていたが、突如足元をすくわれ、暗闇へと直行していった。
「うそっ!」
「マジかよ!」
兵太夫の設置した落とし穴にかかったのだ。
「やりぃ!やっぱり最後はカラクリを制したものが勝つ!」
二人の後方から指をパチンと鳴らし、兵太夫が現れた。
「今日は僕が一番だ!」
ゴールを目指し走る兵太夫だが、そうはいかなかった。
自分の仕掛けた罠を飛び越えようとした瞬間、後頭部に激痛がはしり、前につんのめってしまう。
「わぁぁぁぁぁぁ!」
兵太夫もまた穴に落ちていき、脱落となった。
ちなみに、兵太夫の頭にあたったのは小銭である。
「俺が作った武器の小銭ヨーヨーだい!」
声の主はきり丸だ。
小銭ヨーヨーといっても、無数の小銭にそれぞれ糸を括りつけただけ。
ドケチのきり丸は小銭を手から離すことができないため、武器として使うにはこうするしかなかったのだ。
「金吾、お前もだ!この小銭ヨーヨーの餌食になっちまえ!」
後ろにいる金吾にもきり丸の攻撃が炸裂する。
だが、金吾は瞬時にその武器の弱点を見破っていた。
きり丸の小銭をキャッチすると、持っていた刀で糸をぷっつりと切った。
「ああ!!」
きり丸は小銭が自分の手から完全に離れ、大きく動揺している。
石のように固まると、たちまち風化し塵となっていった。
金吾は呆れていた。
「……糸を切られるってことに気付かなかったなんて間抜けだな。とにかく、今日は僕が一番だ!」
勝利は目前…と走る金吾だが、学園長室の前で蠢いているものを見て愕然とする。
喜三太のナメクジたちがお散歩中だったのだ。
「うわぁ……ボク、ナメクジ苦手なんだよね……」
「はにゃ?知らない間に一番……やったぁ!」
ナメクジにおののく金吾の横を喜三太がさっと通り抜ける。
果たして今回のレースの勝者は喜三太なのか?
喜三太が学園長室の戸を開けた。
「空さん!」
「喜三太君!来てくれたの!?」
学園長室にいたのは空だった。
しかし、空にはもう既にしんべえがべったりとくっついていた。
頭にたんこぶを作ったしんべえが。
「はにゃ~。今日こそは僕が一番だと思ったのに……!」
喜三太がガクッとその場に崩れ落ちた。