19.疑似家族の土井家 (中編)
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あたりはまだ薄暗い、冬の早朝の時間。
重い瞼を開けば、見慣れない天井が視界に写りこんでくる。
(う~ん、ここは……しんべヱくんの家……じゃない……)
目を擦りながら、空の意識が覚醒する。
食堂の仕事の習慣で、起床時間は早いのだ。
(そっか、ここは土井先生、じゃなかった半助さんの家……)
男性の家で初めての外泊を経験した空。
あれだけ心配していたのに、いざ泊まってみれば思いの外きり丸と半助と楽しい時間を過ごすことができた。
乱太郎やしんべえの家とはまた違う居心地の良さがここにはある。
この時点で、既に警戒心は無くなっていた。
ほかの二人はまだ眠っている。
空はふときり丸を見る。
その寝顔は天使のように可愛らしい。
(きりちゃん……)
空の口許からクスっと笑みが零れた。
一方、自分に背を向けて寝ている半助の寝顔は見えなかった。
……どんなものだろうか。
好奇心を刺激された空は、音を立てないよう四つん這いで半助の近くへ静かに移動する。
半助の前に回り込んで、その顔を覗き込んだ。
寝顔は、きり丸と同じように無垢であどけない。
(半助さんの寝顔も可愛い……こうして二人並んで寝てると本当の家族みたい……)
しかし、気になるのは寝顔だけではなかった。
半助の身拭は少々肌蹴けていて、筋肉で盛り上がった胸板が空気に触れている。
(やさしそうな顔立ちに反して、結構逞しいんだ……そういえば、前文字の練習していて体調不良だった私を、軽々と抱えていたもんね……)
鍛え抜かれた男の身体がこんなに綺麗だとは思わなかった。
空は素直に感動していた。
(う~ん、もうちょっと、見えないかな……服、邪魔なんだけど……)
そこまで考えて空はハタと気づいた。
服が邪魔だと考えたこともそうだし、今現在とっている行動――首を傾げ、身をさらに屈めて半助の身体を覗き見ようとしている行為は一体なんなのだ、と。
(や、やだ……私……!)
自分自身のとった行動を省みて、急に恥ずかしさがこみ上げてくる。
ひとまず着替えて朝の支度をしよう。
空は逃げるように別の部屋へと移動した。
「……」
空が半助の元を離れた瞬間、半助の両目がぱちくりと開いた。
(あ、朝から心臓に悪すぎる……!)
忍びとしての習性が働き、眠っている自分に他者が近づけば、嫌でも目を覚ましてしまう。
その他者が空だと知ったとき、半助は心臓が飛び出しそうなほど動揺していた。
しばらく眠ったふりを装い、空を泳がせていた半助だったが、どうやら空が眠っている自分に興味津々なようだということがわかる。
その間、どうしても刺すような視線が気になって、薄目で空の様子を窺ってみた。
「!」
思わず声をあげそうになった。
空もまた半助と同じように身拭が肌蹴ていたのだ。
合わさっていた衿元は左右にパックリと割れ、白い膨らみが顔を覗かせている。
その柔らかそうな双丘に手を伸ばしてみたい、なんて思っているうちに、突如空は立ち去っていったが。
あのときの無防備な姿を思い出せば、半助の身体はひとりでに過熱していく。
(落ち着け、落ち着け……!)
湧き上がってくる欲情を鎮めようと、隣にいるきり丸を見る。
そのあどけない寝顔を目に入れて、半助は無性に羨ましくなった。
「いいよな、きり丸は……難しいことを考えなくていいし……」
半助がポツリと呟く。
うつ伏せに体勢を変えた半助は、しばらくきり丸の寝顔を静かに見つめていた。
***
その後、きり丸、半助が続々と起床した。
三人は今炊事場で朝食の準備をしている。
「きりちゃん、今日は何のバイトなの?」
「え~っと、餅つきの手伝いです。それが終わったら、何でも屋の一環で大掃除をしに、各家庭の家を訪問して」
「二つも掛け持ちして、流石筋金入りのアルバイター……」
「年の瀬で繁忙期ですからね。がっつり稼いどかないと。おれ、今日は助っ人がいるんで!空さんは、今日はうちで土井先生と洗濯と内職のバイトをお願いします。明日は一緒にバイトしましょう!」
「ん?明日は何のバイトなの?」
「それは……後で教えます。ニヒヒヒヒッ」
きり丸は何故か半助の方を見て、意味ありげに笑った。
「なんか嫌な予感がするな」
竈に薪をくべていた半助は、その笑みを見てゾクリと背筋が凍ってしまう。
この半助の勘は、後に見事に的中することになる。
重い瞼を開けば、見慣れない天井が視界に写りこんでくる。
(う~ん、ここは……しんべヱくんの家……じゃない……)
目を擦りながら、空の意識が覚醒する。
食堂の仕事の習慣で、起床時間は早いのだ。
(そっか、ここは土井先生、じゃなかった半助さんの家……)
男性の家で初めての外泊を経験した空。
あれだけ心配していたのに、いざ泊まってみれば思いの外きり丸と半助と楽しい時間を過ごすことができた。
乱太郎やしんべえの家とはまた違う居心地の良さがここにはある。
この時点で、既に警戒心は無くなっていた。
ほかの二人はまだ眠っている。
空はふときり丸を見る。
その寝顔は天使のように可愛らしい。
(きりちゃん……)
空の口許からクスっと笑みが零れた。
一方、自分に背を向けて寝ている半助の寝顔は見えなかった。
……どんなものだろうか。
好奇心を刺激された空は、音を立てないよう四つん這いで半助の近くへ静かに移動する。
半助の前に回り込んで、その顔を覗き込んだ。
寝顔は、きり丸と同じように無垢であどけない。
(半助さんの寝顔も可愛い……こうして二人並んで寝てると本当の家族みたい……)
しかし、気になるのは寝顔だけではなかった。
半助の身拭は少々肌蹴けていて、筋肉で盛り上がった胸板が空気に触れている。
(やさしそうな顔立ちに反して、結構逞しいんだ……そういえば、前文字の練習していて体調不良だった私を、軽々と抱えていたもんね……)
鍛え抜かれた男の身体がこんなに綺麗だとは思わなかった。
空は素直に感動していた。
(う~ん、もうちょっと、見えないかな……服、邪魔なんだけど……)
そこまで考えて空はハタと気づいた。
服が邪魔だと考えたこともそうだし、今現在とっている行動――首を傾げ、身をさらに屈めて半助の身体を覗き見ようとしている行為は一体なんなのだ、と。
(や、やだ……私……!)
自分自身のとった行動を省みて、急に恥ずかしさがこみ上げてくる。
ひとまず着替えて朝の支度をしよう。
空は逃げるように別の部屋へと移動した。
「……」
空が半助の元を離れた瞬間、半助の両目がぱちくりと開いた。
(あ、朝から心臓に悪すぎる……!)
忍びとしての習性が働き、眠っている自分に他者が近づけば、嫌でも目を覚ましてしまう。
その他者が空だと知ったとき、半助は心臓が飛び出しそうなほど動揺していた。
しばらく眠ったふりを装い、空を泳がせていた半助だったが、どうやら空が眠っている自分に興味津々なようだということがわかる。
その間、どうしても刺すような視線が気になって、薄目で空の様子を窺ってみた。
「!」
思わず声をあげそうになった。
空もまた半助と同じように身拭が肌蹴ていたのだ。
合わさっていた衿元は左右にパックリと割れ、白い膨らみが顔を覗かせている。
その柔らかそうな双丘に手を伸ばしてみたい、なんて思っているうちに、突如空は立ち去っていったが。
あのときの無防備な姿を思い出せば、半助の身体はひとりでに過熱していく。
(落ち着け、落ち着け……!)
湧き上がってくる欲情を鎮めようと、隣にいるきり丸を見る。
そのあどけない寝顔を目に入れて、半助は無性に羨ましくなった。
「いいよな、きり丸は……難しいことを考えなくていいし……」
半助がポツリと呟く。
うつ伏せに体勢を変えた半助は、しばらくきり丸の寝顔を静かに見つめていた。
***
その後、きり丸、半助が続々と起床した。
三人は今炊事場で朝食の準備をしている。
「きりちゃん、今日は何のバイトなの?」
「え~っと、餅つきの手伝いです。それが終わったら、何でも屋の一環で大掃除をしに、各家庭の家を訪問して」
「二つも掛け持ちして、流石筋金入りのアルバイター……」
「年の瀬で繁忙期ですからね。がっつり稼いどかないと。おれ、今日は助っ人がいるんで!空さんは、今日はうちで土井先生と洗濯と内職のバイトをお願いします。明日は一緒にバイトしましょう!」
「ん?明日は何のバイトなの?」
「それは……後で教えます。ニヒヒヒヒッ」
きり丸は何故か半助の方を見て、意味ありげに笑った。
「なんか嫌な予感がするな」
竈に薪をくべていた半助は、その笑みを見てゾクリと背筋が凍ってしまう。
この半助の勘は、後に見事に的中することになる。