26.Crazy Rendezvous (Part 1)
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劈くような寒さが心身にこたえる冬の朝。
まだ暗いうちから起床し仕事にとりかかる人物は、この学園においては非常に限られている。
「おはようございます」
食堂に入って来たときの空の第一声が普段とは違った。
期待を含んだような、弾む声色。
その違和感を、人生経験豊富な食堂のおばちゃんは真っ先に感知していた。
「おはよう、空ちゃん」
挨拶を交わしたおばちゃんはしばらく空をじっと観察する。
井戸へ水を汲みに行って、野菜を洗って、今はその野菜の皮をせっせと剥いている。
その表情は嬉しさが隠しきれていなくて、時々何かを思い出してはフフフ…と一人で笑っている。
昨日、くノ一教室の教師である山本シナと二人で空に恋愛のアドバイスを与えたばかり。
そして、翌日の空のこの態度。
こういう状況から察して、おばちゃんが気づかないわけがない。
何気ない感じで空に尋ねる。
「空ちゃん、昨日半助と何かあったの?」
「……」
空はもじもじとした様子になり、恥ずかしそうに笑う。
おばちゃんはさらに空に詰め寄り、その顔をじっと見る。
「……」
やがて、豆電球が灯ったように空の頬がポッと赤くなった。
「実は……昨日、土井先生とお話したんですが……」
空は昨夜の一部始終を語り出した。
「あらぁ!よかったじゃない!!土井先生をデートに誘えたのね!」
「まだ信じられなくて……でも、食堂のおばちゃんとシナ先生のおかげです」
女二人、仕事を忘れて手を取り合って喜んでいる。
「デートの場所は決めてるの?」
「いえ、それはまだ……」
「それなら、忍術学園を出て西の方にある町に行ってみるといいわよ。休みの日、丁度市が開かれているから。活気があって賑やかよ!私も二日前に業者のおじさんに聞いたの!」
「西の町に、市……ですか!」
知らない町にイベントの情報。
デートにうってつけの場所だと空はパァッと顔を輝かせている。
「当日はうんとおめかししなきゃね!朝、シナ先生の部屋に行って服と化粧を頼んで……。あ、髪はタカ丸君に頼みましょ!」
「でも、あんまり張り切るのって、ちょっと恥ずかしくないですか?」
「何言ってんの!初デートで土井先生の心をがっちり掴みに行くわよ!」
「は、はぁ……」
おばちゃんのこれまでにないくらいの張り切りぶりに、空はただただ従うより他になかった。
***
その日の放課後。
半助はきり丸を庭に呼び出していた。
「というわけだ、きり丸。今度の休日、私はバイトの手伝いはできない」
これに関する質問は断固拒否といった姿勢を貫いている。
きっぱりとした態度で半助が言い放った。
「……」
キョトン、とするきり丸だったが、次の瞬間、きり丸ははちきれんばかりの笑顔を見せた。
「よかったじゃないですか!?土井先生!」
なんと、バイトを断られたにもかかわらず、自分のことのように喜んでいる。
「空さんとデートの約束できて良かったですね!」
「すまないな……今度埋め合わせするから」
きり丸は半助にガバッと飛びつく。
その様子は木にしがみついているサルのようだ。
「いいんですよぉ。ニヒヒヒヒッ!」
破顔一笑のきり丸。
また一歩自分の野望に前進した、とニッと八重歯を出して笑っている。
半助と空が結ばれれば、きり丸もまた姉のように慕う空とずっと一緒に過ごせる。
というわけで、半助には何が何でもその恋を実らせて欲しいときり丸は切望していた。
「また来月も春休みがあるし、うちに来てほしいから……今度のデートでうんっと仲良くなってくださいね!」
「……努力する」
きり丸のお願いに照れてしまったのか、半助の頬がほんのりと赤く染まった。
「しかし、きり丸。バイト……私の代わりはどうするんだ?」
「ああ、それなら大丈夫です。あちらに頼むんで!」
きり丸が指さした先――そこには乱太郎としんべえがいて、こんな話をしていた。
「ねぇ、しんべえ。今度の休日何しよっか?」
「ボク、町に行きたい~!この前、新しくできたおうどん屋さん、もう一回食べたくて!」
この後、二人は猫なで声のきり丸に肩をトントンと叩かれて、その計画はあっけなく破られるのである。
まだ暗いうちから起床し仕事にとりかかる人物は、この学園においては非常に限られている。
「おはようございます」
食堂に入って来たときの空の第一声が普段とは違った。
期待を含んだような、弾む声色。
その違和感を、人生経験豊富な食堂のおばちゃんは真っ先に感知していた。
「おはよう、空ちゃん」
挨拶を交わしたおばちゃんはしばらく空をじっと観察する。
井戸へ水を汲みに行って、野菜を洗って、今はその野菜の皮をせっせと剥いている。
その表情は嬉しさが隠しきれていなくて、時々何かを思い出してはフフフ…と一人で笑っている。
昨日、くノ一教室の教師である山本シナと二人で空に恋愛のアドバイスを与えたばかり。
そして、翌日の空のこの態度。
こういう状況から察して、おばちゃんが気づかないわけがない。
何気ない感じで空に尋ねる。
「空ちゃん、昨日半助と何かあったの?」
「……」
空はもじもじとした様子になり、恥ずかしそうに笑う。
おばちゃんはさらに空に詰め寄り、その顔をじっと見る。
「……」
やがて、豆電球が灯ったように空の頬がポッと赤くなった。
「実は……昨日、土井先生とお話したんですが……」
空は昨夜の一部始終を語り出した。
「あらぁ!よかったじゃない!!土井先生をデートに誘えたのね!」
「まだ信じられなくて……でも、食堂のおばちゃんとシナ先生のおかげです」
女二人、仕事を忘れて手を取り合って喜んでいる。
「デートの場所は決めてるの?」
「いえ、それはまだ……」
「それなら、忍術学園を出て西の方にある町に行ってみるといいわよ。休みの日、丁度市が開かれているから。活気があって賑やかよ!私も二日前に業者のおじさんに聞いたの!」
「西の町に、市……ですか!」
知らない町にイベントの情報。
デートにうってつけの場所だと空はパァッと顔を輝かせている。
「当日はうんとおめかししなきゃね!朝、シナ先生の部屋に行って服と化粧を頼んで……。あ、髪はタカ丸君に頼みましょ!」
「でも、あんまり張り切るのって、ちょっと恥ずかしくないですか?」
「何言ってんの!初デートで土井先生の心をがっちり掴みに行くわよ!」
「は、はぁ……」
おばちゃんのこれまでにないくらいの張り切りぶりに、空はただただ従うより他になかった。
***
その日の放課後。
半助はきり丸を庭に呼び出していた。
「というわけだ、きり丸。今度の休日、私はバイトの手伝いはできない」
これに関する質問は断固拒否といった姿勢を貫いている。
きっぱりとした態度で半助が言い放った。
「……」
キョトン、とするきり丸だったが、次の瞬間、きり丸ははちきれんばかりの笑顔を見せた。
「よかったじゃないですか!?土井先生!」
なんと、バイトを断られたにもかかわらず、自分のことのように喜んでいる。
「空さんとデートの約束できて良かったですね!」
「すまないな……今度埋め合わせするから」
きり丸は半助にガバッと飛びつく。
その様子は木にしがみついているサルのようだ。
「いいんですよぉ。ニヒヒヒヒッ!」
破顔一笑のきり丸。
また一歩自分の野望に前進した、とニッと八重歯を出して笑っている。
半助と空が結ばれれば、きり丸もまた姉のように慕う空とずっと一緒に過ごせる。
というわけで、半助には何が何でもその恋を実らせて欲しいときり丸は切望していた。
「また来月も春休みがあるし、うちに来てほしいから……今度のデートでうんっと仲良くなってくださいね!」
「……努力する」
きり丸のお願いに照れてしまったのか、半助の頬がほんのりと赤く染まった。
「しかし、きり丸。バイト……私の代わりはどうするんだ?」
「ああ、それなら大丈夫です。あちらに頼むんで!」
きり丸が指さした先――そこには乱太郎としんべえがいて、こんな話をしていた。
「ねぇ、しんべえ。今度の休日何しよっか?」
「ボク、町に行きたい~!この前、新しくできたおうどん屋さん、もう一回食べたくて!」
この後、二人は猫なで声のきり丸に肩をトントンと叩かれて、その計画はあっけなく破られるのである。