23.悩める新米事務員
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真っ暗な空間の中に空はいた。
道が一本見えるだけだ。
トボトボと空はその道を歩いていた。
(誰もいない……)
歩き進めていくと、次第に風を感じ始めた。
ストレートの髪が大きくたなびく。
直後、大量の桜の花びらが舞い散り、視界を遮った。
(ん……!)
強い風が吹き付ける間、空は目を閉じたまま、その場所から動けなかった。
しばらくして、風が弱まる。
依然として続く暗闇の中の一本道。
その先に誰かいる。
女だ。
(あれは、夢に出てくる女の人!)
顔が見たい。
あの人の正体が知りたい。
どうして私は違う世界に飛ばされたのか。
その答えはきっと彼女が持っている――
そう確信した空は、気がつけば夢中で走っていた。
徐々に女との距離が縮まっていく。
休むことなく全速力で走った空はとうとう、女の目前までたどり着くことができた。
謎に一歩近づける。
高揚感と好奇心、二つの感情が激しく交錯する。
息を切らした空は、呼吸を整えるとゆっくりと顔を上げて女を見た。
「!」
空は驚愕の表情で絶句していた。
絶世、傾城、などの美女に対する修飾語がこれほど似合う女性がこの世にいるのだろうか。
それくらい、女は美しかった。
整った顔立ち。
血のように赤い唇と漆黒の長い髪が白い肌に映える。
纏っている巫女装束も相まって、同じ人間とは思えない神々しさを感じさせた。
女は蠱惑的な微笑を浮かべながら空をじっと見つめている。
その様子に圧倒され、軽い畏怖の念すら抱いた空だったが、言わなければいけない言葉をなんとかひねり出した。
「あなた、だれ……?」
問いかけに女は口を開かない。
その代わり、スッと手を挙げて空を指さした。
「わたし……!?」
女はゆっくりと頷く。
ここで、その唇がたおやかに動いた。
「やっと、会えた……」
清らかな小川のように澄んだ声が空の脳内に木霊した。
***
空はガバッと跳ね起きた。
冷気のたちこめる暗い冬の朝。
夢の内容の衝撃が凄まじかった。
空の鼓動はせわしく鳴り響いている。
たった今見たばかりの夢を空は思い出していた。
信じられないほどの美貌を有する女がいて、自分がいて……その光景が脳裏に焼き付いている。
「あの女の人……わたし……?顔だって全然違うのに……」
自分と比較したら、まるで月とスッポン。
どうにも信じられないといった、キツネにつままれたような顔で空は呟く。
少し前から空の夢に女は現れていた。
が、はっきりと顔を見ることができなかった。
そして今日、初めて間近で確認した結果がこれだ。
「どういうことだろう……」
謎の美女と自分の因縁が良くわからない。
しかし、自分がこの世界にいることはあの女が確実に関係している。
しばしの時間考え込む空だが、いきなりハッとした顔になって、慌てて枕元の腕時計を引き寄せた。
「わっ!もう、こんな時間!」
食堂の仕事の時間が迫っている。
朝一番から食堂のおばちゃんの怒り顔は拝みたくない。
空は大急ぎで支度した。
道が一本見えるだけだ。
トボトボと空はその道を歩いていた。
(誰もいない……)
歩き進めていくと、次第に風を感じ始めた。
ストレートの髪が大きくたなびく。
直後、大量の桜の花びらが舞い散り、視界を遮った。
(ん……!)
強い風が吹き付ける間、空は目を閉じたまま、その場所から動けなかった。
しばらくして、風が弱まる。
依然として続く暗闇の中の一本道。
その先に誰かいる。
女だ。
(あれは、夢に出てくる女の人!)
顔が見たい。
あの人の正体が知りたい。
どうして私は違う世界に飛ばされたのか。
その答えはきっと彼女が持っている――
そう確信した空は、気がつけば夢中で走っていた。
徐々に女との距離が縮まっていく。
休むことなく全速力で走った空はとうとう、女の目前までたどり着くことができた。
謎に一歩近づける。
高揚感と好奇心、二つの感情が激しく交錯する。
息を切らした空は、呼吸を整えるとゆっくりと顔を上げて女を見た。
「!」
空は驚愕の表情で絶句していた。
絶世、傾城、などの美女に対する修飾語がこれほど似合う女性がこの世にいるのだろうか。
それくらい、女は美しかった。
整った顔立ち。
血のように赤い唇と漆黒の長い髪が白い肌に映える。
纏っている巫女装束も相まって、同じ人間とは思えない神々しさを感じさせた。
女は蠱惑的な微笑を浮かべながら空をじっと見つめている。
その様子に圧倒され、軽い畏怖の念すら抱いた空だったが、言わなければいけない言葉をなんとかひねり出した。
「あなた、だれ……?」
問いかけに女は口を開かない。
その代わり、スッと手を挙げて空を指さした。
「わたし……!?」
女はゆっくりと頷く。
ここで、その唇がたおやかに動いた。
「やっと、会えた……」
清らかな小川のように澄んだ声が空の脳内に木霊した。
***
空はガバッと跳ね起きた。
冷気のたちこめる暗い冬の朝。
夢の内容の衝撃が凄まじかった。
空の鼓動はせわしく鳴り響いている。
たった今見たばかりの夢を空は思い出していた。
信じられないほどの美貌を有する女がいて、自分がいて……その光景が脳裏に焼き付いている。
「あの女の人……わたし……?顔だって全然違うのに……」
自分と比較したら、まるで月とスッポン。
どうにも信じられないといった、キツネにつままれたような顔で空は呟く。
少し前から空の夢に女は現れていた。
が、はっきりと顔を見ることができなかった。
そして今日、初めて間近で確認した結果がこれだ。
「どういうことだろう……」
謎の美女と自分の因縁が良くわからない。
しかし、自分がこの世界にいることはあの女が確実に関係している。
しばしの時間考え込む空だが、いきなりハッとした顔になって、慌てて枕元の腕時計を引き寄せた。
「わっ!もう、こんな時間!」
食堂の仕事の時間が迫っている。
朝一番から食堂のおばちゃんの怒り顔は拝みたくない。
空は大急ぎで支度した。