9.一年は組へようこそ(後編)
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
空がは組の授業を受けるようになってから、一週間ほど経過した頃。
約束の歓迎会当日を迎えた。
明日は休日ということもあり、学園全体の雰囲気がどことなく緩んでいる。
ここ、は組の教室には熱心に授業を聞く者などいなかった。
「では本日の授業はこれまで」
半助が授業の終わりを告げる。
その言葉を待ってましたとばかりに、は組の皆から続々と歓喜の声が上がった。
「やっと終わった!」
「明日は休みだぁ!」
がやがやと騒がしい中、空は筆記用具を片付けていると、ふと誰かに名前を呼ばれる。
きり丸だった。
「今日の夜、歓迎会ですからね。場所はおれたちの部屋です。絶対に来てくださいよ!」
「うん、楽しみにしてるね。じゃあ、また夜に!」
そう言って空は教室を出ると、目の前には職員室に戻ろうとする半助がいた。
戻る方向が一緒の二人は自然と横に並んで歩き出す。
「空君、今日まで授業に出てみてどうだった?」
「とっても楽しいです。土井先生の授業丁寧でわかりやすくて。板書の字も綺麗だし……」
「そ、そうか」
悲しいかな、は組のみんなからはそんな賛辞は頂けない。
ここまでストレートに褒めちぎられると思っていなかった半助は何だかこそばゆく感じる。
つい頭をぽりぽりと掻いて照れてしまった。
「忍術を学んでみてわかったんですが、今まで誤解していることが多かったです。忍者って、もっと派手な技を使って戦い合うような人たちかと……」
「あはは。真の忍術を知って幻滅させちゃったかい?」
「いいえ、そんなことはないです。人間の心理や習性を利用したものが多くて、かえって興味深いです」
空はそう言って、屈託のない笑みを見せた。
以前のように、半助を前に緊張していた空はもういない。
ここ一週間で、半助と空の関係にはかなりの変化があった。
それまでは食堂のお手伝いさんと教師という接点の少ない関係なだけに、お互いを遠巻きに見ることが多かった。
学園内で出くわしても、単調な会話に簡単な挨拶。
だが、空は今半助の生徒となった。
共通項ができ、必然と話す機会が増える。
温厚で人柄のいい半助。
教職員の中で一番年下だが、ベテランの先生並みに授業の進め方が上手い。
その若さの割に先生としても完成されている。
一見、非の打ち所がなく完璧に見える半助だが、二日目のは組の授業でこんなやりとりがあった。
『どうして、庄左エ門以外誰も離行の術を説明できないんだ!?』
『土井先生、それ習いましたっけ?二年生の内容じゃないんですか!?』
『教えたはずだ、教えたはずだ、教えたはずだぁぁぁ!!』
烈火のごとく教室で怒り散らす半助を見て、空は大爆笑していた。
すっとぼけるような皆の返事もそうだが、それ以上に顔を真っ赤にして怒声を飛ばし、最後にはその場に崩れ落ちた半助が可笑しくてしょうがなかったのだ。
この日を境に、心のどこかで半助に対して感じていた畏怖の念は完全に払拭されている。
苦労人気質で、どこか抜け感のある半助に空は親しみやすさを見出していた。
今もなお口を動かし続けるのは空の方だ。
「そうそう、今日乱太郎君たちの部屋で歓迎会があるんです」
「そういえば、最初の授業の日に話してたな。今日がその日か」
「はい。というわけで、夜は忍たま長屋に行ってきます」
「わかった。でも、あまり遅くまでならないようにな」
「はい」
空はその後も自ら半助に会話を投げる。
半助も満更でもないようで、空の話に嬉しそうに耳を傾けていた。
約束の歓迎会当日を迎えた。
明日は休日ということもあり、学園全体の雰囲気がどことなく緩んでいる。
ここ、は組の教室には熱心に授業を聞く者などいなかった。
「では本日の授業はこれまで」
半助が授業の終わりを告げる。
その言葉を待ってましたとばかりに、は組の皆から続々と歓喜の声が上がった。
「やっと終わった!」
「明日は休みだぁ!」
がやがやと騒がしい中、空は筆記用具を片付けていると、ふと誰かに名前を呼ばれる。
きり丸だった。
「今日の夜、歓迎会ですからね。場所はおれたちの部屋です。絶対に来てくださいよ!」
「うん、楽しみにしてるね。じゃあ、また夜に!」
そう言って空は教室を出ると、目の前には職員室に戻ろうとする半助がいた。
戻る方向が一緒の二人は自然と横に並んで歩き出す。
「空君、今日まで授業に出てみてどうだった?」
「とっても楽しいです。土井先生の授業丁寧でわかりやすくて。板書の字も綺麗だし……」
「そ、そうか」
悲しいかな、は組のみんなからはそんな賛辞は頂けない。
ここまでストレートに褒めちぎられると思っていなかった半助は何だかこそばゆく感じる。
つい頭をぽりぽりと掻いて照れてしまった。
「忍術を学んでみてわかったんですが、今まで誤解していることが多かったです。忍者って、もっと派手な技を使って戦い合うような人たちかと……」
「あはは。真の忍術を知って幻滅させちゃったかい?」
「いいえ、そんなことはないです。人間の心理や習性を利用したものが多くて、かえって興味深いです」
空はそう言って、屈託のない笑みを見せた。
以前のように、半助を前に緊張していた空はもういない。
ここ一週間で、半助と空の関係にはかなりの変化があった。
それまでは食堂のお手伝いさんと教師という接点の少ない関係なだけに、お互いを遠巻きに見ることが多かった。
学園内で出くわしても、単調な会話に簡単な挨拶。
だが、空は今半助の生徒となった。
共通項ができ、必然と話す機会が増える。
温厚で人柄のいい半助。
教職員の中で一番年下だが、ベテランの先生並みに授業の進め方が上手い。
その若さの割に先生としても完成されている。
一見、非の打ち所がなく完璧に見える半助だが、二日目のは組の授業でこんなやりとりがあった。
『どうして、庄左エ門以外誰も離行の術を説明できないんだ!?』
『土井先生、それ習いましたっけ?二年生の内容じゃないんですか!?』
『教えたはずだ、教えたはずだ、教えたはずだぁぁぁ!!』
烈火のごとく教室で怒り散らす半助を見て、空は大爆笑していた。
すっとぼけるような皆の返事もそうだが、それ以上に顔を真っ赤にして怒声を飛ばし、最後にはその場に崩れ落ちた半助が可笑しくてしょうがなかったのだ。
この日を境に、心のどこかで半助に対して感じていた畏怖の念は完全に払拭されている。
苦労人気質で、どこか抜け感のある半助に空は親しみやすさを見出していた。
今もなお口を動かし続けるのは空の方だ。
「そうそう、今日乱太郎君たちの部屋で歓迎会があるんです」
「そういえば、最初の授業の日に話してたな。今日がその日か」
「はい。というわけで、夜は忍たま長屋に行ってきます」
「わかった。でも、あまり遅くまでならないようにな」
「はい」
空はその後も自ら半助に会話を投げる。
半助も満更でもないようで、空の話に嬉しそうに耳を傾けていた。