13.もつれ合う、恋の糸
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秋休みが明けて間もない頃。
ルンタッタ~ルンタッタ~
満面の笑みを浮かべながら、廊下をスキップしている男がいる。
その男が手にしているのは、一通の文だ。
やがて食堂へ着くと、声を張り上げて言った。
「山田先生~!」
どこかのんびりとした口調。
だが、忍たまではない。
大人の制服に身を包んだその男は、この忍術学園で事務員として働く小松田秀作だった。
「どうしたんだ、小松田君」
「これ、山田先生宛にお手紙が届いてま~す」
「おお、そうか。ありがとう」
伝蔵は文を受け取るや否や、すぐにそれを開いて内容を確認する。
大方確認すると、伝蔵が汗ジトの表情で小松田に尋ねた。
「……小松田君。これ、いつ届いた?」
「えーっと、一昨日です。受け取ってからすぐに渡そうと思っていたんですけど、丁度吉野先生に別の仕事を頼まれて、机に置きっぱなしにしちゃってました」
「……」
あはは……と小松田が悪びれずに言う。
伝蔵の横で呆れていた半助がそれとはなしに聞いた。
「山田先生、差出人はどなたなんですか?」
「ああ。利吉じゃよ。ずっと働きづめじゃったが、ようやく休みがとれそうだから、ここに立ち寄るんだと。文が届いて三日ほどでこちらに着くらしい」
「利吉君ですか。一昨日届いたんだったら、ここに来るのは明日ですね」
伝蔵はそれだけわかると、ふむ、とだけ言って、文を懐にしまった。
父親としては、息子が来る――ただそれだけのことで、特段心躍らせるようなことでもない。
そんな冷めた反応に対し、同じ食堂に居合わせていたくのたま三人組――ユキ、トモミ、おシゲは顔をキラキラと輝かせている。
「ねぇねぇ聞いた?明日、利吉さんが来るみたいよ!」
「急いでみんなに知らせなきゃ!」
「そいでもって、明日までにうんとおめかしするんでしゅ!」
三人は顔を見合わせて頷くと、急いで食堂を後にした。
その日の放課後の時間。
空はしんべえとともにくノ一教室を訪れていた。
しんべえがおシゲに借りた本を返したいということで、その付き添いをしているのだ。
だが、二人がいくら探しても、おシゲはおろかくのたまたち全員が見つからない。
「あれ、おかしいなぁ。ボク、今日おシゲちゃんにここに来るって伝えたのに」
「どこに行っちゃったんだろうね?」
二人が途方に暮れていると、突如ある人物が姿をあらわした。
容姿端麗で色香溢れる大人の女性、くノ一教室担当教師の山本シナだ。
しんべえと空、二人の声が同時に揃った。
「山本シナ先生!」
「こんなところでどうしたの?しんべヱ君、空さん」
「ボク、おシゲちゃんに本を返す約束をしていたんです。でも、誰もいなくて……」
「ああ、あの子たちなら、今町に出かけちゃってるわよ。『明日利吉さんが来る』って大騒ぎしていたから」
「そうなんですね~」
シナの説明に、しんべヱだけが納得していた。
「それより、しんべヱ君。本なら私が預かっておくから」
「そういうことなら、ぜひお願いします」
(どうして、利吉さんが来ることと、ユキちゃんたちが町に行ったことが関係しているんだろう……)
しんべヱがシナに本を渡す傍ら、空だけは目をぱちくりとさせていた。
シナと別れ、用の済んだ空としんべヱは、忍たま長屋の方へと戻っている。
「ねぇ、しんべヱ君。利吉さんって人、確か山田先生の息子さんよね」
「そうですよ。それがどうかしました?」
「どうして、くノ一教室の子たちが町に行ったことと利吉さんが来ることが関係しているの?」
「ああ、それはですね……」
しんべえがその理由を空へ説明していく。
それによると、忍者として腕が立ち、しかも見目の良い利吉はユキたちくノ一教師全員の憧れの的。
その利吉の前では少しでも綺麗でありたいらしく、彼女たちは町へ足を運び、流行りの装飾品や美容グッズを買い漁るのだそうだ。
「なるほどね。そういうことだったんだ」
「利吉さん、すっごい人気ですからね。男のボクから見てもかっこいいですもん!山田先生譲りの、一流の忍者ですからね」
さもありなん、としんべえは言う。
それを聞いて、空もくノ一教室の子たちの気持ちが痛いほど理解できた。
自分だって、思い当たることはあった。
発売五分でチケットが完売する人気アーティストのライブに行く時、服装や髪型・ネイルなど、どれだけ入念に準備したことか、と。
ユキたちの乙女心に共感を覚える空に向かって、ほとんど何も考えていないボケっとした表情でしんべえが口を開いた。
「空さんはユキちゃんたちみたいに、町へ行かなくていいんですか?」
「いやいやいや、私はいいの!私は!」
空は大きく手を振って否定していく。
利吉に対する賛辞をいくら並べられようが、面識のない男性に熱を上げるほど、空はミーハーではなかった。
ルンタッタ~ルンタッタ~
満面の笑みを浮かべながら、廊下をスキップしている男がいる。
その男が手にしているのは、一通の文だ。
やがて食堂へ着くと、声を張り上げて言った。
「山田先生~!」
どこかのんびりとした口調。
だが、忍たまではない。
大人の制服に身を包んだその男は、この忍術学園で事務員として働く小松田秀作だった。
「どうしたんだ、小松田君」
「これ、山田先生宛にお手紙が届いてま~す」
「おお、そうか。ありがとう」
伝蔵は文を受け取るや否や、すぐにそれを開いて内容を確認する。
大方確認すると、伝蔵が汗ジトの表情で小松田に尋ねた。
「……小松田君。これ、いつ届いた?」
「えーっと、一昨日です。受け取ってからすぐに渡そうと思っていたんですけど、丁度吉野先生に別の仕事を頼まれて、机に置きっぱなしにしちゃってました」
「……」
あはは……と小松田が悪びれずに言う。
伝蔵の横で呆れていた半助がそれとはなしに聞いた。
「山田先生、差出人はどなたなんですか?」
「ああ。利吉じゃよ。ずっと働きづめじゃったが、ようやく休みがとれそうだから、ここに立ち寄るんだと。文が届いて三日ほどでこちらに着くらしい」
「利吉君ですか。一昨日届いたんだったら、ここに来るのは明日ですね」
伝蔵はそれだけわかると、ふむ、とだけ言って、文を懐にしまった。
父親としては、息子が来る――ただそれだけのことで、特段心躍らせるようなことでもない。
そんな冷めた反応に対し、同じ食堂に居合わせていたくのたま三人組――ユキ、トモミ、おシゲは顔をキラキラと輝かせている。
「ねぇねぇ聞いた?明日、利吉さんが来るみたいよ!」
「急いでみんなに知らせなきゃ!」
「そいでもって、明日までにうんとおめかしするんでしゅ!」
三人は顔を見合わせて頷くと、急いで食堂を後にした。
その日の放課後の時間。
空はしんべえとともにくノ一教室を訪れていた。
しんべえがおシゲに借りた本を返したいということで、その付き添いをしているのだ。
だが、二人がいくら探しても、おシゲはおろかくのたまたち全員が見つからない。
「あれ、おかしいなぁ。ボク、今日おシゲちゃんにここに来るって伝えたのに」
「どこに行っちゃったんだろうね?」
二人が途方に暮れていると、突如ある人物が姿をあらわした。
容姿端麗で色香溢れる大人の女性、くノ一教室担当教師の山本シナだ。
しんべえと空、二人の声が同時に揃った。
「山本シナ先生!」
「こんなところでどうしたの?しんべヱ君、空さん」
「ボク、おシゲちゃんに本を返す約束をしていたんです。でも、誰もいなくて……」
「ああ、あの子たちなら、今町に出かけちゃってるわよ。『明日利吉さんが来る』って大騒ぎしていたから」
「そうなんですね~」
シナの説明に、しんべヱだけが納得していた。
「それより、しんべヱ君。本なら私が預かっておくから」
「そういうことなら、ぜひお願いします」
(どうして、利吉さんが来ることと、ユキちゃんたちが町に行ったことが関係しているんだろう……)
しんべヱがシナに本を渡す傍ら、空だけは目をぱちくりとさせていた。
シナと別れ、用の済んだ空としんべヱは、忍たま長屋の方へと戻っている。
「ねぇ、しんべヱ君。利吉さんって人、確か山田先生の息子さんよね」
「そうですよ。それがどうかしました?」
「どうして、くノ一教室の子たちが町に行ったことと利吉さんが来ることが関係しているの?」
「ああ、それはですね……」
しんべえがその理由を空へ説明していく。
それによると、忍者として腕が立ち、しかも見目の良い利吉はユキたちくノ一教師全員の憧れの的。
その利吉の前では少しでも綺麗でありたいらしく、彼女たちは町へ足を運び、流行りの装飾品や美容グッズを買い漁るのだそうだ。
「なるほどね。そういうことだったんだ」
「利吉さん、すっごい人気ですからね。男のボクから見てもかっこいいですもん!山田先生譲りの、一流の忍者ですからね」
さもありなん、としんべえは言う。
それを聞いて、空もくノ一教室の子たちの気持ちが痛いほど理解できた。
自分だって、思い当たることはあった。
発売五分でチケットが完売する人気アーティストのライブに行く時、服装や髪型・ネイルなど、どれだけ入念に準備したことか、と。
ユキたちの乙女心に共感を覚える空に向かって、ほとんど何も考えていないボケっとした表情でしんべえが口を開いた。
「空さんはユキちゃんたちみたいに、町へ行かなくていいんですか?」
「いやいやいや、私はいいの!私は!」
空は大きく手を振って否定していく。
利吉に対する賛辞をいくら並べられようが、面識のない男性に熱を上げるほど、空はミーハーではなかった。