2.学園長の提案
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金楽寺の和尚が学園長宛の文をしたため終えた。
空は乱太郎たちとともに忍術学園へ向けて出発することにした。
彼らによると、今金楽寺を発てば夕方には到着できるとのことだった。
空は深々と和尚に頭を下げた。
「本当にありがとうございます。何から何まで……」
「一応できる限りのことは尽くしたが、学園長はじめ忍者のいる学校じゃ。仕事柄疑り深い人たちもいるじゃろう。万が一断られたら、その時は私が面倒見よう。金楽寺へ戻ってきなさい」
「はい」
空はもし忍術学園側に滞在を断られた時のことを想像した。
寺で生活すると聞いて、剃髪した自分――尼になった姿を想像していた。
空の顔がサーっと青ざめる。
(うわぁ、それだけは……絶対イヤ!)
尤も、たとえ学園長の許可がおりずに戻って来ることになったとしても金楽寺の和尚はそのようなことを強制しないが。
それは完全に空の思い込みであった。
「頼んだぞ、乱太郎」
「はい、和尚様」
乱太郎が和尚から手紙を受け取る。
空たちは和尚に一礼し、金楽寺を後にした。
***
ガタガタガタガタ……
下りの山道にスーツケースの車輪の音が響いている。
これが昇り道でなくてよかったと空は心底安堵していた。
金楽寺から忍術学園までは結構な距離があるのだ。
空は体力に自信がなかった。
運動は大の苦手だ。
完全に頭脳派であった。
「空さん、山道大丈夫ですか?」
「うん、まだ全然平気」
乱太郎が声をかけ、空は余裕の表情で応える。
乱太郎たちの存在はありがたかった。
一人で忍術学園まで行けと言われたら、心細い。
地図を与えられたとしても、絶対に無理であっただろう。
道中、空は忍術学園がどんなところかと三人に質問してみた。
乱太郎たちの話によれば、忍術学園には学園長を始め、忍者の先生たち、事務員、食堂のおばちゃん、そして沢山の生徒がいるとのことだった。
学年は一年生から六年生までの六学年で構成されているという。
ちなみに一年生の乱太郎達は十歳。
落第せずに順調に進級すれば、六年生時の年齢は十五歳となる。
さらには縦割りで委員会活動もあるという。
話を聞けば聞くほど、忍術学園というところが現代でいう小学校に類似していた。
一行は山を下り、平淡な田舎道を歩き続けている。
流石に乱太郎たちにも疲れの色が見え始める。
途中、休憩を挟み空が手持ちのお菓子を振舞う。
「これ。チョコレートとクッキーっていうの。美味しいよ」
「うわぁい。いただきまーす!」
「ああ、しんべえ!それ、おれたちの分!」
「……」
乱太郎ときり丸が手をのばそうとした瞬間、そのお菓子たちはすべてしんべえの大きな口の中へと消えていった。
「しんべぇ、独り占めしやがって!許さねぇ!」
「うぇぇん、ごめんなさぁぁい!」
きり丸がしんベヱの頭にガブリと噛みつき、しんベヱは泣き叫んでいる。
「乱太郎君……これ、大丈夫なの?」
「気にしないでください、いつものことですから。でも、食べたかったなぁ」
「まだこっちの大きい荷物に入ってるから。忍術学園に着いたら一緒に食べよう!」
「いいんですか!?」
「うん!」
地獄耳のきり丸がもちろんこの会話を聞き逃すはずがなかった。
「乱太郎、ずりぃ!空さん、おれも!」
「はいはい」
「あのう……できれば、ボクもまた食べたいです!」
「しんべヱ君は……人の分まで食べちゃだめよ」
「はぁい」
空は微笑んでいた。
乱太郎の穏やかさと、きり丸のがめつさ、しんべえの底なしの食い意地が読み取れる一幕であった。
***
こんなに歩いたのは高校の鍛錬遠足以来かもしれない――
空は完全にへばっていた。
足が棒になっている。
もう無理、歩けないと何度空が弱音を吐いたことか。
そのたびに乱太郎ときり丸が励ましなだめるのだ。
(うぅ……情けない……でも、疲れた……)
かれこれ何時間も歩いていて、空の疲労は相当なものだった。
だが、幸運なことに目的地はもうすぐそこだった。
乱太郎が指さしながら大声で言った。
「空さん、あれが忍術学園ですよ!」
「あれが……忍術学園……!」
目的地が見えた途端、空の顔に喜色が戻った。
忍術学園と思わしきそこは、高く立派な塀で囲まれており、その全容はまだわからない。
忍者のいる学校、忍術学園――
不安と緊張で空の心臓は激しく脈打っていた。
空は乱太郎たちとともに忍術学園へ向けて出発することにした。
彼らによると、今金楽寺を発てば夕方には到着できるとのことだった。
空は深々と和尚に頭を下げた。
「本当にありがとうございます。何から何まで……」
「一応できる限りのことは尽くしたが、学園長はじめ忍者のいる学校じゃ。仕事柄疑り深い人たちもいるじゃろう。万が一断られたら、その時は私が面倒見よう。金楽寺へ戻ってきなさい」
「はい」
空はもし忍術学園側に滞在を断られた時のことを想像した。
寺で生活すると聞いて、剃髪した自分――尼になった姿を想像していた。
空の顔がサーっと青ざめる。
(うわぁ、それだけは……絶対イヤ!)
尤も、たとえ学園長の許可がおりずに戻って来ることになったとしても金楽寺の和尚はそのようなことを強制しないが。
それは完全に空の思い込みであった。
「頼んだぞ、乱太郎」
「はい、和尚様」
乱太郎が和尚から手紙を受け取る。
空たちは和尚に一礼し、金楽寺を後にした。
***
ガタガタガタガタ……
下りの山道にスーツケースの車輪の音が響いている。
これが昇り道でなくてよかったと空は心底安堵していた。
金楽寺から忍術学園までは結構な距離があるのだ。
空は体力に自信がなかった。
運動は大の苦手だ。
完全に頭脳派であった。
「空さん、山道大丈夫ですか?」
「うん、まだ全然平気」
乱太郎が声をかけ、空は余裕の表情で応える。
乱太郎たちの存在はありがたかった。
一人で忍術学園まで行けと言われたら、心細い。
地図を与えられたとしても、絶対に無理であっただろう。
道中、空は忍術学園がどんなところかと三人に質問してみた。
乱太郎たちの話によれば、忍術学園には学園長を始め、忍者の先生たち、事務員、食堂のおばちゃん、そして沢山の生徒がいるとのことだった。
学年は一年生から六年生までの六学年で構成されているという。
ちなみに一年生の乱太郎達は十歳。
落第せずに順調に進級すれば、六年生時の年齢は十五歳となる。
さらには縦割りで委員会活動もあるという。
話を聞けば聞くほど、忍術学園というところが現代でいう小学校に類似していた。
一行は山を下り、平淡な田舎道を歩き続けている。
流石に乱太郎たちにも疲れの色が見え始める。
途中、休憩を挟み空が手持ちのお菓子を振舞う。
「これ。チョコレートとクッキーっていうの。美味しいよ」
「うわぁい。いただきまーす!」
「ああ、しんべえ!それ、おれたちの分!」
「……」
乱太郎ときり丸が手をのばそうとした瞬間、そのお菓子たちはすべてしんべえの大きな口の中へと消えていった。
「しんべぇ、独り占めしやがって!許さねぇ!」
「うぇぇん、ごめんなさぁぁい!」
きり丸がしんベヱの頭にガブリと噛みつき、しんベヱは泣き叫んでいる。
「乱太郎君……これ、大丈夫なの?」
「気にしないでください、いつものことですから。でも、食べたかったなぁ」
「まだこっちの大きい荷物に入ってるから。忍術学園に着いたら一緒に食べよう!」
「いいんですか!?」
「うん!」
地獄耳のきり丸がもちろんこの会話を聞き逃すはずがなかった。
「乱太郎、ずりぃ!空さん、おれも!」
「はいはい」
「あのう……できれば、ボクもまた食べたいです!」
「しんべヱ君は……人の分まで食べちゃだめよ」
「はぁい」
空は微笑んでいた。
乱太郎の穏やかさと、きり丸のがめつさ、しんべえの底なしの食い意地が読み取れる一幕であった。
***
こんなに歩いたのは高校の鍛錬遠足以来かもしれない――
空は完全にへばっていた。
足が棒になっている。
もう無理、歩けないと何度空が弱音を吐いたことか。
そのたびに乱太郎ときり丸が励ましなだめるのだ。
(うぅ……情けない……でも、疲れた……)
かれこれ何時間も歩いていて、空の疲労は相当なものだった。
だが、幸運なことに目的地はもうすぐそこだった。
乱太郎が指さしながら大声で言った。
「空さん、あれが忍術学園ですよ!」
「あれが……忍術学園……!」
目的地が見えた途端、空の顔に喜色が戻った。
忍術学園と思わしきそこは、高く立派な塀で囲まれており、その全容はまだわからない。
忍者のいる学校、忍術学園――
不安と緊張で空の心臓は激しく脈打っていた。