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はじめまして

―――――み、―――きみ
「お、ようやくお目覚めかい?」
重い瞼を持ち上げて声の主の方を見るとつい先ほど出会った男がにこにこと人懐っこい笑みを浮かべて覗き込んでいた。こうやって美形に見つめられると何だか恥ずかしい気持ちになってくる。ああ、とりあえず彼に返事をしなければ。
「あの、すみません、私」
思いの外声が掠れて上手く話せない。
「ああ、無理しなくて構わん。俺が無理やりこっちに連れてきてしまったからなあ」
辺りをよく見渡すとここはどうやら和室のようだ。現代家屋とはかけ離れた別世界のような美しさを持ち、ここから見えるだけでも相当な敷地があると思われた。和服を着ていたし彼の家だろうか、と適当に目星をつける。
「ここは俺の家――というのも間違いじゃあないが正確には俺たちの家、だろうな」
疑問符を浮かべる私に苦笑しつつ彼は続ける。
「ここは『本丸』といってな、まあ詳しいことは後で説明されるだろう」

「よろしくな、主殿?」
そう言ってにやりと悪戯っぽく笑ってみせた彼は先刻とはまるで別人のようだった。
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