はじめまして
教室。いつものようにひとりで。誰と言葉を交わすわけでもなく、何をするわけでもなく。ただ退屈な毎日を過ごしていく。つまらない。まあいつものことだ、と心の声を聞き流す。
帰り道。いつものようにひとりぽっちで。
都会にしては人通りの少ない見慣れた光景で。
、だったはずで。
ふっと上の方から白檀の優しい香りがしたようなきがして惹き付けられるように香りの元へ目をやる。
なんだ、気のせいか。
何事もなかったかのように駅の方へ向かおうとしたその時、
『おや、きみ』
と後ろから男の声がしたので振り返った。
『…きみ、もしかして俺が見えるのかい?』
と男は続けた。
「は?」
その男は周囲のビルとは不似合いな真白い男で器用に木の枝で胡座をかいていた。
真白な着物、夕陽に照らされてきらきらと変化する髪の色、そして何より穏やかで鋭い金色の瞳とあまりにも整った顔立ちが人間らしさを感じさせなかった。
綺麗だ、と思った。
私がまじまじと彼を見ていると、音もなく地面に降り立ち、こう言った。
『そうか…きみが』
『きみが、俺の主か』
あるじ、とは何だろう。そもそもこの男は私を知っているのか?
「あの、あなたは…?」
『ああ、自己紹介がまだだったか。そうだな、俺は鶴丸国永という。よろしく頼むぜ』
鶴丸国永?珍しい名前だなあなんて思っていると、その鶴丸国永と名乗った男はいつの間にか手の届く距離に来ており、手を差し出してこう告げる。
『そろそろ行こうか。きみの居場所はこっちだ』
居場所、という言葉に瞳が揺らぐ。もしかしたら彼はこのひとりぽっちの世界から私を出してくれるのかもしれない。
初めて会った人に着いていくなんて今どき小学生でもしないが、どうせ退屈なのだ、暇つぶしにと彼の手を取った。
男が目を細めて静かに微笑むのを見て、視界がぐにゃりと歪んでいく。急に眠くなってしまった。手だけはどうか離さないように、私は意識を手放した。
帰り道。いつものようにひとりぽっちで。
都会にしては人通りの少ない見慣れた光景で。
、だったはずで。
ふっと上の方から白檀の優しい香りがしたようなきがして惹き付けられるように香りの元へ目をやる。
なんだ、気のせいか。
何事もなかったかのように駅の方へ向かおうとしたその時、
『おや、きみ』
と後ろから男の声がしたので振り返った。
『…きみ、もしかして俺が見えるのかい?』
と男は続けた。
「は?」
その男は周囲のビルとは不似合いな真白い男で器用に木の枝で胡座をかいていた。
真白な着物、夕陽に照らされてきらきらと変化する髪の色、そして何より穏やかで鋭い金色の瞳とあまりにも整った顔立ちが人間らしさを感じさせなかった。
綺麗だ、と思った。
私がまじまじと彼を見ていると、音もなく地面に降り立ち、こう言った。
『そうか…きみが』
『きみが、俺の主か』
あるじ、とは何だろう。そもそもこの男は私を知っているのか?
「あの、あなたは…?」
『ああ、自己紹介がまだだったか。そうだな、俺は鶴丸国永という。よろしく頼むぜ』
鶴丸国永?珍しい名前だなあなんて思っていると、その鶴丸国永と名乗った男はいつの間にか手の届く距離に来ており、手を差し出してこう告げる。
『そろそろ行こうか。きみの居場所はこっちだ』
居場所、という言葉に瞳が揺らぐ。もしかしたら彼はこのひとりぽっちの世界から私を出してくれるのかもしれない。
初めて会った人に着いていくなんて今どき小学生でもしないが、どうせ退屈なのだ、暇つぶしにと彼の手を取った。
男が目を細めて静かに微笑むのを見て、視界がぐにゃりと歪んでいく。急に眠くなってしまった。手だけはどうか離さないように、私は意識を手放した。