本編②~デボンコーポレーション潜入編
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事態は一変し部屋全体に緊迫した空気が流れている。
ダイゴとシアの前に突如姿を現したライボルトは低い姿勢で低い唸り声を上げており今にも飛びかかりそうな体勢をしている。
シアはライボルトの額にある傷が目に入った瞬間まるで電撃を打たれたようにある記憶が脳裏に断片的に浮かび上がった。
「あれ?このライボルト」
「・・・まさか」
ぼんやりと湧いてきた人物とライボルトを重ね合わせて見た瞬間。シアは頭が真っ白になってしまった。
ライボルトはジリジリと為す術なく立ち尽くしているシアに距離を縮めて行った。
「シアちゃん!どうした!?」
明らかに様子がおかしいシアにダイゴは声をかけるがシアは一向に振り向かない。
ライボルトはシアが動けなくなったことがわかると体に電気を貯め始めた。
「シアちゃん!すぐにその場を離れろ!!」
ダイゴが大声を出した矢先だった。ライボルトはでんきショックをシアに向けて放った。すると、シアの腰につけていたモンスターボールが突然輝きヘルガーが勢いよく現れシアの前に立ち塞がった。その刹那、放たれた電撃はヘルガーに直撃した。
「ヘルガー!!」
でんきショックに耐えようとするヘルガーを見てシアは正気を取り戻す。
攻撃を受けたヘルガーは攻撃に耐えることができたが立ち上がるのがやっとであり力が入らず、身体がブルブルと小刻みに震えていた。でんきショックによるまひ状態となり身体が動かなくなってしまったのだ。
ライボルトはヘルガーが動けなくなったことがわかると鋭く睨み更に身体に電気を貯め始めた。
「どうしよう、このままじゃ確実にやられる!」
シアは抵抗もできず恐怖でギュッと目をつぶったその時であった。
「メタグロス、サイコキネシス!」
ダイゴの声が聞こえた。
固く閉じた目をゆっくり開くとそこには宙に浮き自由を奪われたライボルトがじたばた足を動かしている光景が目に浮かんだ。
「シアちゃん、たまにはボクを頼っておくれよ」
声のする方向へ振り向くとそこにはどこか自信に満ちた顔をしているダイゴと白いメタグロスの姿があった。
「ダイゴさん!」
シアは安堵しダイゴに微笑んだ。
「人に攻撃を放とうとするポケモンなんて教養がなってないな」
「ぜひパートナーの顔を見てみたいものだよ。」
ダイゴは宙に浮んでいるライボルトを見て含み笑いを浮かべる。
「キミ、痛い思いは嫌だよね」
体の自由が効かなくなってしまったライボルトは、ダイゴを横目で見ると何かを考えたかのように首をかしげた後「ウオオォ~ン」と遠吠えをした。
すると突然、部屋の中が雷に当たったかのようにチカチカと点滅するかのように光り始めた。
シアは光の正体に気がつくと声を荒らげた。
「閃光弾です!ダイゴさん目を瞑ってください!!」
2人は腕で目を覆うと間もなくして光の点滅は激しくなりやがて消えていった。
「・・・消えたか?」
ダイゴとシアは目を開くとそこには信じられない光景が広がっていた。
「ライボルトがいない!」
先程までメタグロスのサイコキネシスで捕らえられていたライボルトの姿がどこにも見当たらなくなっていた。
「逃げられたか」
「ライボルトが私を狙った理由はこの取り外した盗聴器を取り返すためだったと思います。」
「なるほど。それでシアちゃんに向かっていったんだね」
ダイゴは顎に手を当てて頷いた。すると、扉の奥から早々とした足音が近づいてきた。
「どうかしましまか!?先程ポケモンの鳴き声のようなのがきこえましたが」足音の主はクロダであった。クロダは少し肩呼吸をしながら部屋の中を見渡す。
「ああ、無事だ」
「クロダ、ライボルトを見かけなかったか?」
「いいえ、見かけてないです。」
「そうか、先程ライボルトがどこからか侵入し襲いかかって来たのだが突然去っていったんだ」
「ダイゴ様が無事でよかったです。」
「では私は会議に出るのでこの辺で」
クロダはダイゴの様子を知り安堵しため息を着くと振り返り去ろうとした瞬間シアはクロダを見つめ口を開いた。
「クロダさん待ってください。」
「クロダさんですよね。犯人を誘導したの」
シアの発言の後3人の間に沈黙が流れた。
「どうなんだ、クロダ」
ダイゴは眉をひそめながらクロダに視線を送る。クロダは2人に問いただされているにも関わらず無言を貫いていた。一向に口を開かないクロダにシアはさらに推理したことを話し始める。
「まず初め、事件があったエネルギールームなのですがそちらのパスワードはデボンの社員でないと分かりませんよね?」
「クロダさんは犯人に協力しパスワードを開けさせる役割をしたのです。」
「でも、ボクだってエネルギールームのパスワードは知っているよ?何もクロダとは限らないんじゃないかな?」ダイゴは腕を組み首を傾げる。クロダが犯人と協力したのがまだ信じられない様子に見える。
「もちろん、この話だけでは断言できません」
「エネルギールームにポケモンの毛が落ちていました。そして、特別会議室にもポケモンの毛が落ちていましたね」
「匂いを嗅いだヘルガーが同じ反応をしたのは同じポケモンの毛だということがわかります。」
「そして、そのポケモンの毛はおそらくライボルトのものです」
「つまり、犯人とクロダさんはエネルギールームだけでなく特別会議室にも来ていたのです。」
シアは目を瞑りゆっくりと深呼吸した後真っ直ぐとクロダを見つめゆっくりと口を開いた。
「特別会議室のパスワードをしっているのは社長とクロダさんしかいないと聞きました。」
「つまり、2つのパスワードの部屋を開けらるのはクロダさんしか浮かび上がりません。」
「そして、今日私とダイゴさんがこの部屋で特別会議室の社長とオトギリさんの会話を聞いていることもご存知なはずです。」
「クロダさんは犯人に外された盗聴器のありかを伝え犯人のポケモンであるライボルトが取り返しに襲いかかってきたのです。」
「クロダさん、本当のことを話してください。」
証拠は全て揃っており事実を証言していた。だが社長と親密な関係であるクロダが犯人に協力したのが信じきれず胸の奥が高鳴っていた。
クロダは表情を変えずシアの推理に耳を傾けた後黙り込んでから糸が切れたかのように項垂れた。
「実は、脅されてたんです。」
「1週間前ぐらいのことでした。突然私に電話がかかってきました」
「その内容は協力しないと社長の命が危ないとの言うことでした」
「冷やかしかとも思いましたが社長を守らなければと思い相手の言われるがままに行動するしかできませんでした。」クロダの証言に2人は息を飲む。クロダは事実を話した後ダイゴの前で膝を着いた後土下座をした。
「まさかデボンを停電にさせダイゴ様達を襲われる大事態になるとは思っていませんでした」
「私は大変な失態を起こしてしまいました。もうクビにして頂いても結構です。」
声が掠れそうになっているクロダにダイゴは微笑んだ。
「おいおい、よしておくれよクロダ」
「そこまで謝らなくていいさ」
「クロダはおやじを守ろうとしてくれたのだから」
「ダイゴ様ありがとうございます」
「デボンの社長秘書としてこれからも精進していきます」
ダイゴの言葉を聞くとクロダはゆっくりと立ち上がり深々と頭を下げた。
「ところで、クロダさんは犯人とお会いしたんですよね?どんな方でしたか?」シアは興味津々に伺う。犯人の証拠が掴めると思ったからだ。
しかし、シアの期待とは外れクロダは首を横に振った。
「実は、犯人とは面識がないのです。」
「面識がない?どう言うことですか?」
意外な返事が返って来たためシアは目を大きく開いた。
「申し訳ないのですが、ライボルトの首に着いていた無線機の様なものから流れてくる音声のみでしかやり取りをしていないのです。」
「おまけに声も変声されており男性か女性なのかわからなかったです。」
「そうなんですね、なんかガッカリです。」
シアは「ふぅ」と小さなため息を付き肩を落とした。ダイゴはシアを横目で見たあと考え込み始めた。
「しかし、あのライボルトのトレーナーは一体何者なんだろう?」
数分後、ダイゴとシアは部屋を後にしエントランスから外に出た。
既に辺りは暗闇に包まれておりヤミカラス達が街頭に留まり鳴きあっておりヨマワルが夜の散歩をしていた。
「すっかり暗くなってしまったね。」
「こんなに遅くなるつもりはなかったんだが」
「でもシアちゃんが無事でよかったよ」
「それに、クロダのことも気がついてくれてありがとう」
ダイゴはにっこりとシアに微笑みかける。
「ダイゴさん、先程は助けて頂きすみませんでした。」
「これからは気をつけます。」
シアは伏せ目がちにぽつりと呟いた。心の奥では(依頼人に心配をかけてしまった)とどこか後ろめたさを感じていたからだ。
「そんなに気を負わなくていいさ」
「ところで、君のバトルの実力なら直ぐにヘルガーに指示を出してライボルトに対抗できたと思えたんだが」
「あのライボルトに何かあったのかい?」
ダイゴは真っ直ぐシアの顔を見つめた。彼はホウエンチャンピオンなだけにポケモンバトルでの洞察力は確かなものである。シアはダイゴのどこか見透かされたような瞳で見つめられハッとした表情を浮かべた後少し黙ってから口を開いた。
「・・・なんでもないです。」
「そうかな、ボクにはそんなふうには見えないけど」
少し動揺しているように見えたシアにダイゴは心配そうに見つめる。
「あ、あはは、本当に何でもないですよ!」
シアはダイゴに悟られないようにわざと作り笑いをした。心の中では(ダイゴさんは勘が鋭いところがあるから気をつけなきゃ)と言い聞かせていた。
「そう言えば、オトギリとムクゲ社長の対談でダイキアドバンスが新製品の開発のため援助をしていたことはわかりましたが肝心な開発している商品については話されていませんでしたね。」ぽんと手を叩き笑顔を見せる。わざと違う話題を振りダイゴの関心をそらそうとした。
「そうだね、デボンに援助を求めるぐらいの開発とは一体なんなのだろうか」
「ダイキアドバイスについてまだ謎が多く存在しています。」
「もっと調べてみる価値はありそうですね」
「でも、オトギリが次にデボンに来るのかは検討もつかないね。どう調べていこうか」
シアは特別会議室でのムクゲとオトギリの会話を思い出した。オトギリは行きつけのお酒の飲める店がある。
「それは、クラブ・フェアリーに行くとわかるかもしれません」
「クラブ・フェアリー?」
「もしかして、ボクの実家のベランダにタバコの箱と一緒に落ちていた名刺のお店かい?」
「オトギリは恐らくその店で出入りしていると思われます。調査する価値はありそうですね。」
「ボクも行くよ」
「ダイゴさん、お気持ちはわかりますが依頼人を危険な目に合わせたくないです。」
「ボクだってシアちゃんだけ夜の店に潜入させる訳にはいかない。心配だよ。」
ダイゴの頑として折れない真っ直ぐとした瞳に見つめられるとシアは痺れを切らしため息をついた。
「はぁ、わかりました」
「調査方法については後日電話でお知らせしますね」
「では、私はこれで失礼します。」
シアが帰ろうとダイゴに背を向けた瞬間、ダイゴは声をかけた。
「シアちゃん」
「オトギリに苛立ちを覚え席を離れようとした時呼び止めてくれてありがとう」
「お陰でおやじを信じることができた」
「ボクが思ってたよりもおやじはデボンのことを思っていたんだなと気付かされたよ」
「ボクもまだまだだな。」
伏し目がちに話すダイゴにシアはゆっくりと振り向き微笑んだ。
「人やポケモンの心を探るのも探偵ですから」
【デボンコーポレーション編END】
◀◀ To Be Continued
ダイゴとシアの前に突如姿を現したライボルトは低い姿勢で低い唸り声を上げており今にも飛びかかりそうな体勢をしている。
シアはライボルトの額にある傷が目に入った瞬間まるで電撃を打たれたようにある記憶が脳裏に断片的に浮かび上がった。
「あれ?このライボルト」
「・・・まさか」
ぼんやりと湧いてきた人物とライボルトを重ね合わせて見た瞬間。シアは頭が真っ白になってしまった。
ライボルトはジリジリと為す術なく立ち尽くしているシアに距離を縮めて行った。
「シアちゃん!どうした!?」
明らかに様子がおかしいシアにダイゴは声をかけるがシアは一向に振り向かない。
ライボルトはシアが動けなくなったことがわかると体に電気を貯め始めた。
「シアちゃん!すぐにその場を離れろ!!」
ダイゴが大声を出した矢先だった。ライボルトはでんきショックをシアに向けて放った。すると、シアの腰につけていたモンスターボールが突然輝きヘルガーが勢いよく現れシアの前に立ち塞がった。その刹那、放たれた電撃はヘルガーに直撃した。
「ヘルガー!!」
でんきショックに耐えようとするヘルガーを見てシアは正気を取り戻す。
攻撃を受けたヘルガーは攻撃に耐えることができたが立ち上がるのがやっとであり力が入らず、身体がブルブルと小刻みに震えていた。でんきショックによるまひ状態となり身体が動かなくなってしまったのだ。
ライボルトはヘルガーが動けなくなったことがわかると鋭く睨み更に身体に電気を貯め始めた。
「どうしよう、このままじゃ確実にやられる!」
シアは抵抗もできず恐怖でギュッと目をつぶったその時であった。
「メタグロス、サイコキネシス!」
ダイゴの声が聞こえた。
固く閉じた目をゆっくり開くとそこには宙に浮き自由を奪われたライボルトがじたばた足を動かしている光景が目に浮かんだ。
「シアちゃん、たまにはボクを頼っておくれよ」
声のする方向へ振り向くとそこにはどこか自信に満ちた顔をしているダイゴと白いメタグロスの姿があった。
「ダイゴさん!」
シアは安堵しダイゴに微笑んだ。
「人に攻撃を放とうとするポケモンなんて教養がなってないな」
「ぜひパートナーの顔を見てみたいものだよ。」
ダイゴは宙に浮んでいるライボルトを見て含み笑いを浮かべる。
「キミ、痛い思いは嫌だよね」
体の自由が効かなくなってしまったライボルトは、ダイゴを横目で見ると何かを考えたかのように首をかしげた後「ウオオォ~ン」と遠吠えをした。
すると突然、部屋の中が雷に当たったかのようにチカチカと点滅するかのように光り始めた。
シアは光の正体に気がつくと声を荒らげた。
「閃光弾です!ダイゴさん目を瞑ってください!!」
2人は腕で目を覆うと間もなくして光の点滅は激しくなりやがて消えていった。
「・・・消えたか?」
ダイゴとシアは目を開くとそこには信じられない光景が広がっていた。
「ライボルトがいない!」
先程までメタグロスのサイコキネシスで捕らえられていたライボルトの姿がどこにも見当たらなくなっていた。
「逃げられたか」
「ライボルトが私を狙った理由はこの取り外した盗聴器を取り返すためだったと思います。」
「なるほど。それでシアちゃんに向かっていったんだね」
ダイゴは顎に手を当てて頷いた。すると、扉の奥から早々とした足音が近づいてきた。
「どうかしましまか!?先程ポケモンの鳴き声のようなのがきこえましたが」足音の主はクロダであった。クロダは少し肩呼吸をしながら部屋の中を見渡す。
「ああ、無事だ」
「クロダ、ライボルトを見かけなかったか?」
「いいえ、見かけてないです。」
「そうか、先程ライボルトがどこからか侵入し襲いかかって来たのだが突然去っていったんだ」
「ダイゴ様が無事でよかったです。」
「では私は会議に出るのでこの辺で」
クロダはダイゴの様子を知り安堵しため息を着くと振り返り去ろうとした瞬間シアはクロダを見つめ口を開いた。
「クロダさん待ってください。」
「クロダさんですよね。犯人を誘導したの」
シアの発言の後3人の間に沈黙が流れた。
「どうなんだ、クロダ」
ダイゴは眉をひそめながらクロダに視線を送る。クロダは2人に問いただされているにも関わらず無言を貫いていた。一向に口を開かないクロダにシアはさらに推理したことを話し始める。
「まず初め、事件があったエネルギールームなのですがそちらのパスワードはデボンの社員でないと分かりませんよね?」
「クロダさんは犯人に協力しパスワードを開けさせる役割をしたのです。」
「でも、ボクだってエネルギールームのパスワードは知っているよ?何もクロダとは限らないんじゃないかな?」ダイゴは腕を組み首を傾げる。クロダが犯人と協力したのがまだ信じられない様子に見える。
「もちろん、この話だけでは断言できません」
「エネルギールームにポケモンの毛が落ちていました。そして、特別会議室にもポケモンの毛が落ちていましたね」
「匂いを嗅いだヘルガーが同じ反応をしたのは同じポケモンの毛だということがわかります。」
「そして、そのポケモンの毛はおそらくライボルトのものです」
「つまり、犯人とクロダさんはエネルギールームだけでなく特別会議室にも来ていたのです。」
シアは目を瞑りゆっくりと深呼吸した後真っ直ぐとクロダを見つめゆっくりと口を開いた。
「特別会議室のパスワードをしっているのは社長とクロダさんしかいないと聞きました。」
「つまり、2つのパスワードの部屋を開けらるのはクロダさんしか浮かび上がりません。」
「そして、今日私とダイゴさんがこの部屋で特別会議室の社長とオトギリさんの会話を聞いていることもご存知なはずです。」
「クロダさんは犯人に外された盗聴器のありかを伝え犯人のポケモンであるライボルトが取り返しに襲いかかってきたのです。」
「クロダさん、本当のことを話してください。」
証拠は全て揃っており事実を証言していた。だが社長と親密な関係であるクロダが犯人に協力したのが信じきれず胸の奥が高鳴っていた。
クロダは表情を変えずシアの推理に耳を傾けた後黙り込んでから糸が切れたかのように項垂れた。
「実は、脅されてたんです。」
「1週間前ぐらいのことでした。突然私に電話がかかってきました」
「その内容は協力しないと社長の命が危ないとの言うことでした」
「冷やかしかとも思いましたが社長を守らなければと思い相手の言われるがままに行動するしかできませんでした。」クロダの証言に2人は息を飲む。クロダは事実を話した後ダイゴの前で膝を着いた後土下座をした。
「まさかデボンを停電にさせダイゴ様達を襲われる大事態になるとは思っていませんでした」
「私は大変な失態を起こしてしまいました。もうクビにして頂いても結構です。」
声が掠れそうになっているクロダにダイゴは微笑んだ。
「おいおい、よしておくれよクロダ」
「そこまで謝らなくていいさ」
「クロダはおやじを守ろうとしてくれたのだから」
「ダイゴ様ありがとうございます」
「デボンの社長秘書としてこれからも精進していきます」
ダイゴの言葉を聞くとクロダはゆっくりと立ち上がり深々と頭を下げた。
「ところで、クロダさんは犯人とお会いしたんですよね?どんな方でしたか?」シアは興味津々に伺う。犯人の証拠が掴めると思ったからだ。
しかし、シアの期待とは外れクロダは首を横に振った。
「実は、犯人とは面識がないのです。」
「面識がない?どう言うことですか?」
意外な返事が返って来たためシアは目を大きく開いた。
「申し訳ないのですが、ライボルトの首に着いていた無線機の様なものから流れてくる音声のみでしかやり取りをしていないのです。」
「おまけに声も変声されており男性か女性なのかわからなかったです。」
「そうなんですね、なんかガッカリです。」
シアは「ふぅ」と小さなため息を付き肩を落とした。ダイゴはシアを横目で見たあと考え込み始めた。
「しかし、あのライボルトのトレーナーは一体何者なんだろう?」
数分後、ダイゴとシアは部屋を後にしエントランスから外に出た。
既に辺りは暗闇に包まれておりヤミカラス達が街頭に留まり鳴きあっておりヨマワルが夜の散歩をしていた。
「すっかり暗くなってしまったね。」
「こんなに遅くなるつもりはなかったんだが」
「でもシアちゃんが無事でよかったよ」
「それに、クロダのことも気がついてくれてありがとう」
ダイゴはにっこりとシアに微笑みかける。
「ダイゴさん、先程は助けて頂きすみませんでした。」
「これからは気をつけます。」
シアは伏せ目がちにぽつりと呟いた。心の奥では(依頼人に心配をかけてしまった)とどこか後ろめたさを感じていたからだ。
「そんなに気を負わなくていいさ」
「ところで、君のバトルの実力なら直ぐにヘルガーに指示を出してライボルトに対抗できたと思えたんだが」
「あのライボルトに何かあったのかい?」
ダイゴは真っ直ぐシアの顔を見つめた。彼はホウエンチャンピオンなだけにポケモンバトルでの洞察力は確かなものである。シアはダイゴのどこか見透かされたような瞳で見つめられハッとした表情を浮かべた後少し黙ってから口を開いた。
「・・・なんでもないです。」
「そうかな、ボクにはそんなふうには見えないけど」
少し動揺しているように見えたシアにダイゴは心配そうに見つめる。
「あ、あはは、本当に何でもないですよ!」
シアはダイゴに悟られないようにわざと作り笑いをした。心の中では(ダイゴさんは勘が鋭いところがあるから気をつけなきゃ)と言い聞かせていた。
「そう言えば、オトギリとムクゲ社長の対談でダイキアドバンスが新製品の開発のため援助をしていたことはわかりましたが肝心な開発している商品については話されていませんでしたね。」ぽんと手を叩き笑顔を見せる。わざと違う話題を振りダイゴの関心をそらそうとした。
「そうだね、デボンに援助を求めるぐらいの開発とは一体なんなのだろうか」
「ダイキアドバイスについてまだ謎が多く存在しています。」
「もっと調べてみる価値はありそうですね」
「でも、オトギリが次にデボンに来るのかは検討もつかないね。どう調べていこうか」
シアは特別会議室でのムクゲとオトギリの会話を思い出した。オトギリは行きつけのお酒の飲める店がある。
「それは、クラブ・フェアリーに行くとわかるかもしれません」
「クラブ・フェアリー?」
「もしかして、ボクの実家のベランダにタバコの箱と一緒に落ちていた名刺のお店かい?」
「オトギリは恐らくその店で出入りしていると思われます。調査する価値はありそうですね。」
「ボクも行くよ」
「ダイゴさん、お気持ちはわかりますが依頼人を危険な目に合わせたくないです。」
「ボクだってシアちゃんだけ夜の店に潜入させる訳にはいかない。心配だよ。」
ダイゴの頑として折れない真っ直ぐとした瞳に見つめられるとシアは痺れを切らしため息をついた。
「はぁ、わかりました」
「調査方法については後日電話でお知らせしますね」
「では、私はこれで失礼します。」
シアが帰ろうとダイゴに背を向けた瞬間、ダイゴは声をかけた。
「シアちゃん」
「オトギリに苛立ちを覚え席を離れようとした時呼び止めてくれてありがとう」
「お陰でおやじを信じることができた」
「ボクが思ってたよりもおやじはデボンのことを思っていたんだなと気付かされたよ」
「ボクもまだまだだな。」
伏し目がちに話すダイゴにシアはゆっくりと振り向き微笑んだ。
「人やポケモンの心を探るのも探偵ですから」
【デボンコーポレーション編END】
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