本編②~デボンコーポレーション潜入編
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日が登り始めスバメやアゲハント達が忙しく飛び回り始める頃、シアは早速デボンコーポレーションへ向かった。着くと直ぐにダイゴが出迎えシアはある部屋へと案内された。部屋に入ると中央には机と椅子があり大きなモニターが設備されていた。
「ダイゴさん、この部屋はなんですか?」
シアは不思議そうに首を傾げながら辺りを見渡した。それも昨日ダイゴから(ボクに提案があるから明日朝にデボンに来て欲しい)とメールが来ていたからだ。
「まあ、先ずは見ていておくれ」
そう言うとダイゴはモニター前のキーボードを押した。すると、大きなモニターに見覚えのある部屋の風景が映し出された。
「あ、特別会議室だ!」
「おやじとオトギリの会話を聴き取れるように監視カメラを仕込んで置いたのさ」
「犯人が盗聴してまで聴きたいおやじ達の話が気になってね」シアが直ぐに気づくとダイゴはどこか得意げに鼻を鳴らした。
「実は私も同じ案を考えていました!」
「ダイゴさんってお仕事早いですね」
シアは期待が高まりダイゴに眼差しを向け微笑んだ。
「これぐらいどおってことないさ」
視線を向けられダイゴは嬉しそうに微笑み返した。
「さ、準備は整った。後はおやじ達が特別会議室に入るまで待とうか。」
「クロダの話だと10時ぐらいに始める予定らしい」
「なんだか、張り込み調査に似ていますね。」
「私、張り込みには慣れっこです!」
「いつも張り込み調査ってどこでしてるんだい?」ダイゴは興味津々に聞く。シアを見ていると探偵にますます興味を抱き始めていた。
「普段の調査は外で行うのがほとんどですね。なので、今回はお部屋でしかも座ってできるだなんて素晴らしいです!」
「雨の日なんてもうずぶ濡れになってしまいますから。まるでみずでっぽうを受けたみたいになりますよ!」
「それは大変だね、風邪ひいちゃうよ」
「探偵は人とポケモンのためなら時に身体を張るものなんです。」シアは得意げに腕を組みながら頷いた。
「そうか、でもあまり無理はしないでね。」ダイゴは苦笑いを返した。しかし、大変な仕事内容ではあるが目を輝かせながら話すシアを魅力的に感じさらに興味を抱いていた。そして視線を落とす。
「それと、部屋で2人きりで調査ができるのは都合がいいしね」
「都合って。人目につかないってことですか?」
「それもそうだが正確にはボクがだな」
話しながら下げた視線をゆっくりと上げる。
「どう言う意味ですか?」
シアは言葉の意味が掴めず首を傾げる。
「2人だけなら名前で呼び合えるだろ?」
「そろそろセラさんなんて偽名で呼ぶのは飽きてきたよ。」ダイゴは腕を組みながら「ふぅ」と小さなため息をついた。
「ボクは君の本当の名前で呼びたいな」
「わかってはいるが、偽名で呼ぶとなんだか心の距離が遠ざかって行くみたいでね」
今まで自分の呼び名など特に関心がなかったはシアダイゴに意識されていたことに気がつきどの言葉で返したらいいのか分からなくなり沈黙が流れた。
「ダイゴさん、それって・・・。」
眉をひそめながらゆっくりと口を開いた瞬間だった。
「ギャアア~!」
突然窓からポケモンの鳴き声がした。その鳴き声はまるで重機から出る音のようであった。はシア声に驚き窓に目を向けるとそこにはプテラが窓から顔を覗かしていた。
ダイゴはプテラを見ると微笑みながら窓を開けた。
「プテラご苦労!」
「どうやらおやじが会社に戻ったみたいだ」
「プテラに見張りをつけさせていたんだ。おやじ達が見えたらボクに報告するように頼んでおいたのさ」
プテラはダイゴに鼻をさすられ嬉しそうに「プルルッ」と鼻息をたてている。
「すごい、プテラってとても賢いポケモンなんですね!」
「ああ、中でもボクのプテラは特別なのさ」
「さて、早速モニタリングしようか」
ダイゴはキーボードを慣れた手つきで入力するとモニターにエントランスの映像が映し出された。映像にはムクゲと隣には黒いサングラスを付けたスキンヘッドのブランドスーツを身にまとったの男とが映し出された。男の足元にはガラルニャースが退屈そうに辺りを見渡していた。おそらくパートナーなのであろう。
「あの男がオトギリさん?」
「なんだか怖そうな見た目な方ですね。」
「どうやらそうみたいだね。」
「スーツのフラワーホールにバッヂが付けられているよ」
ムクゲとオトギリはその後すぐに特別会議室へと向かって行った。ダイゴはすぐにモニターを会議室の中の映像へ切り替えマイクを室内へと繋げる。するとムクゲとオトギリの会話が鮮明に聞こえてきた。
「以前、ご自宅の御屋敷でもお話しさせて頂きましたがこちらの会議室もなかなかですなあ」
「我社もいつかは素敵な会議室ができるくらい精進しなければ」オトギリは誰から見てもわかりやすい作り笑顔を浮かべ手を擦り合わせながらムクゲの機嫌を取るようにお世辞を言う。
「御屋敷に来ていた、ツワブキ邸に?
「もしかして、メイドさんが言っていた夜遅くに社長を尋ねてきた人ってオトギリさんってこと?」
シアは以前、ダイゴがメイドから伝えれた話を思い出した。屋敷の書斎にあったオトギリの名刺そしてオトギリの発言を聞き点と点が結びついた感覚が湧き上がった。
「それはありがとう。」
「さ、オトギリくんこちらのへどうぞ」
ムクゲはすかさずオトギリをソファへ誘導するとオトギリは腰をかけた。
「この前のプロジェクト、御社のお力添えもありお陰様で成功致しました。」
「そうか、それはよかった。」
ムクゲは相槌を打ちながらオトギリの会話に耳を傾けていた。
「そこで、折り入って相談があるのですが」
オトギリのサングラスがきらりと光った。
「我社で新しい商品を開発するのにあたり製造機を増やすためにも資金が必要でございまして大変恐縮でございますが再び御社のお力をお借りさせて頂きたいのであります」
「う~む、力になって上げたいのは山々なのだが前回の新プロジェクト立ち上げの資金を肩代わりしてあげたばかりではないかね?」ムクゲは聞き飽きたかのように目線を落とす。その表情はどこか呆れているようにも見えた。
「この男、まだデボンから膨大な資金を借りようとしてるのか!?」ダイゴは軽く拳を握り締めながらモニター越しにオトギリを睨んだ。
「どうやらまだ賃金の関係は続いてるみたいですね。」
シアは少し気が立っているダイゴを横目で眺める。それもそのはずダイゴが借りたお金を返さないダイキアドバンスを不審に思うのも無理は無い。
「我社と御社との関係のためにもどうかご検討を!」オトギリはなんとしてでもムクゲを納得させるように更に作り笑顔に磨きがかかっていた。
「・・・。」
ムクゲは難しい表情を浮かべ顔をしかめ黙り込んだ。
「おやじ・・・。」
ダイゴは呟くと無言で部屋のドアへと歩いていった。
「ダイゴさん、どちらへ?」
シアは急にダイゴが席を立ったので驚いき背中に問う。
「特別会議室に行くよ。」
「おやじだけでは話が着いてしまいまたデボンに不利な契約を結んでしまいかねないからね」
ダイゴは振り返らず真剣な声で返す。
「ダイゴさん、待ってください!」
「今ここでダイゴさんが入ってしまいましたら私達の計画が台無しになってしまいます!」
シアは慌ててダイゴを引き止める。ムクゲの前にダイゴが現れてしまうと話が厄介になってしまうからだ。
「社長さんはデボンのことをとても大切に思っていらっしゃるお方です。デボンを守ろうとしている強い意志があります。」
「ここは社長さんを信じてみてはいかがでしょうか」
シアはムクゲが御屋敷で話していた言葉が脳裏をよぎった。
「シアくんはもし自分が大切にしている石達がある日突然何者かに壊されてしまうことを知ったらどうするかね?」
なぜ、社長は自分にそのような質問をしたのかそして社長の答えを今ここで分かるかもしれないと思った。
「・・・シアちゃん、すまない」
「ボクもおやじを信じることにするよ」
ダイゴはシアの言葉を聞きムクゲの背中を思い出した。それはホウエンの大企業デボンコーポレーションの社長であり父親であり自分をいつも支えてくれたダイゴにとっては大きくも暖かく頼もしい背中であった。
「よかった」
シアはダイゴが振り返ってくれて安心し微笑んだ。
2人は気を取り直しモニターに視線を戻した。モニター越しのムクゲとオトギリの間にまだ沈黙と緊張感が走っていた。
「我が社の社長も大層喜んでおられましたよ」
痺れを切らしオトギリの方から先に口を開く。どこか含み笑いをしている。足元にいたガラルニャースの目が鋭くキラリと光った。
「それは本当かい!?」
「今、彼はどこへ?」
オトギリの発言を聞きムクゲは先程の深刻そうな表情から驚いた表情へ一瞬で変わった。
「・・・社長?ダイキアドバンスの?」
シアはムクゲの驚き様に気になりオトギリの発言に何か引っ掛かりを感じた。
ムクゲの少し動揺している様子を見るとオトギリは更にゆっくりと口を開いた。
「デボンの理想を叶えるためにも我社の協力が必要になるでしょう。」
「そう、シン・デルタ計画成功の為にもね、、、。」
ムクゲはゆっくりと目を閉じ一瞬下向いた後ゆっくりとオトギリに視線を戻した。
「・・・いくらで考えてるのかね」
そう聞くとオトギリはニヤリと笑った。
「とりあえず1000万というのでは如何なものかと」
「わかった、手配する」
「ただし、もうデボンに関わらんでくれ」
「社長である私が言うのもなんだが、私にも家族がいる。そして大切な社員やポケモン達がいる。」
「私は、彼らを守るためならなんだってする。それが私の意思だ。」ムクゲは一切表情を変えずオトギリを真っ直ぐに見ていた。
シアはムクゲの真っ直ぐとした固い意思を知ることができ質問の答えを知ることができゆっくりと頷き「そうか、これが社長の答えなんだ」と呟いた。
「とんでもない、我社は決してデボンに害のあることは致しません。」
「ただ、お力を少しお借りさせて頂きたいだけですよ」
オトギリはムクゲの態度に少し慌てる素振りを見せつつもお得意の愛想笑いで乗り切ろうとしていた。内心早くこの場を去りたいとでも思っている様に見える。
「ではそうと決まればこの契約書にサインをお願い致しします!」
ダイゴは契約書にサインをしているムクゲを無言で見つめていた。シアはダイゴさんは社長の言葉をどう受け止めたのだろうか気になりつつもある質問をしてみる。
「ダイゴさん。シン・デルタ計画ってなんですか?」
「デボンが新しく始めたエネルギー開発プロジェクトだよ」
「以前行ってきたデボン独自のエネルギー制作方を改善し異なる技法で作成する方法を探しているんだ」
「は~、なんだか難しそうなお話しですね。
「シンって新しいってことですよね?では、以前のデルタ計画ってどんな内容だったのですか?」
「それは、、、」
ダイゴは一瞬言いかけ首を振る。
「時が来たらシアちゃんにも話すよ」
曖昧な返事を返されシアは(何か私に隠してる?ムクゲ社長といいダイゴさん達は秘密事が多いな)と呆れていた。
「では、私はこれで失礼致します。」
「近況がありましたらまたご報告させていただきます。」オトギリが会釈するとガラルニャースも目を光らせながらお辞儀をした。
「そうだ!お礼と言ってはなんですが今度私に店を案内させてください」
「カナズミシティの街中に良いお酒が飲める行きつけの店があるので社長もいかがでしょうか?」
「・・・気持ちだけ頂いておくがよしておくよ」
ムクゲは迷うことなくオトギリの誘いを断った。
「そうですか、また気がありましたらぜひお声をかけてくださいね!」
シアはオトギリからお酒の飲める店の話題が出た時、ツワブキ邸で拾ったキャバクラの名刺を思い出した。「お酒が飲める店ってまさか!」そう呟いた瞬間だった。
「バタン!」
突然、シアとダイゴのいる部屋のドアが大きく音を立てて勢いよく開いたら。
「何事だ!?」
ダイゴとシアが振り向くとそこには(ほうでんポケモン)ライボルトが牙を向けながら「ウウゥ~」と低い唸り声を上げている姿が見えた。
「このポケモンは一体何!?」
唸るライボルトを見てシアは立ちすくんでいた。
【デボンとダイキアドバンスの取引からムクゲの意志を知ることができたシアとダイゴ。だが突如新たなる刺客が現れる。一体どうなる!?次回、デボンコーポレーション編最終回。】
◀◀ To Be Continued
「ダイゴさん、この部屋はなんですか?」
シアは不思議そうに首を傾げながら辺りを見渡した。それも昨日ダイゴから(ボクに提案があるから明日朝にデボンに来て欲しい)とメールが来ていたからだ。
「まあ、先ずは見ていておくれ」
そう言うとダイゴはモニター前のキーボードを押した。すると、大きなモニターに見覚えのある部屋の風景が映し出された。
「あ、特別会議室だ!」
「おやじとオトギリの会話を聴き取れるように監視カメラを仕込んで置いたのさ」
「犯人が盗聴してまで聴きたいおやじ達の話が気になってね」シアが直ぐに気づくとダイゴはどこか得意げに鼻を鳴らした。
「実は私も同じ案を考えていました!」
「ダイゴさんってお仕事早いですね」
シアは期待が高まりダイゴに眼差しを向け微笑んだ。
「これぐらいどおってことないさ」
視線を向けられダイゴは嬉しそうに微笑み返した。
「さ、準備は整った。後はおやじ達が特別会議室に入るまで待とうか。」
「クロダの話だと10時ぐらいに始める予定らしい」
「なんだか、張り込み調査に似ていますね。」
「私、張り込みには慣れっこです!」
「いつも張り込み調査ってどこでしてるんだい?」ダイゴは興味津々に聞く。シアを見ていると探偵にますます興味を抱き始めていた。
「普段の調査は外で行うのがほとんどですね。なので、今回はお部屋でしかも座ってできるだなんて素晴らしいです!」
「雨の日なんてもうずぶ濡れになってしまいますから。まるでみずでっぽうを受けたみたいになりますよ!」
「それは大変だね、風邪ひいちゃうよ」
「探偵は人とポケモンのためなら時に身体を張るものなんです。」シアは得意げに腕を組みながら頷いた。
「そうか、でもあまり無理はしないでね。」ダイゴは苦笑いを返した。しかし、大変な仕事内容ではあるが目を輝かせながら話すシアを魅力的に感じさらに興味を抱いていた。そして視線を落とす。
「それと、部屋で2人きりで調査ができるのは都合がいいしね」
「都合って。人目につかないってことですか?」
「それもそうだが正確にはボクがだな」
話しながら下げた視線をゆっくりと上げる。
「どう言う意味ですか?」
シアは言葉の意味が掴めず首を傾げる。
「2人だけなら名前で呼び合えるだろ?」
「そろそろセラさんなんて偽名で呼ぶのは飽きてきたよ。」ダイゴは腕を組みながら「ふぅ」と小さなため息をついた。
「ボクは君の本当の名前で呼びたいな」
「わかってはいるが、偽名で呼ぶとなんだか心の距離が遠ざかって行くみたいでね」
今まで自分の呼び名など特に関心がなかったはシアダイゴに意識されていたことに気がつきどの言葉で返したらいいのか分からなくなり沈黙が流れた。
「ダイゴさん、それって・・・。」
眉をひそめながらゆっくりと口を開いた瞬間だった。
「ギャアア~!」
突然窓からポケモンの鳴き声がした。その鳴き声はまるで重機から出る音のようであった。はシア声に驚き窓に目を向けるとそこにはプテラが窓から顔を覗かしていた。
ダイゴはプテラを見ると微笑みながら窓を開けた。
「プテラご苦労!」
「どうやらおやじが会社に戻ったみたいだ」
「プテラに見張りをつけさせていたんだ。おやじ達が見えたらボクに報告するように頼んでおいたのさ」
プテラはダイゴに鼻をさすられ嬉しそうに「プルルッ」と鼻息をたてている。
「すごい、プテラってとても賢いポケモンなんですね!」
「ああ、中でもボクのプテラは特別なのさ」
「さて、早速モニタリングしようか」
ダイゴはキーボードを慣れた手つきで入力するとモニターにエントランスの映像が映し出された。映像にはムクゲと隣には黒いサングラスを付けたスキンヘッドのブランドスーツを身にまとったの男とが映し出された。男の足元にはガラルニャースが退屈そうに辺りを見渡していた。おそらくパートナーなのであろう。
「あの男がオトギリさん?」
「なんだか怖そうな見た目な方ですね。」
「どうやらそうみたいだね。」
「スーツのフラワーホールにバッヂが付けられているよ」
ムクゲとオトギリはその後すぐに特別会議室へと向かって行った。ダイゴはすぐにモニターを会議室の中の映像へ切り替えマイクを室内へと繋げる。するとムクゲとオトギリの会話が鮮明に聞こえてきた。
「以前、ご自宅の御屋敷でもお話しさせて頂きましたがこちらの会議室もなかなかですなあ」
「我社もいつかは素敵な会議室ができるくらい精進しなければ」オトギリは誰から見てもわかりやすい作り笑顔を浮かべ手を擦り合わせながらムクゲの機嫌を取るようにお世辞を言う。
「御屋敷に来ていた、ツワブキ邸に?
「もしかして、メイドさんが言っていた夜遅くに社長を尋ねてきた人ってオトギリさんってこと?」
シアは以前、ダイゴがメイドから伝えれた話を思い出した。屋敷の書斎にあったオトギリの名刺そしてオトギリの発言を聞き点と点が結びついた感覚が湧き上がった。
「それはありがとう。」
「さ、オトギリくんこちらのへどうぞ」
ムクゲはすかさずオトギリをソファへ誘導するとオトギリは腰をかけた。
「この前のプロジェクト、御社のお力添えもありお陰様で成功致しました。」
「そうか、それはよかった。」
ムクゲは相槌を打ちながらオトギリの会話に耳を傾けていた。
「そこで、折り入って相談があるのですが」
オトギリのサングラスがきらりと光った。
「我社で新しい商品を開発するのにあたり製造機を増やすためにも資金が必要でございまして大変恐縮でございますが再び御社のお力をお借りさせて頂きたいのであります」
「う~む、力になって上げたいのは山々なのだが前回の新プロジェクト立ち上げの資金を肩代わりしてあげたばかりではないかね?」ムクゲは聞き飽きたかのように目線を落とす。その表情はどこか呆れているようにも見えた。
「この男、まだデボンから膨大な資金を借りようとしてるのか!?」ダイゴは軽く拳を握り締めながらモニター越しにオトギリを睨んだ。
「どうやらまだ賃金の関係は続いてるみたいですね。」
シアは少し気が立っているダイゴを横目で眺める。それもそのはずダイゴが借りたお金を返さないダイキアドバンスを不審に思うのも無理は無い。
「我社と御社との関係のためにもどうかご検討を!」オトギリはなんとしてでもムクゲを納得させるように更に作り笑顔に磨きがかかっていた。
「・・・。」
ムクゲは難しい表情を浮かべ顔をしかめ黙り込んだ。
「おやじ・・・。」
ダイゴは呟くと無言で部屋のドアへと歩いていった。
「ダイゴさん、どちらへ?」
シアは急にダイゴが席を立ったので驚いき背中に問う。
「特別会議室に行くよ。」
「おやじだけでは話が着いてしまいまたデボンに不利な契約を結んでしまいかねないからね」
ダイゴは振り返らず真剣な声で返す。
「ダイゴさん、待ってください!」
「今ここでダイゴさんが入ってしまいましたら私達の計画が台無しになってしまいます!」
シアは慌ててダイゴを引き止める。ムクゲの前にダイゴが現れてしまうと話が厄介になってしまうからだ。
「社長さんはデボンのことをとても大切に思っていらっしゃるお方です。デボンを守ろうとしている強い意志があります。」
「ここは社長さんを信じてみてはいかがでしょうか」
シアはムクゲが御屋敷で話していた言葉が脳裏をよぎった。
「シアくんはもし自分が大切にしている石達がある日突然何者かに壊されてしまうことを知ったらどうするかね?」
なぜ、社長は自分にそのような質問をしたのかそして社長の答えを今ここで分かるかもしれないと思った。
「・・・シアちゃん、すまない」
「ボクもおやじを信じることにするよ」
ダイゴはシアの言葉を聞きムクゲの背中を思い出した。それはホウエンの大企業デボンコーポレーションの社長であり父親であり自分をいつも支えてくれたダイゴにとっては大きくも暖かく頼もしい背中であった。
「よかった」
シアはダイゴが振り返ってくれて安心し微笑んだ。
2人は気を取り直しモニターに視線を戻した。モニター越しのムクゲとオトギリの間にまだ沈黙と緊張感が走っていた。
「我が社の社長も大層喜んでおられましたよ」
痺れを切らしオトギリの方から先に口を開く。どこか含み笑いをしている。足元にいたガラルニャースの目が鋭くキラリと光った。
「それは本当かい!?」
「今、彼はどこへ?」
オトギリの発言を聞きムクゲは先程の深刻そうな表情から驚いた表情へ一瞬で変わった。
「・・・社長?ダイキアドバンスの?」
シアはムクゲの驚き様に気になりオトギリの発言に何か引っ掛かりを感じた。
ムクゲの少し動揺している様子を見るとオトギリは更にゆっくりと口を開いた。
「デボンの理想を叶えるためにも我社の協力が必要になるでしょう。」
「そう、シン・デルタ計画成功の為にもね、、、。」
ムクゲはゆっくりと目を閉じ一瞬下向いた後ゆっくりとオトギリに視線を戻した。
「・・・いくらで考えてるのかね」
そう聞くとオトギリはニヤリと笑った。
「とりあえず1000万というのでは如何なものかと」
「わかった、手配する」
「ただし、もうデボンに関わらんでくれ」
「社長である私が言うのもなんだが、私にも家族がいる。そして大切な社員やポケモン達がいる。」
「私は、彼らを守るためならなんだってする。それが私の意思だ。」ムクゲは一切表情を変えずオトギリを真っ直ぐに見ていた。
シアはムクゲの真っ直ぐとした固い意思を知ることができ質問の答えを知ることができゆっくりと頷き「そうか、これが社長の答えなんだ」と呟いた。
「とんでもない、我社は決してデボンに害のあることは致しません。」
「ただ、お力を少しお借りさせて頂きたいだけですよ」
オトギリはムクゲの態度に少し慌てる素振りを見せつつもお得意の愛想笑いで乗り切ろうとしていた。内心早くこの場を去りたいとでも思っている様に見える。
「ではそうと決まればこの契約書にサインをお願い致しします!」
ダイゴは契約書にサインをしているムクゲを無言で見つめていた。シアはダイゴさんは社長の言葉をどう受け止めたのだろうか気になりつつもある質問をしてみる。
「ダイゴさん。シン・デルタ計画ってなんですか?」
「デボンが新しく始めたエネルギー開発プロジェクトだよ」
「以前行ってきたデボン独自のエネルギー制作方を改善し異なる技法で作成する方法を探しているんだ」
「は~、なんだか難しそうなお話しですね。
「シンって新しいってことですよね?では、以前のデルタ計画ってどんな内容だったのですか?」
「それは、、、」
ダイゴは一瞬言いかけ首を振る。
「時が来たらシアちゃんにも話すよ」
曖昧な返事を返されシアは(何か私に隠してる?ムクゲ社長といいダイゴさん達は秘密事が多いな)と呆れていた。
「では、私はこれで失礼致します。」
「近況がありましたらまたご報告させていただきます。」オトギリが会釈するとガラルニャースも目を光らせながらお辞儀をした。
「そうだ!お礼と言ってはなんですが今度私に店を案内させてください」
「カナズミシティの街中に良いお酒が飲める行きつけの店があるので社長もいかがでしょうか?」
「・・・気持ちだけ頂いておくがよしておくよ」
ムクゲは迷うことなくオトギリの誘いを断った。
「そうですか、また気がありましたらぜひお声をかけてくださいね!」
シアはオトギリからお酒の飲める店の話題が出た時、ツワブキ邸で拾ったキャバクラの名刺を思い出した。「お酒が飲める店ってまさか!」そう呟いた瞬間だった。
「バタン!」
突然、シアとダイゴのいる部屋のドアが大きく音を立てて勢いよく開いたら。
「何事だ!?」
ダイゴとシアが振り向くとそこには(ほうでんポケモン)ライボルトが牙を向けながら「ウウゥ~」と低い唸り声を上げている姿が見えた。
「このポケモンは一体何!?」
唸るライボルトを見てシアは立ちすくんでいた。
【デボンとダイキアドバンスの取引からムクゲの意志を知ることができたシアとダイゴ。だが突如新たなる刺客が現れる。一体どうなる!?次回、デボンコーポレーション編最終回。】
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