本編①~ツワブキ邸潜入編
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書斎の中は静まり返っており窓からは光が差し込んでいた。机は本棚の横に佇んでいて鉄製の事務机のようなデザインになっている。机の上の本や書類は綺麗に整理整頓されており上にはパソコンとボールペンなどの筆記用具のみ置かれていた。
シアは机の上にはめぼしい物が見つからないと分かると引き出しを開けてみることにした。引き出しは3段あり上から1弾ずつ開いてみる。しかし、どの引き出しの中にも万年筆やルーペ、鉱石図鑑、ペンライトなど特に証拠を見つけることができなかった。
「クレッフィの護りをつけてまで秘密にしておきたかった書斎なのに証拠がひとつも見つからないなんて」シアは落胆し首を前方へ曲げ顔をしかめた。しかし、まだ机の上の調査が終えてないので最後にかけてみることにした。
机の上は本やファイルが大きさに合わせて小さいのから大きいのまできちんと並べられている。見事な整理整頓ぶりにシアはムクゲが几帳面な性格であるのではないかと推測した。そして、ある1冊の黒い手帳になにか言わ感を覚えた。
(・・・ん?)
(あれ、この手帳だけサイズが違うファイルとファイルの間にはさんである)
よく見ると、手のひらサイズの黒い手帳が大きいサイズのファイルの間に押し込まれるように挟まれていた。他は綺麗に大きさに合わせて整頓されているのに対しどこか不自然に見える。
(まるで、大きいファイルで隠しているみたい)
シアは疑いながら挟まれている黒い手帳を取り出してみた。手帳の表紙にはオムナイトのイラストが箔押しされているデザインになっておりどこか高級感が漂っていた。
手帳を開いてみるとシアは思わず目を疑った。
そこには、高額な金銭貸借が記録されていたからだ。記録されていた金額は一般庶民には想像が難しい程の金額でありシアは思わず驚き目が泳いでしまった。
「すごい金額!?」
「しかも取引したのもここ数ヶ月の間だしダイゴさんが社長を疑い始めた時期と被ってるな」
手帳には更に酒代も書かれておりこちらも目を疑うほどの金額であった。
手帳のページを更に開いてみるとブッグカバーのポケットにある名刺が入ってあった。
「どこの名刺だろう?」
名刺を取り出してみると【有限会社 ダイキアドバンス オトギリ】と社名と社員の名前が書かれていた。
「ダイキアドバンス?知らない名前の会社だな。ダイゴさんなら知ってるかも。」
シアはPフォンのカメラで手帳に書かれていることと名刺の写真を証拠として撮影した。するとどこからか足音の様な音が聞こえてきた。
「誰か来る!?」
シアは急いで手帳を元に戻すと書斎の奥へ身を潜めた。緊張で鼓動が早くなる。足音は書斎の方へだんだん近づくにつれ鼓動の音が聞こえるぐらい更に早くなっていった。身をかがめて後ずさりしていると書斎の行き止まりに差し掛かりシアは背中に何か当たるものを感じた。
「ドアノブ、向こう側に部屋があるの?」
振り返り見てみると背中に当たったものはドアノブだった。
(ここに居たらもしかしたら何者かに見つかってしまうかもしれない。隠れるためにも部屋に入ろう!)シアは意を決してドアノブを捻り部屋の中へと入っていった。
部屋の中に入るとそこには大きな窓から明るく光が差し込んだ15畳ぐらいの部屋が広がっていた。
部屋には書斎のように大きな本棚が壁に取り付けてあり更に周りにはショーケースに飾られた鉱石が丁寧に飾られていた。恐らくムクゲのコレクションなのだろう。
そして、中でも1番目に付いたのは部屋の中心の壁に飾られている大きな家族写真だ。家族写真は金縁出できたどこか高級感を放っていた。
写真には、右側には少し若く痩せているがムクゲと思われる人物と左側にはまるでモデルの様な容姿でどこか気品のある女性が優しく微笑んでいた。さらに2人の間には椅子に座りどこか無邪気で純粋そうな笑顔を浮かべた5歳位の銀髪の男の子が写っていた。
シアは写真に映る男の子が誰だか直ぐにわかった。
「ダイゴさんだ」
家族写真を眺めながら小さく呟く。シアは他にも壁にかけられている物に目を向ける。そこには【ダイゴ5才いしのどうくつにて】と書かれた少年ダイゴとヨーテリーが笑顔で嬉しそうに石を眺めいる様子の写真や【ホウエンアマチュアバトルカップにて】と書かれたた恐らく15歳ぐらいのダイゴがトロフィーを持ちながらメタングと映る写真が飾られてあった。
そしてさらに奥の壁には【新ホウエンチャンピオン誕生 チャンピオンはデボンコーポレーション御曹司】と大きく見出しに書かれたポケモン新聞の1部が飾られていた。更には下にはトロフィーやメダルがショーケースに飾られていた。どれも功績と同じく輝きを放っているように見えた。
シアは部屋の様子から今いる部屋はツワブキ家の思い出の部屋であることが理解した。シアは中でも一際印象深い写真を見つけた。それは6匹のはがねポケモン達と戯れながら満面の笑みを浮かべているダイゴの写真だった。写っている場所がバトルコートから察するにチャンピオン戦が終わった直後のものだろう。傷だらけのメタグロスがダイゴに自信に満ちた表情を向けている。
シアはツワブキ家の思い出の写真を眺めてひとつの共通点を見つけた。
「どの写真もダイゴさんとポケモン達が一緒に幸せそうに写ってる」
「社長さんは息子とポケモン思いな人なんだな」
シアはそう呟くと以前ダイゴが庭を見ながら話した言葉が脳裏に浮かび上がった。
「ああ、この庭はね人や野生のポケモン達が休めるように作られた庭なんだ。おやじの考えでね。」
ダイゴの言動からもムクゲは家族とポケモンを大切にしている人物であると認識することができた。
「もしかしたら、社長は家族やポケモン達を守るために裏で動いているのかもしれない。」シアは思い出の部屋と書斎の秘密からひとつの憶測が広がった。そして、思い出部屋を後にしクレッフィに書斎の鍵を返すとメイド業務へと戻って行った。
ムクゲは、朝に伝えた通り遅くに仕事を終えツワブキ帝に戻ってきたのは夜の9時頃であった。夕飯を済ませたあといつもはすぐに書斎へ戻るがその日は何故かダイニングルームのソファに座って休んでいた。
どこか疲れた表情でうつむきながら一点を見つめている様子であった。
シアはムクゲがリビングルームにいるのを知ると紅茶を淹れテーブルにそっと置いた。
「ああ、シアくんかありがとう」
ムクゲは紅茶が置かれたのに気がつくとシアの方へ首を向けた。少しやつれた表情をしているように見える。
「旦那様遅くまでお仕事お疲れ様でございました。」
「とてもお疲れなご様子でしたので少しでも安らいで頂けましたらと」
シアはムクゲに微笑むと少し黙ってから
「私でよろしければお話し聴きますよ。」とムクゲに直接尋ねてみることにした。
ムクゲは少し驚いた顔になると少し嬉しそうに微笑しながらゆっくりと口を開いた。
「シアくんはもし自分が大切にしている石達がある日突然何者かに壊されてしまうことを知ったらどうするかね?」
シアはムクゲに突然どこか意味深そうな質問をされて一瞬驚いたが腕を組んで考え始めた。
「私でしたらその何者が石を壊す前に捕まえちゃいます。」
「そうだね、事前にトラブルを防ぐために相手の先を取ることは大事な策略だね。」ムクゲは軽く頷きながらシアに視線を向けてからゆっくりと下に戻しどこか重たそうに口を開いた。
「ただ、もし捕まえることが何かの理由できない相手だったらシアくんはどうするかね」
「う~ん、でしたら相手を仲間にしちゃいます。そうしたら仲良く石を一緒に眺めることができますから」
「ハハハ、シアくんの答えは面白いね。確かにその手があったね」
「一緒に石を眺めてくれる相手だといいんだがね」
「旦那様でしたらできると思います。家族とポケモンを誰よりも大切にされておられますから。私は応援しております。」
「ありがとう。シアくんと話すとどこか心が暖かくなるよ。」
「シアくんは将来素敵なお嫁さんになると思うよ」
「ダイゴなんてどうだい?」
ムクゲは目を細めいたずらっぽく目の奥を光らせた。先程の疲れていた表情から一変し明るい表情になっていた。
「アハハ・・・。」
シアは心の中で(ないない!)と思いつつ父親であるムクゲになんて返したらいいのか分からず苦笑いを浮かべ乾いた返事をしていた。
すると壁にかけていたポッポ時計が夜10時を指し鳴り始めた。
「おっと、もうこんな時間か。」
「シアくんも遅くまでご苦労さま。今日はもう帰りなさい。本当は送ってあげたいとこなんだが」
「お気持ちだけでも結構です。では私はこれで失礼致します。」シアはお辞儀をするとリビングを後にした。
着替えを終え帰る支度が済んだシアはバイクに跨った。辺りは暗闇に包まれ三日月が綺麗な夜だった。ヤミカラス達が楽しそうに該当の下で戯れている。エンジンをかけバイクを走らせながら家路に向かうシアは(理由があって捕まえられない人って一体どんな人なんだろう?)と一人考えに耽っていた。
翌日シアはダイゴに電話をかけ調査した内容を報告した。
「ダイキアドバンス?」
「聞いた事ない会社だな。ボクも取引の手伝いをしたことないし」
「隠すかのように手帳の中に名刺が入っていました。しかも手帳には金銭取引をしているかのような記載がありました。」
「おやじ、ボクには内緒でなにかよくない会社と取引しているのか?」
「なにも悪い会社とは限りませんよ」
シアはまだ詳しいことが分かっていないため決めつけるのはまだ早いと思った。
「そうだといいけど、ボクの感ってよく当たるんだ」
「もしダイゴさんの言う通り悪い会社だったとしても社長さんを責めないで欲しいです。」少しトーンを下げて話す。
「なんでだい?」
ダイゴはシアの発言に興味を持ったような口振りで聞く
「社長さんはもしかしたら大切なものを守ろうとしているからかも知れません。」
「それは、デボンコーポレーションで調査をするとわかる筈だと思います。」
ツワブキ邸のベランダで見つけたキャバクラの名刺そして書斎で見た名刺からではまだ証拠としては不十分だ。そして、デボンコーポレーションに直接調査をすることにより実際に名刺の相手を観察できるかもしれない。そうシアは推測した。
「なるほど、ではシアちゃんには明日からデボンでの調査を頼むよ。スーツは前に渡したのを着てね。ボクも同行するよ。」
「わかりました。ダイゴさん明日からもよろしくお願いします。」
「そうだ、これはずっと言いたかったことなんだけど」
「シアちゃんが実家でメイドとして来てくれてからおやじもムギも明るくなったと思うよ。」
「私がですか?」
シアは電話越しでキョトンとする。
「一気に実家が明るくなった感じがしたよ。ありがとう」
「私は別に大したことしていませんよ」
「ボクはそんなこと思ってないけどな。きっとシアちゃんには人とポケモンを惹き付ける力があると思うんだ。」
「人とポケモンを惹き付ける力ですか。あまり考えたことがないですが」
「そんなシアちゃんのこといいと思うよ」
「それはどうも」
シアはあまり意識したことないことを急に褒められどう返事を返したらいいのか分からなかった。
「では、明日朝8時にデボン前で待っててね。迎えに行くよ」そうダイゴは告げると電話が切れた。
「人とポケモンを惹きつける力か・・・。」
シアはPフォンを切ると机の上で丸くなりながらお昼寝をしているチルットに目を向けながらボンヤリしていた。
「ただ、社長さんの笑顔が見られて良かったしメイドの仕事も案外楽しかったな」
「メイド服また着れるかな~?」
などツワブキ邸での仕事にどこか名残惜しい気持ちを抱きながら一人思いに耽るシアであった。
【紆余曲折しながらもツワブキ邸で見事証拠を見つけ出すことができたシア。これからも人とポケモンを引き寄せる力で謎を解決することはできるのだろうか】
【ツワブキ邸潜入編 終】
◀◀ To Be Continued
シアは机の上にはめぼしい物が見つからないと分かると引き出しを開けてみることにした。引き出しは3段あり上から1弾ずつ開いてみる。しかし、どの引き出しの中にも万年筆やルーペ、鉱石図鑑、ペンライトなど特に証拠を見つけることができなかった。
「クレッフィの護りをつけてまで秘密にしておきたかった書斎なのに証拠がひとつも見つからないなんて」シアは落胆し首を前方へ曲げ顔をしかめた。しかし、まだ机の上の調査が終えてないので最後にかけてみることにした。
机の上は本やファイルが大きさに合わせて小さいのから大きいのまできちんと並べられている。見事な整理整頓ぶりにシアはムクゲが几帳面な性格であるのではないかと推測した。そして、ある1冊の黒い手帳になにか言わ感を覚えた。
(・・・ん?)
(あれ、この手帳だけサイズが違うファイルとファイルの間にはさんである)
よく見ると、手のひらサイズの黒い手帳が大きいサイズのファイルの間に押し込まれるように挟まれていた。他は綺麗に大きさに合わせて整頓されているのに対しどこか不自然に見える。
(まるで、大きいファイルで隠しているみたい)
シアは疑いながら挟まれている黒い手帳を取り出してみた。手帳の表紙にはオムナイトのイラストが箔押しされているデザインになっておりどこか高級感が漂っていた。
手帳を開いてみるとシアは思わず目を疑った。
そこには、高額な金銭貸借が記録されていたからだ。記録されていた金額は一般庶民には想像が難しい程の金額でありシアは思わず驚き目が泳いでしまった。
「すごい金額!?」
「しかも取引したのもここ数ヶ月の間だしダイゴさんが社長を疑い始めた時期と被ってるな」
手帳には更に酒代も書かれておりこちらも目を疑うほどの金額であった。
手帳のページを更に開いてみるとブッグカバーのポケットにある名刺が入ってあった。
「どこの名刺だろう?」
名刺を取り出してみると【有限会社 ダイキアドバンス オトギリ】と社名と社員の名前が書かれていた。
「ダイキアドバンス?知らない名前の会社だな。ダイゴさんなら知ってるかも。」
シアはPフォンのカメラで手帳に書かれていることと名刺の写真を証拠として撮影した。するとどこからか足音の様な音が聞こえてきた。
「誰か来る!?」
シアは急いで手帳を元に戻すと書斎の奥へ身を潜めた。緊張で鼓動が早くなる。足音は書斎の方へだんだん近づくにつれ鼓動の音が聞こえるぐらい更に早くなっていった。身をかがめて後ずさりしていると書斎の行き止まりに差し掛かりシアは背中に何か当たるものを感じた。
「ドアノブ、向こう側に部屋があるの?」
振り返り見てみると背中に当たったものはドアノブだった。
(ここに居たらもしかしたら何者かに見つかってしまうかもしれない。隠れるためにも部屋に入ろう!)シアは意を決してドアノブを捻り部屋の中へと入っていった。
部屋の中に入るとそこには大きな窓から明るく光が差し込んだ15畳ぐらいの部屋が広がっていた。
部屋には書斎のように大きな本棚が壁に取り付けてあり更に周りにはショーケースに飾られた鉱石が丁寧に飾られていた。恐らくムクゲのコレクションなのだろう。
そして、中でも1番目に付いたのは部屋の中心の壁に飾られている大きな家族写真だ。家族写真は金縁出できたどこか高級感を放っていた。
写真には、右側には少し若く痩せているがムクゲと思われる人物と左側にはまるでモデルの様な容姿でどこか気品のある女性が優しく微笑んでいた。さらに2人の間には椅子に座りどこか無邪気で純粋そうな笑顔を浮かべた5歳位の銀髪の男の子が写っていた。
シアは写真に映る男の子が誰だか直ぐにわかった。
「ダイゴさんだ」
家族写真を眺めながら小さく呟く。シアは他にも壁にかけられている物に目を向ける。そこには【ダイゴ5才いしのどうくつにて】と書かれた少年ダイゴとヨーテリーが笑顔で嬉しそうに石を眺めいる様子の写真や【ホウエンアマチュアバトルカップにて】と書かれたた恐らく15歳ぐらいのダイゴがトロフィーを持ちながらメタングと映る写真が飾られてあった。
そしてさらに奥の壁には【新ホウエンチャンピオン誕生 チャンピオンはデボンコーポレーション御曹司】と大きく見出しに書かれたポケモン新聞の1部が飾られていた。更には下にはトロフィーやメダルがショーケースに飾られていた。どれも功績と同じく輝きを放っているように見えた。
シアは部屋の様子から今いる部屋はツワブキ家の思い出の部屋であることが理解した。シアは中でも一際印象深い写真を見つけた。それは6匹のはがねポケモン達と戯れながら満面の笑みを浮かべているダイゴの写真だった。写っている場所がバトルコートから察するにチャンピオン戦が終わった直後のものだろう。傷だらけのメタグロスがダイゴに自信に満ちた表情を向けている。
シアはツワブキ家の思い出の写真を眺めてひとつの共通点を見つけた。
「どの写真もダイゴさんとポケモン達が一緒に幸せそうに写ってる」
「社長さんは息子とポケモン思いな人なんだな」
シアはそう呟くと以前ダイゴが庭を見ながら話した言葉が脳裏に浮かび上がった。
「ああ、この庭はね人や野生のポケモン達が休めるように作られた庭なんだ。おやじの考えでね。」
ダイゴの言動からもムクゲは家族とポケモンを大切にしている人物であると認識することができた。
「もしかしたら、社長は家族やポケモン達を守るために裏で動いているのかもしれない。」シアは思い出の部屋と書斎の秘密からひとつの憶測が広がった。そして、思い出部屋を後にしクレッフィに書斎の鍵を返すとメイド業務へと戻って行った。
ムクゲは、朝に伝えた通り遅くに仕事を終えツワブキ帝に戻ってきたのは夜の9時頃であった。夕飯を済ませたあといつもはすぐに書斎へ戻るがその日は何故かダイニングルームのソファに座って休んでいた。
どこか疲れた表情でうつむきながら一点を見つめている様子であった。
シアはムクゲがリビングルームにいるのを知ると紅茶を淹れテーブルにそっと置いた。
「ああ、シアくんかありがとう」
ムクゲは紅茶が置かれたのに気がつくとシアの方へ首を向けた。少しやつれた表情をしているように見える。
「旦那様遅くまでお仕事お疲れ様でございました。」
「とてもお疲れなご様子でしたので少しでも安らいで頂けましたらと」
シアはムクゲに微笑むと少し黙ってから
「私でよろしければお話し聴きますよ。」とムクゲに直接尋ねてみることにした。
ムクゲは少し驚いた顔になると少し嬉しそうに微笑しながらゆっくりと口を開いた。
「シアくんはもし自分が大切にしている石達がある日突然何者かに壊されてしまうことを知ったらどうするかね?」
シアはムクゲに突然どこか意味深そうな質問をされて一瞬驚いたが腕を組んで考え始めた。
「私でしたらその何者が石を壊す前に捕まえちゃいます。」
「そうだね、事前にトラブルを防ぐために相手の先を取ることは大事な策略だね。」ムクゲは軽く頷きながらシアに視線を向けてからゆっくりと下に戻しどこか重たそうに口を開いた。
「ただ、もし捕まえることが何かの理由できない相手だったらシアくんはどうするかね」
「う~ん、でしたら相手を仲間にしちゃいます。そうしたら仲良く石を一緒に眺めることができますから」
「ハハハ、シアくんの答えは面白いね。確かにその手があったね」
「一緒に石を眺めてくれる相手だといいんだがね」
「旦那様でしたらできると思います。家族とポケモンを誰よりも大切にされておられますから。私は応援しております。」
「ありがとう。シアくんと話すとどこか心が暖かくなるよ。」
「シアくんは将来素敵なお嫁さんになると思うよ」
「ダイゴなんてどうだい?」
ムクゲは目を細めいたずらっぽく目の奥を光らせた。先程の疲れていた表情から一変し明るい表情になっていた。
「アハハ・・・。」
シアは心の中で(ないない!)と思いつつ父親であるムクゲになんて返したらいいのか分からず苦笑いを浮かべ乾いた返事をしていた。
すると壁にかけていたポッポ時計が夜10時を指し鳴り始めた。
「おっと、もうこんな時間か。」
「シアくんも遅くまでご苦労さま。今日はもう帰りなさい。本当は送ってあげたいとこなんだが」
「お気持ちだけでも結構です。では私はこれで失礼致します。」シアはお辞儀をするとリビングを後にした。
着替えを終え帰る支度が済んだシアはバイクに跨った。辺りは暗闇に包まれ三日月が綺麗な夜だった。ヤミカラス達が楽しそうに該当の下で戯れている。エンジンをかけバイクを走らせながら家路に向かうシアは(理由があって捕まえられない人って一体どんな人なんだろう?)と一人考えに耽っていた。
翌日シアはダイゴに電話をかけ調査した内容を報告した。
「ダイキアドバンス?」
「聞いた事ない会社だな。ボクも取引の手伝いをしたことないし」
「隠すかのように手帳の中に名刺が入っていました。しかも手帳には金銭取引をしているかのような記載がありました。」
「おやじ、ボクには内緒でなにかよくない会社と取引しているのか?」
「なにも悪い会社とは限りませんよ」
シアはまだ詳しいことが分かっていないため決めつけるのはまだ早いと思った。
「そうだといいけど、ボクの感ってよく当たるんだ」
「もしダイゴさんの言う通り悪い会社だったとしても社長さんを責めないで欲しいです。」少しトーンを下げて話す。
「なんでだい?」
ダイゴはシアの発言に興味を持ったような口振りで聞く
「社長さんはもしかしたら大切なものを守ろうとしているからかも知れません。」
「それは、デボンコーポレーションで調査をするとわかる筈だと思います。」
ツワブキ邸のベランダで見つけたキャバクラの名刺そして書斎で見た名刺からではまだ証拠としては不十分だ。そして、デボンコーポレーションに直接調査をすることにより実際に名刺の相手を観察できるかもしれない。そうシアは推測した。
「なるほど、ではシアちゃんには明日からデボンでの調査を頼むよ。スーツは前に渡したのを着てね。ボクも同行するよ。」
「わかりました。ダイゴさん明日からもよろしくお願いします。」
「そうだ、これはずっと言いたかったことなんだけど」
「シアちゃんが実家でメイドとして来てくれてからおやじもムギも明るくなったと思うよ。」
「私がですか?」
シアは電話越しでキョトンとする。
「一気に実家が明るくなった感じがしたよ。ありがとう」
「私は別に大したことしていませんよ」
「ボクはそんなこと思ってないけどな。きっとシアちゃんには人とポケモンを惹き付ける力があると思うんだ。」
「人とポケモンを惹き付ける力ですか。あまり考えたことがないですが」
「そんなシアちゃんのこといいと思うよ」
「それはどうも」
シアはあまり意識したことないことを急に褒められどう返事を返したらいいのか分からなかった。
「では、明日朝8時にデボン前で待っててね。迎えに行くよ」そうダイゴは告げると電話が切れた。
「人とポケモンを惹きつける力か・・・。」
シアはPフォンを切ると机の上で丸くなりながらお昼寝をしているチルットに目を向けながらボンヤリしていた。
「ただ、社長さんの笑顔が見られて良かったしメイドの仕事も案外楽しかったな」
「メイド服また着れるかな~?」
などツワブキ邸での仕事にどこか名残惜しい気持ちを抱きながら一人思いに耽るシアであった。
【紆余曲折しながらもツワブキ邸で見事証拠を見つけ出すことができたシア。これからも人とポケモンを引き寄せる力で謎を解決することはできるのだろうか】
【ツワブキ邸潜入編 終】
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