本編①~ツワブキ邸潜入編
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シアとダイゴは屋敷2階の書斎の前に行き着く。
バトルを終えたムギは紅茶を入れに厨房へ戻って行った。
「おやじ、少し話があるから入るよ」
ダイゴがドアをノックをすると「どうぞ、お入りください」と中から返事が聞こえる。
扉が開くとそこにはバルコニーからポケモンバトルを眺めていたダイゴと同じ銀髪の中年男性が椅子に座っていた。
「ダイゴか相変わらず元気そうだな」
「おやじ、紹介するよ。新しいメイドのシアちゃんだ。」
「シアちゃん、この方はボクのおやじさ」
シアは(この人がダイゴさんのお父さんなんだ)と思いながら「はじめまして、今日からメイドとして働かせて頂くことになりましたシアと申します。」と挨拶し会釈する。
「ほお、やはり新しいメイドさんかい。私はデボンコーポレーションの社長でダイゴの父親のムクゲです。」
ムクゲはシアの顔を真顔でじっと見た。シアはムクゲに見つめられて(え、私なにかおかしい?)と心の中で焦る。すると、ムクゲは突然微笑んだ。
「しかし、若い子が入ってくれると屋敷が明るくなりそうだね。いや~、もし私が若かったら口説いていたかもしれないね。」
シアは思いもよらないことを言われ「あははは・・・。」と笑顔を取り繕っていた。ダイゴは呆然とした表情をしながら「おやじ」と呟いた。
ダイゴのつれない態度をみてムクゲは「相変わらず冗談が通じないやつだな。そんなのだと素敵なレディが現れないぞ。」といたずらっ子の様な表情を浮かべる。
するとダイゴはムクゲの冗談を真に受けてしまい逆鱗に触れかのように「おやじっ!!」と大声で怒鳴った。
いつもは大人に振る舞うダイゴが父親の前だと急に子供っぽくなってしまう様子を見てシアは(ダイゴさんって意外と面白い人なんだなあ)と不敵な笑みを浮かべていた。
「はいはい、わかったよ~」
ムクゲはしかめっ面なダイゴを見て呆れ顔で宥めるとシアの方に目線を向けた。
「それはそうとさっきのポケモン勝負みてたよ。すごいね君のヘルガー、君と息がピッタリですごくグッドだったよ。」
「ありがとうございます。お褒めの言葉を頂き嬉しいです。」
「私も息子の影響でポケモンバトルを見るのが好きでね。メイドからバトルをやっていると聞いて思わずバルコニーに出てしまったよ。」
ムクゲのポケモンバトルが好きだと言う情報がわかりシアは(やっぱり、ムギさんは社長にポケモンバトルを見せて好印象を与えようとしていたんだ)とムギの思惑を理解した。
「とりあえず、明日からお手伝いさんになるからよろしくね。」ダイゴはほとぼりが冷め表情が元に戻っていた。
「お力になれるよう精一杯頑張りますのでよろしくお願いします。」
「ポケモンが強い君がいてくれるなんて心強いね。ムギは厳しい所もあるが面倒みのいい人だから良い指導者になってくれると思うよ。」
シアは(とりあえず笑っとこ)と思い「はい、ポケモン達と一緒に一生懸命頑張ります。」と満面の笑みを見せた。
「ん~、いいスマイルだね」
ムクゲはシアの笑みを見て微笑み返す。
嬉しそうなムクゲとは裏腹にダイゴは「ところでおやじ昨日も遅かったみたいじゃないか」と話を切り出す。
「なに、仕事が遅くなっただけさ。」
「本当に?」
「疑ったって何も無いぞダイゴ。私のことは心配しなくていい。」
2人のやりとりを聞きシアは(親が子供に心配を見せないようにするのはよくあることか)とぼんやり思っていた。
ダイゴとムクゲの間に少し妙な沈黙が流れた後ダイゴは「ということで失礼するよ。」とシアと書斎を後にした。
シアはダイゴにムギが戻るまで居るようにリビングへと案内される。
入るとそこには大きなシャンデリア、高級感溢れる家具、カブトプスが描かれた大きな絵画、高級感ある赤い絨毯が広いリビングに配置されている光景が目に入ってきた。中でも一際目立つのが石が飾られている大きなショーケースが5台並んでいる光景だ。存在感が一番でている。
シアは石のショーケースを眺めながら(石がほんとに多いなこの家は)と呆れ顔を向ける。
「おやじ、普段からあんなのだけど気にしないでね。」
ダイゴは先程シアの前で怒鳴ってしまったことを反省しているのか少し気まずそうに話す。
「そうですね、ダイゴさんと似てるところがあって面白かったですよ。」シアはダイゴに微笑みかける。
「ボクがおやじと似ている?どこがだい。」
ダイゴは思いがけないことを言われて驚く。
「ん~、そうですね。」とシアが言いかけた瞬間、急に足元がくすぐったくなりふと目線を下げると何者かがシアの足に擦り寄っているのが目に入った。
「うわあ!」
シアは驚きその場を引き下がる。よく見ると正体は不思議そうに見つめているムーランドだった。
ムーランドの毛並みはしっかりと手入れされており毛艶がよく光沢が出ている。
驚くシアの様子を見てダイゴは笑みをこぼす。
「ああ、このポケモンはムーランド。屋敷で世話をしているのさ。新入りのシアちゃんの匂いを嗅いで覚えようとしてるんだね。」
「びっくりしたあ。驚いちゃってごめんね。」
ゆっくりとしゃがみ手の匂いをぎせた後優しく首から胸に向かって撫でた。ムーランドは嬉しそうにうっとりしてる。
「シアちゃんはポケモンのふれあい方に慣れているね。」
「ポケモンの気持ちを考えて仲良くなるのが好きなんです。人間と一緒ですよ。」シアは少し得意げに話す。
「君はここを撫でられるのが好きなんだね」
耳の後ろの柔らかいところを撫でるとムーランドは更にうっとりした表情を見せた。
ダイゴはムーランドとシアのふれあいを微笑ましく見つめていた。すると、シアの腰につけていたモンスターボールから突然ヘルガーが出てきた。
「ヘルガー、どうしたの?」シアが突然現れたヘルガーに不思議そうに声をかける。
ヘルガーはムーランドの方へゆっくり近づいて行きムーランドの匂いを嗅ごうとした。ムーランドは嫌がる様子もなくヘルガーに匂いを嗅がせたあと匂いを嗅いでいた。お互い匂いの嗅ぎ合いをしているようだ。
「挨拶してるんだね。仲良く挨拶できてよかったねヘルガー。」シアは微笑むとヘルガーは「うぉん」と嬉しそうに鳴く。
シアとヘルガー、ムーランドが微笑ましく触れ合っている様子を見てダイゴは「じゃあ、ボクも挨拶しないとだな」とヘルガーに触ろうとした。その瞬間ヘルガーは恐ろしい剣幕でダイゴに唸り始めた。
驚くダイゴにシアは「すみません、驚かせちゃって。いつもはこんな感じじゃないんですけど」と焦りながら謝る。
ダイゴは苦笑いしながら「ははっ、嫌われてるのかな」と手を引っ込めた。
ヘルガーはダイゴへの唸りをやめる様子が見られないためシアは「ヘルガー戻って」とモンスターボールを取り出した。ヘルガーはしぶしぶボールに戻っていく。シアは「はぁ」と小さくため息をついた。
すると突然Dフォンの着信音が聞こえた。
「失礼。」
ダイゴはDフォンを取り出し画面を見る。
「シアちゃん、申し訳無いんだけど急の連絡が入ってしまったから後はムギに引き継いで貰うことにするね。」
「お忙しいんですね。」
「最近計画していることが上手くいっていてね。」
(何の計画だろう?)シアはどこか気に掛かった。
「突然で申し訳ないがこの部屋で待っていてね。」
ダイゴはそう言い残すとドアの方へ向かって行った。
そして「ああ、夕方こちらから連絡するよ」と一度ドア前で振り向いた。
シアは退出するダイゴに片足を斜め後ろの内側に引き両手でスカートの裾を掴み持ち上げながら「いってらっしゃいませ。ダイゴ様」とお辞儀をした。
「ふふっ、そうだったねシアちゃんはここのメイドになってるんだもんね」お辞儀を見てダイゴは微笑んだ。
「行ってくるよ」
ダイゴはツワブキ邸を後にした。
ダイゴが去り広いリビングにシアとムーランドだけが残され静寂になっていた。
「今がチャンスか」
シアはリビングの辺りをゆっくりと見渡した。突き当たりには大きな掃き出し窓になっており庭に出られるようになっている。リビングとは言っても人通りが少なくコレクションの石を飾るためだけの部屋になっていると言われても過言では無い。
辺りを見渡していたシアの様子を見て足元にいたムーランドが「クゥ~ン」と小さく鳴いた。
「急に静かになっちゃったね。君はいつもここに居るのかな?」
「君は毛が細くて触り心地がいいね。」
寂しがるムーランドをゆっくり撫でる。シルキータッチの様な毛並みに癒される。
しばらく撫でると飽きたのかムーランドは突然掃き出し窓の方へ歩いていった。そして窓の外をじっと見た後「ウオン」と吠える。
「窓の外が気になるの?」
不思議に思いシアはムーランドに近寄る。
ムーランドの視線の先を見ると窓の隅にある屑籠の中に小さな白い箱のような物が入っているのが目に入った。
「あれ、なんだろう」
シアは掃き出し窓のドアを開けて屑籠を手に取る。中を見てみるとタバコの空箱が入っていた。
「タバコの空か、誰か吸う人でもいるのかな。でも、こんなに手入れされている庭でもゴミが入ったままってあるんだ。」
「ん、なんだろう?」
よく見るとタバコの箱の下に紙切れのような物が隠れているのが見えた。
箱を避けると「クラブ・フェアリー マツヨ」と書かれたアブリボンのシルエットが絵描かれた煌びやかな名刺が出てきた。
「キャバクラの名刺かな?誰がこんなところに捨てたんだろう。」
怪しげに屑籠を持ちながら中のタバコの空箱を見つめているシアの背後から突然「シアさん窓を開けてどうされました?」と声がした。
驚いて振り向くとそこには不思議そうにこちらを見ているムギがいた。
(なんだ、ムギさんか)とシアはほっとした後「ムギさん、こちらの職員さんでタバコを吸われている方はいらっしゃいますか?」と問う。
「いいえ、御屋敷の敷地内では禁煙にしていますしタバコの持ち込みも禁止しております。ツワブキ家でも吸われる方はいませんね。」
「実は、タバコの箱が庭に落ちていまして。」
シアはタバコの箱をムギに差し出し「こちらのタバコに見覚えは無いですか」と再び問う。
「さあ、わかりませんね。」
「わかりました。一応こちらで預からせて頂きます。」タバコの箱と名刺をポケットに入れた。
「一体誰が入れたのでしょうか。掃除の見直しをしなければいけませんね。」ムギは腕を組なが屑籠を見つめた。
その後シアはムギにメイドの仕事内容について一通り説明を受けた後探偵事務所へ戻った。
事務所に戻ってから間もなくダイゴから電話がかかってきた。
「タバコとキャバクラの名刺?知らないな。」
「ボクの実家でタバコを吸う人なんていないし。ましてやそんな店おやじが行くだなんて考えられないよ。」
ダイゴの少し低めなトーンの声から驚きを隠せない様子が電話越しからもわかる。
「もしかしたら、来客の人が捨てたのかもしれないですね。どなたか社長と会ってるかがわかるかもしれません。」
「わかった、ボクからも最近実家に来た人を聞いてみるよ。」
「それとシアちゃん一ついいかな。」
「はい、なんでしょうか。」
「今日のバトルを見て感じたけれどシアちゃんのポケモンと人を見る目すごくいいと思うよ。」
思いがけないダイゴからの言葉にシアはキョトンとなり「そうですか、私はただ人とポケモンを見るのが好きな変わり者です。」と笑う。
「変わり者か、なるほど実力を内に秘めておくんだね。」
シアはダイゴの言っている意味がわからず「はぁ」と中身のない返事をする。
「それじゃあ、何かあったら連絡するね。」そうダイゴが告げた後電話が切れた。
シアはPフォンをしまい「しかし、賑やかで変わってる家だなあ」と机の上で頬ずえをつきながら持ってきたタバコの箱と名刺を眺めていた。
【バトルが終わったのも束の間、早くも謎が現れ真実への迷宮入が始まったシア。はたして証拠は謎解きの鍵へと繋がるのだろうか。】
◀◀◀To Be Continued
プチsideストーリー更新中「本編chapter4 side~ダイゴとメイド服」
バトルを終えたムギは紅茶を入れに厨房へ戻って行った。
「おやじ、少し話があるから入るよ」
ダイゴがドアをノックをすると「どうぞ、お入りください」と中から返事が聞こえる。
扉が開くとそこにはバルコニーからポケモンバトルを眺めていたダイゴと同じ銀髪の中年男性が椅子に座っていた。
「ダイゴか相変わらず元気そうだな」
「おやじ、紹介するよ。新しいメイドのシアちゃんだ。」
「シアちゃん、この方はボクのおやじさ」
シアは(この人がダイゴさんのお父さんなんだ)と思いながら「はじめまして、今日からメイドとして働かせて頂くことになりましたシアと申します。」と挨拶し会釈する。
「ほお、やはり新しいメイドさんかい。私はデボンコーポレーションの社長でダイゴの父親のムクゲです。」
ムクゲはシアの顔を真顔でじっと見た。シアはムクゲに見つめられて(え、私なにかおかしい?)と心の中で焦る。すると、ムクゲは突然微笑んだ。
「しかし、若い子が入ってくれると屋敷が明るくなりそうだね。いや~、もし私が若かったら口説いていたかもしれないね。」
シアは思いもよらないことを言われ「あははは・・・。」と笑顔を取り繕っていた。ダイゴは呆然とした表情をしながら「おやじ」と呟いた。
ダイゴのつれない態度をみてムクゲは「相変わらず冗談が通じないやつだな。そんなのだと素敵なレディが現れないぞ。」といたずらっ子の様な表情を浮かべる。
するとダイゴはムクゲの冗談を真に受けてしまい逆鱗に触れかのように「おやじっ!!」と大声で怒鳴った。
いつもは大人に振る舞うダイゴが父親の前だと急に子供っぽくなってしまう様子を見てシアは(ダイゴさんって意外と面白い人なんだなあ)と不敵な笑みを浮かべていた。
「はいはい、わかったよ~」
ムクゲはしかめっ面なダイゴを見て呆れ顔で宥めるとシアの方に目線を向けた。
「それはそうとさっきのポケモン勝負みてたよ。すごいね君のヘルガー、君と息がピッタリですごくグッドだったよ。」
「ありがとうございます。お褒めの言葉を頂き嬉しいです。」
「私も息子の影響でポケモンバトルを見るのが好きでね。メイドからバトルをやっていると聞いて思わずバルコニーに出てしまったよ。」
ムクゲのポケモンバトルが好きだと言う情報がわかりシアは(やっぱり、ムギさんは社長にポケモンバトルを見せて好印象を与えようとしていたんだ)とムギの思惑を理解した。
「とりあえず、明日からお手伝いさんになるからよろしくね。」ダイゴはほとぼりが冷め表情が元に戻っていた。
「お力になれるよう精一杯頑張りますのでよろしくお願いします。」
「ポケモンが強い君がいてくれるなんて心強いね。ムギは厳しい所もあるが面倒みのいい人だから良い指導者になってくれると思うよ。」
シアは(とりあえず笑っとこ)と思い「はい、ポケモン達と一緒に一生懸命頑張ります。」と満面の笑みを見せた。
「ん~、いいスマイルだね」
ムクゲはシアの笑みを見て微笑み返す。
嬉しそうなムクゲとは裏腹にダイゴは「ところでおやじ昨日も遅かったみたいじゃないか」と話を切り出す。
「なに、仕事が遅くなっただけさ。」
「本当に?」
「疑ったって何も無いぞダイゴ。私のことは心配しなくていい。」
2人のやりとりを聞きシアは(親が子供に心配を見せないようにするのはよくあることか)とぼんやり思っていた。
ダイゴとムクゲの間に少し妙な沈黙が流れた後ダイゴは「ということで失礼するよ。」とシアと書斎を後にした。
シアはダイゴにムギが戻るまで居るようにリビングへと案内される。
入るとそこには大きなシャンデリア、高級感溢れる家具、カブトプスが描かれた大きな絵画、高級感ある赤い絨毯が広いリビングに配置されている光景が目に入ってきた。中でも一際目立つのが石が飾られている大きなショーケースが5台並んでいる光景だ。存在感が一番でている。
シアは石のショーケースを眺めながら(石がほんとに多いなこの家は)と呆れ顔を向ける。
「おやじ、普段からあんなのだけど気にしないでね。」
ダイゴは先程シアの前で怒鳴ってしまったことを反省しているのか少し気まずそうに話す。
「そうですね、ダイゴさんと似てるところがあって面白かったですよ。」シアはダイゴに微笑みかける。
「ボクがおやじと似ている?どこがだい。」
ダイゴは思いがけないことを言われて驚く。
「ん~、そうですね。」とシアが言いかけた瞬間、急に足元がくすぐったくなりふと目線を下げると何者かがシアの足に擦り寄っているのが目に入った。
「うわあ!」
シアは驚きその場を引き下がる。よく見ると正体は不思議そうに見つめているムーランドだった。
ムーランドの毛並みはしっかりと手入れされており毛艶がよく光沢が出ている。
驚くシアの様子を見てダイゴは笑みをこぼす。
「ああ、このポケモンはムーランド。屋敷で世話をしているのさ。新入りのシアちゃんの匂いを嗅いで覚えようとしてるんだね。」
「びっくりしたあ。驚いちゃってごめんね。」
ゆっくりとしゃがみ手の匂いをぎせた後優しく首から胸に向かって撫でた。ムーランドは嬉しそうにうっとりしてる。
「シアちゃんはポケモンのふれあい方に慣れているね。」
「ポケモンの気持ちを考えて仲良くなるのが好きなんです。人間と一緒ですよ。」シアは少し得意げに話す。
「君はここを撫でられるのが好きなんだね」
耳の後ろの柔らかいところを撫でるとムーランドは更にうっとりした表情を見せた。
ダイゴはムーランドとシアのふれあいを微笑ましく見つめていた。すると、シアの腰につけていたモンスターボールから突然ヘルガーが出てきた。
「ヘルガー、どうしたの?」シアが突然現れたヘルガーに不思議そうに声をかける。
ヘルガーはムーランドの方へゆっくり近づいて行きムーランドの匂いを嗅ごうとした。ムーランドは嫌がる様子もなくヘルガーに匂いを嗅がせたあと匂いを嗅いでいた。お互い匂いの嗅ぎ合いをしているようだ。
「挨拶してるんだね。仲良く挨拶できてよかったねヘルガー。」シアは微笑むとヘルガーは「うぉん」と嬉しそうに鳴く。
シアとヘルガー、ムーランドが微笑ましく触れ合っている様子を見てダイゴは「じゃあ、ボクも挨拶しないとだな」とヘルガーに触ろうとした。その瞬間ヘルガーは恐ろしい剣幕でダイゴに唸り始めた。
驚くダイゴにシアは「すみません、驚かせちゃって。いつもはこんな感じじゃないんですけど」と焦りながら謝る。
ダイゴは苦笑いしながら「ははっ、嫌われてるのかな」と手を引っ込めた。
ヘルガーはダイゴへの唸りをやめる様子が見られないためシアは「ヘルガー戻って」とモンスターボールを取り出した。ヘルガーはしぶしぶボールに戻っていく。シアは「はぁ」と小さくため息をついた。
すると突然Dフォンの着信音が聞こえた。
「失礼。」
ダイゴはDフォンを取り出し画面を見る。
「シアちゃん、申し訳無いんだけど急の連絡が入ってしまったから後はムギに引き継いで貰うことにするね。」
「お忙しいんですね。」
「最近計画していることが上手くいっていてね。」
(何の計画だろう?)シアはどこか気に掛かった。
「突然で申し訳ないがこの部屋で待っていてね。」
ダイゴはそう言い残すとドアの方へ向かって行った。
そして「ああ、夕方こちらから連絡するよ」と一度ドア前で振り向いた。
シアは退出するダイゴに片足を斜め後ろの内側に引き両手でスカートの裾を掴み持ち上げながら「いってらっしゃいませ。ダイゴ様」とお辞儀をした。
「ふふっ、そうだったねシアちゃんはここのメイドになってるんだもんね」お辞儀を見てダイゴは微笑んだ。
「行ってくるよ」
ダイゴはツワブキ邸を後にした。
ダイゴが去り広いリビングにシアとムーランドだけが残され静寂になっていた。
「今がチャンスか」
シアはリビングの辺りをゆっくりと見渡した。突き当たりには大きな掃き出し窓になっており庭に出られるようになっている。リビングとは言っても人通りが少なくコレクションの石を飾るためだけの部屋になっていると言われても過言では無い。
辺りを見渡していたシアの様子を見て足元にいたムーランドが「クゥ~ン」と小さく鳴いた。
「急に静かになっちゃったね。君はいつもここに居るのかな?」
「君は毛が細くて触り心地がいいね。」
寂しがるムーランドをゆっくり撫でる。シルキータッチの様な毛並みに癒される。
しばらく撫でると飽きたのかムーランドは突然掃き出し窓の方へ歩いていった。そして窓の外をじっと見た後「ウオン」と吠える。
「窓の外が気になるの?」
不思議に思いシアはムーランドに近寄る。
ムーランドの視線の先を見ると窓の隅にある屑籠の中に小さな白い箱のような物が入っているのが目に入った。
「あれ、なんだろう」
シアは掃き出し窓のドアを開けて屑籠を手に取る。中を見てみるとタバコの空箱が入っていた。
「タバコの空か、誰か吸う人でもいるのかな。でも、こんなに手入れされている庭でもゴミが入ったままってあるんだ。」
「ん、なんだろう?」
よく見るとタバコの箱の下に紙切れのような物が隠れているのが見えた。
箱を避けると「クラブ・フェアリー マツヨ」と書かれたアブリボンのシルエットが絵描かれた煌びやかな名刺が出てきた。
「キャバクラの名刺かな?誰がこんなところに捨てたんだろう。」
怪しげに屑籠を持ちながら中のタバコの空箱を見つめているシアの背後から突然「シアさん窓を開けてどうされました?」と声がした。
驚いて振り向くとそこには不思議そうにこちらを見ているムギがいた。
(なんだ、ムギさんか)とシアはほっとした後「ムギさん、こちらの職員さんでタバコを吸われている方はいらっしゃいますか?」と問う。
「いいえ、御屋敷の敷地内では禁煙にしていますしタバコの持ち込みも禁止しております。ツワブキ家でも吸われる方はいませんね。」
「実は、タバコの箱が庭に落ちていまして。」
シアはタバコの箱をムギに差し出し「こちらのタバコに見覚えは無いですか」と再び問う。
「さあ、わかりませんね。」
「わかりました。一応こちらで預からせて頂きます。」タバコの箱と名刺をポケットに入れた。
「一体誰が入れたのでしょうか。掃除の見直しをしなければいけませんね。」ムギは腕を組なが屑籠を見つめた。
その後シアはムギにメイドの仕事内容について一通り説明を受けた後探偵事務所へ戻った。
事務所に戻ってから間もなくダイゴから電話がかかってきた。
「タバコとキャバクラの名刺?知らないな。」
「ボクの実家でタバコを吸う人なんていないし。ましてやそんな店おやじが行くだなんて考えられないよ。」
ダイゴの少し低めなトーンの声から驚きを隠せない様子が電話越しからもわかる。
「もしかしたら、来客の人が捨てたのかもしれないですね。どなたか社長と会ってるかがわかるかもしれません。」
「わかった、ボクからも最近実家に来た人を聞いてみるよ。」
「それとシアちゃん一ついいかな。」
「はい、なんでしょうか。」
「今日のバトルを見て感じたけれどシアちゃんのポケモンと人を見る目すごくいいと思うよ。」
思いがけないダイゴからの言葉にシアはキョトンとなり「そうですか、私はただ人とポケモンを見るのが好きな変わり者です。」と笑う。
「変わり者か、なるほど実力を内に秘めておくんだね。」
シアはダイゴの言っている意味がわからず「はぁ」と中身のない返事をする。
「それじゃあ、何かあったら連絡するね。」そうダイゴが告げた後電話が切れた。
シアはPフォンをしまい「しかし、賑やかで変わってる家だなあ」と机の上で頬ずえをつきながら持ってきたタバコの箱と名刺を眺めていた。
【バトルが終わったのも束の間、早くも謎が現れ真実への迷宮入が始まったシア。はたして証拠は謎解きの鍵へと繋がるのだろうか。】
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