本編①~ツワブキ邸潜入編
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シアはムギにツワブキ邸裏にあるバトルコートに案内された。
辺りには大きなヤシの木が生えており風に揺られている。コートの向こう側はカナズミシティが見渡せる景色が広がっている。
バトルコートは大理石を基調とした作りで綺麗に舗装されておりシンプルに黒線が敷かれ同じコートが少し離れた先にもひとつある。
シアとムギはお互い向かい合いながらバトルコートの外側に着いた。
「準備はいいですかね」ムギはモンスターボールを構えながらシアを伺う。
「はい、準備万端です。」
「本当にバトルするのかい?シアちゃん」ダイゴが心配そうに様子を伺う。
「郷に入れば郷に従えですよダイゴさん。探偵として溶け込むためにはチャンスです。」
やる気に満ちているシアを見てダイゴは歩み寄る。
「気をつけてねシアちゃん。ばあやは普段はめったにポケモンバトルしないんだだけど・・・。」
ダイゴはムギは昔ジムリーダー候補にされるほどの腕前なのを知っている。苦戦しないようにシアにアドバイスしようとした。
「坊ちゃま、ポケモンバトルは助言無しで正々堂々勝負でございますよ!」
バトルコートの向こう側からムギの大声が聞こえる。ダイゴは「相変わらずばあやはバトルになると手厳しいなあ」と物憂げに首を横に振る。
「使用ポケモンは3体まで それでは、参りますよ!」
メイド長 ムギが勝負をしかけてきた!
ムギはアママイコをくりだした。モンスターボールから飛び出してきたアママイコは張り切った顔を見せている。
シアは腰に着けているモンスターボールを取り出し
「頼むよ、相棒!」とボールに言い聞かせた後「ゴー!ヘルガー」と掛け声をかけモンスターボールを投げる。
シアが放ったモンスターボールからは勢いよくヘルガーが現れた。
ヘルガーは好戦的な様子で「ウウー」っと低くアママイコに向かって唸っている。
「へ~、ヘルガーかいいね。」
ダイゴはコート横からバトルを眺める。
「弱点タイプだからって甘く見ないでくださいね。」
「アママイコ!ローキック」
アママイコはヘルガーに急速に近寄り足元を蹴りあげようと足を振り上げた。
「ヘルガーかわしながら周りこんで!」
シアはアママイコが近づいてきた瞬間ヘルガーに指示を出す。ヘルガーはアママイコの動きを読み足を振り下げ始めた瞬間に横に交わした。
「巧みに交わすとはお見事ですね、ただ。」
「今です、マジカルリーフ!」
攻撃を避けたばかりのヘルガーは速さに追いつかずマジカルリーフが直撃する。効果はいまひとつだ。
ヘルガーはダメージを受けたもののまだ余裕な表情を見せる。
「ヘルガー!速攻、かえんほうしゃ」
シアはアママイコを指し声を張り上げる。
ヘルガーはシアの指示を聞くと勢い良く口から真っ赤な炎が真っ直ぐアママイコに解き放たれた。効果は抜群だ。
かえんほうしゃをまともに受けたアママイコは立つ姿勢が保ちづらくなり左右にフラフラしている。
「トドメを撃つよ!あくのはどう」
シアは迷いもなくヘルガーに追加攻撃の指示を出す。
ヘルガーは全身が黒いオーラに包まれブラックライトのような波動をアママイコに放った。
アママイコは避ける間もなく攻撃が直撃し力なくコートに倒れた。
「ごくろうさん」
ムギは倒れたアママイコをボールに閉まった。
「まずは小手調べでしょうが次はそうは行きませんよ」
「いけ、イエッサン」
今度は、イエッサンをくりだしてきた。手入れがしっかりされており毛艶がとても美しい。
「ヘルガーお疲れ様。」
シアはコートに現れたイエッサンを横目で見ながらヘルガーをモンスターボールに戻す。そして、あるモンスターボールを手にする。
「ゴー、ユキメノコ!」
ボールを放つと嬉しそうにユキメノコがボールから飛び出した。
ユキメノコはボールから出ると直ぐに辺りをキョロキョロと見渡すとダイゴを見つけ所へ寄って行く。
「ん、なんだい?」
突然目の前に寄って来たユキメノコをダイゴは不思議そうに見つめる。
「あ、ユキメノコ!」
バトルコートから離れていったユキメノコを見てシアは慌てて声を掛けたのも束の間だった。
ユキメノコはゆっくりと息を吸い込むとダイゴに冷たい息を吹きかけ始めた。吹いた息には雪の結晶が舞っている。
「うう、寒いね」
突然冷たい息を吹き込まれダイゴは苦笑いを浮かべながら両腕を組み小さく震えている。
「こら!ユキメノコ相手はあっちでしょ。」
シアは呆れた表情を浮かべながらバトルコートの方を指さす。すると、ユキメノコは嬉しそうにコート上へ弾みながら戻って行った。
ユキメノコとシアのやり取りを見てダイゴはクスッと笑った。
「ごめんなさい。この子ったらどうやら気に入った人に冷たい息をふきかけちゃうんです。大丈夫ですか?」
「ああ、ボクは平気さ。それにしてもおもしろいポケモンだね!」
バトルコートにやっと戻ってきたユキメノコを見てムギは「なんともまあ破天荒なポケモンですこと」と渋い表情をする。
「取り直していきますよ。イエッサン サイコキネシス」
イエッサンも先程までシアとユキメノコのやり取りを唖然として眺めていたがムギの指示が入ると咄嗟に戦闘モードの勇ましい表情になり攻撃を放った。
「ユキメノコ!相手の死角に離れて」
シアが指示を出すのも束の間だった。ユキメノコは体の自由を奪われ身動きが取れず地面に叩きつけられた。
「ユキメノコ、大丈夫!?」
サイコキネシスの威力に驚きシアはユキメノコの無事を確認する。ユキメノコは平気そうな表情を見せゆっくりと頷いた。それは先程の楽しそうな表情とは打って代わり真剣な眼差しになっている。
シアはユキメノコの表情を見て安心し咄嗟に「ユキメノコ、あやしいひかり」指示を出す。
ユキメノコから放たれた不思議な光線を浴びイエッサンは混乱状態となりふらふらと辺りを彷徨い始めた。
「相手を状態異常にさせる戦略か なかなかいいね!」
ダイゴは楽しそうにシアとユキメノコとの掛け合いを眺める。ようやく波に乗ってきたシアとユキメノコに期待が高まる。
「そのまま攻めるよ!れいとうビーム」
「来ますよ イエッサン」
イエッサンはムギの声も聞こえず天を見ながらふらふらしている。
ムギが慌て始める最中、れいとうビームがイエッサンに直撃し力なく倒れた。
ユキメノコは自信満々な表情を見せシアの所へ駆け寄る。
「よくやったね、ユキメノコ 偉い子!」とシアが褒めると嬉しく飛び跳ねた。
ムギは「イエッサンもごくろうさんだね」ボールに閉まった。
「先程までは破天荒なポケモンだと思っていましたがなかなかやりますね。でも、これで終わりにしますよ。」
「おお、来るぞ ばあやのエースが」
ダイゴは腕を組みながら興味深そうに眺める。
ムギは最後のモンスターボールを取り出し「いきますよ、サーナイト!」と力強くボールをコートに投げた。
するとどこか高貴なオーラを纏い凛々しい表情を見せているサーナイトが光と共にに現れた。
シアは一瞬考える様子を見せたが手にグッと力を入れてモンスターボールを取り出す。
「ここでトドメを刺すよ。ゴー ヘルガー!」
再びバトルコートにヘルガーが姿を見せた。
「ヘルガーを出すだなんていい度胸ですね。」
フェアリータイプを持つサーナイトはあくタイプのヘルガーには優勢だ。
するとシアはほくそ笑む。
「ヘルガー、ちょうはつ」
ヘルガーは指示を聞くとサーナイトをちょうはつし始めサーナイトは見事に乗ってしまった。
「なんと、ちょうはつとな。ただ私の方が有利ですね。」
ちょうはつに乗ったポケモンは攻撃技しか出せなくなる。
「サーナイト ムーンフォース!」
サーナイトは両手を上げると大きな光の玉を出現させヘルガーに放った。
ヘルガーは攻撃を交わしきれず光の玉に直撃してしまう。効果は抜群なのでいつも冷静な表情のヘルガーでさえも小声で唸ってしまう程のダメージであった。
「ヘルガー!」
光線が消えかかり始めシアはヘルガーを心配そうに見つめる。
ヘルガーはシアの期待に答えようと必死に立ち上がり「ウオーン!」と吠えた。だが時節ふらついておりギリギリ保てている状況だ。
「フフ、ちょうはつされても弱点は握ってますよ」
ムギは勝ち誇っている表情を見せる。
「それは、どうでしょうか」
自信ありげな態度を取るムギとは裏腹にシアはニッと笑う。
「ヘルガー、ほうふく」
シアは力強くヘルガーに指示を出した。
ヘルガーは全身真っ黒なオーラに包まれサーナイトに向かって真っ直ぐ突進していく。
ほうふくは最後に受けた技のダメージの1.5倍をその相手に与える。ヘルガーにとって弱点のフェアリー技であるムーンフォースを当たったあとに放つほうふくは強烈で効果は抜群だ。
「サーナイト!」
攻撃に耐えたサーナイトは膝を着いて苦しそうに息をしている。
ムギの声を聞きなんとか気力で耐えている様子だ。
「まだ、耐えるか」シアは弱りながらも力強く立とうとするサーナイトを見て息を飲む。ヘルガーは小さく唸る。
ダイゴはフッと口角を上げ笑った。
しばらく睨み合った後、サーナイトはばたりと倒れた。
「よかった、勝てた 。ヘルガー お利口さん!」
ヘルガーが嬉しそうにしっぽを振りながらゆっくりとシアに擦り寄ってきた。シアはヘルガーの頭を優しく撫でた。
するとダイゴが喜びに浸っているシアに近寄り「シアちゃん、お疲れ様。久しぶりに面白いバトルが見れたよ。」と微笑んだ。
「ありがとうございます。久しぶりに楽しいバトルができました。」
シアはにっこりとダイゴに微笑み返した。
「シアさんとのバトルとてもおみごとでした。久しぶりに燃えさせて頂きました。これほどの実力でしたら調査をして頂いても安心でしょう。」ムギはどこか清々しい表情を浮かべながら頷く。
「ムギさん、許可を頂きありがとうございます。バトルとてもご参考になりました。」
「実は私、ムギさんと勝負して気づいたことがあるんです。」
「なんでしょうか」
「ムギさん、本当はこのバトルを誰かに見せたかったのではないかと思うんです。」
「と言いますと」
「一つは、このお屋敷には二つバトルコートがありこちらの奥にも見えるコートがひとつありますが、今使用しているコートはお屋敷の隣にあるためバトルをすると多くの方の目に留まりやすくなります。」
「そして、先程バトル前にダイゴさんが仰ってたムギさんは滅多にバトルをしないという点から察するにムギさんがバトルすることになると御屋敷の中でも話題になっていたと思うんです。実際、バトル最中も数名メイドさんが気になって見に来ている方が数名こちらから見えました。」
「まるで、誰かに気がついて貰えるように」
ムギはシアの推理に驚きつつも「ははは、まさかそこまで考えてバトルしていたとはですね。」口を弛めた。
「それと、もう一つムギさんは私とのバトルで感じたことがありました。」
「それは、なんだい」
今度はダイゴが興味深そうに話に乗り出す。
「使命感です。」
「ムギさんは私の仕事での使命感をポケモンバトルで知ろうとしてたのでは無いかなと思いました。」
「ポケモンバトルではポケモンだけではなくトレーナーの性格が現れます。それは勝ち負けではなくポケモンのコンディションからも解ります。」
「実際バトルをしていてムギさんはポケモンはとても大切に育てられてきたことが分かりました。」
「ポケモン達の毛艶から見られるお手入れの良さ。指示に即座に動ける信頼。」
「これらから察するにポケモンの育成から見ると今までとてもお強く生きて来られたお方だと思うんです。」
「だからこそ、自分と似たような強さと使命感かがある仲間にしか大切なことを任せるのは許さないと決めているのではないかと思われます。」
「なぜ強くいなければならないのかはお屋敷や仕えている者を守るためだけではなく、後輩のメイド達を守りたい気持ちが感じられました。」
「私は、そんな使命感を抱くムギさんを尊敬します。」
ムギはしばらく黙り込んだ後ゆっくりと口を開いた。
「何年ぶりかねそんなことを言ってくれたお方は先代の旦那様以来か・・・。」
「シアさん、あなたは素敵な探偵さんですね」と満面な笑みを見せた。
ムギの気持ちの良い笑顔を久しぶりに見たダイゴは
「ラックさんが言っていたシアちゃんの一味違う所とはこのことだったのか。」と一人思っていた。
すると「パチパチパチ」と上の方から拍手の音が聞こえた。
拍手の音に気がついたシアは不思議そうに音の方向へ見上げるとバトルコートから見える御屋敷上の階のバルコニーからポロシャツを着た中年男性がこちらを見下ろしていた。
「いやいや、久しぶりにおもしろいポケモンバトルが見れたよ。新しいメイドさんかな。ナイスだったね。お互いお疲れのようだから入って休憩するといいよ。」
中年男性は片目をつぶりながら笑顔で話す。
「おやじ、見てたのか」
ダイゴは少し呆れつつも(そうか、ばあやはバトルをおやじに見せようとしてたのか)と顎に手を当てた。
【突然のポケモンバトルも無事勝利を収め調査で心強い仲間を手に入れたシア。さて、お屋敷調査は上手くいくのだろうか。】
◀◀ To Be Continued
辺りには大きなヤシの木が生えており風に揺られている。コートの向こう側はカナズミシティが見渡せる景色が広がっている。
バトルコートは大理石を基調とした作りで綺麗に舗装されておりシンプルに黒線が敷かれ同じコートが少し離れた先にもひとつある。
シアとムギはお互い向かい合いながらバトルコートの外側に着いた。
「準備はいいですかね」ムギはモンスターボールを構えながらシアを伺う。
「はい、準備万端です。」
「本当にバトルするのかい?シアちゃん」ダイゴが心配そうに様子を伺う。
「郷に入れば郷に従えですよダイゴさん。探偵として溶け込むためにはチャンスです。」
やる気に満ちているシアを見てダイゴは歩み寄る。
「気をつけてねシアちゃん。ばあやは普段はめったにポケモンバトルしないんだだけど・・・。」
ダイゴはムギは昔ジムリーダー候補にされるほどの腕前なのを知っている。苦戦しないようにシアにアドバイスしようとした。
「坊ちゃま、ポケモンバトルは助言無しで正々堂々勝負でございますよ!」
バトルコートの向こう側からムギの大声が聞こえる。ダイゴは「相変わらずばあやはバトルになると手厳しいなあ」と物憂げに首を横に振る。
「使用ポケモンは3体まで それでは、参りますよ!」
メイド長 ムギが勝負をしかけてきた!
ムギはアママイコをくりだした。モンスターボールから飛び出してきたアママイコは張り切った顔を見せている。
シアは腰に着けているモンスターボールを取り出し
「頼むよ、相棒!」とボールに言い聞かせた後「ゴー!ヘルガー」と掛け声をかけモンスターボールを投げる。
シアが放ったモンスターボールからは勢いよくヘルガーが現れた。
ヘルガーは好戦的な様子で「ウウー」っと低くアママイコに向かって唸っている。
「へ~、ヘルガーかいいね。」
ダイゴはコート横からバトルを眺める。
「弱点タイプだからって甘く見ないでくださいね。」
「アママイコ!ローキック」
アママイコはヘルガーに急速に近寄り足元を蹴りあげようと足を振り上げた。
「ヘルガーかわしながら周りこんで!」
シアはアママイコが近づいてきた瞬間ヘルガーに指示を出す。ヘルガーはアママイコの動きを読み足を振り下げ始めた瞬間に横に交わした。
「巧みに交わすとはお見事ですね、ただ。」
「今です、マジカルリーフ!」
攻撃を避けたばかりのヘルガーは速さに追いつかずマジカルリーフが直撃する。効果はいまひとつだ。
ヘルガーはダメージを受けたもののまだ余裕な表情を見せる。
「ヘルガー!速攻、かえんほうしゃ」
シアはアママイコを指し声を張り上げる。
ヘルガーはシアの指示を聞くと勢い良く口から真っ赤な炎が真っ直ぐアママイコに解き放たれた。効果は抜群だ。
かえんほうしゃをまともに受けたアママイコは立つ姿勢が保ちづらくなり左右にフラフラしている。
「トドメを撃つよ!あくのはどう」
シアは迷いもなくヘルガーに追加攻撃の指示を出す。
ヘルガーは全身が黒いオーラに包まれブラックライトのような波動をアママイコに放った。
アママイコは避ける間もなく攻撃が直撃し力なくコートに倒れた。
「ごくろうさん」
ムギは倒れたアママイコをボールに閉まった。
「まずは小手調べでしょうが次はそうは行きませんよ」
「いけ、イエッサン」
今度は、イエッサンをくりだしてきた。手入れがしっかりされており毛艶がとても美しい。
「ヘルガーお疲れ様。」
シアはコートに現れたイエッサンを横目で見ながらヘルガーをモンスターボールに戻す。そして、あるモンスターボールを手にする。
「ゴー、ユキメノコ!」
ボールを放つと嬉しそうにユキメノコがボールから飛び出した。
ユキメノコはボールから出ると直ぐに辺りをキョロキョロと見渡すとダイゴを見つけ所へ寄って行く。
「ん、なんだい?」
突然目の前に寄って来たユキメノコをダイゴは不思議そうに見つめる。
「あ、ユキメノコ!」
バトルコートから離れていったユキメノコを見てシアは慌てて声を掛けたのも束の間だった。
ユキメノコはゆっくりと息を吸い込むとダイゴに冷たい息を吹きかけ始めた。吹いた息には雪の結晶が舞っている。
「うう、寒いね」
突然冷たい息を吹き込まれダイゴは苦笑いを浮かべながら両腕を組み小さく震えている。
「こら!ユキメノコ相手はあっちでしょ。」
シアは呆れた表情を浮かべながらバトルコートの方を指さす。すると、ユキメノコは嬉しそうにコート上へ弾みながら戻って行った。
ユキメノコとシアのやり取りを見てダイゴはクスッと笑った。
「ごめんなさい。この子ったらどうやら気に入った人に冷たい息をふきかけちゃうんです。大丈夫ですか?」
「ああ、ボクは平気さ。それにしてもおもしろいポケモンだね!」
バトルコートにやっと戻ってきたユキメノコを見てムギは「なんともまあ破天荒なポケモンですこと」と渋い表情をする。
「取り直していきますよ。イエッサン サイコキネシス」
イエッサンも先程までシアとユキメノコのやり取りを唖然として眺めていたがムギの指示が入ると咄嗟に戦闘モードの勇ましい表情になり攻撃を放った。
「ユキメノコ!相手の死角に離れて」
シアが指示を出すのも束の間だった。ユキメノコは体の自由を奪われ身動きが取れず地面に叩きつけられた。
「ユキメノコ、大丈夫!?」
サイコキネシスの威力に驚きシアはユキメノコの無事を確認する。ユキメノコは平気そうな表情を見せゆっくりと頷いた。それは先程の楽しそうな表情とは打って代わり真剣な眼差しになっている。
シアはユキメノコの表情を見て安心し咄嗟に「ユキメノコ、あやしいひかり」指示を出す。
ユキメノコから放たれた不思議な光線を浴びイエッサンは混乱状態となりふらふらと辺りを彷徨い始めた。
「相手を状態異常にさせる戦略か なかなかいいね!」
ダイゴは楽しそうにシアとユキメノコとの掛け合いを眺める。ようやく波に乗ってきたシアとユキメノコに期待が高まる。
「そのまま攻めるよ!れいとうビーム」
「来ますよ イエッサン」
イエッサンはムギの声も聞こえず天を見ながらふらふらしている。
ムギが慌て始める最中、れいとうビームがイエッサンに直撃し力なく倒れた。
ユキメノコは自信満々な表情を見せシアの所へ駆け寄る。
「よくやったね、ユキメノコ 偉い子!」とシアが褒めると嬉しく飛び跳ねた。
ムギは「イエッサンもごくろうさんだね」ボールに閉まった。
「先程までは破天荒なポケモンだと思っていましたがなかなかやりますね。でも、これで終わりにしますよ。」
「おお、来るぞ ばあやのエースが」
ダイゴは腕を組みながら興味深そうに眺める。
ムギは最後のモンスターボールを取り出し「いきますよ、サーナイト!」と力強くボールをコートに投げた。
するとどこか高貴なオーラを纏い凛々しい表情を見せているサーナイトが光と共にに現れた。
シアは一瞬考える様子を見せたが手にグッと力を入れてモンスターボールを取り出す。
「ここでトドメを刺すよ。ゴー ヘルガー!」
再びバトルコートにヘルガーが姿を見せた。
「ヘルガーを出すだなんていい度胸ですね。」
フェアリータイプを持つサーナイトはあくタイプのヘルガーには優勢だ。
するとシアはほくそ笑む。
「ヘルガー、ちょうはつ」
ヘルガーは指示を聞くとサーナイトをちょうはつし始めサーナイトは見事に乗ってしまった。
「なんと、ちょうはつとな。ただ私の方が有利ですね。」
ちょうはつに乗ったポケモンは攻撃技しか出せなくなる。
「サーナイト ムーンフォース!」
サーナイトは両手を上げると大きな光の玉を出現させヘルガーに放った。
ヘルガーは攻撃を交わしきれず光の玉に直撃してしまう。効果は抜群なのでいつも冷静な表情のヘルガーでさえも小声で唸ってしまう程のダメージであった。
「ヘルガー!」
光線が消えかかり始めシアはヘルガーを心配そうに見つめる。
ヘルガーはシアの期待に答えようと必死に立ち上がり「ウオーン!」と吠えた。だが時節ふらついておりギリギリ保てている状況だ。
「フフ、ちょうはつされても弱点は握ってますよ」
ムギは勝ち誇っている表情を見せる。
「それは、どうでしょうか」
自信ありげな態度を取るムギとは裏腹にシアはニッと笑う。
「ヘルガー、ほうふく」
シアは力強くヘルガーに指示を出した。
ヘルガーは全身真っ黒なオーラに包まれサーナイトに向かって真っ直ぐ突進していく。
ほうふくは最後に受けた技のダメージの1.5倍をその相手に与える。ヘルガーにとって弱点のフェアリー技であるムーンフォースを当たったあとに放つほうふくは強烈で効果は抜群だ。
「サーナイト!」
攻撃に耐えたサーナイトは膝を着いて苦しそうに息をしている。
ムギの声を聞きなんとか気力で耐えている様子だ。
「まだ、耐えるか」シアは弱りながらも力強く立とうとするサーナイトを見て息を飲む。ヘルガーは小さく唸る。
ダイゴはフッと口角を上げ笑った。
しばらく睨み合った後、サーナイトはばたりと倒れた。
「よかった、勝てた 。ヘルガー お利口さん!」
ヘルガーが嬉しそうにしっぽを振りながらゆっくりとシアに擦り寄ってきた。シアはヘルガーの頭を優しく撫でた。
するとダイゴが喜びに浸っているシアに近寄り「シアちゃん、お疲れ様。久しぶりに面白いバトルが見れたよ。」と微笑んだ。
「ありがとうございます。久しぶりに楽しいバトルができました。」
シアはにっこりとダイゴに微笑み返した。
「シアさんとのバトルとてもおみごとでした。久しぶりに燃えさせて頂きました。これほどの実力でしたら調査をして頂いても安心でしょう。」ムギはどこか清々しい表情を浮かべながら頷く。
「ムギさん、許可を頂きありがとうございます。バトルとてもご参考になりました。」
「実は私、ムギさんと勝負して気づいたことがあるんです。」
「なんでしょうか」
「ムギさん、本当はこのバトルを誰かに見せたかったのではないかと思うんです。」
「と言いますと」
「一つは、このお屋敷には二つバトルコートがありこちらの奥にも見えるコートがひとつありますが、今使用しているコートはお屋敷の隣にあるためバトルをすると多くの方の目に留まりやすくなります。」
「そして、先程バトル前にダイゴさんが仰ってたムギさんは滅多にバトルをしないという点から察するにムギさんがバトルすることになると御屋敷の中でも話題になっていたと思うんです。実際、バトル最中も数名メイドさんが気になって見に来ている方が数名こちらから見えました。」
「まるで、誰かに気がついて貰えるように」
ムギはシアの推理に驚きつつも「ははは、まさかそこまで考えてバトルしていたとはですね。」口を弛めた。
「それと、もう一つムギさんは私とのバトルで感じたことがありました。」
「それは、なんだい」
今度はダイゴが興味深そうに話に乗り出す。
「使命感です。」
「ムギさんは私の仕事での使命感をポケモンバトルで知ろうとしてたのでは無いかなと思いました。」
「ポケモンバトルではポケモンだけではなくトレーナーの性格が現れます。それは勝ち負けではなくポケモンのコンディションからも解ります。」
「実際バトルをしていてムギさんはポケモンはとても大切に育てられてきたことが分かりました。」
「ポケモン達の毛艶から見られるお手入れの良さ。指示に即座に動ける信頼。」
「これらから察するにポケモンの育成から見ると今までとてもお強く生きて来られたお方だと思うんです。」
「だからこそ、自分と似たような強さと使命感かがある仲間にしか大切なことを任せるのは許さないと決めているのではないかと思われます。」
「なぜ強くいなければならないのかはお屋敷や仕えている者を守るためだけではなく、後輩のメイド達を守りたい気持ちが感じられました。」
「私は、そんな使命感を抱くムギさんを尊敬します。」
ムギはしばらく黙り込んだ後ゆっくりと口を開いた。
「何年ぶりかねそんなことを言ってくれたお方は先代の旦那様以来か・・・。」
「シアさん、あなたは素敵な探偵さんですね」と満面な笑みを見せた。
ムギの気持ちの良い笑顔を久しぶりに見たダイゴは
「ラックさんが言っていたシアちゃんの一味違う所とはこのことだったのか。」と一人思っていた。
すると「パチパチパチ」と上の方から拍手の音が聞こえた。
拍手の音に気がついたシアは不思議そうに音の方向へ見上げるとバトルコートから見える御屋敷上の階のバルコニーからポロシャツを着た中年男性がこちらを見下ろしていた。
「いやいや、久しぶりにおもしろいポケモンバトルが見れたよ。新しいメイドさんかな。ナイスだったね。お互いお疲れのようだから入って休憩するといいよ。」
中年男性は片目をつぶりながら笑顔で話す。
「おやじ、見てたのか」
ダイゴは少し呆れつつも(そうか、ばあやはバトルをおやじに見せようとしてたのか)と顎に手を当てた。
【突然のポケモンバトルも無事勝利を収め調査で心強い仲間を手に入れたシア。さて、お屋敷調査は上手くいくのだろうか。】
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