<デュエルアカデミア編>

空は夕焼けのオレンジ色が広がっていた。

[#dn=2#]は、トイレから教室に戻る最中であった。

「授業が終わったから次は倫理委員会会議か~。」「今日は長引かなきゃいいけどな」と独り言をつぶやきながら自分の席に戻り机の上を見ると・・・。



「あれっ、私のデュエルディスクがない!?授業が終わってからもずっとあったのに・・・。」
トイレに行く前に机の上に置いてあったはずのデュエルディスクが忽然と消えていた。


[#dn=2#]は、血相を変え慌てふためきながら他の席の机の中や教室中を夢中で探し回った。
けれど、どこにも見当たらない。


「どこにいったんだろ。誰か間違えて持っていっちゃったのかな。」
しかし、アカデミア生徒のデュエルディスクは本来各クラスごとに青・黄・赤のラインが入っているのに対し、倫理委員会のデュエルディスクは緑のラインが入っているので他の生徒が間違えるのは考えにくい。


[#dn=2#]は、困り果てた表情を浮かべ心当たりを思いだそうとしていると廊下から女子生徒の会話が聞こえて来た。


「ねぇねぇリナ、さっき聞いたんだけど誰かのデュエルディスクが裏庭の池に捨てられてたらしいよ。」

「うっそぉ~⁉いったい誰のだろ~。ナホはなんで捨てられたか知らない?」

「知らないわ~。もしかして、いじめとか恨み?」

「こわ~いっ‼」



「デュエルディスクが捨てられた?」
「もしかして私のデュエルディスクのことかな?」
[#dn=2#]は、半信半疑に女子生徒の会話を聞くと教室を飛び出し裏庭へ急いでかけて行った。
心の奥では「お願い!どうか私のデュエルディスクではありませんように!!」と叫びながら・・・。





息を切らし裏庭に着くと[#dn=2#]に信じられない光景が目の前に飛び込んできた。


見覚えのある緑のラインが入ったデュエルディスクが真っ二つにへし折られ、無残に木の下に捨てられていたのが目に入った。


[#dn=2#]は、すぐに自分のデュエルディスクであるとわかると折られたデュエルディスクの中のデッキを恐る恐る確認した。

「カードが無い!」

デュエルディスクの中には入れておいたはずの大切なデッキが見当たらなくなっていた。


[#dn=2#]は、不運な心当たりが的中してしまったことに絶望を感じながらも不意に裏庭の奥の池の存在を思い出した。


「もしかして・・・。」
そう呟き裏庭の奥の池へと進んでくと池にカードがばら撒かれ水面に浮かんでいる光景が目の前に広がっていた。
[#dn=2#]は、恐る恐る池に近づいてカードを確認すると全て自分のカードであることをすぐにわかり落胆した。


「どうしよう、私の大事なカードが池に・・・。」


デュエルディスクが折られていたショックに加え大切なカードが池に捨てられていたことでさらなるショックを感じ思わずその場に座り込んでしまった。


「いったい誰がこんなことを。まさか・・・。」

ここまで激しく悪戯をされるのは自分に恨みを感じている人でないと想像がつかず、なずなは心当たりを思い出していると不意に昨晩の男子生徒の姿が脳裏に浮かび上がった。


人を疑うことはあまり気が進まないが、直接自分を恨んでいる相手で心当たりがあるのは男子生徒達しか考えられなかった。


「大切な人からもらったカードだから絶対になんとかしなきゃ!でも、どうすれば・・・。」
「もう、カードを拾うことなんて無理なのかな・・・。でもそんな!」


[#dn=2#]は、カードを拾おうと思ってもできない無力感を感じることしかできずその場で座り込みながら池に浮かび波で上下しているカードを見つめることしかできなかった。
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同じく空が夕焼けのオレンジ色が広がっていた時、一人の真黒なロングコートに黒いパンツの制服を着た男がアカデミア校舎の裏を歩いていた。

彼の名は万丈目 準。オシリスレッド2年生。



万丈目は何やら不機嫌そうな表情で校舎裏を歩いていた。

「十代の奴、俺様が寮に帰るなり休む暇もなく
デュエルを挑んで来るからここのところゆっくり新しいデッキも組めん!!どこか、俺様がゆっくりできる場所はないのか?」


「あにきぃ、あにきぃ!」


彼のカードの精霊であるおジャマ・イエローが万丈目を呼ぶ。


「なんだ、攻撃力0?」


「そんなこと言わないでよぉん♡ほらあそこに、ちょっとした木陰があるわ!」


おジャマ・イエローはそういうと前方の木が生い茂っている方向を指さした。



「おっ!丁度いいところがあるではないか」

万丈目はでかしたぞとばかりに先き程の不機嫌そうな顔から一変し機嫌がよさそうな表情を見せた。


「いやぁ~ん♡いいでしょぉ~?あそこで二人だけの時間を過ごしましょうよ?」


おジャマ・イエローが体をくねらせながら得意そうに話し万丈目の肩にすり寄る。


「煩いっ!!誰がこんな気色悪いモンスターと!いいからお前はデッキに引っ込んでろ!!」


万丈目は声を張り上げながらおジャマ・イエローを追い払った。


「いや~ん♡照屋さん」


おジャマ・イエローは万丈目に拒否され仕方なく姿を消した。


「ったっく・・・。」


万丈目がおジャマ・イエローに呆れていると、不意に木陰の間に誰かの影が目に入った。


「んっ!?誰かいるのか。」


興味本位に木陰に近づいてみると見覚えの無いマントと帽子を付けた緑色の女子制服を着ている少女が一人池の前で座っている様子が目に映った。



「見たことない制服の奴だな。こんなところで一体何をしているのだ?」


万丈目は、不審に思いながらも遠巻きに少女を観察していると少女はずっと座ったまま姿勢を変えずじっと池の中を切なそうな表情で見つめている様子が見えた。


「池になにかあるのか?」


そう不思議に思いながら、木陰からゆっくりと池の中を覗き込むとばらまかれた一デッキ分のカードが池の上に浮かんでいる光景が目に入った。


「それはカードではないか!もしやあいつのなのか。なぜ池に?」


万丈目は、状況に驚きつつも池に浮かんでいるカードを見つめている少女の表情から何らかの理由でデッキが池に落ちてしい途方に暮れているのだと状況を悟った。

そして、浮かんでいるカードを悲しく切なそうな表情で見つめている少女を眺めていると万丈目は脳裏にある過去の過ちが鮮明に蘇り、彼の中で葛藤が渦巻き始めた。


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