<デュエルアカデミア編>

時は黄昏時、日が沈み夕日の陽が地平線に隠れ淡い橙色と暗闇のコントラストが重なり上空には一番星が輝き始めていた。

 生徒は寮の夕食時で競技場には誰一人残っておらず灯りも消えていた。

 静けさと灯りが無い競技場は、空よりも先に夜の闇に包まれておりどこか不気味な雰囲気が漂っていた。

 しかし、今日は誰一人いないはずの競技場の裏側で誰かの話し声が聞こえる。
よく耳を澄まして聞いてみるとどこか様子がおかしいようだ・・・。





*****






「ふざけるなっ!!」


 大きな怒鳴り声が体育館の裏中に響き渡る。しかし、誰もいない競技場の裏では大声に驚き集まる人などいない。

「・・・ごめんなさい。」
小さく震えた声で聞こえる。


「おい!そのカードを俺に渡す約束はどうしてくれるんだ?」

「うぅ・・・。それが無くしてしまって・・・。ごめんなさい。」
小さく震えた声は先ほどよりも小さくなっていた。


「あんっ!?てめぇ、授業前に自分のデッキの中に入れていただろうが?俺、見たぞ!嘘つくんじゃねえ!!」

 怒鳴り声を発していた男よりもさらに甲高い男の怒鳴り声が聞こえる。


 どうやら、二人の男が一人の男に問い詰めている状態であることがわかる。


 授業…?この言葉から察するとどうやら3人ともアカデミアの生徒であるようだ。


「ひっ!それはその・・・。」

「なんだお前、持ってるんじゃんか。だったらさっさと俺に渡せ!」


 そう怒鳴る生徒は怯えている生徒が装備していたデュエルディスクを無理やり奪い取り、中に入っているデッキを荒々しく取り上げた。


「返してよ!それは僕のカードだ!だから僕が使うんだ!!」

 デッキを取り上げられた途端、取られた生徒は先ほどまで消えそうだった声とは対照的に大きな声で訴えた。


「安心しろよ、レアカードだけもらったら残りのカードは返してやるからよ」

「お前、オシリス・レッドのくせにそんなレアなカードなんて使いこなせるわけないだろうが。だったらオベリスク・ブルーである俺が使うのにふさわしいだろ?」

「・・・・・。」


 どうやら思い当たることがあるのだろうか、取り上げられた生徒は黙り込んでしまった。


「そうだ!お前みたいな雑魚よりも強いデュエリストが使った方がカードのためにもなるぜ?」


「うぅ、やっぱりデュエルが強い人に使ってもらった方がこのカードも喜ぶのかな・・・」

「ふん、やっと理解したみたいだな。」


 そう言い、取り上げた生徒はデッキからカードを引き抜き残りのカードを海に捨てようとしていた。


「やめて!!あのカードだけあげたら他のカードは返してくれるはずだったよね。話が違うじゃないか!」

「ハハハハ!あのカードのない雑魚デッキなんてゴミのようなものだろ?だから俺が親切に捨ててやるよ」

「やめてっ!!」

 
 取り上げられた生徒はむなしく悲鳴を上げることしかできなかった。


 カードを奪った生徒は、必死な訴えにも聞く耳を持たずまるで相手の心情を弄ぶかのように、デッキを暗闇の海に放そうと手を離そうとし瞬間だった!!

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