文披31題-2025- 創作の夏。

 僕が幼い頃、夏休みには祖父母の家の縁側で、花火をしたりスイカを食べたりして過ごしていた。縁側に続く部屋に蚊帳を吊るして寝転がり、軒下に吊るされたガラス製の風鈴の音が、心地よい涼しさを運んできたりして。
 でも、今は。
 夏に窓を開けて過ごせる気候ではなくなって、常にエアコンを入れなければ命に関わるようになってしまった。僕が当たり前だと思っていた夏の風景が、年々変わっていくのを感じる。
 祖父母が他界し、住む人がいなくなった家の軒下には、あのガラス製の風鈴が今も静かに吊るされている。夏の終わり、空気を入れ替えようとそっと窓を開ければ、「おかえり」とでも言うように、あの頃と変わらない涼しげな風鈴の音が響いた。
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