九輪咲いた
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二人揃って井戸の水で顔を洗った。
冷たく透き通った水は思考と視界を明瞭にする。
冷たい空気の中パッチリ覚めた目で京治が最初に見たのは、やはり峡だった。
京治のそれより癖が無いが所々跳ねている、少し長めの黒髪を、
峡は組み紐で緩く結わえる。
その姿が眩しく見えたので、京治は慌てて顔を逸らした。
そんな京治の様子に気付きながらも、峡は目を細めるだけで問い詰めはせず、
今日の話を始める。
『今日は昨日も話した通り、煤払いの日だ。まあ、大掃除の日だな。
だがただの掃除じゃだめだ。清めの鈴を作るために念入りに清めないと。
京治も手伝ってくれるか?』
峡が京治の顔を覗き込むと、京治はなんだか不安げに頷いた。
「掃除を、やったことが無いのでお力になれるかわかりませんが、頑張ります!」
すると峡は可笑しそうに笑って京治の手をとる。
『そんなに気を張らなくても大丈夫だよ。
うちの場合は特殊でね、大きな塵を拾って、湿らせた布で拭いて清める。それだけだ。そう大変じゃあないだろう?』
「でも、ほこり?とか髪の毛とか、細かい塵はどうするのですか?」
首を傾げた京治に、峡は謎かけを出題するように答える。
『京治もこの数日で屋敷の中を少しは歩けるようになっただろう?
その間に、細かい塵なんて、見たことがあるかい?』
「…!無いです」
京治が記憶をさかのぼっても、確かにこの屋敷の中で見た部屋も廊下も、髪の毛一本すら落ちていないのだ。
「もしかして、普段から皆さんがお掃除されているのですか?」
だとしたら本当にすごいことだ。こんなに大きな屋敷を、峡と侍従の三姉妹だけできれいに保っているのだろうか?
『うん、半分正解。でも、半分外れ。
普段から掃除をしているけれど、しているのは俺ではないし、侍従たちも大まかにしかしていない。』
峡が言うのは答えの手がかり何だろうが、京治はまた首を傾げる。
「まさか、このお屋敷には、まだ他に住んでいる方がいるのですか?」
京治の、何だか恐ろしいと言っているような視線に、ついに峡はくっくっと声を出して笑った。
「お、おかしなことを言ってすいません。間違いですよね」
焦ったような恥ずかしいようなで、もう一度頭をひねろうとする京治を止めると、
峡は子供のように目を輝かせて言うのだった。
『いいや、正解。この屋敷には、俺達の外にもまだ京治が会ってない住人がいるのさ。』
おいで、紹介してあげよう。
そう言って京治の手を引くと、峡は屋敷の中へ入りどんどん奥へ進んで行く。
そして途中で京治は行き先に気が付いた。
まだ入ったことのない、峡の自室だった。
冷たく透き通った水は思考と視界を明瞭にする。
冷たい空気の中パッチリ覚めた目で京治が最初に見たのは、やはり峡だった。
京治のそれより癖が無いが所々跳ねている、少し長めの黒髪を、
峡は組み紐で緩く結わえる。
その姿が眩しく見えたので、京治は慌てて顔を逸らした。
そんな京治の様子に気付きながらも、峡は目を細めるだけで問い詰めはせず、
今日の話を始める。
『今日は昨日も話した通り、煤払いの日だ。まあ、大掃除の日だな。
だがただの掃除じゃだめだ。清めの鈴を作るために念入りに清めないと。
京治も手伝ってくれるか?』
峡が京治の顔を覗き込むと、京治はなんだか不安げに頷いた。
「掃除を、やったことが無いのでお力になれるかわかりませんが、頑張ります!」
すると峡は可笑しそうに笑って京治の手をとる。
『そんなに気を張らなくても大丈夫だよ。
うちの場合は特殊でね、大きな塵を拾って、湿らせた布で拭いて清める。それだけだ。そう大変じゃあないだろう?』
「でも、ほこり?とか髪の毛とか、細かい塵はどうするのですか?」
首を傾げた京治に、峡は謎かけを出題するように答える。
『京治もこの数日で屋敷の中を少しは歩けるようになっただろう?
その間に、細かい塵なんて、見たことがあるかい?』
「…!無いです」
京治が記憶をさかのぼっても、確かにこの屋敷の中で見た部屋も廊下も、髪の毛一本すら落ちていないのだ。
「もしかして、普段から皆さんがお掃除されているのですか?」
だとしたら本当にすごいことだ。こんなに大きな屋敷を、峡と侍従の三姉妹だけできれいに保っているのだろうか?
『うん、半分正解。でも、半分外れ。
普段から掃除をしているけれど、しているのは俺ではないし、侍従たちも大まかにしかしていない。』
峡が言うのは答えの手がかり何だろうが、京治はまた首を傾げる。
「まさか、このお屋敷には、まだ他に住んでいる方がいるのですか?」
京治の、何だか恐ろしいと言っているような視線に、ついに峡はくっくっと声を出して笑った。
「お、おかしなことを言ってすいません。間違いですよね」
焦ったような恥ずかしいようなで、もう一度頭をひねろうとする京治を止めると、
峡は子供のように目を輝かせて言うのだった。
『いいや、正解。この屋敷には、俺達の外にもまだ京治が会ってない住人がいるのさ。』
おいで、紹介してあげよう。
そう言って京治の手を引くと、峡は屋敷の中へ入りどんどん奥へ進んで行く。
そして途中で京治は行き先に気が付いた。
まだ入ったことのない、峡の自室だった。