七輪咲いた
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その仕事部屋はとても変わっていた。
壁や天井の至る所にお札のような物が張られ、
床には何やら字や模様のようなものが描かれている。
先ほど入り口として使った襖以外に戸や窓は無く、離れのように出っ張っている縁側との間に障子も無い。
縁側には白い扇子が一本、置いてあるだけで後は何も無かった。
天気の良くない日はどうするのですか。と京治が尋ねると、峡は雨戸を閉めると答えた。
部屋の中央に京治を座らせると、
峡は懐から鈴を取り出した。
『京治、一刻ほど前に朝餉を済ませたが、腹の具合はどうだ?満腹か、空いているか?』
京治はとても緊張していたから、その質問は京治の心境を気遣ってかと思った。
けれど峡は至極真剣な顔をしている。
困った京治は、正直に今の状態を言うことにした。
「腹は、空いてはいません。でも、満腹でもないです。ちょうどいい具合?です」
これでいいのだろうか?
京治は少し眉を下げて峡の様子をうかがった。
だが、そんな心配は要らなかったようだった。
峡は微笑んで京治の頭を撫でた。
『それなら良かった。いいかい?妖物と接するときは、できるなら腹に少し食べ物が入っている程度にしておいた方がいいんだ。
満腹だと、妖に美味そうだと思われるし、
何も食べてないと、ひもじい思いをした妖が――…まあ、餓鬼と呼ばれるものが多いが――仲間だと思って寄ってきてしまう。』
峡は京治の目を見て言った。
『妖物だって良いやつも悪いやつもいる。人間と同じでな。
だが妖物は人間より、うんと力がある。
だから、どんなことがあろうと、気を抜いてはいけないよ。気を許してはいけないよ。
例え命を助けてくれたとしても、恩は返しても命までやってはいけない。いいね。』
京治は納得できなかった。
あの優しいお爺さんにも、心を許してはいけないということなのだから。
『妖物に何かしてもらう時も、何かしてやる時も、必ず同じだけの対価を。それが決まり事だ。
対価を払い、貰い、やり取りをすることで、互いに踏み込みすぎて命を失うことを防ぐ。』
そう言うと峡は今度はニッと悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
『京治もあの妖に助けられたのだから、その対価を渡しに行かないとね。
お前の恩と同じだけの価値のある対価を、俺も共に探そう。
勿論、俺もあの妖に対価を払わねばならない身だけどね』
「・・・はい!」
京治は少し、胸が温かくなったのを感じた。
壁や天井の至る所にお札のような物が張られ、
床には何やら字や模様のようなものが描かれている。
先ほど入り口として使った襖以外に戸や窓は無く、離れのように出っ張っている縁側との間に障子も無い。
縁側には白い扇子が一本、置いてあるだけで後は何も無かった。
天気の良くない日はどうするのですか。と京治が尋ねると、峡は雨戸を閉めると答えた。
部屋の中央に京治を座らせると、
峡は懐から鈴を取り出した。
『京治、一刻ほど前に朝餉を済ませたが、腹の具合はどうだ?満腹か、空いているか?』
京治はとても緊張していたから、その質問は京治の心境を気遣ってかと思った。
けれど峡は至極真剣な顔をしている。
困った京治は、正直に今の状態を言うことにした。
「腹は、空いてはいません。でも、満腹でもないです。ちょうどいい具合?です」
これでいいのだろうか?
京治は少し眉を下げて峡の様子をうかがった。
だが、そんな心配は要らなかったようだった。
峡は微笑んで京治の頭を撫でた。
『それなら良かった。いいかい?妖物と接するときは、できるなら腹に少し食べ物が入っている程度にしておいた方がいいんだ。
満腹だと、妖に美味そうだと思われるし、
何も食べてないと、ひもじい思いをした妖が――…まあ、餓鬼と呼ばれるものが多いが――仲間だと思って寄ってきてしまう。』
峡は京治の目を見て言った。
『妖物だって良いやつも悪いやつもいる。人間と同じでな。
だが妖物は人間より、うんと力がある。
だから、どんなことがあろうと、気を抜いてはいけないよ。気を許してはいけないよ。
例え命を助けてくれたとしても、恩は返しても命までやってはいけない。いいね。』
京治は納得できなかった。
あの優しいお爺さんにも、心を許してはいけないということなのだから。
『妖物に何かしてもらう時も、何かしてやる時も、必ず同じだけの対価を。それが決まり事だ。
対価を払い、貰い、やり取りをすることで、互いに踏み込みすぎて命を失うことを防ぐ。』
そう言うと峡は今度はニッと悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
『京治もあの妖に助けられたのだから、その対価を渡しに行かないとね。
お前の恩と同じだけの価値のある対価を、俺も共に探そう。
勿論、俺もあの妖に対価を払わねばならない身だけどね』
「・・・はい!」
京治は少し、胸が温かくなったのを感じた。