四輪咲いた
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峡が京治を下したのは脱衣所についてからだった。
『京治、風呂は入ったことあるか?』
峡が尋ねると、京治は申し訳なさそうにしながら聞き返した。
「・・・ふろ?って、なんですか?」
京治は風呂という物自体を知らなかった。
『・・・そうか。風呂ってのは、汗とか土とか、兎に角体の汚れを落として奇麗にして、一日の疲れを癒すものだ。庶民は桶の水で体を拭くくらいしかできないらしいが、うちは大きい湯舟があるからな、温かい湯に浸かれるぞ』
京治は説明を聞いても何となくしか分からなかったが、兎に角贅沢なことなのだと思い焦った。
「お、俺なんかが入っていいのですか?その、俺、汚いですし、」
『確かに汚いな』
峡は冷たい声で言った。
怒っているようだった。
「(やっぱり俺、汚いんだ。父さまがいつも言っていたみたいに、俺は汚物で・・・)」
京治は悲しくなった。少し優しくされただけで自分がほんの少し奇麗になった気がしたその考えが馬鹿だったと思ったのだ。
だが峡の言葉には続きがあった。
『今はな。汗や土埃でべたついてるもんなぁ。それにあの親は体を拭くことすらさせてくれなかったようだしな。でもな、風呂はそんな汚れを全部落としてすっきりできるところだ。心配するな。』
それは京治を汚いとは思っていないような言葉だった。
存在自体が汚物だと言われて生きてきた京治は、汚い自分はずっと汚いままだと思っていたのに。
『さあ、着物を脱いで。一緒に入ろう?』
峡が着物を脱ごうとする。
京治は慌てた。
「・・・は、裸になるのですか?」
『そうだ。着物の下も汗をかくだろう?ほら、帯をほどいて・・・』
峡が京治の帯に手をかける。その手を
「!!っや、」
京治は叩いて逃げた。そして後ずさって距離を取る。
その目は怯えていた。
『・・・京治、質問するぞ』
京治の表情を見た峡はその場でかがみ、動かないことを示したうえで問う。
『京治にとって、着物を脱ぐのはどんな時?』
「・・・・・・、」
京治は口を開きかけて閉じ、目をそらす。
『京治』
峡の声は悲しさを含んでいた。
「・・・る、とき」
『ん?』
「真っ赤な熱い棒で、焼かれる時・・・」
それは父親から受けていた虐待だった。
真っ赤になるまで熱した鉄を体に押し付けられるときの。
「あ、の・・・?・・・、っひ、」
峡の顔には恐ろしいほどの怒りが浮かんでいた。
『京治、風呂は入ったことあるか?』
峡が尋ねると、京治は申し訳なさそうにしながら聞き返した。
「・・・ふろ?って、なんですか?」
京治は風呂という物自体を知らなかった。
『・・・そうか。風呂ってのは、汗とか土とか、兎に角体の汚れを落として奇麗にして、一日の疲れを癒すものだ。庶民は桶の水で体を拭くくらいしかできないらしいが、うちは大きい湯舟があるからな、温かい湯に浸かれるぞ』
京治は説明を聞いても何となくしか分からなかったが、兎に角贅沢なことなのだと思い焦った。
「お、俺なんかが入っていいのですか?その、俺、汚いですし、」
『確かに汚いな』
峡は冷たい声で言った。
怒っているようだった。
「(やっぱり俺、汚いんだ。父さまがいつも言っていたみたいに、俺は汚物で・・・)」
京治は悲しくなった。少し優しくされただけで自分がほんの少し奇麗になった気がしたその考えが馬鹿だったと思ったのだ。
だが峡の言葉には続きがあった。
『今はな。汗や土埃でべたついてるもんなぁ。それにあの親は体を拭くことすらさせてくれなかったようだしな。でもな、風呂はそんな汚れを全部落としてすっきりできるところだ。心配するな。』
それは京治を汚いとは思っていないような言葉だった。
存在自体が汚物だと言われて生きてきた京治は、汚い自分はずっと汚いままだと思っていたのに。
『さあ、着物を脱いで。一緒に入ろう?』
峡が着物を脱ごうとする。
京治は慌てた。
「・・・は、裸になるのですか?」
『そうだ。着物の下も汗をかくだろう?ほら、帯をほどいて・・・』
峡が京治の帯に手をかける。その手を
「!!っや、」
京治は叩いて逃げた。そして後ずさって距離を取る。
その目は怯えていた。
『・・・京治、質問するぞ』
京治の表情を見た峡はその場でかがみ、動かないことを示したうえで問う。
『京治にとって、着物を脱ぐのはどんな時?』
「・・・・・・、」
京治は口を開きかけて閉じ、目をそらす。
『京治』
峡の声は悲しさを含んでいた。
「・・・る、とき」
『ん?』
「真っ赤な熱い棒で、焼かれる時・・・」
それは父親から受けていた虐待だった。
真っ赤になるまで熱した鉄を体に押し付けられるときの。
「あ、の・・・?・・・、っひ、」
峡の顔には恐ろしいほどの怒りが浮かんでいた。