出張②(with吉野順平)
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呪霊を祓ってから、残りの時間咲桜と順平は観光をしていた。
咲桜は、温泉街の観光を楽しんでいたが、順平だけは違った。
昨日のことがまだ頭から離れず、咲桜との話にも上の空で、何を見ても反応が薄い。
咲桜自身、そんな順平の姿を見てすぐにピンときていた。
順平は、あの時咲桜に守られてしまった事を、気にしているのだと。
彼女としては、彼を守るのは当然のことで…それ以上でもそれ以下でもない。
だから気にすることないのに、と咲桜は思うのだが、順平は鬱々している。
そんな順平に、咲桜は自分の想いや考えを伝えるべきか悩みながら、いつもどおりに接した。
順平がずっと上の空のまま、二人は観光を終え、食事をし、温泉に入り、並んで敷かれた布団に横になった。
「おやすみ順平君」
「うん…おやすみ……咲桜」
電気を消し、一度は目を瞑った咲桜だったが、やはり自分の気持ちをしっかりと順平に伝えるべきだと決意し、順平を起こした。
「…眠れないの?」
暗い顔の順平の目をじっと見つめて咲桜は口を開いた。
「うん…」
「…」
「あのね。私ね。順平君と、こうやって一緒にいられるのがすごく、嬉しいんだ。順平君と里桜で出会って、映画作って…花火したり、遠足に行ったり…そういえば遠足の帰り二人共寝ちゃって、みんなに誂われて起こされたの覚えてる?」
遠足の帰り、咲桜が順平の肩で眠り、そして順平自身も肩をよせて眠った事を思い出した。
あのときは色々見て回って疲れしまったこともあり、友人に体を揺さぶられるまで起きなかった。
そんなこともあったな。
順平の口角が自然と上がった。
「よく、覚えてるよ」
「あの時、こんなことになるなんて少しも思ってなかったよね」
"こんなこと"には、真人によって順平が殺され、咲桜の術式が開花したことや、呪術高専に入学し、順平自身も呪術師として活動していることが当てはまる。
順平も同じことを考えていた。
そして、咲桜は類稀な術者であること、方や順平自身は、その真人から脳をいじられて呪術を使えるまがいもの。
強くなろうと日々鍛錬に勤しむが、先日の任務で、咲桜に助けられてしまった。
惨めだった。
順平は布団の中で浴衣を握った。
眉間に力が入ったのがわかった。
「順平君…」
鈴を転がしたような声で名前を呼ばれ、順平の頬に、咲桜の小さく柔からな手が触れた。
「廃墟の旅館で、呪霊の攻撃から守ってくれたの。嬉しかったよ」
「でも僕は…結局咲桜に守られた…咲桜がいなきゃ、僕はあのまま呪霊に食べれてた」
順平は下唇をぐっと噛んだ。
咲桜は指でその唇をなぞり、そして唇でそれに触れた。
高級な陶器を触れるかのように、慎重に丁寧に、触れた唇によって、順平の体の強張りが軽くなった。
ゆっくりと唇が離れると、咲桜は潤んだ瞳で順平を映した。
「私も、あの時、順平君に護られなかったら、呪霊の攻撃をもろに受けて、死んでたよ。それは、順平君と同じ…私は、他の人の傷とかを治すのは得意だけど、自分には、ちょっとした切り傷ぐらいしか治せないから……順平君があそこで私を護ってくれたから、護ろうって行動してくれたから、今私はこうやって順平君と……キス、できるんだよ」