正しい選択(with七海健人)
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「ここで充実した日を過ごせているのは、七海さんや虎杖くんのお陰です」
七海は飲んでいたコーヒーから口を離して「何故です?」と首を傾げた。
咲桜は手に持っているサイダーの缶を少し傾けたりしながら
「里桜高校での一件で、取り乱してる私を落ち着かせて、ここに連れて来てくださったから……今でもたまに考えるんです。あの時、体育館で吉野くんを見た時彼を追わなかったら…あの時、七海さんや虎杖君の言葉に耳を傾けなかったら…どうなっていたんだろうって……」
重い沈黙が七海と咲桜を包み、咲桜は「すいません。重い話をしてしまって」と慌てて謝罪をした。
「いいえ……」
七海はコーヒーを一口のみ、一呼吸置いて、咲桜の黒曜石の様な瞳をじっと見つめた。
「私から言えることは、貴女がここで楽しく過ごせているのは、私と虎杖君のおかげではなく、貴女の正しい選択のおかげだと言うことです」
「え?…」
「名代さんが高専に来れたのは、私や虎杖君の手引があったからですが、それはただの導きであって、それについていく事を選択したのは、名代さん自身でしょう?この選択をしなかった未来はどうなっているかなんてわかりませんが、現状に満足しているのであれば、貴女があの時に取った行動は全て正しかったということです」
七海の演説に咲桜は目をパチクリさせ、それから眉をさげて「そうかも、しれませんね」と言った。
刹那、聞き慣れた声が咲桜を呼び、二人は声のする方へ顔を向けた。
そこには、制服を着た順平が立っていた。
「あ。順平君」
七海に気づいた順平は、七海に挨拶をするやいなや、咲桜に話しかける。
「スマホに連絡しても出ないから心配したよ」
「ごめんね。スマホ部屋に置いてきちゃってて」
順平と咲桜が話をしている間に、七海はコーヒーを飲み終え、ゴミ箱に缶を捨てた。
「それでは、私は五条さんに報告をしてきます」
スマートに挨拶をする七海に、二人は見惚れた後、「さようなら七海さん」と挨拶をしかえた。
気品のある七海の後ろ姿に、咲桜は声をかけた。
七海が振り向くと、咲桜はニッコリと微笑む。
「お話できて良かったです。ありがとうございました」
目を細めて笑う咲桜を見て、七海の口角も自然とあがった。
「ええ。こちらこそ」
という言葉の後に、七海が「お幸せに」と言うと、二人の頬は林檎の様に赤く染まり「あっ、ありがとうございます」と二人揃ってお礼を言う。
そんな初々しい姿に七海は微笑み、報告に向かった。
七海を見送った後、順平は咲桜に
「七海さんと何を話したの?」
「んー。色々?」
「色々って?」
「順平君のこととか」
「僕のこと??」
「うん」
咲桜は順平の手をギュッと握って、彼の瞳を見つめた。
彼の手はほんの少し湿っていて、瞳はキラキラと宝石のように輝いている。
「順平くんの高専の生活が充実してそうで良かったって」
咲桜の言葉に、順平は握られた手を握り返して眉を下げた。
その日、二人は順平の部屋で、高専であった事の話に華を咲かせた。
おわり