第16話/エスケープ
夢小説設定
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「どうしたの?」
「私の好きなところ、聞いてない…教えて」
首をかしげて尋ねる僕に、咲桜は向き直って言った。
あ。
そういや僕じゃんけんで負けたんだ。
忘れてた、わけじゃないけど……。
咲桜の好きなところか…。
屈託のない笑顔を見せるところも好きだし。
僕に優しいところとかも好きだし……。
君の全部って言ったら多分駄目だっていうんだろうなぁ。
「ねぇねぇー。『好きなところ』なにー?『全部』は駄目だからね」
僕の手を軽く左右に揺らしながら、上目遣いで聞いてくる可愛い彼女。
あぁ、そういうところ…。
僕は思わず笑みが溢れた。
「早くー」と催促する咲桜の目を見つめる。
左右に揺さぶる手を取り直して
「そうやって、僕にだけ甘えてくるところだよ」
咲桜の顔は一気に紅くなった。
彼女は俯いて、僕の事を小突いたと思えば、小さい声で「不意打ちだよ」って言う。
「『全部』は駄目っていったから」
「うん」
「だから、これからも僕だけに甘えてね。そんな君が好きなんだから」
「…う、うん」
耳まで真っ赤な咲桜の手を引きながら僕はもう誰もいないはずの教室に荷物を取りに行った。