第15話/幼馴染
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その声が誰の声か俺にはすぐわかった。
咲桜だ。
誰かと話してる。
一緒にいるやつは誰だ?
聞き覚えのある声だな…。
もしかして…。
吉野順平?
「さっきの映画面白かったね!」
「あの映画は伏線回収が楽しいんだ」
「伏線かぁ…難しかったなぁ私には」
「僕も全部回収できるわけないから」
「また今度一緒に見てくれる?」
「うん。咲桜となら何度で…」
突然二人の会話が止んだ。
俺は不思議に思って下駄箱の影から声の聞こえる方を覗き込む。
目に飛び込んできた光景に、パニクった。
そこにいたのは、咲桜にキスをされている吉野だった。
「ちゅー…しちゃったね」
「…誰かに見られたかもよ?」
「大丈夫。もう学校には誰もいないよ…いるとしたら先生かな………ねぇ…今度は、順平君からして?…いいでしょ?」
「……いいよ」
顔の赤い吉野は震える手で咲桜の頬を包んでキスをした。
は?
なんだよ…。
なしてんだよ。
陰キャの癖に!
俺は二人のキスに目が離せなかった。
キスし終わった吉野がこっちを見た気がして、俺は急いで下駄箱の影に隠れた。
つかなんで俺隠れてんの?
隠れる必要なんてねぇのに、俺は本能的に隠れた。
「咲桜。雨降ってるよ」
「ホントだ。今日天気予報で雨なんて言ってなかったのに………順平君は傘持ってる?」
「いや…咲桜は?」
「えへへ。私はこんな事もあろうかと置き傘してるんだ」
「…入ってもいい?」
「もちろん!」
咲桜は傘立てから傘を一本とって広げた。
「僕が持つよ」
「え。ありがとう」
二人は雨の中、気持ちわりぃほど鮮やかなピンク色の傘をさして、手を繋いで歩いて行った。
二人の手首には見覚えのあるブレスレットが……。
今の今まで気が付かなかったお揃いのブレスレットが嫌というほど目につく─────。
俺は傘立てを蹴った。
劈(つんざ)くような音を立てて傘立ては倒れ、何本もあった汚え傘が散らばる。
その中に綺麗な傘はもうなかった。