第14話/創傷
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僕と、麻酔で眠らされている咲桜しかいない病室で、僕は枕元に置かれた丸椅子に座って、咲桜の手を握った。
あったかい。
生きてる…。
良かったと心から思うと、涙が頬をつたう。
ふと、握っていた手がピクリと動いた。
「咲桜…?」
彼女の名前を呼ぶと、ゆっくり瞼が開き彼女の瞳に僕が映った。
「咲桜!ああ咲桜よかった!目が覚めたんだね!」
咲桜は僕の言葉に目をパチパチする。
「じゅんぺっっっ!!」
僕の名前を呼ぶ途中に顔を歪ませて、ガーゼの当てられた頬を押えた。
「しゃべると痛い??」
涙目になった咲桜が首を上下に動かした。
「…そっか…いいよ。喋らなくて」
変わりに筆談にしよう。
と僕は鞄からノートとペンを取り出し、上半身だけを起こした咲桜に手渡した。
すると、咲桜はノートをめくって言葉を書いて僕に見せた。
【順平君は怪我してない?】
ノートに書かれた小さく丸っこいその文字には、優しさがいっぱいに詰まっていて…。
「…咲桜…」
僕はたまらず彼女を抱きしめた。
「僕は大丈夫。大丈夫だよ。咲桜がかばってくれたから…でも僕は…咲桜に怪我をさせちゃった……ごめん…ごめんね…」
恋人失格だよ。
彼女の首に顔を埋めると、べりっと剥がされて、咲桜はまたノートに文字を書いて僕に見せた。
【順平君は何も悪くないよ。私は順平君が無事ならそれでいいの。だから謝らないで、それに順平君は私の自慢の恋人だよ】
僕の頬に流れた涙を咲桜が指の腹で拭ってくれて、僕のほっぺにキスを落とした。
それから僕のことをギュッと抱きしめてくれた。
普段咲桜から匂うことのない薬品のニオイに混じって本来の甘く心地良い香りが僕を包み込む。
今までざわついていた心が落ち着いていくのがわかった。