第29話/人間の美徳【HAPPYEND√】
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午前中順平君のお見舞いも終わって、私はその足で遺体安置所に行った。
ここには順平君のお母さんの遺体が保存されてる。
遺体が入れられている冷蔵庫を開けて、ガラガラと音を鳴らしながら、遺体の乗ったストレッチャーを引いた。
そこには順平君のお母さんが眠っている。
私はその遺体を綺麗に整えたおいたベッドに優しく置いた。
とても冷たくて、血色が悪い、生きていた時とは真反対の状態で、下半身がない遺体。
この遺体を、順平君が一人で寝室まで運び、ありったけの保冷剤で冷やしたと聞いた時、私は気が触れそうだった。
たった一人しかいない大切な人の悲惨な姿を見て、誰が冷静にいられるんだろう。
誰が恨みを持たずにいられるんだろう。
軽くなってしまった母親を、順平君はどんな気持ちで運んだんだろう。
そんなことを考えると涙が止まらなくなる。
順平君のすべてを、肯定していたお母さん。
優しくて、綺麗で、非の打ち所がない順平君の大切な人。
私にとっても大切な人。
だから、順平君のお母さんにもう一度………。
静粛な中で、私は順平君と順平君のお母さんと愉しかった日々を思い出しながら、呪力を増幅させた。