第23話/言靈
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一通り蹴り終わったのか、伊藤は蹴るのを突然やめて、取り巻きである佐山が『何かを』持って僕の前に出てきた。
僕はその間に、蹲っていた体制を立て直し、背後のフェンスに凭れて、座る様な体制を取る。
そして目の前の光景に僕は目を疑った。
佐山が持っていたのは、虫かごで、その中には、どうやって取ってきたのかゴキブリが2、3匹ワサワサと音を立て動いていた。
「よーしのちゃーん」
佐山は狂人の様にニヤニヤ笑って、僕のおでこを掴んだ。
ガシャンというフェンスの音が響いて、押さえつけられて、後頭部が痛い。
「ゴキブリ喰ってるとこ、動画に取らせてくんねー?映像にされんの好きでしょ?映画作ってたんだしさ。それから、顔とか全部映したいから前髪あげちゃおーねー」
そう言って佐山は前髪を掻き上げようとして、僕は咄嗟に抵抗した。
でも、それが気に食わないらしく、西村と本田に押さえつけられて、前髪を掻き上げられた。
すぐに周りから想像していた反応が飛び交う。
あぁ。
咲桜との『二人だけの秘密』が台無しだ。
「根性焼きとか!まじか!おいタバコタバコ!俺らもやろうぜ!!」
佐山の声に、本田が胸ポケットからタバコを取り出した。
奇しくもそれは、父さんが吸ってた奴と同じメーカーのものだった。
タバコを一本取り出され、佐山の口に咥えられたそれは、ボッと音を立てて紅く染まった。
佐山が気持ちよさそうにふかすその姿を、僕はただ見つめていた。
こんな時に、昔の良くない記憶がタバコの煙みたいにモクモクと頭の中をいっぱいにする。
伊藤と女子はスマホを、向けてニタニタ笑ってる。